もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第409話 「そんな予感がするのよね」

「さっき落ちていったデカい奴…何者なのかしら…?」

 

霊夢は閻魔宮殿を覆う結界を解こうと霊力を込めている最中、中に閉じ込められている閻魔大王に話しかけた。当然、霊夢の言うデカい奴とはジャネンバの事だ。つい先ほど、カカロットとともに地獄へ向かって落ちていくのが見えた。

 

「奴は恐らく…あの世の邪念の塊だ」

 

閻魔大王は答えた。

 

「邪念?」

 

「地獄の責め苦や天国での極楽は死者の魂から邪念を除去する意味もある。取り除かれた邪念は少なからずあの世に蓄積されていて…いや、最近は地球での死者が異様に多かった。そしてつい先ほど…何万人もの死者が一気にあの世へやって来た。地獄や天国のシステムがそれの対応に間に合わず、邪念が暴走した。これまでにもこれ以上の何億何兆という死者を捌いたこともあるがこんなことは一度もなかった…長い間蓄積された邪念がとうとう許容量を超えたのだろう。それが何らかの方法で形となったのが…あのジャネンバだろう」

 

話を聞いた霊夢は顔をしかめて呟いた。地球での死者が最近多かったという部分には嫌な疑問を感じたが、まあそういう存在もいるにはいるのだろうと納得した。

 

「絞りカスの塊って訳ね、あのデブちゃんは」

 

パキィィン!

 

その時、閻魔宮殿を覆う結界の表面にひびが入ったかと思うと、薄い層が剝げるようにして少し砕け散ったのだった。今までうんともすんとも言わなかった結界が、なぜか少しだけダメージを受けた。

 

「え?なんで…?」

 

困惑する霊夢だが、霊力を通じてすぐに理解した。人間の邪念の塊であるジャネンバによって作られた結界は、罵声や悪口を浴びせられることによって奥底に眠る罪悪感を刺激されダメージを受ける。絞りカスとデブのどっちが作用したのかはわからないが、とにかく結界を削ることのできる方法は見つかった。

 

「中身のないゴミ袋」

 

パキッ

 

「デクノボー」

 

バキン!

 

霊夢の放つ悪口によって結界は少しずつ割れて削れていく。

 

「なるほどね。でもこれじゃ一体何日かかるかしら…」

 

しかし、削れているといっても何百メートルもある大きさの結界のうち表面が卵の殻くらいの厚さで少しずつ剝がれているに過ぎない。

 

「頼む!はやく私を出してくれ!あの世の異変が取り返しのつかないことになってしまう!」

 

「わかってるからちょっと待っててくれない!?」

 

閻魔大王にさえ強気に怒鳴る霊夢であったが、直後に地の底の方…地獄から邪悪で不吉な気を感じ、思わず体を硬直させた。

 

(何…?この気は…まさかカカロットが───)

 

その瞬間、霊夢はなりふり構わない様子で地獄へ向かってすっ飛んでいく。

 

「おーいどこへ行くんだ!?」

 

閻魔大王は結界から叫ぶも霊夢には届かなかった。霊夢は全身に霊力を纏って凄まじいスピードで急降下してゆく。

黄色い雲を突き破り、カカロットの気が感じる場所へ大急ぎで突っ込む。

 

「消えろサイヤ人」

 

丁度その時、得体の知れない悪鬼のような者がカカロットへ向けて攻撃を放っていた。明らかにこの周囲ごと消し炭になってしまうであろう一撃…超サイヤ人3となったカカロットでさえも無事では済まないだろう。

それよりも、地獄へ来てから久しく危機という危機に直面することが無かった霊夢。地獄で暴れる悪人の制圧に行ったこともあるがたかが知れているレベル。だが、あの敵は脅威の度合いで言えばあの頃のフリーザ以上。そして思い起こされるのは、自分が駆け付ける前に死んでしまっていたカカロットの事。

だからこそ…

 

(今度は絶対に…)

 

霊夢は、カカロットを呑み込んだ緑色の光線の中に突っ込む。全身から赤と青のオーラを噴き出し、髪が深紅に染まり燃え盛る炎のように揺らめく。

”超夢想天生”となった霊夢は攻撃を無効化しつつカカロットの腕を掴み、そのまま異次元へと消えていった。

 

「…フフフ」

 

攻撃がおさまった後、静まり返った地獄へ降り立ったジャネンバベビーは腕を組んで笑った。

放射状に大地が深くえぐれ、あまりの高熱に晒されたせいで岩盤は赤熱している。

 

「オレは最強の肉体を手に入れた…長く準備した甲斐があったというものだ」

 

