もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第426話 「私だけの特別な」

斬撃はサザンカの肩を切り裂き、霊夢の顔にサザンカの鮮血がかかる。そのまま背後にいる霊夢の頭上ギリギリを通り抜け、そのさらに後ろの地面を両断した。まるで巨大な谷の如き跡が刻まれる。

 

「サザンカ…ッ!」

 

「クソッ…まだいやがったか…!」

 

数センチ程の大きさをしたカラフルな四角いキューブ状の物体がどこからともなく集まってくる。悔し気に歯を噛み締めるサザンカの見つめる先で、それらは一つ処で組み合わさって融合していき、人型を形成してゆく。

 

「おりゃああ!」

 

それが完全な形を成す前に片を付けようと、サザンカは一発のエネルギー波を放つ。だが、形成途中の人型から巨大な斬撃が飛び、エネルギー波を両断しサザンカの脇腹を切り裂く。

 

「ぐ…!」

 

「残念だったな。オレは用心深いんでな…」

 

呻くサザンカを尻目に最後のキューブの欠片が融合し、人型は完全な姿を取り戻す。その姿は、やはりジャネンバベビーで間違いなかった。だが、ジャネンバの肉体は以前よりも一回り以上体格が大きくなり、薄紫色だった甲殻は濃い紫色へ変わり、ベビーの体表の色である青色だった箇所は真っ黒に染まった。が、尻尾は対照的に真っ白くなっており、さらに頭部から伸びる一対の角は湾曲しながら巨大化し、まるで中にいるベビー自身の頭部の形状を模しているように見える。

 

「今のこの肉体は使える。お前の攻撃を受けながら細かく分割し、博麗霊夢が来るまでに地獄のいたるところにストックしておいた邪念を欠片のひとつひとつに吸収させて再び融合した。まさにオレはこの地獄を起点として全宇宙を支配できるパワーを身に着けたのだ!」

 

最初の姿をジャネンバベビーとすれば、次に変身したのはスーパーベビーとでも呼ぼうか。そして、さらに大量の邪念を吸収して進化した今の姿は、スーパーベビー2…と呼べるかもしれない。

とにかく、全身から溢れる黒紫色の瘴気の如きエネルギーは、サザンカとの間に存在した圧倒的な力の差を容易く埋めていることを意味する。

 

(さっきので鎖骨が斬られた…左腕は動かねぇな…)

 

サザンカは怪我の程度を分析する。今喰らった腹の傷は血が多量に出てはいるが何とかなる。しかし最初に喰らった斬撃による肩の傷は鎖骨までを深く切断してしまっており、腕を動かすことが困難になった。

 

「その怪我で今のオレ様を相手に、さっきまでの威勢が保てるかな?」

 

「はぁ?何言ってやがる!そこまでしてアタシとトントンだろ!」

 

とりあえず怪我をした個所を気で覆い、痛みを止めて補強を行う。そして黄金の闘気を全身から発し、ベビーに喰らい付こうと足を踏み出す。

 

「サザンカ!気を付けて!」

 

「大丈夫だ。アタシがこんな野郎に負ける道理はねぇよ!」

 

ベビーは右手に黒く武骨な大剣を握り、それを振り上げて斬撃を飛ばす。地面を断絶しながら襲い掛かるそれを殴って真上へ逸らし、サザンカはさらに接近する。ベビーはさらに連続して大剣を振るい、無数の斬撃を飛ばすと同時にいくつもの異次元への穴を開き、そこからエネルギーを放出する。

 

「ハハハハハハ!」

 

「当たるかよ!」

 

何とかそれらを躱しながらベビーへ急接近し、パンチを放つ。ベビーは腕でそれを受け止め、サザンカの脳天に尻尾を叩き付ける。

 

「そぉい!」

 

が、すぐに尻尾を右手でつかんで振り回し、地面へ投げ飛ばす。倒れたベビーは口からエネルギー波を放ち、サザンカはそれを蹴って跳ね返し、ベビーに向かって拳を向けながら急降下する。

起き上がりながらそれを躱したベビーはサマーソルトでサザンカの顎を蹴り上げ、さらに尻尾で弾き飛ばす。そして、体を再度キューブ状に分解し、飛んでいったサザンカのすぐ後ろで再構成することで接近し、背中でエネルギー弾を炸裂させた。

だが、爆風から現れたサザンカは肘打ちを繰り出し、ベビーは大剣を盾のように使ってそれを受ける。さらに放たれた気功波をも切り裂いて見せるが、その瞬間、大剣は土塊のようにボロボロと崩れ落ちて消えてしまった。その隙にサザンカの蹴りが顔面にヒットし、ベビーは吹っ飛ばされて下方にあった「血の池地獄」の中に突っ込んだ。

赤い液体がしぶきを上げて飛び散り、池が空っぽになる。中央で起き上がったベビーは口の端の血を拭いつつ、余裕の表情を浮かべていた。

 

