もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第411話 「だから楽しまなきゃ」

「ライチーか」

 

「如何にも…。覚えていられるくらいの知性はあるようだな、野蛮なサイヤ人よ」

 

ライチーは座禅を組んで座った体勢のまま浮かび上がり、ブロリーへ向けてそう言った。

 

「お前はあの時死んだと思ったが…生きていたのか」

 

「ふん、やはり浅はかで低能な種族だな。当然わしは死んだよ…貴様と彗星に挟まれてな。だがこうして地獄から蘇ったのだ!あの大穴を通じてな!」

 

「なに…?地獄からだと…?」

 

「これ以上は貴様と問答を交わすつもりはない!あの世で積り募った怨念のエネルギー!とくと喰らうがいい!」

 

周囲にバリアーを纏い、同時に怨念の気を高めるライチー。その力は生前とは桁違いに膨れ上がっており、大気を揺るがす熱量を感じる。強固なバリアーを前面へ集中させ、そのままブロリーへ突進を仕掛ける。

 

ガシッ!

 

だが、ブロリーは動じなかった。隕石の衝突の如きエネルギーを秘めたライチーの突撃を片手で受け止め、ビクともしない。

 

「なに…!?わしの怨念は桁外れに高まっている計算なのに…!」

 

「俺もあれから随分と強くなったぞ。お前の怨念とやらよりもずっとな」

 

ブロリーは超サイヤ人へと変身し、ライチーを受け止めている右手から緑色のエネルギーを放出し、炸裂させた。ライチーは吹っ飛ばされながら、あまりの衝撃に晒されてその身体がボロボロになって散っていく。

 

「こんなはずでは…!!またしてもサイヤ人に…おのれェェェェ!!」

 

断末魔の悲鳴を上げ、ライチーは再び消滅した。

…が、消滅するライチーの体から漏れた緑色の粒子が風に舞い、一つ処に集まっていく。それはブロリーの見ている前で人の形となり、先ほどまでのライチーとは比較にできない程の怨念の気を発しながら、ひっくり返った自動車の上に降り立った。

大柄で、濁ったような赤色のボディに、太く発達した腕と脚。全体的には機械のようにも見え、怒りに燃える黄色い目と表情が不気味にブロリーを見据えている。頭部、胸、腕、脚に緑色の水晶体がはめ込まれており、ここから強いエネルギーを感じる。

「ハッチヒャック」。かつてツフル人ライチーが作り上げた怨念増幅装置であり、蓄えた怨念を使って生命体を作り出すことができる。これは以前ブロリーに破壊され、漏れ出た怨念が凝縮された液体を体内へ取り込んだことでライチーは惑星すら凌駕するほどの巨大生命体となり暴走したのだが…ライチーが死ぬときにこのハッチヒャックの怨念も同時に地獄へと堕ちていた。そしてライチーと共に地獄で増幅し共に蘇り、ライチーが消滅した今その怨念のみがこうして形になったのだ。

 

「サイヤ人…憎イ…滅ボス…!」

 

ハッチヒャックは左腕を空へ掲げる。すると、一瞬で巨大な緑色のエネルギーボールが生成され、周囲を照らす。それはボン、ボンと音を上げながら巨大化していき、ついには空を覆うほどの大きさとなる。

 

「物凄いエネルギーだ…」

 

エネルギーボールに触れたビルなどの建物が崩壊し、瓦礫が混ざった突風が吹き荒れる。ブロリーは右手にエネルギーを溜め、それを小石ほどの小さなエネルギー球に圧縮して握りしめる。

次の瞬間、ハッチヒャックはブロリーもろとも地表へ向けてエネルギーボールを投げつけた。だが、ブロリーも小さな気弾を思いきり投擲し、迫りくるエネルギー球へぶつけた。

 

「…!?」

 

ハッチヒャックの怨念の気を込めた超巨大なエネルギー球が、ブロリーの作ったたったひとつの小さな気弾に阻まれてそれ以上進むことができなくなる。ハッチヒャックも驚いたように目を見開き、さらに気を送り込む。

 

「フン!」

 

しかし、ブロリーもさらに気を開放し伝説の超サイヤ人へ変身すると、小さな気弾が急激に膨張し、エネルギー総量ともに激増し巨大な気弾を押し返していく。

 

「クグ…ガウァァアアアア!!」

 

ハッチヒャックは雄叫びを上げ、さらに気を込めるもブロリーの気弾を押さえ込むことは叶わず、巨大な気弾は空を過ぎて宇宙空間まで弾き飛ばされてしまった。

 

「今ので全力か?」

 

ブロリーは余裕あり気に挑発する。ハッチヒャックは歯を噛み締めて怒り、腕の水晶体から溢れる気を再び放出する。だが、ブロリーはそれを蹴って真上へ逸らし、高速でハッチヒャックへ接近し背後から首を締め上げる。

 

「グウウウ…!!」

 

が、ハッチヒャックも腕を後ろへ回してブロリーの頭を掴み、そのまま前へ引っ張り背中から地面へ叩きつける。その隙に空へ舞い上がり、全身の水晶体から無茶苦茶にエネルギー弾を乱射し始める。

 

「ハアアアアア…!!」

 

雨のように降り注ぐ気弾が街を破壊してゆく。それを見たブロリーはオーラを纏ってハッチヒャックへ突撃し、気を纏わせたタックルを命中させ、同時に気を炸裂させる。怯んだハッチヒャックの腹へ強烈なパンチを叩きこむと、苦しみながらゆっくりと後ろへ下がっていく。

 

「グ…ガ…」

 

