もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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やっぱり東方要素も欲しいので、新作の獣王園のキャラクターを登場させます。


第420話 「ウォーミングアップ」

一方、地獄。

霊夢が活動できる異次元空間内に退避してから、二日以上が経過していた。だが、気を失ったカカロットはまだ目を覚まさない。

 

「カカロットはアイツの強すぎる邪念を浴びた所為で昏睡状態になってしまっている…こりゃ多分元凶を倒さない限り元には戻らないわね」

 

カカロットは時折苦し気に唸りながら胸や喉を押さえたりしてもがき、また深い眠りに入るのをずっと繰り返している。かといって今の霊夢であってもジャネンバの力をどうすることもできないし…

 

「いつまでもここに引きこもってるわけにもいかないか。んでも、誰か来てくれないかしら…」

 

ため息交じりにそう呟いた、その時。

 

「お呼びかしらん?」

 

真後ろから突然誰かの声が響き、霊夢は飛び退きながら立ち上がった。

 

「…あら、ヘカーティアだっけ?」

 

そこにいたのは、あの地獄の女神ことヘカーティア・ラピスラズリであった。相変わらず奇抜なファッションで、赤い髪をかき上げながら霊夢を見る。

 

「そっか…赤い髪のアンタは異界だったら自由に出入りできるんだ」

 

地獄のどこかに存在する本体の他に三つの体を持っているヘカーティア。そのうちの赤髪の分身は異界を自由に出入りできる。その異界とは幻想郷を含めた様々な結界で区切られた異世界が各当するのだが、超夢想天生となった霊夢が作った異次元空間でさえもそのひとつになってしまうらしい。

 

「いやー、サイケデリックな結界の所為で本体の動きが封じられちゃってねぇ。これはやっぱまずいと思って、あなたに頼ることにしたのよ。でもカカロットはどうやら目を覚まさないようね」

 

カカロットの顔を覗き込むヘカーティアは、かつてカカロットにもちょっとした技を教えたりしたことで面識もある。

 

「実は私もここから出られなくてね…黒幕のジャネンバ…だったっけ?アイツに目ェつけられてて、出た瞬間にやられちゃうわ」

 

「だったらここから直接行っちゃいましょうか、五行山まで。貴女に頼みたいことがあるって奴がいるのよ」

 

「五行山って、確か…」

 

次の瞬間、霊夢とカカロット、そしてヘカーティアの体は一瞬にして地獄から消え失せ、五行山へと移動していた。

 

「あ、きたきた!」

 

そこには大きな八卦炉とそれにかけられた鍋、その横には巨大な姿の女性が立っていた。赤と白色の中華風の鎧を纏ったこの女性は、間違いなく八卦炉の管理人であり、太上老君ことアンニン様だ。

 

「アナタが博麗霊夢だね?私はアンニンって者よ、この八卦炉の管理人をやってるわ。あらま、担いでるのはもしかしてカカロットかしら?前にも会ったことがあるんだ」

 

アンニンはこちらへ歩いてくると同時に小さくなって普通サイズに戻り、霊夢が肩に担いでいるカカロットを指差してそう言った。

 

「ちょっと色々あって目を覚まさない状態なのよ。それで、私に頼みたいことって?」

 

霊夢はカカロットを地面の上に寝かせながらそう尋ねる。するとアンニンは八卦炉の奥に目を向け、その陰に潜んでいた何者かを手招きで呼び寄せる。

 

「いやいや、用があるのはあそこにいる者なんだ。ええと、名前は確か…」

 

豫母都日狭美(よもつひさみ)、です」

 

ぬっ、といつの間にか近くにいた女性が呟いた。豫母都日狭美…今の霊夢にとっては久しい記憶であるが、過去に幻想郷の地獄で戦ったことがある。黒髪に、帽子で目が隠れ、紫色の中華風のワンピースに手足は黒い長手袋とブーツというスタイルはその時から全く変わっていない。

 

「ああ、アンタか。それでどうしたのよ?」

 

「久しいわね、博麗霊夢…死んだと聞いたからてっきり地獄に来ると思ってたけど来なかったみたいね。用というのはね…どうか、頼みます…残無様を助けてくださらないかしら?」

 

残無という名前もいつぶりに聞いただろう。

 

「実はね、今本場の地獄を荒らしているジャネンバ…奴はどうやら日白残無という鬼を媒体として顕現したらしいのよん」

 

と、ヘカーティアが付け加える。

 

「まさかあの鬼が?」

 

残無…日白残無(にっぱくざんむ)とはかつて幻想郷の地獄の鬼たちを取り仕切っていた人鬼であり、やはり過去に霊夢と戦ったことがある。

 

「もちろん幻想郷が無くなったことは知ってるわよね?だから幻想郷の地獄も本場の地獄と統合されたんだけど、その時に残無も本場の地獄に移っていたのよ」

 

「残無様はジャネンバの元となった邪念の塊がもたらす影響に対処しようと奮闘された…しかし、結果は邪念に取り入られてしまい、ジャネンバへと変わってしまったわ…」

 

