もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第412話 「みんなが楽しく暮らせるように」

「みんなもとりあえず片付いたようだな」

 

ブロリーの元へ集まってきた、天龍、ウスター、サタンたち。それにサザンカとシロナも加え、現状の把握と確認を行うことにした。

 

「また追加で現れるかもしれねぇが、今んとこ動きはねぇな」

 

「暴れていた奴らの大半は知性の無いバケモノみたいな奴らだったが…その中に見覚えのある者が混ざっていた」

 

と、天龍が言った。

 

「確かにな…そして、そいつらは過去に倒したことのある者だった…そうだよな?」

 

「ああ」

 

「俺が戦ったライチーという男は、地獄からあの大穴を通じて蘇ったと言っていた。まさかとは思うが…本当にあの大穴の先は地獄に繋がっていて、そこから亡者たちが溢れてきているっていうのか…?」

 

ブロリーが皆の思っている疑問をまとめる。過去に倒した敵たちが地獄から蘇り、現世で暴れている。こんなことはとても信じられる現象ではないが、こうして実際に起こっている以上は無視できない。

 

「んで、どうなの?」

 

シロナは後ろで大人しく突っ立っていたレイムに目を向けて言った。

 

「おい、ていうか誰だソイツ」

 

サザンカがそう尋ねる。

 

「昔戦ったことがあるの。私のお母さんをベースに、父ちゃんとかいろんな人の遺伝子を組み込んだ人造人間なんだけど…」

 

「そいつは危険だ…何をしでかすかわからんぞ」

 

天龍も警戒しながらそう言った。当然、ウスターも神経を張り詰めてレイムの動作を監視している。

 

「もう幻想郷が滅ぼされた今、私の目的はシロナの抹殺だけよ。それさえさせてくれるというなら、少しくらいは大人しくしておいてあげるわ」

 

不敵に笑いながらそう言ったレイムであったが、やはりその場の誰もが彼女の言葉を信じていないだろう。直接相まみえたことのあるシロナや天龍、ウスターは当然として、ブロリーとサザンカも得体の知れないヤツと認識しているはずだ。しかし、いざとなればブロリーやサザンカであればレイムを鎮圧できるからという考えもある。

 

「…まあ、それは置いておくとして、本当にあの大穴の先は…地獄ってところに繋がってるのか?」

 

と、サザンカが言った。

 

「俺も、前に界王様のところへ行って修行を受けたが…地獄が本当に存在することは確かだ。蛇の道ってのがあって、もしそこから落ちたら地獄へ真っ逆さまだぞ、とは忠告されたな…閻魔大王に」

 

天龍がそう返す。

 

「閻魔?」

 

その時、その場へブルマと彼女に背負われたカズラが到着する。

 

「お、ブルマにカズラ」

 

「ねぇみんな、どうやら大変なことになってるらしいわ」

 

「私からお話ししましょう」

 

さらにその後ろからゆっくりと歩いてきた、小柄な人物が名乗り出た。その姿に見覚えのあるシロナは「あっ」と声を漏らす。

 

「私は界王神という者。現在起こっている異変について、お話しします」

 

武道会にも選手として出場していたヤツだ…と全員が気付く。界王神は静粛な態度で口を開いた。

 

「現在、お気付きの通り…あの大穴でこの世とあの世が繋がってしまい、特に地獄から死者たちが蘇ってしまっています。皆さんのおかげでとりあえずは鎮圧できましたが…またいつ他の死者が溢れてくるかわかりません」

 

「もしかして、これがさっき貴方が言ってた一刻を争う事態…ってやつ?」

 

シロナが質問する。

 

「その通りです。異変の原因は、ジャネンバという邪悪な者の出現によって閻魔大王の力が封じられ、あの世の法則が乱れたこと。あの大穴も閻魔大王の力が消えた影響で発生したものです」

 

「そのジャネンバってのは…?」

 

「あの世に邪念が溢れた時に誕生する、伝説上の存在です。私はここ数か月、地球での死者が異様に多いことに疑念を抱きました。戦争をしているわけでもないのに、ほぼ毎日何百人と殺されている。このままではジャネンバの誕生を早めてしまう…そう懸念した私は、武道会へ参加しシロナさんに協力を申し出た、というわけです」

 

それを聞いたサザンカが口を開いた。

 

