もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第424話 「いい加減にしたらどうだ」

「ほい」

 

何の前触れもなく放たれたシロナの拳がベジータの顔面へ深くめり込んだ。ミシミシ…と音が鳴り、次の瞬間にベジータはビュンと物凄いスピードで吹っ飛ばされた。

 

「シロナ!無事だったのね!?」

 

「まあね」

 

「うわ!?」

 

上空にいるシロナへ向かって声をかけたはずだが、いつの間にか後ろにいたシロナに返事をされて驚くブルマ。

 

「アンタよく聞きなさい、実は事情が変わったのよ。シリアル星のドラゴンボールを使う必要がなくなったかもしれない…それをスカッシュたちに知らせないと」

 

シロナは通信機が壊れているのを発見する。

 

「オーケー!んじゃ私はベジータを倒すから…ブルマさんはみんなを連れて家に戻った方がいいかもね」

 

「ええ、そうするわ」

 

「シロナ…その姿は…」

 

杖を突いたシュネックが壁の影から現れ、シロナの姿を眺める。完全に紫色に染まった髪は人間とは異なる魔女と化したことを意味しており、溢れる魔力によって髪の長さまで変化している。超サイヤ人とは全く別の力を持った変身であり、その気はシュネックにとっては幻想郷そのものと間違えてしまいそうな懐かしさに満ちていた。

シロナはぐっとシュネックに親指を立て、吹っ飛んでいったベジータを追っていった。

 

 

 

 

 

一方。

 

ブロリーは額から血を流しながらビル街のど真ん中へ激突する。その際の衝撃で道路がめくれ上がり、自動車が次々と横転し建物が傾く。

 

「はぁ…くそっ…!?」

 

頭を押さえながら起き上がったブロリーに、追いかけてきたカンバーが迫る。そして、バリバリと赤黒い雷のような気を纏う拳を振り上げ、勢いに任せて叩き付けた。

更なる特大級の衝撃が降りかかり、さながら流れ星の衝突のようなエネルギーが広がると街が水面のように揺れ、一瞬にしてクレーターが街並みを呑み込んだ。

 

「…避けたか」

 

すり鉢状のクレーターの中心で、カンバーは拳を地中から引っこ抜いて上空へ逃げたブロリーを見上げる。

 

「すまん…」

 

ブロリーは無残な荒野へと変わり果てた街を見て呟く。クレーターの範囲外であってもビルは倒壊し、吹き荒れた砂に覆われている。恐らく、今のでほとんどの人間が街から消えただろう。

 

「キサマのパワーはそんなものではないだろう?あのサザンカとかいう娘も覚醒したのだ…キサマもなってみせろよ、ヤツのような…赤いサイヤ人に…!!」

 

カンバーは興奮したように全身を震わせていた。どこか、遥か彼方から…この世とあの世の境目を貫通して微かに感じるサザンカの気がカンバーと共鳴し、彼女に変化が訪れたことを知らせていた。それこそがカンバーが求め続けた、超サイヤ人の極致であり原始の姿であろうことは想像に難くない。

ならば、現代においての伝説のサイヤ人であるブロリーも、そのような極致に至れる可能性を秘めている。カンバーはそれをどうしても見たくなっていた。

 

「ハアアア!!」

 

ブロリーは右手に生成した気弾を握り締めて圧縮し、カンバーに向けて投擲する。が、カンバーは気合と共に黒いオーラを纏うだけでそれを打ち消し、ブロリーを睨む。

 

「そんなくだらない攻撃をしている暇があるなら…さっさとなれ…赤いサイヤ人に!」

 

当然ブロリーには何のことだかわからない。

 

「ならないのなら…もういい。ここで死に晒せ」

 

カンバーは両手に赤黒いエネルギー弾を作り出し、それを融合させて巨大な気弾を生み出す。空中にいるブロリーへ狙いを定め…次の瞬間、一気にエネルギー砲を発射した。

一瞬で視界いっぱいに広がった赤黒い波動を前に、ブロリーの動きが硬直する。そして、それはブロリーの体を包み、そのまま宇宙空間にエネルギーの筋をくっきりと浮かばせるほどの規模となって伸びていった。

 

パラパラ…

 

