もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第41話 「決勝戦!幻想郷一は誰だ!?」

「それにしても、ガーリックの息子も気の毒ね。死ぬまであの異空間で過ごさなきゃならないなんて」

 

「ああ、馬鹿な奴だぜ、自らで作った地獄に閉じ込められるとはな」

 

屋根の吹き飛んだ武道館の中で、頼んだ食事を囲んでいるカカロットと霊夢。霊夢はまだ普通に料理を食べているが、カカロットは既に食べ終わった皿を山のように積み上げていた。

空は既にやや赤みがかっており、時間的には午後4時くらいだろうか。もうそろそろ、武舞台の修理が完了してもいい頃合いだと思うが…。

 

「あ、ウスター」

 

霊夢がこちらに向かって歩いてくるウスターを発見した。ウスターは腕や胴体に巻かれた包帯を強引に千切って捨てると、隣の椅子に座った。

 

「もう怪我はいいのか?」

 

「ふん、あの程度は慣れている。もう治りかけだ。どうやら決勝戦はカカロットとあの明嵐とかいう武道家に決まったようだな」

 

「ああ…」

 

「底が知れない女だ…できれば俺が叩きのめしてやりたいが、今回はお前に譲ってやる」

 

「いやぁ、お待たせいたしました」

 

その矢先、審判の式神がやってきてそう言った。

 

「武舞台の修理が終わりました、間もなく試合を始めますので準備をお願いしますね」

 

「ああ、今行く」

 

カカロットは立ち上がると、武舞台の方へと歩き出す。部屋の隅で同じく食事をしていた明嵐も立ち上がる。

 

 

「皆さん、大変長らくお待たせいたしました!!思わぬハプニングが連続しましたが、いよいよ決勝戦を行いたいと思います!」

 

前の試合であれほどひどい目に遭ったのに、まだ歓声を上げる観客たち。

 

「改めて選手のご紹介です。まずは、数々の手に汗握る戦いを披露し我々を驚かせてきた格闘家、明嵐選手!!対するは、前大会から引き続いての出場であります、激戦を制してきたカカロット選手!!」

 

カカロットと明嵐はお互いに舞台に上がり、向き合った。

 

「では…泣いても笑ってもこれで決まります、試合開始ッ!!!」

 

試合開始の合図とともに、二人は舞台上から消えた。打撃音だけがあちらこちらで響き渡り、火花のような衝撃が起こる。

観客たちがあちらこちらを見渡す中、舞台の中央に二人が現れた。拳を拳をぶつけ合い、互いに押し合っている。

 

「やはりやるな…」

 

「そうだね、私もそう思った」

 

明嵐はそう言いつつ反対側の手から気功波を放つ。が、カカロットも逆さまに身をひるがえしてそれを避け、鋭い蹴りを放った。明嵐は顔を横へ倒してかわす。

 

「だから俺も、全ての技を出し切ってやる。お前ほどの使い手ならば耐えられるだろ?」

 

「ほう、やってみようか」

 

カカロットは空中で後ろへ飛び、手の指を広げて腕を振った。すると、長い爪のような炎が生まれ、明嵐を切り裂くかの如く襲い掛かった。

 

「う…!」

 

「オラオラ!」

 

さらに追撃で何度も炎の爪による攻撃を仕掛ける。

これは、妹紅が使っていた技だが、カカロットが後からそれを真似て覚えた技である。また、妹紅と同様に気を炎に変質させる術も習得済みだ。

しかし、明嵐はその攻撃を早くも見切り、カカロットの両手首を掴んだ。

 

「その技はもう見切ったよ」

 

カカロットもすぐに手首を回し、明嵐の手を振りほどく。そして後ろへ飛んで地面へ着地し、片足を軸に猛烈なスピードで独楽のように回転を始めた。

 

「む!?」

 

直後、カカロットは宙高く飛び跳ね、回転の勢いを乗せた飛び蹴りを放った。

 

「豹牙旋風脚!!」

 

が、明嵐はそれを飛び跳ねてかわす。そして腕だけを後ろへ向け、通り過ぎていくカカロットへ向けて一発の気功波を放った。

 