残無を慕っている日狭美は元気のない声色でそう言った。

話を聞き終えた霊夢は、胡坐をかいて座りながら目を閉じて考え込む。

 

「ヘカーティア…ひとつ聞きたいわ」

 

「何かしらん?」

 

「この五行山ってあの世とこの世、どっちにあるの?」

 

「どっちかっていうとあの世に近いわね」

 

「じゃあヘカーティア、アンタは他の誰かをあの世からこの世へ送ってあげることってできる?例えば、生きたまま地獄に来た人間を現世へ帰したり」

 

「もちろんできるわ。死者は閻魔大王の許可がないと無理だけど、私は地獄の女神よ?地球の神と対を成すんだからそれくらい簡単」

 

それを聞くと、霊夢はまたも少し何かを考え、立ち上がる。

 

「わかった。じゃあヘカーティア、悪いんだけど急を要すってことで頼んでもいいかしら」

 

「なに?」

 

「地球の神殿まで行って、そこにいるブルマって人間に伝えてほしいの。『必ず帰らせる』って、その一言だけ」

 

「了解よ」

 

「よかったわ…残無は必ずジャネンバから救い出す。日狭美とアンニンさんはカカロットを見てて」

 

「わかりました…」

 

「霊夢、ジャネンバは死者の邪念の塊よ。その邪念の根底には罪悪感の他に、死ぬ時に抱いだ後悔も含まれていると思うわ…そこを上手く利用できれば…」

 

「ありがとうヘカーティア。じゃ、みんなお願いね!」

 

霊夢はそう言い残すと、全身に霊力を纏い、全速で地獄へ戻っていった。

界王星へと続く蛇の道を横断し、黄色く分厚い雲を突き抜けて地獄の大地を見下ろす。相変わらずジャネンバの作ったカラフルな結界がゴロゴロと空中にも地面の上にも転がっており、異様な光景となっている。

霊夢はすぐにジャネンバの気配を感じた。

 

(いや、違う…アレはジャネンバではない…)

 

ヘカーティアたちは気付いていなかったようだが、今のジャネンバは厳密にはジャネンバではない。その内側に、全く別の何者かが潜んでいる。霊夢はそれに感付いていた。

 

「…いた」

 

思わず息を呑む。

ジャネンバは赤い結界玉の上で片膝を立てて座っていた。既に霊夢の接近に気が付いており、ニヤつきながら十字の線が刻まれた目でこちらを見上げていた。

霊夢はその目の前に降り立ち、悪鬼を睨む。ジャネンバは立ち上がり、尻尾で結界玉を叩いて破壊し、ゆっくりと地面に足を付ける。

 

「来ると思っていたぞ、確か…ブロリーの記憶によれば、博麗霊夢か。こちょこちょとくすぐったい気配を出していたのは君だったか」

 

囁くような冷酷な声がジャネンバの口から発せられ、聞いただけで背筋にそっと刃物を添えられたような気分になり、鳥肌が立つ。

 

「アンタ、誰?ジャネンバってのじゃあないんでしょ?」

 

ジャネンバは少し驚いたように固まるが、またすぐに笑みを浮かべる。

 

「ふふふ…そうだよ、オレの名はベビー。今はこの体を乗っ取っている…寄生しているんだ」

 

(寄生…なるほど。でもなんで私の名前を…)

「悪いわね、どちらにせよ私はジャネンバを倒せって言われて来たのよ、アンタごとぶっ飛ばすけどいいかしら?」

 

「ん…?驚いた…どういうつもりかは知らんが、君じゃオレには到底敵わないと思うが…」

 

「そんな事は戦ってみなきゃわかんないでしょ」

 

霊夢は超夢想天生に変身し、全身の気を最高に開放する。それを見たベビーは口を釣り上げて笑みを浮かべ、足を軽く開いて構える。

 

「ならば軽めのウォーミングアップといこうか!」

 

(敵わないってことくらいは理解(わか)ってるわよ…!でもここでコイツ止めてなきゃ…)

 

何か考えのある様子の霊夢は、勝てないとは分かっていてもベビーに挑むしかなかった。そう、霊夢の異様によく当たる超人的な勘が告げているのだ。とにかく時間を稼いで、後から来る何者かを待て、と…

 




ジャネンバベビーの形態についてですが、これまで各媒体で登場しているベビーの形態を含めて自分なりに段階を纏めてみました。

ベジータベビー→スーパーベビー→スーパーベビー2
ジャネンバベビー(今ここ)→スーパーベビー:ジャネンバ(ヒーローズ)
トランクスベビー(未登場)→スーパーベビー:トランクス(ヒーローズ)
ハッチヒャックベビー(未登場)→スーパーベビー:ハッチヒャック(ヒーローズ)

基本的に、寄生した体に黄色いウイングやベビーの目を覆うカバーグラスなどが現れているとスーパーベビーになっていると解釈します。つまりヒーローズに登場しているジャネンバベビーとハッチヒャックベビーは便宜上そう呼んでいるだけで実際にはスーパーベビーに各当する形態である、ということです。
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