もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第417話 「英雄は気取らせねぇぜ」

夜が明け、いよいよ出発の時がやってきた。

地獄と現世とを繋げている原因であるジャネンバを倒すため地獄へとカチコミを仕掛けるサザンカ。いつものスケバンスタイルである黒の丈の短いセーラー服にロングスカートの一張羅を纏い、気合も十分だ。

シリアル星にあるかもしれないというドラゴンボールを使わせてもらうため、宇宙へ旅立つのは、ブロリー、シロナ、現地のナメック人と交渉するためのピッコロ、操縦手のスカッシュ、監視役のシロナにつくしかないレイム。

その間、地球の守り手としてウスターやサタン、天龍たちが残ることとなった。見送りにカズラ、アザミ、グラジア、コナギ、それにミルとブルマを加えた全員が神様の神殿のある天界までやって来ていた。そこに宇宙船も移動させており、入口の扉が開いて階段が降りてきている。

 

「念のため、もしもシリアル星のドラゴンボールが使用できなかった場合…やむを得ません、これを人のいない星で使うこととします」

 

ピッコロは神殿の奥から、台座ごと究極ドラゴンボールを運んできた。布を被せたうえで鎖を巻き付け、厳重に守られている。願いを叶える代わりにその星を消滅させるほどの魔力が込められている、まさに究極のドラゴンボール…ただ扱うにしても緊張が走る。

 

「じゃあ、アタシは行ってくるぜ…なるべく早く片付けるからよ」

 

サザンカはそう言いながら遠くに見える大穴を睨みながら全身に気を込める。

 

「といってもシリアル星に着くまでに三日はかかるんだ…そっちの方が早く済むだろう。界王神様の話から、ジャネンバを倒してあの世が元通りになったら閻魔大王とやらが匿ってくれるらしい」

 

ブロリーがそう返した。

 

「はは、じゃあそっちも早くしてくれよ。おいカズラ…」

 

サザンカは背を向けたままカズラを呼んだ。

 

「この間、夢の中で話したコト…アタシは忘れてねぇからな。だからお前も忘れんじゃねぇぞ」

 

「あ、ああ…わかった」

 

カズラがそう返した時、後ろ姿から見えるサザンカの耳が赤くなっていた。が、次の瞬間、サザンカは全身の漲る気を推進力に変え、大穴目がけて高速で飛び立っていくのだった。

 

「行っちゃった…」

 

「俺たちも出発しよう」

 

サザンカの気が感じられなくなり、地獄へ入ったのを見届けたブロリーたちが宇宙船へ乗り込もうとしたとき…

 

「待って、ブロリー!」

 

ブルマがブロリーを呼び止めた。

 

「どうした?ブルマ…」

 

「あんた、絶対に無事で帰って来なさいよ?昔からあんたは無理してでも戦うきらいがあるみたいだから」

 

「大丈夫だ、シロナもいる」

 

「…それとね、もうひとつあんたが絶対に無事で帰らなきゃいけない理由があるのよ」

 

「なんだ?」

 

「あの…気付いてなかったと思うけど、実はあたし…お腹に赤ちゃんが…もちろんブロリーの…」

 

言われてみれば少し膨らんで見えるお腹をさすりながら、ブルマがそう言った。聞いていたシロナたちも目玉が飛び出るほど驚き、当のブロリーも驚きを隠せなかった。

 

「ほ、本当か…!?いつから…」

 

「たぶん3か月くらいかしら…もしかしたら4か月かも…」

 

「そ、そうか…というかブルマ、お前はそんな状態で今まで戦ったり宇宙船を改造したりしてたのか…?」

 

「あたしも知らなかったのよ!なんか違和感はあったんだけど、今朝ピッコロに会った時に言われて初めてわかったの」

 

ブロリーは、いつだったかに幻の中でカカロットに言われた言葉を思い出す。

 

“それよりも苦労するぜ、お前もいつかガキを持ったらそんな事考える暇もねぇくらい忙しくなるからなぁ”

 

その言葉の意味を理解したブロリーは、彼が感じていた幸福を自分も感じられる資格があったのだと思い、涙ぐんだ。

 

「さ、喜ぶのは帰って来てからにしなさい!あたしのことは心配しないでいいから!」

 

「ああ…わかった!」

 

ブロリーがそう言い、一行は宇宙船へ乗り込もうと歩き出す。ブロリーが先に乗り、スカッシュが後に続く。

 

「ブロリー、おめっとさん!」

 

「お、おお…」

 

シロナとピッコロは台座ごと究極ドラゴンボールを積み込もうとふたりでそれを持ち上げ、ゆっくり階段を上がる。

 

「すみませんね、シロナさん…」

 

「いいっていいって…」

 

その時、ふとシロナの頭によぎった悪い予感。いつの間にか、レイムの姿も気配もこの場から消えてしまっている。どこに行った?

