天界から宇宙船が出発しようかという時、突如としてベジータとカンバーが襲撃してきた。ベジータの発言から、どうやら宇宙へ持っていこうとしている究極ドラゴンボールを狙っているらしい。
カンバーとブロリーは戦いながら離れた場所へ移り、宇宙船はスカッシュ、ピッコロ、ウスター、ミル、カズラ、アザミを乗せて飛び立った。ベジータはそれを撃ち落とそうとするも間に合わなかった。
「チッ、逃がしたか…」
ベジータはシロナを弾き飛ばし、天界に降り立つ。シロナもそれを追いかけてベジータの正面へ舞い降り、天龍、そしてサタンもベジータの周囲を囲う。
「ザコ共が揃いも揃って何の用だ?見覚えのある連中も混じっているが…まさかこのオレを倒そうなどというくだらんジョークを言いに来たわけではあるまいな?」
天龍はナメック星でベジータと面識がある。ピッコロ大魔王との戦いで負った顔面の火傷はそのままだ。
恐らく、このベジータは何らかの方法で肉体を持った魂として地獄からカンバーと共に蘇り、その際にカンバーの悪の気によって「悪のサイヤ人」と化している。髪は黒いまま背中に着くほど長くなり、全身からは悪のサイヤ人特有の赤黒いオーラが湧き出ている。
「ベジータ…!」
神殿に避難したブルマが遠くから様子を窺う。
「だって倒さないと、どうせ究極ドラゴンボールの乗った宇宙船を追うんでしょ?」
「当り前だ。オレの目的は今も昔も変わらん…不老不死だ!そうすれば時間がかかったとしても、オレはこの宇宙の頂点に立てるはずだ…!」
「だからここで倒させてもらうわ」
「そいつは無理なことだ…見てみろ!」
ベジータはさらに全身の気を高め、放出された赤黒いオーラが飛び散るように周囲へ伸びていく。そして、なんとその悪の気の筋がシロナ、天龍、サタンに当たり、その全身を呑み込んだ。
「なんだ…これは…!」
「う…が、ガアアアッ!!」
「まさか、これって…!」
すると、その3人は突然頭を抱えて苦しみ出す。悪の気が全身に沁み込んでいくと、その気のあまりの熱さに目は裏返って白目を剥き、全身のいたる箇所の血管が浮き上がる。
「誰が貴様らなんぞとまともに戦ってやるか。サイヤ人の闘争本能がもたらず波動は軟弱なヤロウなら肉体も精神も耐えきれんだろうぜ」
「ぐ…何もできずに、負けるとは…」
サイヤ人の悪の気に侵され、全員がその場に倒れ伏したのを確認したベジータは、カンバーの気を探って彼の元へ向かおうとする。
「カンバーの野郎…あのブロリーとかいうサイヤ人に何故あそこまで執着する?まあいい…こんなちんけな星に馴染むようなサイヤ人など死んだほうがいい。さっさと殺してこちらも宇宙船を調達しなければ」
カチ カチッ…
「…なんだ?ッ…!!」
微かに、石と石がぶつかるような小さな音を聞いたベジータが振り返ろうと横を向いた瞬間、鼻の先を何者かの拳の一撃が掠めていった。
慌てて距離を取り、反撃の気功波を撃ち込むベジータ。しかし、すぐに爆炎と煙は内側から吹き飛ばされ、超サイヤ人2となったシロナが姿を現す。
「なるほど…貴様もサイヤ人だったか。だったらある程度は暴走を制御できても不思議じゃないな」
シロナが放つ黄金のオーラの内側にはほんのりと赤黒い悪のオーラが混ざっており、目の下には黒い隈取が浮かんでいる。本来は、悪のサイヤ人の素質がない者が悪の気を与えられるとあまりのエネルギーに自我が崩壊し暴走状態に陥るが、シロナの完成された精神力はその暴走を制御し、逆に悪の気を己のパワーとして変換したのだ。つまり、今のシロナは悪のサイヤ人と化したサザンカやベジータと同等の力を引き出していることになる。
「だが、完璧には順応できないらしいな…それも当たり前だ、サイヤ人の中でも特別の才能を持った者でなければオレのようにはなれんぞ」
どうやら、悪の気に完全に順応すると、ベジータのように気の本質や外見まで変化するらしい。
「いや、別にアンタみたいになりたくはないけど」
シロナはきっぱりとそう言うと、ゆっくりと構える。
「くっくっく…やる気か?いいだろう…このオレがたっぷりと遊んでやるよ」
まず仕掛けたのはベジータだった。素早い突きを繰り出し、シロナはそれに応じてさらに放たれる攻撃を弾き返す。そして一瞬で何発もの拳の乱打を繰り出すも、ベジータはその全てを正確に受け止め、にやりと笑うと手からエネルギー波を放出してシロナを吹っ飛ばした。
だが、シロナは体から煙をあげながらも再びベジータへ迫り、素早い拳の猛連打で畳みかける。
「ウラウラウラウラウラウラ…!!」
あまりの速度と密度で襲い掛かってくる拳の連打を前に、ベジータはそれを見切ろうと精神を研ぎ澄ます。最初の数発を腕で防ぐが、直後に腕が弾かれ、ボディに拳がめり込む。
(速いラッシュだ…!)