空に浮かんでいた雲が消し飛ばされ、巻き上げられた土塊やコンクリートの細かな破片が雪のように降り注ぐ。それらもカンバーの闘気に触れた瞬間に消滅する。

カンバーの視線の先には空中でこと切れたブロリーがすでに力なく落下を始めており、髪の色が黒に戻り、体も縮んでいき元の姿に戻る。

 

「…つまらん」

 

そんなブロリーを目で追うカンバーはがっかりしたように眉を顰め、再び右手に気弾を生み出す。そしてそれを発射し、ブロリーの腹へ命中させると同時に炸裂させ、発生した衝撃と気の暴風が彼の体を遥か彼方へ吹き飛ばす。

 

 

 

 

 

「タコさん!もう一個ケツァルコアトルの通信機あるわよね!?」

 

カプセルコーポレーションの所有するラボへ大急ぎで戻ってきたブルマ。ここにはコナギとグラジア、シュネックとミスター・ポポも一応連れてきた。

 

「うわへへ…ブルマさんお待ちくだされ…ここにありますじゃ」

 

かつてパラガスが引き連れていたタコのような姿をした宇宙人科学者は、飛び立った宇宙船専用の通信機をブルマに差し出した。

 

「ありがと!えっと…あ、もしもし?これが届いてたら、至急地球へ引き返してちょうだい。どうやらシリアル星のドラゴンボールを使う必要が無くなったみたいなのよ」

 

そのような音声を送信し終える。やはり宇宙船の速度が速すぎること、それから十分な通信設備を設ける時間が足りなかったことから、向こうの宇宙船に今の音声が届くのに1日ほどはかかってしまう。

 

「まあでもこれを聞いたらすぐ引き返すでしょう…無駄になったけど仕方ないわね…」

 

ドォン!!

 

「うわっ!?ちょっとなに?…まさか」

 

嫌な気を察知したブルマが急いで研究所の外に出ると、そこにはちょうど小さなクレーターが出来ており、中心には気絶しているブロリーが横たわっていた。

 

「ブロリー…!あんた…」

 

ブルマは慌ててブロリーに駆け寄る。気はかなり微弱なまでに減っており、心臓の鼓動も小さくなっている。

 

「そこをどけ、女」

 

と、そこへブロリーを追ったカンバーが現れる。強大な威圧感を湛え、ブルマとブロリーを見下ろしながらゆっくりと降り立った。

 

「もうその男にサイヤ人の戦士としての価値はない。弱いサイヤ人は全てオレが消し去ってやる…」

 

カンバーの体から立ち上る赤黒い悪のオーラが分離し、人間ひとりくらいなら難なく握り込めてしまえそうな大きさの手の形へと変じる。それを操作し、手の中に一発の気弾を作って発射しようと構える。

さすがのブルマもやばいと思い汗をかき、それでも逃げる暇も抵抗することも出来ないと悟る。

だが、その時…

 

「オイオイオイ…まあ少しは待とうぜ」

 

カンバーの背後へ何者かが現れ、声をかけた。ゆっくりと振り向くと、そこには彼にとって見た事のないサイヤ人が居た。

 

「キサマは…サイヤ人だな」

 

「俺の名はターレス。会えて光栄だぜ…ご先祖さんよ」

 

ターレスに続いて、さらにラディッツ、ナッパ、パラガスまでもが現れる。ブルマにとっては以前面識があり、彼らがフリーザとの戦いに赴くのをサポートしたこともある。

 

「あなたたち…もしかして、地獄から蘇ったってこと!?」

 

「ああ、本当は出てくる気などなかったのだがな…我々は皆、突然頭の中に流れ込んできた誰かの記憶に導かれた…とでも言っておこうか」

 

と、パラガスがブルマに言った。

 

「誰かの記憶…?」

 

「騒ぎが起こってるのは分かってたんだがよ…」

 

「オレたちは一度死んだ身…ブロリーやカカロットの娘どもに任せようとしてたのだが、急にあんな記憶見せられて、ブロリーがヤバそうだってんだから相談して来てやったのだ」

 

ナッパとラディッツも、ターレスやパラガスと同様に謎の記憶を見せられて地獄から現世へやってきたらしい。

 

「その記憶っていったい…?」

 

ブルマが尋ねると、ターレスが答える。

 

「自分以外の5人のサイヤ人にパワーを分け与えられ、未知の戦闘力…まさに神の如き力を得る記憶だ。そして、そこにいるカンバーという古のサイヤ人と戦っていた」

 

