もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第406話 「夜の闇を切り裂くが如く」

「グルルルルル…」

 

体毛が黄金に輝く大猿へと変身したサザンカ。生まれつき尻尾が生えていなかったサザンカは本来であれば満月やパワーボールを見ても大猿になどならない筈だが…

 

「悪の気を御したことで尻尾が生えたのだ!やはりそれこそがサイヤ人の原始の力…さぁ、その先をオレに見せてみろ!」

 

黄金大猿と化したサザンカは、牙を剥いて唸りながら上にいるカンバーを睨み、腕を引いて足を踏みしめ今にも飛びかかろうと構えている。

 

「サザンカ!落ち着け!」

 

だが、カズラはこれ以上サザンカが暴れるのを止めようと、足元から手を振って呼びかけた。それに気付いたサザンカはカズラを見下ろし…

 

「カズラ?」

 

低い声で名前を呼んだ。黒い濁流に流され、気を消耗してしまったシロナやウスターたちも、その様子を遠くから眺めて驚いている。

 

「そんなとこにいたのかよ!っていうかお前なんか小さくねぇ?」

 

「いやお前がデカいんだよ!急にそんな姿になるからまだ暴れるのかと思ったよ!」

 

「あ、え?…あえぇぇええええぇ!?なんじゃこりゃあああ!」

 

そこでやっとサザンカは自分が見た事もない巨大な大猿の姿に変わっていることに気付き、両腕を見ながら驚いてその場で大声を上げる。

 

「だから言っただろ!」

 

「これどうやったらもとに戻れるんだ!?」

 

あたふたと慌てるサザンカを見て、シロナは安堵した。あの感じなら正気は取り戻せたようだ。とは言っても、あのカンバーがここへやって来ている状況…何とかしなければ…

 

「くっ…!」

 

シロナがサザンカに受けたダメージと悪の気に晒されたことによる疲労は記憶兵器の超回復力をもってしても動けるようになるまでもう少し時間がかかりそうだった。

カンバーは上空からサザンカの様子を見ながら考えを巡らせる。

 

(…尻尾も健在…金色の大猿になっても理性がある。が…問題はこの先か)

「おいキサマ!オレと…」

 

カンバーはそう言いながら全身に赤黒いオーラを纏う。

 

「戦え!!」

 

そして、右手から強力な気功波を放出した。それは放射状に広がりながらグングンと迫り、カズラもろとも大猿のサザンカを呑み込もうとする。

 

「おわわわわ…!」

 

「大丈夫だ、アタシに任せとけ」

 

ドォォン!!

 

サザンカは大猿の巨体を使い、カズラを守るように気功波との間に、背を向けて立ちはだかる。

気功波は直撃し、そのまま広がった衝撃が地面を抉り取る。大地が激しく揺れるとともに赤黒い閃光が周囲を覆った。

 

「…ほう」

 

煙が晴れてゆく。カズラが目を開け、上を見上げると、さっきまでそこにあったはずの巨大な影はなくなっていた。だが、目の前には見慣れた背中が、そこにはあった。

 

「ナメるんじゃねぇ!」

 

黄金大猿から元の姿へと戻ったサザンカ。その姿は、暴走する前と何も変わっていない。赤い瞳に黒いウルフカットの髪、武道会から着ているジャージ…外見上の変化はないがしかし、見る者が見ればわかる。その気の質は以前のサザンカとは比べ物にならない程大きくなると同時に透明感に溢れており、全くの別物となっていた。

 

「サザンカ…!」

 

シロナがその変化を感じて思わずつぶやく。

しかし、カンバーはがっかりしたように眉をひそめた。

 

「キサマも…たどり着けなかったか…」

 

カンバーは右手にエネルギー弾を作り、握りしめて圧縮する。

 

「オレを失望させた罰だ…ここで死ね」

 

そして、上空からそれを落下させ、途中でボンと膨張して巨大なエネルギー球となって向かってくる。

 

「カズラ、お前は逃げてろ。アイツはアタシがもう一度ぶっ倒す!」

 

「…いや、それならお前の傍が一番安全だろ?」

 

カズラはそう言いながら、後ろからサザンカの肩へ手を置いた。

 

「ははっ、そりゃ違いねーな」

 

サザンカは歯を見せて不敵に笑うと、背中にカズラを背負ったまま空高く飛び上がり、そのままカンバーのエネルギー球に突っ込んでいく。

 

「ウオオオオオオ!!」

 

そして自分の拳を叩きつけると、波紋状の衝撃波が広がると同時にエネルギー球の動きが止まった。完全に両者の勢いは拮抗し合っている。

 

「ぬうう…!!」

 

カンバーはさらに気を送り込み、エネルギー球の威力を高めるが…サザンカは余裕の笑みを一切崩さず、ぶつけていた拳を開いて手の平で受け止め、さらに指を喰い込ませ、なんとエネルギー球を掴んでしまった。

 

「なんだと!?」

 

そのまま自身の身体の横までエネルギー球を振りかぶり、アンダースローでそれを高速で投げ飛ばした。一瞬にして迫って来た自らの攻撃を叩きつけられたカンバーがエネルギー球と共に空高く打ち上げられていく。

 

「っと…安全なのはここまでだ」

 

サザンカはカズラをその場に降ろすと、全身にジェットのようなオーラを纏って空の彼方へと飛び去った。

空高く、大気圏外ギリギリの地点では、カンバーが自分をここまで押し出してきたエネルギー球を再びコントロールし、もう一度地上へ向けて落とそうと構えていた。

 