 

「そういえば…レイムはどこ?」

 

そう疑問を口にした瞬間、突如として天界全体を覆い尽くす悪のオーラ。宇宙船内に入ったブロリーも一瞬硬直し、直後に慌てて外へ飛び出す。

 

「お前らは…!」

 

見上げた先には、悪のサイヤ人カンバー、そしてベジータが現れていた。頭の上には光り輝く輪が浮かんでいる。

 

「見つけたぞ…殺されたくなければそのドラゴンボールをこっちへ寄越すんだな」

 

ベジータは宇宙船目がけて気弾を放つ。明らかに命中すれば宇宙船は跡形もなく破壊されてしまうだろう。シロナが咄嗟に気弾を撃ってベジータの攻撃を逸らす。シロナの存在を認識し、ベジータはそちらへ目を向けるが、次の瞬間に飛び掛かってきたシロナの拳を掴んで受け止め、そのまま両者は取っ組み合う。

 

「オレと…戦え!!」

 

全身から赤黒い悪の気を放出し、高まるオーラを気弾にして全身から放出するカンバー。何発かが神殿に当たり、その箇所が爆発と共に崩壊する。

 

「はあああああ…!」

 

さらに繰り出される気弾がブルマたちにも迫る。その瞬間、ブロリーが一瞬でカンバーに殴りかかり、その顔面へ渾身の拳を叩き付けた。

 

「ウルォアアアアッ!!」

 

気弾は逸れてブルマたちには当たらなかった。

 

「コイツらは危険だ!俺が食い止める!」

 

「ブロリー!」

 

ブルマが名前を叫ぶも、ブロリーはカンバーを殴った勢いそのままに下界へ向けて落下していった。

一方、ベジータと組み合うシロナはじりじりと押され、だんだんと腕の力が弱まっていく。

 

「シロナ!」

 

ミルがシロナの名前を呼び、加勢しようと腕をドリルへと変形させる。

 

「ミル…!コイツらは私とブロリーさんがいないと対処できない!だから私の代わりに行ける!?」

 

「私は…!」

 

シロナは小さく微笑みながら横顔をミルへ向ける。ミルはシロナの黒い瞳を見つめ、決意を決めたように走り出す。

 

「承りましたわ!その方の相手は頼みましたよ」

 

「そっちこそ、シリアル星まで頼んだよ!」

 

ベジータは取っ組み合いながら全身から紫色のオーラを放出し、強引にシロナを突破して究極ドラゴンボルを目指そうとする。だがシロナも負けじと赤い怒りのオーラを放ち抵抗する。

 

「邪魔だ、どけ!」

 

シロナはベジータの頭突きを受け、額から血を流すも全く力を緩めず、反撃の膝蹴りを腹へめり込ませた。これまたベジータに効いてはいないが、両者はさらに激しいつばぜり合いを繰り広げる。

 

「もう、何してますの!?はやく積み込んでくださいまし!」

 

「え、は、はい!」

 

ミルはピッコロが運ぼうとしていた究極ドラゴンボールをさっさと宇宙船へ乗せ、自分も乗り込んだ。既にスカッシュはパネルを操作して宇宙船を出発させようとしている。

 

「いいかい!?もう出ちまうよ!」

 

外では、ベジータが噴出させるオーラの欠片が天界上に降り注いでいた。神殿に住まうミスター・ポポまでもが飛び出し、慌ててカズラたちを匿おうとする。その中で、カズラとアザミだけは飛び立とうと翼を広げるケツァルコアトルと、ゆっくりと閉じていく階段付きの入口を見ていた。

 

「おいカズラよ…もしかして俺と同じこと考えてるか?」

 

「やっぱりお前もか?アザミ…だよな、サザンカに負けてらんねぇ」

 

カズラとアザミは一気に駆け出し、石の破片やベジータの気が降ってくる天界上を走り抜ける。

 

「えぇ~!どうしちゃったの!?」

 

コナギとグラジアが心配そうに叫んだ。

だがふたりは止まらず、閉まりゆく出入口の隙間に身を滑らせ、何とか出発前に間に合った。

 

「あら、貴方たち…」

 

「サザンカだけに英雄は気取らせねぇぜ!」

 

「ああ、ドラゴンボールでアイツを地獄から連れ戻すのは…俺だ!」

 

「もう遅いよ、仕方ないね!ついてきな!」

 

「おい待て!なら俺も行かせろ!」

 

続いてウスターもギリギリのところで滑り込んできた。

そして、ついにいよいよ宇宙船は飛び立った。ベジータは阻止しようと一発のエネルギー波を繰り出すが、それが当たるよりも早く、宇宙船はすでに宇宙の彼方へと消えてしまっていた。

 

「チッ…逃がしたか…」

 

 

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