「だから、我々は…ブロリーに力を与え、サイヤ人の神の力を引き出すためにここへ来た」

 

それを聞いたカンバーは少しだけ反応を示した。だがすぐに眉間に皺を寄せ、歯を噛み締めて怒る。

 

「ふざけるな!キサマらのような弱き者が何人集まろうとも…サイヤ人の神になど至れるはずがない!!かつてヤツもそうだったように、半端で軟弱なサイヤ人にしかならない!己の力のみで極限を超えたその先に到達してこそ、真の強者と成り得るのだ!!」

 

その通りだ…あの時、初めて自分と対等に戦えたあの男…ヤツが仲間のサイヤ人の死の間際のパワーを吸収して紅きサイヤ人と化したことは想像がつく。だが、そこまでしてヤツが強くなったとて、所詮は砂上の楼閣だ。だからたかが他人の乱入如きで隙を晒す羽目になる。

オレはオレが満足できる戦いを求めて戦い続けた。「オレと戦え」…だが結果、病気などというくだらない理由で死んだ。だが、こうして蘇った今、オレは再び戦いを求める。ヤモシ…邪魔が入ってオレに殺された癖に、なぜ死ぬ間際、満足した顔を浮かべた?

オレには無くてキサマが感じていたものは一体なんだ?

 

「…キサマのような、”満足のゆく死”とは何だ…?」

 

「あん?」

 

ターレスが聞き返す。

 

「独り言だ。だが…よかろう、他者の力を使って強さを求めるなど…同じサイヤ人として唾棄すべき行為だが、今だけは許そう。ただし、力を分け与え終えたら、成功の可否に関わらずキサマらを即刻皆殺しにする!」

 

「へへへ、ああいいさ…どの道そのつもりだったからよ…」

 

「ちょっと待って…その記憶ってやつだと、5人が1人に力を与えたんでしょ?なら1人足りないんじゃない?」

 

ブルマがそう言った。

 

「確かにな。だからオレたちは、ブルマ…君を探そうと思っていた。何故なら、君が身籠っているお腹の子供を入れれば人数が揃うからな」

 

パラガスはそう言いながらブルマを指差し、小さく微笑んだ。

そういえばそうだった。パラガスはブロリーの父親だ。と、いうことはつまり、今いるこの子の祖父にあたるということになる。

 

「あ、え、あー…知ってたの?」

 

「あぁ。地獄の大穴から様子を窺っていてな…天界での話は聞いていた」

 

「おいパラガス、ちゃっちゃとやるぞ」

 

ナッパがパラガスを急かし、彼らは倒れているブロリーを取り囲って構える。

ターレス、ナッパ、ラディッツ、パラガス、そしてブルマとお腹の子、計5人のサイヤ人の気が共鳴し、みるみるうちに高まって大きくなっていく。彼らの体から噴き出していた気がだんだんと性質を変え、黄金に輝き出し、それがブロリーの体へと流れ込んでゆく。

 

「…」

 

カンバーはその様子を眺め、それでも右手にはいつでも彼らを消し炭に出来るほどのエネルギーを込めている。

 

「おおっ…!」

 

そして、サイヤ人たちの気が高まりに高まった結果、なんと彼ら自身が超サイヤ人へと変貌を遂げた。ターレスはやはりカカロットにそっくりな姿の超サイヤ人で、頭髪がないナッパは髭と眉毛が金色になり、ラディッツは腰まで届く髪が金色になってやや持ち上がる。パラガスは髪型は特に変化がないが、やはり髪と髭といった毛が金色に輝いている。

それに加え、サイヤ人ではないブルマでさえも胎児の影響を受け、同様に金髪緑眼といった超サイヤ人の特徴を発現させていた。

 

「なんだこのパワーは…!これが超サイヤ人ってやつか!?」

 

「どうやらそうらしい…だが、今はこの気をブロリーへ送ることだけ考えろ…!」

 

彼らはサイヤパワーをひたすらにブロリーの注ぎ込み続け、最後の一滴まで惜しまず全てを託す。

すると次の瞬間、黄金の気がうねり上がり、激しく明滅した。光の玉が周囲にいくつも発生し、弾けては再び発生し、弾けては発生する。倒れているブロリーはそんな凄まじい黄金の闘気に包まれていた。

