もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第427話 「そこに立つのは」

「文字通り虫けらのように潰れろ…!」

 

大猿と化したベジータはシロナを踏み潰し、その足をぐりぐりと岩に摺り付ける。足の裏では何かが動く気配すらなく、沈黙が流れる。

 

ググ…

 

「ん…?」

 

だが、次の瞬間に感じた違和感。何か小さな塊があるのを感じ、それがぐんぐんと大きくなって自分の足を押し上げてくる。

 

「ぬ…!おおおお…!!」

 

そして、ついにはなんと足の下から大猿と同じくらいのサイズにまで巨大化したシロナが現れ、ベジータを押し倒した!

 

「『ミッシングパワー』!」

 

拳を振り下ろし、大猿ベジータを殴り飛ばす。

 

「なめるなァ!!」

 

ベジータは大口を開け、特大のエネルギー砲を発射する。対するシロナは足を振り上げ、地面を力強く踏みつけた。するとエネルギーの衝撃波が波紋状に広がり、大気が激しく振動し、なんとベジータの一撃をかき消した。

 

「な…!」

 

「初見で殺す『三歩必殺』!」

 

続けて足を踏み鳴らし、2発目の衝撃波がベジータの足元から吹き上がり、その大猿の巨体が突き上げられる。そして最後の3発目の衝撃波がエネルギー波となって直接襲い掛かり、ベジータを撃ち抜いた。

 

「ぐおおおああああ…!」

 

シロナは元の大きさに縮み、右手を真上へ掲げる。

腹を押さえながら後ずさるベジータ。視界にチラっと赤い光が見えたのでハッと顔を上げると、そこには血のように赤いエネルギー弾を手に生成しながらそれを振りかぶっているシロナの姿があった。

 

「『スピア・ザ・グングニル』!」

 

赤いエネルギー弾を思いきり投擲すると、空中を飛んで行くそれがあまりに速すぎるせいで細長く引き伸ばされ、槍のような形状となってベジータの胸に突き刺さり、貫いた。

 

「うぐお…!!」

 

と言っても実際に貫通したわけではなく、着弾した際に生じたエネルギーが衝撃となってベジータの体内へあたかも大穴が開いたかのようなダメージを与えたに過ぎない。

しかしそれでも威力は絶大で、ベジータは顔中に汗をかき顔を歪ませながら膝をついて蹲る。

 

「あ、あり得ん…!このオレ様がここまで虚仮にされるとは…」

 

蹲り、悶絶するふりをしながらも、ベジータは自身の体で両手を隠しながら気を溜めていた。体の下で両手を重ね合わせ、エネルギーを巨大化させる。

 

「『(スーパー)…ギャリック砲』ォ!!」

 

通常の姿の時よりも、大猿の戦闘力で放つ事で当然ながら強化された威力のギャリック砲を不意打ちで発射するベジータ。結構余裕こいていたシロナはそれが目の前に迫るまで気付くことが出来ず、ちょうど顔面の位置を超ギャリック砲が通過した。

 

ボッ…

 

「フフ…フハハハハ…!ざまァみやがれ!」

 

それが過ぎ去った後には、首から上の頭部だけが消し飛ばされたシロナがそこにいた。

 

「ハーッハッハッハッハ!!」

 

高笑いするベジータ。

 

「ン!?」

 

だが、頭部を失ったシロナがその場をくるくる回りながら右往左往し始めたので笑いは困惑に変わった。

シロナは這いつくばり、何かを探すように地面を触る。が、何かに気付いたように人差し指を立てると、ズボンのポケットを探る。中から取り出したのは…なんと、お茶目にウインクをするシロナ自身の頭だった。

 

「なんだとォ!??」

 

それを首の上に装着し、何事もなかったかのように目を開き、ニヤッと笑う。

 

「ちょっとちょっとー、びっくりするから急にはやめてよねー。やるんなら『やりますよー』って言ってくんなきゃ」

 

ベジータは言葉を発することすら出来ず、ギリギリと歯を噛み締めながら震えることしか出来なかった。

 

(バカな…まさかこの女、不老不死にでもなったのか!?)

 

 

かつて、ナメック星でフリーザによって殺害されたベジータ。当然地獄行きの判決が下されたベジータは、地獄でターレスやナッパらと合流し、地球で繰り広げられたカカロットとフリーザの最終決戦を部分的に少しだけ見ていた。

 

「超サイヤ人…!?まさかあんな下級戦士がなれるとは…」

 

1000年にひとり現れるとされる最強の戦士、超サイヤ人。それになれる可能性があるのは、少なくとも超エリートの自分だけに違いないと思っていた。だが実際は自分は一番弱い状態のフリーザにあえなく殺され、どこの馬の骨とも知れん下級戦士如きが超サイヤ人となり、フリーザを倒した。

 

(それならば、オレは元から超サイヤ人などに頼らずとも強くなれるポテンシャルを秘めているのだ)

 

どんなサイヤ人だろうが努力ときっかけさえあればなれる超サイヤ人などではなく、違う方法で最強になれる才能がオレには眠っている。そうに違いない。そう思わなければ地獄で正気を保ってなどいられなかった。

だがそんなとき、カンバーが現れる。

 

「キサマの強さへの渇望…気に入ったぞ。原始の闘争本能を支配できる力をくれてやる」

 

オレは悪のサイヤ人となった。生前とは比べ物にならない、ましてや超サイヤ人なんぞに頼っていては絶対にたどり着けないであろう領域に、オレは至ったのだ。

いずれ完全にこの力を制御できれば、オレはカンバーすら超えて名実ともに最強のサイヤ人になれる。真の伝説の超サイヤ人ブロリーでさえも、ふたりのサイヤ人の小娘などよりもよっぽど強い存在になれる。どれだけ時間がかかろうが、かねてより願っていた不老不死にさえなれれば宇宙で最強の…あの破壊の神すら楽々と凌げる、超戦士への道が開いている、と思っていた。

 

 

(だが、今目の前にいるこの娘は何だ?オレが焦がれた不死を見せつけ、超サイヤ人に頼ることのない全く別の独自の進化を遂げた)

 

ベジータが目指したものを持っているシロナ。こうなりたい、ああでなくてはならない、そう思った自分の理想の姿が、このシロナとダブるのだ。

 

(認めん…!認めんぞ…!)