「だったら…アタシがやった武道会場破壊とそこにいた人たちを全員殺したのが、そのジャネンバが生まれるのに最後の後押しになったってことだよな?」

 

「サザンカ…!」

 

「姉貴は黙ってろ。あれは完全にアタシがやったことだ。それが一因になってるってんなら、ケジメくらいつけさせろ」

 

シロナは何も言えなくなる。

 

「んで、どうなんだ?界王神サマ」

 

「…本当のことを言ってしまえば、ジャネンバ誕生を一気に早めたのはサザンカさんの大量殺戮が要因のひとつです」

 

「だよな。それで、あの大穴を塞ぐにはどうすりゃいい?」

 

「ジャネンバを倒すしかありません」

 

「簡単だな。よっしゃ、ならアタシがジャネンバってやつをぶっ飛ばしてやる。それで解決するんだろ?」

 

「はい…倒すことが出来れば、ですが…しかし…」

 

界王神は何かを言い淀んでいるように口ごもった。

 

「なんだよ?」

 

「ジャネンバは地獄にいます。ジャネンバを倒すには地獄へ行かなければなりません。しかし倒してしまった段階であの大穴は閉じてしまうのです…つまり」

 

その場の全員が、界王神の言葉の意味を察した。つまり、ジャネンバを倒した者はそのまま地獄に取り残されるということ。

 

「俺が行く」

 

ブロリーがサザンカの代わりに行くと名乗り出る。

 

「いや、だったら私が!もともと界王神さんは私に頼もうとしてたんだし、ここは私に行かせて!」

 

シロナも慌てて身を乗り出しながらそう言う。

 

「俺たちじゃあ大した戦力にはならないかもしれないが…それでも地獄へだって行ける」

 

「若人がそんなところに行く必要はない」

 

ウスターや天龍たちも口々にそう言った。黙ってその場にいるだけのサタンやブルマも、恐らくは同じ気持ちだろう。

サザンカは態度には決して出さないが、心は感動して今にも大声で泣き出してしまいそうだった。もちろん地獄へ行くのが怖いという話ではない。暴走し大量殺戮を働いた自分のことを、こんなにも考えていてくれる人たちが大勢いるという事実に直面しているからだ。

 

「…みんな、サンキューな。でもアタシに行かせてくれ。な、頼むよ…罪を償う、ってほどじゃねえけど、なんかアタシがやらなきゃいけない気がするんだ。それによ、姉貴からすれば…カズラを取っちまったアタシがいねぇ方が」

 

と、そこまで言った瞬間、ブルマの渾身の鉄拳がサザンカの顔面にめり込んだ。サザンカはその場へ倒れ込み、一瞬で真っ赤に腫れ上がった顔を上げた。

 

「いってぇ!なにしやがんだ!」

 

「アンタねぇ!バカ!冗談でもそんなこと言うのやめなさい!あたしはアンタをここまで育ててきたののよ!?いないほうが良かったなんて口が裂けても言うんじゃないわよ!」

 

もう一発、サザンカの頭へ拳骨を叩き付ける。その様子を、シロナやブロリーたちは唖然としながら見つめている。

 

「ご、ごめん…でも、実際にそうだろ…?」

 

再び拳骨が炸裂。

 

「いでぇ!」

 

「それはそれ!でもいなくなった方がいいなんて理由で行くのは許さないわ!」

 

「…あの大穴を閉じなくちゃ、みんなが困る…行かなきゃダメなんだ…せっかく気持ちがわかり合えたカズラも、姉貴も…ブルマだってみんなが楽しく暮らせなくなっちまう…」

 

「アンタがいなくなっちゃ、こっちの楽しいものも楽しくなくなるかも知れないでしょ!?それでも地獄へ行きたいって言うなら、受けて立つわ!その根性叩き直してやる!」

 

さらにビンタを打ち、サザンカはじんじんと痛む頬を押さえながら後ろへ下がる。

 

「こっ、こんのヤロォ~…人んところボカスカ殴りやがって!頭来たぜ!やってやらァ!」

 

拳を振り上げ、ブルマに殴りかかるサザンカ。シロナが止めようと動き出すが間に合わず、ブルマもサザンカの間合いへするりと入りこむ。

肩へ手をまわし、もう片手でサザンカの頭をわしゃわしゃと撫で…

 