気を全て送り終えたターレスたちは元の姿へ戻り、汗をかいて息を切らしている。そして、しばらく溢れんばかりの黄金の闘気を纏うブロリーを見ていたが、ブロリーは終ぞ目覚めることはなく、やがて彼らが送り込んだサイヤパワーも鳴りを潜め、何事もなかったかのように静まり返ってしまった。

 

「そんな…」

 

ブルマが小さく呟く。

 

「どうやら失敗だったようだな…」

 

カンバーはそう言いながら、右手に悪の気を携えてゆっくりと歩み寄ってくる。サイヤ人では大柄なナッパでさえも子供に見えるような巨体が迫る。

 

「約束通り、死ね」

 

「…確かに殺されてやるとは言ったが…タダで、とは言ってねぇよな」

 

カンバーがエネルギーを振りかぶる直前、ターレスは黒い気弾をカンバーの顔面へ叩き込んだ。

しかし、カンバーは無言で煙の中から現れ、気を放ってターレスを吹き飛ばし、跡形も残さず消滅させる。

その時、ブロリーの眉が微かに動いた。

 

「どれ…大昔のサイヤ人ってのに、オレ様の力がどこまで通用するんだろうな」

 

ナッパは大口を開け、スパークを纏う特大のエネルギー砲を発射する。だが、やはりカンバーはそれを真正面から喰らってもものともせず、冷酷にナッパを消し飛ばした。

ブロリーの口元が少し動いた。

 

「全宇宙一の強戦士サイヤ人の誇りを…思い知れ!『ウィークエンド』!!」

 

掲げた両手に溜め込んだ強烈なエネルギーを同時に放ち、カンバーへ浴びせるラディッツ。が、カンバーは悪の気で作った手を伸ばし、ラディッツを掴み上げる。

 

「死ね」

 

そして、エネルギー波を撃ち放つ。ラディッツはカンバーのオーラの手から辛うじて抜け出して自由になった右手から再度エネルギーを放つが、容易くかき消され、同様に消滅してしまう。

ブロリーの心臓が一度ドクンと強く脈打つ。

 

「…ふふ」

 

パラガスは待ってましたというように不敵な笑みを浮かべ、逆にカンバーへ近寄っていく。その際に目線だけでブロリーとブルマを見ると、小さく呟く。

 

「『この世は舞台なり。誰もがそこでは自分の役を演じねばならない』…か。なら、今度こそお前は幸せになるべきだ。お前がその役を全うできることを、俺はいつでも願っている」

 

そしてカンバーと体同士が触れ合うほどの距離まで近づくと、じっとその顔を見上げる。

 

「俺の息子が、サイヤ人としての価値は無いだなどと…その気になっていたお前の姿はお笑いだったぜ」

 

最期にそう言い放った瞬間、カンバーの剛腕に胸を貫かれ、さらにその衝撃によって内側から爆発させられ、消えさった。

ブロリーの額に血管の筋が浮かび、ギリリと歯を噛み締める音が響く。

 

「さぁ…キサマで最後だ、女…腹の命ごとあの世へ行け」

 

カンバーは拳を振り上げ、ブルマを叩き潰そうと襲い掛かる。

万事休す。息を切らしたまま、背中を向けて腹を抱える。カンバーは問答無用で巨大な拳を叩き降ろした。

 

「おい、いい加減にしたらどうだ。お前の勝手な欲のためにどれだけの人々を犠牲にするつもりだ」

 

「ッ!?」

 

しかし、カンバーの腕は突然ガッチリと固定されて一切動かなくなり、全身に緊張が走る。カンバーはそれを振り払おうと腕に全力を込めるがビクともしない。ゆっくりと顔だけで後ろへ振り向くと、そこにはいつの間にか復活していたブロリーの姿が。

通常時のブロリーをベースに、細身になった体は無駄な筋肉を極限まで削ぎ落したかのようで、炎の如き紅の気を迸らせ、髪色も深紅に染まっている。カンバーの剛力をもってしても一切揺るがないほどのパワーを発揮しているにも拘らず、その表情は普段の穏やかなブロリーそのもので、一見激しく見えるその闘気も驚くほど静かだ。

 

「キサマ…その姿は…ッ!」

 

超サイヤ人ゴッド。かつて存在した、サイヤ人の神…その力を身に宿した伝説の戦士がここに顕現した。




サザンカは超サイヤ人のレベルを高め続け、シロナは自分だけの特別な進化を獲得し、ブロリーは神の領域へ。
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