「でりゃアアア!!」

 

「む!?」

 

しかし、地上から高速で突っ込んできたサザンカがエネルギー球を貫いて破壊して無力化し、そのままの勢いでカンバーの顎へ頭突きを喰らわせた。

カンバーは宇宙空間へ吹っ飛ばされるかと思うほどの距離を飛んでいくが、途中で全身から気を発してブレーキをかけ、口の端から流れる血を拭うと今度はカンバーからサザンカへ仕掛ける。

 

「はあああああッ!!」

 

急降下しながら片手から無数の細かい気弾をばら撒き、サザンカの動きを制限しつつ接近し殴りかかる。

だがサザンカは気弾を避けつつもしっかりカンバーの動きに注目しており、拳を躱すと腹へカウンターの肘打ちをぶつける。

 

「ごは…」

 

苦しむカンバーの顔面を殴り、背後へ回って背中へ向けて気功波を放った。カンバーはそれに押されて地上へ向けて急降下していくが、気功波を強引にかき消しながら突破して上昇しサザンカへ迫る。

しかし、サザンカも同様にカンバーへ向けて突っ込み、先にこちらへ突撃してきていたはずのカンバーにぶつかって跳ね返した。カンバーはめげずに何度も上昇しながらの体当たりを仕掛けるが、そのたびにサザンカの反撃を喰らって地上へと押し出されていく。

 

「おのれェェ!!調子に乗るなよ!!」

 

カンバーは気を練って作った赤黒い手をふたつ生成し、サザンカへ差し向ける。両サイドからサザンカを捕らえようと襲い来る手だが、サザンカは片手ずつ使って両腕でそれを受け止め、逆にその指を強靭な握力で握りしめて動きを封じる。

 

「くっ…!」

 

「何をしようと無駄だ。アタシはもう二度とテメェの言う原始の力に呑まれたりなんてしねぇ!」

 

「バカなことを!もっとキサマの内に眠る本能に身を委ねていれば、その中途半端な力など得ずに済んだものを…」

 

「ハッ、もうアタシも全部分かってんだぜ!テメェだって中途半端なまま止まってるクチだろ?」

 

「なにィ…?」

 

「悪のサイヤ人にはもっと先がある…だがテメェじゃどうやってもそこまで行着けなかった…だから次代の悪のサイヤ人であるアタシの様子を見てみたがそれもダメだった。なんでそんなに確かめたがる?アタシたちがどこまで行けるのかを…。武道会で言ってた神々と戦うとかってのは建前で本当の理由じゃねぇんだろ?」

 

一瞬だけカンバーが動揺した隙を見て、サザンカは気を込めた拳による渾身の一撃をカンバーの胸へ叩きつけた。

すさまじい気の波動が周囲に溢れ出し、カンバーは隕石と見紛うほどの勢いで地上へ弾き飛ばされる。摩擦熱を帯びて真っ赤に赤熱した空気を纏い、光となって地上へ墜落していった。

 

「あれ、どっちだ!?」

 

シロナ達と合流したカズラが空を指差してそう言った。ひとつの赤い光が流星のように落下してくるが、それを追いかけるようにもうひとつの赤い光が降ってくる。

 

「たわけ下郎が!キサマがその状態でいくら強くなろうとも無意味だ!どんなに強かろうが、それを証明できなければ無意味!」

 

カンバーは向かってくるサザンカにエネルギー弾を無数に発射しながら叫ぶ。

 

「だからどうした!?無意味かどうかはアタシが決める!!」

 

サザンカは全てを避けながらカンバーへ接近し、強烈な回し蹴りを首へ命中させる。カンバーは全身が痺れるような痛みを感じ、白目を剥いて意識が飛びかける。

 

「少なくともアタシは、強さの証明なんざしなくても…アタシのことをわかってくれる、掛け替えのないヤツがいればそれでいい!」

 

その瞬間、カンバーの脳裏に浮かんだのは自分の手で殺害したサイヤ人の同胞、ヤモシ。

そのまま、カンバーは地面へ墜落し、噴き上がる岩盤の破片と土煙に包まれた。

 

「ふぅ…」

 

サザンカは小さく息をつきながら着地し、煙の中を睨む。それが少し晴れてくると、大柄なシルエットが立っているのが見える。カンバーの驚異的な頑丈さは、サザンカの攻撃でも意識を手放すことはなかったようだ。

 

「テメェ…!」

 

が、サザンカは焦る。カンバーが見上げる先には、未だに空に残っているパワーボールが浮かんでいたからだ。

 

「キサマが黄金の大猿を経てその力を御したというなら、オレにもその可能性があるはずだ。キサマができないというのなら、オレこそが真の頂へたどり着いてやる…」

 

パワーボールを視界に収めることで、それが放つブルーツ波を目から取り込み、尻尾が反応することで大猿化が発動する。カンバーの体が見る見るうちに巨大化し、はち切れんばかりの筋肉と並の大猿を凌駕するほど巨大な獣へと変貌する。それに加え、その全身の体毛はさきほどのサザンカのように黄金に煌めいており、その一本一本にまで猛々しい覇気が漲っていた。

 

 




東方最新作の東方獣王園に孫美天という孫悟空モチーフのキャラクターが登場しましたね。もっと早くに登場していればカカロットとの絡みを作れたのですが…
回想などで出せる隙があれば登場させてみたいですね。
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