「当たるかよ!」

 

カカロットも気功波を放ち、ぶつけることで相殺して見せる。だが、その際に発生した煙に紛れて接近していた明嵐の肘打ちが頬に命中した。

 

「いでっ…」

 

前転してその場を離れ、両手を合わせて構える。

 

「お返ししてやるぜ、超華光玉だッ!!」

 

 

「超華光玉…!?」

 

武道館から観戦していた美鈴がそう声を上げた。

 

「超ってついてるくらいだから…美鈴の華光玉よりもパワーアップした技って事なのかしら?」

 

 

「なるほど、それが君の大技か。だが私が待ってあげるとでも思っているのかい?」

 

明嵐は素早く駆け出し、華光玉を放つ準備をしているカカロットへ攻撃をしようと迫った。

一瞬で距離を詰め、パンチを放つ。

 

「…な!」

 

だがその瞬間、カカロットがその場から消え、明嵐のパンチは空をついた。

 

「どこへ行った…?」

 

明嵐は目を細めて精神を研ぎ澄まし、カカロットの位置を探ろうとする。すると…カカロットは何と超華光玉を放つのに必要なエネルギーを溜めながら超高速で武舞台上を縦横無尽に駆け回っていることが分かった。

 

「これならば溜めている間に攻撃される心配はないって事か…だけど甘いね、その程度のスピードならばまだ見切れる」

 

ようやく動きを捉え、左側に向かって渾身の回し蹴りを繰り出す明嵐。蹴りは鈍い音を立てながら、ちょうどその位置を通過しようとしたカカロットの顔面に命中した。

明嵐は勝ち誇るかのように少しにやっと笑った。

 

「超華光玉…!!」

 

「…何だと!」

 

だがしかし、それを受けてもなお怯むこともなく、攻撃を続行したカカロットを見て驚きの声を上げる。

そして、放たれる超華光玉。前方へ突き出した両掌から、七色のエネルギーが風船のように膨れ上がった。それを見た明嵐は咄嗟に後ろへ飛ぶが、膨れたエネルギーの塊から気の光線が伸び、それは螺旋状に捻じれながら真っすぐに明嵐に追いついた。

 

「うわああ!!」

 

受け止めようとする明嵐の手を弾き、胴体へ直撃する。爆発と共に閃光があたりを覆い、とてつもないエネルギーが炸裂する。

煙がおさまると、動かない明嵐が落ちてきて舞台上に倒れ込んだ。

 

「め、明嵐選手ダウンです!!1、2、3…」

 

カウントを取り始める審判。

 

「しらじらしい真似はよすんだな、今の一撃は手ごたえがあったが、まったく気が減っていない…」

 

「え?」

 

カカロットの言葉に対し、審判は困惑する。

 

「やっぱりバレたか。チャンスを探ろうとしてたんだけどな」

 

起き上がる明嵐。その表情はまだ余裕で、ダメージを受けたような素振りは無い。

 

「まだまだ俺も貴様も本気ではないだろう…本当の勝負はここからだ!」

 

カカロットはそう言うと、紫色のオーラを解き放った。その髪は大きく逆立ち、全身にスパークを纏っている。限界突破滅越拳だ。

 

「ほう、それが例の。ならば私も…」

 

明嵐も少し力を込めるような動作を取る。カカロットにはわかった、さっきよりも気の量が増えた。

 

「私の最大の力だ。さぁ、全力で始めようか」

 

両者はにやりと笑った。次の瞬間、同時に相手へ向かって駆け出し、殴りかかる。拳と拳がぶつかり合い、突風が吹いた。

しかし、その鍔迫り合いを制したのはカカロットであった。軽くオーラを衝撃波のように噴出し、明嵐の体勢を崩す。

 

「龍撃拳だ!でりゃあッ!!」

 

そして顔を殴りつけ、さらに追撃を加えていく。その動きはまさに空をかける龍の如くゆるやかに襲い掛かり、明嵐をなす術もないまま痛めつけていく。

 