「ハァ…ハァ…ちっ!」

 

対するサザンカは息を切らしてぶり返した傷の痛みを感じていた。

 

 

 

 

一方、レイムの全てを貰って蘇ったシロナ。軌道上に紫色の尾を引きながらこう高速で吹っ飛んでいったベジータを追いかける。

そして発見すると、すぐさま空中でダッシュするような動きで加速して追い付き、その頭を掴んで止める。

 

「もしもーし!大丈夫ですかー?」

 

「…キッ!」

 

シロナが顔を覗き込んだ瞬間、ベジータは顔面に近距離からの気功波を叩き込む。

 

「ふっ!!」

 

だが、シロナが口を尖らせて息を吐くとそれに跳ね返された気功波がベジータの頭を通過する。顔が黒焦げになったベジータは煙を吐きながら目を見開く。

 

「アッハハハハハ!変な顔!」

 

その場で笑い転げるシロナに対し、ベジータは怒りでわなわなと肩を震わせる。

 

「くそったれめ…なめやがって…!」

 

ベジータは、シロナが笑っているうちに片手にエネルギーを込め、それを真っすぐにシロナへと向ける。そして生成した巨大な気弾を気合と共に発射した。

 

「『ビッグバンアタック』だ!!」

 

「ハハ…おっと!」

 

それに気付いたシロナは真剣な顔つきになり、ぐんぐんと迫るビッグバンアタックを見据える。そしてニヤッと笑うと、なんとその右手がまるでゴムのように伸縮し、ベジータの足首を掴んだ!

 

「な、なにィ!?」

 

そしてベジータを引っ張りよせ、足先と頭頂部を掴んで引き延ばすと棒のようにまっすぐになったベジータをバット代わりにしてボールを打ち返すかのように、ビッグバンアタックを弾き飛ばした!

 

「ホームラ~~~~~ン!」

 

ポイと投げ捨てられ、元に戻ったベジータは血が滴る額を押さえながらシロナを睨む。この変化は超サイヤ人ではない。もっと別の、見たことがない普通ならあり得ない変身だ、と思った。

 

「くたばれ!!」

 

さらに両手から何本ものエネルギーを放射し、その全てが広がった後にシロナへ向かっていく。だが、シロナはそれらを躱しつつ空中を駆け、星型の気弾を無数に撃ち出してベジータを狙う。

ベジータはそれを避け切ることが出来ず、次々と着弾してしまう。

 

「なんだ…貴様のその姿は…?サイヤ人の変身ではないな…一体何だ!?」

 

晴れた黒煙の中から現れたベジータは、シロナにそう問いかける。

 

「うーん、私もよくわかんないけど…とりあえず私だけの特別な姿ってだけ言っとこうかな。そうそう、名前は…えっと…」

 

超サイヤ人でもない。どちらかといえば魔法によるものに近いような気もするが、その体には幻想郷そのものとも呼べる奇想天外なパワーが満ちていることから…

 

「シロナブースト…ビースト…いや、ううん、そうだなぁ、『ファントムシロナ』…って名付けようかしら」

 

「ほざけ!!『ファイナルフラッシュ』!!」

 

前へ突き出した両手から極太のエネルギー光線が発射される。シロナはそれを見切ると、あえてファイナルフラッシュに突っ込んでいき、なんとその中へ潜り込んだ。まるで水の中を泳ぐようにクロールでエネルギーの波の中を遡り、そのままベジータの目の前で飛び出す。

 

「ヤッホー!」

 

そしてシロナも手の平からエネルギーを放出し、ベジータを地上へ向けて盛大に吹っ飛ばした。

ベジータは地面スレスレのところで静止し、項垂れる。

 

「どうしたのかな?もしかして大技連発して疲れちゃった?」

 

追い付いたシロナも地面へ降り立ち、片手で逆立ちしながら挑発する。

 

「くくく…なんとでも言ってろ。このオレの真の力を見せてやる」

 

ベジータは右手に白いエネルギー球…パワーボールを生成すると、それを空へ向かって投げる。パワーボールは空に浮かんでその場に留まった。

 

「『弾けて混ざれ』!!」

 

拳を握り締め、パワーボールを炸裂させると、それは満月の代わりとなってブルーツ波を地上へ降り注がせる。

 

「…なるほどね、いいと思う!」

 

シロナは親指を立ててそう言い、ベジータは「余裕ぶっていられるのも今の内だ」とでも言いたげに不敵に笑う。そして、ドクンとその体を胎動させ、大猿へと変身した。

 

「ははははは!!オレの大猿の力は半端じゃないぞ!」

 

通常通りの黒い毛並みの大猿となったベジータは空中に浮いたまま雄たけびを上げ、10倍に高まった戦闘力の矛先をシロナへと向ける。

そして一気に跳躍し、その足でシロナを真上から踏み潰した。

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