…突如武舞台上へ乱入し、優勝賞品であった摩多羅隠岐奈の五つ星のドラゴンボールを奪い取った謎の女。
そして、そのドラゴンボールを奪い返そうと果敢に立ち向かっていく紅美鈴の胸を腕で一突き、貫いたのだった…。
「う…が…」
女は美鈴の体を地面に投げ捨て、後ろに明嵐を従えて空中に浮かびながらどこかへ去ろうとする。
「美鈴!」
落ちて来る美鈴を、霊夢が何とかキャッチする。観客席からレミリア達が駆け寄ってきて、一緒になって美鈴の顔を覗き込む。シュネックが様子を確認するが…。
「駄目じゃ…亡くなっておる。即死か…」
「そんな…!美鈴は妖怪よ、この程度で死ぬわけが…」
「むむむ…どうやら敵は一撃で我々を絶命させる術を持っておるらしい。膨大な気を一瞬にして体内に流されて、精神に強くショックを流されたか」
その様子を横目で見ていたカカロットは、拳を握りしめ、二人が去った方角を睨みつけて叫んだ。
「チクショウ!貴様ら、俺がぶっ殺してやるぜ!!来い、要石!!」
すると、どこからか独楽のように回転する要石が飛んできた。超神酒の材料の探しの中で、天界で比那名居天子から貰ったものだ。カカロットはそれに飛び乗ると、怒りの形相で明嵐たちを追いかけて飛んでいく。
「ちょっ、カカロット…私も行くわ!」
霊夢を後を追って行く。
「おい貴様ら…チッ」
さらにウスターまでもが飛んでいく。
「まてお主ら、敵は未知数だ!恐らくわしの見立てでは…」
シュネックが最後にそう呼びかけるが、最後まで言いかけた頃には既に三人は空の彼方へ消えてしまっていた。
「カカロット!」
追いついた霊夢とウスターがカカロットの隣に並ぶ。
「お前らも来たのか…美鈴を殺した奴は俺がぶっ殺してやる!」
「ええ…私もそのつもり、絶対に許さないわ」
「おい、アレを見ろ」
ウスターの指差す先に、小さなふたつの影が見えた。
三人はスピードを上げ、どんどんと影に接近していく。
「む、ここまでついてきたのか」
すると、謎の女が振り向いて言った。
「おう、キサマは許さんぞ。美鈴をぶっ殺しやがって!」
「カカロット!戦うなら気を付けて、アイツは一撃で私たちを殺せるわ!」
「そんなこと知るか!こっちはぶっ飛ばす事しか頭にないんだ!」
カカロットの体から怒りのオーラがビリビリと放たれている。美鈴は、かつて技を教えてもらったこともある。何度か共闘したこともあり、その戦友が殺されたともなれば怒るのも当然だろう。
「おい明嵐、お前は先にボールを持って帰れ。コイツ等は私が倒してやる」
「…わかったよ、姉さん」
明嵐は女の後ろからスーッとその場を離れる。その手にはいつの間にかドラゴンボールが握られていた。
「あ、待て!」
「おっと、お前たちはここで死ぬのだ」
が、追おうとする三人の前に回り込む女。
「私の名は
覇乙女蛇斑と名乗った女はそう言った。
「月からの…戦士?じゃあ明嵐も…どおりで強かったわけだわ」
「お前の目的は何だ?月の都とやらの戦士であるお前が、ドラゴンボールで何をしようというのだ?」
ウスターが問いただすと、蛇斑は答える。
「ふん、ボールを必要していているのは我々ではない…我々の王であるお方だ。それに…今はその目的を教えることはできない…聞きたくば、力づくでも吐かせてみるか?」
蛇班はズボンのポケットを探りながら、そう挑発の言葉を述べた。
「ほう、面白い」
ウスターが格闘の構えを取る。そして蛇班がポケットから取り出した物は、色のついたレンズの眼鏡にも見える機械だった。
それに見覚えがある霊夢とカカロットは、同時に驚いた。
「それは…スカウター…!」
