もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第423話 「いっちょかましてやりますか」

ここは一体どこだろうか。死んだ者の魂が行き着く先?例えば、天国か地獄?

いや、たぶんそれはないな。閻魔大王って人が身動き取れない状態になってるって話だから、きっとここは何もない無の空間?

 

「ははーん、読めたわ。こう…そうね、ここで誰かと話してから私はあの世へ行くんだわ」

 

何もない空間でシロナはひとり呟き、じーっとその場で立ち尽くす。

 

「…誰も来ない…。ちぇっ、じゃあもういいよーだ!私ここでずっと寝てるから」

 

不貞腐れ、その場で寝転ぶシロナ。だが、突然首根っこを掴まれ、無理やり起き上がらせられる。

 

「おい寝るな」

 

正面に現れたのはレイムだった。

 

「レイム…?なんでアンタがここに…」

 

「ふん…最期に見るのが私の顔で残念か?だったら私も嬉しいよ」

 

シロナはその場で座り込み、俯く。

 

「そう。じゃあ一緒にあの世へ行こうか」

 

「…は?お前は…奴らに勝とうとは思わないの?あのベジータという男に散々いたぶられて…」

 

「もう私はいいんだ…生きててやりたいこともなくなったし、私の人生なのよ、私がどこで終わらせようが自由よ」

 

だが、レイムは引かずにシロナに囁きかける。

 

「お前は一度でも生きてて幸せだと感じたことがあるか?言っていたでしょう、良いことが続くと思って油断してるとクソみたいなことが起こる、と。ならば今度こそそれを打破しようとは思わないか?」

 

「…もう思わない。好きだった人にもあんなフラれ方して…こんな惨めな気持ち引き摺って生きてくなんて御免だし。それに…私の服、無くなっちゃったし」

 

「服?」

 

「私が着てた黒ジャケット…あれは父ちゃんが遺してくれた道着を、穿いてた赤いショーパンはお母さんの巫女服をもとにそれぞれ仕立てたやつだったの。それももう消し飛んじゃったし…もう私はいいんだ…」

 

「…そんなにあの両親が恋しいか?」

 

「恋しいよ…」

 

レイムは小さく息をつくと、自分もその場にしゃがみ込み、シロナと目線を合わせる。

 

「私が地獄から出てからすぐにお前に接触した理由がわかるか?」

 

シロナは少し顔を上げる。

 

「お前を支配して吸収出来れば唯一無二の存在へと進化できると確信していたからだ。地獄で考え付いた…だが、お前が想像以上に強くなっていたので難しかったがな」

 

「なんで?」

 

「お前に倒されるとき理解した…私は幻想郷そのものの写し鏡だ。この体にはかって幻想郷にいた戦士に加え、数多の妖怪や生物の遺伝子が刻まれている。だから、正当な博麗の巫女であるお前の力を私のモノにできれば、つまり過去に誰も見たことのない未知数の能力が手に入ると踏んだのだ」

 

以前、レイムが倒されるとき、残った九本目の尻尾が消える時に幻想郷の様々な風景を映し出していたことを思い出す。レイムを造ったDr.ウィローという男は、確かに幻想郷中のあらゆる妖怪や生き物の遺伝子を組み合わせていた。

 

「それは逆もまた然りだ。お前が私を吸収すればいい。あとはここでお前が了承するだけで済む」

 

「…いや、いいや。そんなのになりたくない。今まで何人も私のために命を使ってくれた…魔理沙、パチュリー、ゴルゴンさん…ヒロイシさん、バルバルスさん、ビーデル、アリーズ…スカーも。そこにアンタまで加わったら重すぎる」

 

「…いいか、シロナ。私には今お前が言った奴らの気持ちがわかったぞ。きっと全員こう思っていたに違いない。『この子はこんなに頑張っている、自分も頑張らなくては』。お前はいつでも燃えている…他人はお前に火をうつされて燃え上がる。そしてその火が再びお前に還ってくる。皆、お前に貰ったものを返しただけだ」