「そこに立つのは、オレだ!!」

 

地面が捲れ上がるほどのパワーで踏み込み、シロナへ飛びかかるベジータ。大猿の巨体らしからぬ凄まじい瞬発力とスピードで迫り、剛腕を振り下ろす。

シロナは身を翻すように軽く躱し、空ぶった腕は地面にぶち当たってクラウン状の衝撃波が吹き上がる。続けて放たれた口からのエネルギー砲をスレスレで避け、その上を走るように移動しながらベジータへ近寄る。

 

「ちょこまかしやがって!」

 

さらにパンチやエネルギー波等を織り交ぜてシロナを狙い続けるが、シロナはその全てを躱しながらベジータの周囲を旋回し、背後へ回り後頭部目がけて拳を振りかぶる。

 

「『やりますよー』」

 

「後ろか!」

 

シロナの気配を察知し振り返ったベジータだが、その額にシロナの拳がぶち当たり、バチンという音が響く。顔を覆い、その場で後ずさるベジータ。

 

「おのれ…!」

 

目の前を見た時には、既にシロナの姿はその場のどこにも無かった。

 

「どこ行きやがった!?…上か!」

 

ベジータは気を探ると、何とシロナはとんでもなく遥か上空に行ってしまっていると気付く。

そう、シロナは日光で光る雲を突き抜け、空を舞い上がっていた。体中に広がる溢れんばかりのエネルギーを迸らせ、青空を超えて黒に変わり始める宇宙空間間近のスレスレへたどり着く。

下を見下ろし、目では見えなくともベジータの居場所は手に取るようにわかる。

 

【ファントムシロナ】

 

幻の(ファントム)シロナという名を冠するこの姿は、数多の幻想郷の戦士や妖怪、生物の遺伝子を持ち、幻想郷そのものと言えるレイムの全てを受け取ったことで変身できた姿である。当然、レイムの持っていた遺伝子からくる数々の能力を使用することができ、鬼の妖術で巨大化したり、怪力乱神の力を振るい、吸血鬼の技と身体能力をものとし、河童の作る機械の知識とシロナの魔力を組み合わせて肉体を変幻自在に操ったりして戦う。シロナ自身が持つ不死性も強化されており、これらの能力を自由に引き出して戦う様は、まさに幻が如く。

 

「うん…もう絶対に空は壊させないよ」

 

シロナは拳を振り上げ、地上にいるベジータへ狙いを定める。

 

 

「喰らえ!!」

 

一方のベジータも空の上にいるシロナを狙い、口からエネルギー砲を発射しようと上を見上げて構える。

しかし、一瞬だけ空が光ったかと思うと、突然ベジータの体が地面に叩きつけられた。

 

「…ッッ!!」

 

何が起こったのか理解するのに時間を要した。自分の顔面へ何かがぶち当たり、それに吹き飛ばされて背中から地面へ倒れ込んだのだ。

では自分を押し倒したものは何か。別の敵の攻撃か、エネルギー弾か。いや、どれも違う。空の果てから伸びているのは肌色の線。その先には拳が。

シロナは腕をゴムのように伸縮させてパンチを放ち、はるか下の地上に位置するベジータを狙い打ったのだ。

 

「くっ!」

 

起き上がり、反撃に出ようとするベジータだが、今度は腹へ衝撃を受け、再び地面へ磔になる。

 

ドン ドン… ドドドドドドド…!!

 

ベジータが何かしようとするよりも圧倒的に早く、不可侵の地点から放たれる拳の連打が降り注ぐ。

 

 

「ウラウラウラウラウラウラ…!!」

 

空の果てから渾身のラッシュを振り下ろすシロナ。

 

 

(は、速い…速すぎる…ッ!)

 

顔面に間髪入れずに当たってくる拳の所為でもはや視界は何も映さず、全身に絶え間なく襲い掛かる衝撃によって意識が遠のく。何もできず、ただ超高速の拳の雨に沈んでいく。

 

「ぬおおおおッ!サイヤ人は戦闘種族だ!!なめるなよ!!!」

 

だが、己のプライドを杖にして雨の中立ち上がったベジータは残された全エネルギーを収束させ、特大のエネルギー砲として吐き出した。それは今までのどんなベジータの攻撃よりも威力が高く、まさに生涯最高の一撃と言っても過言ではなく、気の波動が宇宙空間にまで広がるほどだった。

しかし、それすらも拳の雨に削られてかき消される。

 

シュウウウ…

 

…その後、何秒間にも渡って放たれ続けた拳の連打が治まった頃には、ベジータは無数のクレーターが重なってできた深く大きなクレーターの中央の岩盤に埋もれ、ピクリとも動かなくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「これでようやくお前も最期の時を迎えるんだ、ドミグラ」

 

「最後の最後で、私の行く手を阻むのが貴様だとは…トランクス。しかし、貴様はミスを犯している…」

 

 

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