だが、ベジータはシロナの両腕を掴んで止め、拘束してのドロップキックを胸に食らわせて手を放す。
「ごほ…!」
苦しげに血を吐き出すシロナ。今ので肋骨が割れ、内臓にまでダメージがいった証拠!一切の容赦のないベジータは右手に気を込め、シロナ目がけて振り下ろした。
ブチッ!
何とか避けるシロナだが、ベジータの一撃はシロナの左の二の腕に命中し、気で強化された手刀が骨をへし折り、肉を裂きそのまま左腕を切断した!
鮮血が飛ぶとともに切り離された左腕が宙を舞い、ベジータはそれをキャッチする。シロナはもう片腕で傷口を押さえながら後ろへ距離を取る。
「…やったわね」
シロナは痛みに呻くことも無く、ベジータを睨みながらそう言った。
「悪いな、ひと思いに頭を潰してやるつもりが避けるもんで変なとこに当たっちまったな。どうだ?見栄えが悪いんでもう片方ももいでやってもいいぞ?」
ベジータは掴んでいたシロナの腕を気で消し飛ばし、下卑た笑みを浮かべ言い放つ。シロナにとって、このベジータという男は今まで自分が戦ってきた悪人たちと同じ貌をしている。邪悪さが滲み出ていて、己の都合のために他者を何とも思わず踏みつけにする者の貌だ。さらに悪質な者はそれを楽しんで行うこともある。
シロナにとって、目の前にいるベジータという男はその典型だった。
「いや…いい」
もがれた左腕の傷口から、パキパキと音を立てながら青い結晶が生える。それはシロナの元の腕を形作り、やがて腕そのものを再生させた。もう片腕も同様に青い結晶に覆われていき、それを見たベジータは驚いて眉を上げる。
「アンタの方をもっと酷い見栄えにすりゃ気にならないでしょ!」
シロナの顔が硬質化した結晶に覆われ、悪魔のような青い兜を形作る。悪の気を制御した超サイヤ人2の力を、さらに魔法の力で強化した。
同時に放たれた魔力の波動がベジータを襲い、思わず吹き飛ばされる。
「くっ…!ただのサイヤ人じゃなかったのか…!?一体何者だ…」
何とか静止し、顔を上げたベジータの目の前には既にシロナが迫っており、両者の目が遭う。刹那の時間が十秒以上も睨み合っていたようにさえ感じ、ついに振り下ろされたシロナの拳がベジータの顔面へ突き刺さる。
「なめるなよ!!」
だが、ベジータも反撃のカウンターパンチをシロナの顔面へ叩き込む。ドンと凄まじい衝撃が大気を揺らし、シロナの顔の結晶に亀裂が走る。
そのまま体勢を崩すかに思えたシロナだが、突然大口を開き、ベジータの拳に噛みついた。同様に結晶と化している歯が食い込み、血が垂れる。
「ふっ!」
ベジータは怯む様子もなく腕を引いて拳を引き抜き、シロナの腹へ強烈なアッパーをお見舞いする。背後へ向けて衝撃波が伸びていき、シロナは口を開いたまま悶絶する。その隙にベジータの回し蹴りが炸裂し、シロナは遥か彼方へ吹っ飛んでいく。
ドゴォン
その先には天界があり、シロナは神の神殿のテラスへ落下し激突した。
「シロナ!?」
近くにいたブルマが驚いて声を出す。
ビッ
ベジータは遠くから狙いを定め、瓦礫の上に倒れたままゆっくり起き上がろうとしているシロナへ向かって指先から見えない気を送り込む。それを受けたシロナの四肢が内側から膨らんでいき…次の瞬間にはボンッと音を立てて爆散した。
「ギャアアアアアッ!!」
シロナの悲鳴が響く。
「はははは!汚ねぇ線香花火だ!」
細かな肉片と血飛沫になって天界の白い床を赤く染めたシロナの四肢を見て、ベジータは愉悦の笑い声をあげる。そして、もう一発指先から気を放ち、シロナの胸を爆発させた。その光景にブルマやコナギたちは蒼白し、悪魔の如きベジータを見上げる。
「まあいい、ゴミは捨てておくとして…」
ベジータはシロナを放置し、カンバーの元へ向かう。その場から勢いよく飛び立った瞬間、足首に何かが巻き付いて動きを止めた。
「何だと…!?」
下を見ると、そこには両手足が無いものの背中から伸びる霊尾を使ってベジータの足にしがみ付くシロナが居た。目は煌々と黄色く輝き、霊尾はさらに伸びてベジータの腰や腕にまで巻き付いていく。
「いつもそうだ…」
シロナは小さく声を漏らす。
「すごいいい日が続くなって思って油断してると…いきなりクソみたいな事が起こって、全部台無しになっちまう…」
「何だ貴様は…何を言っている!?貴様のようなクズがここまでして死なない理由はなんだ?まさか、不老不死か!?」
「不老不死…?違うねぇ…!どんなクソみてーな事が起こっても、私にゃあ超楽しみにしてることがあるから死ねる気にならないんだぜ」
「一体なんだそれは」
不老不死への強い渇望があるベジータは、思わずその理由を問いてしまう。
「エッチ!好きな人とエッチしてみたいのよ!」
「…下品な女だ!」