「ふふふ…良く知っているな。これは対象の生命力や強さを数値にして表すものでな…月の都の技術で完成させた代物だ。これにより、お前たちの強さのレベルも分かってしまうという訳だ」
「どうやら、アンタが昔使ってたスカウターと同じような物が月の都にもあったようね」
月の都には地上とは比べ物にならないほどの技術力が有り、その技術力でスカウターと同等の性能を持つ機械を完成させたのだろう。
「我々月の民の中で戦闘力をあれほど自在にコントロールできるのは妹の明嵐だけだった。だから私は明嵐に武道会への潜入を命じたのだ…上手く実力を隠しながら戦えるとな。明嵐は相手によって手心を加えていたようだが、それのできないこの私がアイツのように甘いと思うなよ」
蛇斑はそう言いながら、頭にセットした測定器でカカロットたちの数値を計る。
「1340…800…270。一番弱いのは貴様だな、先に死んでもらおう!」
真っ先にカカロットに狙いをつけ、恐ろしいほどのスピードで襲い掛かる。片腕を振り上げ、一気に両断するかごとく、鋭い気を纏わせた腕を振り下ろした。
ガシッ
…しかし、カカロットはその腕の肘を掴んで攻撃を押さえていた。邪斑は信じられないと言ったような顔で狼狽える。そしてカカロットは紫色のオーラを纏うと、一撃、邪斑の顔面に拳を叩きこんだ。
「バ、馬鹿な…!」
後ろへ仰け反る蛇斑。わなわなと顔を押さえ、嫌悪感に顔を歪ませる。
「地上人に触られた!!汚い!汚い!汚い!!」
必死に袖で顔を拭う。
「こうなったら、我らの聖なる月光を浴びてみるがいい!!」
蛇斑の全身から、まぶしい光が照射された。それを浴びた霊夢とウスターは、自らの体に異変を感じる。
「何だこれは…!」
「ち、力が抜ける~…」
霊夢とウスターは体に力が入らず、その場でへにゃりと倒れこむ。かろうじて浮かんでいる状態だ。
「そうだろう!満月の夜は地上の動物や妖共が特に力をみなぎらせるという…それは満月の時のみ月光に含まれる『ブルーツ波』と呼ばれる数値が1700万ゼノ数を越えるからだ。しかし、その数値がおよそ三倍の5000万ゼノを越えた時、逆に生命は疲労感や倦怠感を感じるのだ!…な!?」
しかし、蛇斑は目を見張った。地上の生命を動けなくさせる光を浴びせても、カカロットだけは何事もないかのように要石の上に立っている!
「何故だ、これだけのブルーツ波を浴びて平然としていられる地上の民など見た事ない!!」
「そんなこと知るか!俺はサイヤ人なんだぜ!!」
問答無用で飛びかかっていくカカロット。肘打ちを蛇斑の腹に当て、顔に回し蹴りを食らわした。
その時、わずかの間だけ上昇した測定器の数値を見た蛇斑は気付いた。
(そうか…こいつは攻撃の一瞬のみ何らかの方法で気を高めているんだ!明嵐と同様に、地上の連中も戦闘力をコントロールできるという訳か)
「もういい、撤退する…!」
蛇斑は片手に溜めた小さなエネルギー弾を握りつぶして炸裂させた。すると、辺りを覆い尽くす閃光と共に濃い煙を発生させ、完全に気配を消した。これも月の技術で作った道具で、この煙は完全に外敵との気配を遮断するのだ。
「くっ、逃げられたか…」
「追いかけるのか?」
とウスターが聞く。
「ヤツが逃げる先は月とやらか…しかし、俺たちに行けるのか?」
「行けるわよ、月の都」
「本当か?」
「ええ、何回か行ってるもの。槐安通路ってところを通ればすぐ行けるわ」
「…じゃあ、行くか」
三人は霊夢の後をついて槐安通路と呼ばれる場所をひたすらに移動した。その異空間の空には月が浮かんでおり、そこに向かって飛んでいけば自然と月の都へたどり着けるらしい。
そして三人は、その場所で今度の敵の強大さを思い知ることになる…。