「前にも言ったよな?無関係な者を苦しめるな、と」

 

そして憎らし気にブロリーを睨みつけると、不気味な笑みを浮かべながらじわじわと煙のようなオーラを体から発する。

 

「ウガアアッ!!」

 

さらに一気に気を高め、ハッチヒャックは姿を変えた。体格が異様に大きくなり、全身には分厚い装甲を纏う。

そのまま両腕をクロスし、全身に増えた緑色の水晶体を発光させ、エネルギーを溜めこむ。

 

「リベンジャーカノン…チャージ開始…」

 

それを見たブロリーは、ハッチヒャックが繰り出そうとしている攻撃がいかに恐ろしい威力で放たれるかを察知した。恐らく地球は無事では済まないだろう。

ブロリーは地面を蹴って飛び出し、一直線にハッチヒャックへと向かう。それに気付いたハッチヒャックは一刻も早くチャージを完了させようとさらに気を放出するが、ブロリーはなりふり構わずに一切の容赦をせず、至近距離から特大のエネルギーの柱を叩きつけた。

それに飲み込まれたハッチヒャックはチャージ中の体勢のまま空高く打ち上げられ、溜め込んでいた怨念のエネルギーもろとも蒸発するように消え去っていく。

 

「バ…バカナァァァアア…!!」

 

ハッチヒャックもライチーの怨念も、一欠けらも残さず消滅したのだった。

 

 

 

「レイム…なぜあなたがここに…」

 

シロナは、突如目の前に現れたレイムと向かい合っていた。レイムは背中から伸びる九本の霊尾をゆっくりと揺らし、そのうちの一本で地面を力強く叩いた。アスファルトが砕け、レイムはその下から隆起してきた岩盤の頂上へ押し上がり、シロナを見下ろす。

 

「あははははッ!私は地獄にいながらお前への復讐の事だけを考えていたのよ!そしてそのチャンスがこうして巡って来た…逃す手はないわ!」

 

レイムの九本の霊尾が伸縮し、槍のようになってすさまじい勢いでシロナへ向かっていく。

 

「うわっと!」

 

シロナは後ろへ飛んでそれを躱し、続けて向かってくる霊尾を避け続ける。地面に突き刺さった霊尾は地中を掘り進み、再び地表へ飛び出して蛇のようにうねりながらしつこく狙う。

 

「いつまで逃げられるかしらね?」

 

霊尾の一本がシロナの逃げる方へ先回りし、ドリルのように渦を巻きながら襲い掛かる。文字通りシロナをミキサーにかけるようにミンチにするつもりだ。

 

「そっちが、いつまで追えるか…でしょ?」

 

「は…!?」

 

シロナは目の前に迫る霊尾を抱きかかえる様に受け止め、そのまま全力で遠くへ向けて飛び、霊尾を引っ張る。ビン、と霊尾が真っすぐに張り、レイムもそれに釣られて前方へ引きずられる。

 

「こら、やめなさい!」

 

「アハハハハハ!」

 

笑いながら霊尾をフルスイングしてレイムを高層ビルのど真ん中へ叩き付けるシロナ。ガラスとコンクリートの破片が飛び散り、その中に沈んでいくレイム。が、レイムはぐぐっと力を込めて体勢を直し、怒りの形相で黄金のオーラを解き放ち、超サイヤ人へと変身する。

 

「ぶち殺す!!」

 

「おっ、じゃあ私も…!」

 

シロナも瞬時に超サイヤ人へと変身し、向かってくるレイムを気弾で狙い撃つ。レイムは鬱陶しそうに爆炎と煙を切り払い、釘のような牙の並んだ口を開けて体内のエネルギーを竜巻状のブレスとして放った。

 

「おっとっと!」

 

シロナは跳び箱を跳ぶようにそれを躱し、バスケットボールのシュートのように空中で弧を描くように気弾を投擲する。

 

「あがっ」

 

脳天に落下した気弾の爆発を受け、レイムの口が閉じてしまい鼻からエネルギーの残滓が噴き出す。

 

「…お前、遊んでるわね?」

 

レイムの気がさらに大きくなり、黄金のオーラが激しくなる。怒りに目を見開き、全身の筋肉を膨張させて再びシロナに襲い掛かる。霊尾による殴打や刺突を躱し、シロナはレイムの顔面へ拳を食らわせる。

 

「だって、あなたには憎しみや怒りのこもった攻撃は通じないじゃん!だから楽しまなきゃ!」

 

「ふん、今のお前には味方となる幻想郷も、あの時のようにスカーもいないだろう?どうやってこの私に勝つというのだ?」

 

レイムの顔にピシリと亀裂が走り、それは全身に広がっていく。まるで内側に存在する巨大な何かが、ガワを破ろうと蠢いているかのようだった。もちろんシロナもわかっている…あの時、レイムは巨大な妖獣のような真の姿を見せていた…あれに変身されれば、あれから随分と強くなったシロナであってもひとりでは勝てないということは。そう、ひとりでは…

 

ズンッ

 

その時、レイムの背後に大きな影が降り立った。レイムが驚いて振り返ると、そこには伝説の超サイヤ人2となったブロリーが、白目をむいた目でこちらを見下ろしていた。

 

「チィィ…!」

 

後ずさりながら口の中にエネルギーを溜めるレイムだが、ドンと背中に何かが当たって動きを止める。

 

「痛ぇなぁ、ああん?」

 

ブロリーたちと同じく、別の街で暴れる怪物を鎮めてきたサザンカがやって来ていた。シロナ、ブロリー、サザンカに囲まれたレイムは観念するように元の姿に戻ったのだった。

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