「コイツめ!こんなに大きくなっちゃっても~!」

 

ブルマは満面の笑みを浮かべ、サザンカの体を思いきり抱き締めた。

 

「え…?」

 

「そう…みんなが楽しく暮らせるように、アンタは戦いに行くのね。んじゃ、しっかりやんなさいよサザンカ!」

 

 

 

───

 

「よーしよし、こんなに上手いじゃない!こりゃあたしより天才かもしれないわよ!」

 

昔、小さい頃のサザンカが絵を描いた時。

 

 

「サザンカ、なんて顔してんのよ。たかが友達30人に嫌われたのがどうしたっていうのよ?まだあたしとじいちゃんばあちゃん含めて、何十億人も世界にはいるんだから」

 

小学生の時、クラスメイト全員に嫌われて帰って来た時も。

 

 

「ごめんね、あたしは本当のお母さんじゃないのよ。でも、ずっとずっとアンタにはあたしがついてるからね」

 

 

 

「ごめん、ごめん…ブルマ…」

 

サザンカはひたすらに溢れてくる涙を止められなかった。あのサザンカが、ブルマの胸の中で泣きじゃくる。

一時はどうなることかと思った周りの者たちも、この光景を見て安心したように微笑んでいる。

 

「よしよし…。ねぇ、サザンカ。ここにいるほとんどの人が見たことないんだけどね…昔、戦争があったのよ。この西の都がなにもなくなっちゃうくらいの」

 

まだブリーフおじいちゃんが赤ちゃんだった時にね。ものすごい爆撃があってね…まだ小さな整備工場を建てたばっかりだった、おじいちゃんのお母さん…つまり私のおばあちゃんね。まだ赤ちゃんだった父さんと小さかった叔父さんを連れて逃げ回った。そして、戦争が終わったら…工場も、家も、街も…みーんな無くなってたんだってさ…頼りになる亭主もね。

おばあちゃんはその時、死のうと思ったんだって。これから子供二人も抱えてどうやって生きればいいのかわからなかった。でもその時、ふと風に舞ってきたチラシが目に入った。おばあちゃんはそれを手に取って読んだ…祭りの広告ってこと以外は内容なんて分からなかったんだけど、そこには楽しそうに笑ってる、母親と子供たちの絵が描いてあったらしいの。

おばあちゃんは泣いたんだと。わけもわからず涙が止まらなかったんだって。ひょっとしたら…いつの日か、自分もこんなふうに子供たちと楽しく暮らせる日が来るかもしれない。それからおばあちゃんは立ち上がって歩き出した…

 

「父さんが言ってたわ…」

 

 

『なぁブルマ、なんで戦後の貧しい時期にでっかい祭りが開かれたのか…なんで空襲の翌月、急遽天下一武道会が行われたのか…わかるかね』

 

『知んなーい、楽しいからでしょ?』

 

『そうだな…楽しいからさ。人間っていうのは「夢」がなきゃ、生きていかれないもんらしい。いつか楽しく過ごせる日々が来る…そう思うことで明日への活力を見出すんだ。だからわたしはこのカプセルコーポレーションをつくったんだ』

 

 

「ってね。どうせなら、地獄が楽園に思えるくらい楽しんできな」

 

サザンカは涙を拭きながら笑って頷いた。

 

「…チッ、くだらない」

 

レイムは心底興味の無さそうな顔で悪態をつき、笑顔で様子を見ていた界王神はゆっくりと頷き、前に進み出た。

 

「それでは、よろしいでしょうか?私は宇宙の創造を司る役割…戦いの中に身を投じるわけにはいきません。申し訳ありません…」

 

「ああ、じゃあアタシ行ってくるよ」

 

カズラは、地獄へと通じる空の大穴を見上げるサザンカの後姿を見て焦っていた。

…まずい、サザンカが悩んでいるのに俺は何も言ってやることが出来ない。家族であるブルマさんとの絆と愛を見せられて、果たして俺が今踏み込んでいいものか…。いや、それよりもサザンカが地獄に閉じ込められてしまう。そんなことは絶対に嫌だ…サザンカには絶対に帰ってきてほしい。何か手はないか、なんでも願いを叶えてくれる、そんな方法は───

 

「───あッ!」

 

 

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