 

「別に返さなくたっていいよ…あげるつもりがあったんじゃないし」

 

そう言った瞬間、レイムは尾を使ってシロナを引き摺り立たせる。

 

「お前の所為なんだよ、シロナ。お前が友達になってあげてもいいなんて言ったから私がここまでしてやってるんだ。なら私は返さない、“交換”だ、私はお前の力になって助けてやる。代わりに、お前は…これからの人生を楽しんで生きろ」

 

「それって…」

 

「いいのか?ダメなのか?」

 

「…そう言われたら、受け入れるしかないよね」

 

顔を上げたシロナの黒い瞳は、真っすぐにレイムを見返している。レイムはかつて自分の倒したあの時のシロナと同じ目に戻ったと感じ、シロナの体を掴んでいた尾を引き寄せ、そのまま抱きしめた。

 

「レイム…?」

 

「お前の言ったとおりだ。私はずっと友達が欲しかった…だから嬉しかったぞ。いいか、これは約束だぞ…私のすべてをやる。だから今度はお前が────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「レイム?」

 

目を覚ましたシロナはゆっくりと立ち上がった。ベジータとの戦いで損傷した体は元通りになり、傷どころか血痕ひとつない。

その体にはレイムが身に着けていたものと同じ巫女服と黒いズボンがいつの間にか着せられていた。だが、レイムのような青い巫女服ではなく、博麗の巫女の紅白カラーのものだ。

ふと前を見ると、そこにもやはりレイムはいなかった。体も、血痕も存在しない。まるで初めからレイムという存在がこの世になかったかのようだ。

 

「ふふっ、あはははは…!」

 

突然笑いだすシロナは、なにも頭がおかしくなったわけではない。異様に軽く感じるその体を揺らし、地面についてもなお引き摺るほど長い紫色の髪の毛がふわりと靡く。何故か嬉しくもあり、楽しいのだ。

理由は不明だ。先ほど一度はベジータに殺され、レイムは全てを自分に与えて消えた。ただ、なぜか今この状況に至れたことが愉快で仕方がない。

 

「さーて、それじゃいっちょかましてやりますか!」

 

 

 

 

「ぬううう…!!」

 

「ハァァァア…!!」

 

両手を掴み、押し合いを続けるカンバーとブロリー。ブロリーは既に伝説の超サイヤ人2へと変身しているが、この間の戦いのときのように全くカンバーには通用しない。

 

「どうした?伝説の超サイヤ人の力は、やはりこれっぽっちか?」

 

「くっ…!」

 

遠く力が及ばず、歴然とした実力の隔たりがあることはブロリー自身も理解していた。カンバーはその気になれば一撃で自分を消し飛ばせるほどの力を持っている。だが、自分がこうして今出せるすべてのパワーをぶつけている間だけは、カンバーはそのレベルに合わせて戦っている。

もちろんそれは屈辱以外の何物でもないが、少しでもこの男の興味を自分へ向けさせておく必要がある。

 

「おいカンバー!こっちは片付けた!グズグズしてないで貴様もケリをつけろ」

 

と、そこへベジータが現れ、カンバーに声をかける。

 

「黙れ!オレの戦いの邪魔をするな!」

 

カンバーはそう言いながらブロリーを頭突きで吹っ飛ばし、ベジータを横目で睨んだ。

 

「邪魔をするならキサマから殺すぞ。オレが満足するまでキサマはザコを掃除していろ」

 

そして、カンバーは遠くへ見えなくなったブロリーを追いかけてその場から消えた。残されたベジータは歯を噛み締め、額に血管を浮かばせながら苛立ち、全身にオーラを纏う。

 

「あの野郎…いい気になりやがって!オレから殺すだと…?バカ言え、いずれ貴様もぶっ殺すのはこの俺だ…!」

 