「うぐあぁ…!!」

 

回し蹴りを腹に当て、少し遠くへ吹っ飛ばした。そして狙いを定め…一発の衝撃波を拳から放った。それは明嵐の顎にヒットし、明嵐は仰け反ったまま宙を舞う。

 

(ぐぐ…ふふ、なるほど…これがあの青年の実力か…。見事だ…まさか地上にこんな使い手がたくさん存在していたとは…)

 

明嵐は少しだけ微笑むと、受け身を取ろうとしていた体の力を抜いた。その身体は勢いよく武舞台の外、観客席の壁に激突し、ゴロゴロと崩れ落ちた。

 

「…え?」

 

カカロットは思わず呆気にとられた声を出す。

 

「明嵐選手場外です!!よって、第二回幻想郷一武道会の優勝を勝ち取り、幻想郷一の称号を手に入れたのは~…カカロット選手です!!」

 

ワアアアアアアアアアアアアアア…!

 

「俺が…優勝…」

 

「おめでとうございます、最後の畳みかけは思わず息を呑んでしまいましたよ…」

 

「…ああ」

 

 

「やったわ!カカロットが優勝よ!」

 

「くっ…ガーリックさえ居なければ、絶対に今回も俺様が優勝をいただいていたのに…!」

 

武道館で霊夢たちが口々にそう言っている。

 

「でも変ね…アイツ、優勝したって言うのに全然喜んでないように見えるわ」

 

 

「優勝したカカロット選手には、この何でも願いを叶えることができる5つ星のドラゴンボールを贈呈いたします」

 

「ああ…」

 

審判から渡されるドラゴンボールを受け取った。オレンジ色に輝く球の中に、青い五つの星マークが埋め込まれている。だが、カカロットは何か腑に落ちないような顔で考えていた。

 

(最後のアイツ…まさか…)

 

 

 

 

『おい明嵐…何故優勝を逃した、お前ならば地上の連中程度、敵ではなかったはずだろう』

 

『は…申し訳ありません、姉さん…ですが、彼らの力は戦士として申し分なく、私も武道家として…』

 

『ふん、どうでもいい。今からでもいい、あのドラゴンボールを奪うんだ』

 

『優勝したのは彼らです、私たちは別のボールを…』

 

『馬鹿を言うな、我々にもあの願いを叶えるというドラゴンボールが必要なのだ!』

 

『しかし…』

 

『もういい、お前がやらんというのなら私がやってやる。見ていろ』

 

 

 

次の瞬間、観客席から、一つの影が飛び跳ねた。影は猛烈な気を放ちながらカカロットへ接近する。

 

「何だ…この気は!」

 

あまりに強烈な気を感じるカカロット。そして、彼が手に持っていたドラゴンボールを、その気の持ち主がかすめ取った。その影は空中でとどまり、じっとこちらを見渡した。

 

「誰…アイツ?」

 

霊夢がそう呟きながらカカロットのそばへやって来る。

 

「くっ…誰だ貴様は!俺のドラゴンボールを返せ!!」

 

長めの黒髪を広げるようにして生やした女性だった。服装は明嵐の来ていた道着と似通っており、片眼鏡の奥にあるするどい目がカカロットたちを睨め付けた。

そして、謎の女は何も言うことなくそっぽを向き、空へと飛んでいく。

 

「ま、待て!」

 

真っ先に美鈴が飛び出した。身体に気を纏わせ、ドラゴンボールを奪い返そうと立ち向かっていく。

 

 

ドギャ…

 

 

「あ…あ…まさか…!」

 

「く…うが…!!」

 

謎の女の突き出した腕が美鈴の胸を貫いていた。真っ赤な血がドバーっと流れ、下の地面を染めていく。

観客席から悲鳴が上がり、霊夢とカカロットたちも状況が理解できずに思わず固まってしまう。

 

「行くぞ明嵐」

 

女はそう明嵐に声をかける。明嵐は立ち上がると、その女の後ろについて遠くへ飛んでいく。

 

 

 

…今、幻想郷に最大の危機が訪れようとしているのだった。

 

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