ベビーは惑星M2でブロリーの寄生に失敗し敗北を喫してから、十分な実力をじっくりと身に着け、まず完全体へ進化することを目指した。誰にも気づかれないよう、宇宙中を巡ってほどほどに生命エネルギーを吸収して回り、ついに完全体へと進化を遂げ、あの時に見たブロリーの記憶を手繰って地球へとやって来た。

ベビーは地球人に寄生して操り、数々のテロ事件を引き起こさせた。死者を爆増させ、あの世の管理システムへ負担をかけ、ついにジャネンバが発生しあの世が混乱し、この世と繋がってしまった。そしてベビーは地獄へと来襲し、こうしてジャネンバの体を乗っ取ったのだ。

ジャネンバをベースに普通の寄生よりもより深く融合し、その力を何倍にも、いやもっともっと高めた。ジャネンバの額と顎にはマシンミュータントの特徴である黒や赤の線状の模様が浮き出し、目には黒目を中心に十字のラインが走っている。

 

「時間はたっぷりある。しばらくはこの地獄でパワーを蓄えておくとするか」

 

ベビーはそういうと、素早くその場から消えていった。気も完全にこの場所から消え失せたのを確認すると、霊夢はそっと姿を現した。

 

「…行ったわね」

 

背中には、気を失い元の姿に戻ったカカロットを背負っている。

だが気を抜くことはできない、霊夢は神経を張り詰めながら超夢想天生を維持し、上へ戻ろうと力を込めた。

 

「…!?」

 

だが、遠く離れたベビーの気が再び接近していることに気付くと、慌てて異次元へ身を隠す。

案の定、ベビーがこの場へ降り立ち、辺りを見渡した。

 

「さっきのサイヤ人とはまた別の気が現れたような気がしたが…」

 

今、霊夢は超夢想天生を発動することによって使える能力、「異次元へ行き来する力」によって独自の異次元空間内へ入り込んでいる。ここは元の世界からは一切干渉することができず、何も感じ取ることができない。こちらの異次元側からは気配や様子を探ることはできるが、外へ干渉できない。

ベビーからすれば先ほど外へ現れた時の霊夢を気を感じたが、現在は霊夢は異次元にいるため、急に気配が消えたような状態である。

 

「誰かこの辺りにいたのか…?」

 

ベビーは霊夢の気の残り香を敏感にかぎ取り、執拗に周囲を探っている。霊夢は絶対に見つからないはずの異次元にいるというのに、なぜか無意識に息を殺して動けなくなってしまうほどのプレッシャーを感じる。

 

ボッ!

 

次の瞬間、霊夢がいる場所が爆発を起こした。ベビーが違和感を覚えた位置に正確に衝撃波を撃ったのだ。だが、爆発したのは外の方であり、異次元内の霊夢には一切ダメージや影響がない。

 

「…ふむ」

 

ベビーは首を傾げ、両手を広げて構える。

 

「まあいい…念のため吹き飛ばしておくか」

 

ベビーはジャネンバの能力を使用し、全身から銀色に輝く刃状のエネルギー弾を無数に発射した。それは地獄の大地や上空の結界の塊に当たり、切り刻んで粉々にしてしまう。

 

「キエエエエエエッ!!」

 

周囲の大地もだんだんと抉れてゆき、土煙が立ち込める。

ベビーを中心に半径数百メートルが切り刻まれて跡形もなくなってしまった。当然、やはり霊夢には何の影響もないが、それでも自分があの場にいればいくら超夢想天生の回避能力があっても避けきれずにひき肉になっていただろうと肝を冷やした。

 

「…気のせいか」

 

何もいないと悟ったベビーは、今度こそこの場から飛び去って行くのだった。

 

「行った…けど、姿を現したらまたヤツがやって来かねないわね…」

 

ベビーは用心深い。もう一度霊夢の気を地獄で感じたら、きっとまた確かめにやってくるだろう。現実へ戻ってから気を消して潜めばいい話だが、現実へ戻る際には超夢想天生を維持している必要があり、すぐに解除したとしても戻ったその一瞬で間違いなく捕捉される。

さて、どうするか…

 

「とりあえず、しばらくはここで大人しくしてようかな。きっと誰かが来てくれる。そんな予感がするのよね」

 

霊夢は強大なベビーを前に隠れることしかできない現状を憂うこともなく、また無力さを痛感することも無かった。なぜなら、霊夢の勘が…絶対にこの異変が解決されると告げていたからだ。

 

 

 

 

 




現在のジャネンバベビーは、ヒーローズに登場している例の姿とは異なります。ヒーローズのジャネンバベビーは外見上におけるベビーの特徴の露出度から見て、「スーパーベビー」にあたる形態になっていると思われます。
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