ベジータは沸々と怒りを滾らせながらも、とりあえず今来た場所を戻ることにした。神の神殿へ戻り、そこにいたはずのブルマたちを殺すつもりだ。

 

 

 

「本当に、博麗霊夢がそう言ったのね?」

 

ブルマはヘカーティア・ラピスラズリへそう確認した。五行山で霊夢からの言伝を預かったヘカーティアは、青い髪をした地球の分身を使って神の神殿へ訪れてブルマに伝えていた。『必ず帰らせる』、と。

 

「ええ。貴女に伝えて頂戴とだけ頼まれたわ」

 

それを聞いたブルマは、すぐにサザンカのことを言っていると勘付いた。

 

「なるほど…ということは、シリアル星のドラゴンボールを使う必要が無くなったって訳ね。だったら、スカッシュたちにそれを伝えて引き返してもらわなきゃ。ああ、でも…これ届くまでに多分1日はかかるのよね…向こうの移動速度が速すぎるから電波が追い付かないのよ」

 

そう言いながらポケットの中を探るブルマだが、次の瞬間、突然神殿が爆発を起こした。同じく神殿にいたシュネックやミスターポポ、コナギとグラジアらも衝撃で吹っ飛ばされる。

 

「くっ…何かやばいのが来たわ!」

 

ヘカーティアも何者かの来訪を察知して汗を流す。立ち上がったブルマは、使おうとした通信端末が壊れてしまったのに気付いた。

 

「…ベジータが戻ってきたのね」

 

吹き飛んだ天井を見上げると、そこにはベジータがいた。

 

「どこかで見た覚えがあると思っていたら、いつぞやの地球人の女か」

 

ベジータはブルマを見てそう言った。かつて、ナッパと共に地球へ来襲したベジータらを迎え撃つため、ブルマは彼と戦った経験がある。

 

「シロナはどうしたのよ!?まさか…」

 

「オレが殺してやったのさ。安心しろ、次は貴様らだ」

 

ブルマも精神と時の部屋での修行などを経てあの時よりもずっと強くなった。しかし、ベジータはそれ以上だ。

シロナが死んだ…ブルマはその事実を受け入れず、ベジータを睨み返す。

 

「あの子が死ぬはずないわ」

 

「いいや、死んださ。どうやって殺したか教えてやろうか?」

 

「うん、コイツったら非道いのよ?私の股に手を当てて気功波撃って串刺しにしたんだから」

 

「そういうことだ。どうやら下品な未練があるようだったんでな、すぐ成仏できるようにそれを絶ってやったまでだ」

 

「でもコイツ相当な変態野郎よ?いくら殺すためとはいえ私のアソコに手を…」

 

いやいや、待て待て待て。ブルマは顔をしかめ、目をこすり、ウーンと唸りながら額に手を当てる。少しの間沈黙が訪れ、ポンポンポンと間の抜けた空気が流れる。

 

「えっと…ちょっと待ってちょうだい。シロナを殺したって?」

 

「そうだと言ってるだろ?」

 

「私コイツに殺された!」

 

横にいたヘカーティアも、瓦礫の陰から様子を窺っていたシュネックやコナギたちもギャグ漫画のキャラクターのように口を四角にして唖然としている。

 

「シロナもベジータに殺されたのよね?あの…だったら、そこにいるのは何?」

 

ベジータもようやく何かがおかしいと気付き、ゆっくり真横へ振り向いた。

 

「よ!」

 

目玉が飛び出し、舌が渦を巻くほど驚くベジータ。気が付いたら隣にいたシロナは、これまでとは違う装いに比べ、その髪は紫色に染まるとともに身長の二倍以上はありそうな長髪になり、逆立つことなく風に揺れている。瞳は赤く、まるで肉食獣のような細い縦長の形状。

 

「ほい」

 

そして、何の前触れもなく放たれたシロナの拳が、ベジータの顔面へ深く突き刺さった。

 

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