時の巣。
ここは宇宙の時を管理する時の界王神が住まう異次元の聖地。サラガドラの起こした事件があってからそれなりの数か月程度の時間が経っており、ようやく復興も終わりかけていたという頃、突如としてトキトキ都を襲撃した、魔神ドミグラという男。彼は時を生み出す神の鳥・トキトキを吸収することで神の気を手にし、現在存在するすべての時空を破壊し自分が支配する新たな時空を作り出そうとしていた。
だが、トランクスと彼が呼び出した仲間によって追い詰められていた。
「よくぞ…この私をここまで追い詰めた」
「これでようやくお前も最期の時を迎えるんだ、ドミグラ」
「最後の最後で、私の行く手を阻むのが貴様だとは…トランクス。しかし、貴様はミスを犯している…」
「なに?」
「フフフ…コイツはもういらん。返してやる」
ドミグラは自身の体内から取り込んだトキトキを分離させ、それを掴んでトランクスに向かって投げつける。それをキャッチするトランクスだが、その瞬間、ドミグラの体が爆散し黒い霧が辺り一面へ噴き出した。
「…待て!逃げるな!!」
トランクスは剣を構えながら時の廊下を移動していた。その目線の先には超スピードで逃走してゆく邪悪な影があった。
「止まれ!ドミグラ!」
「貴様の所為だぞ、トランクス」
「なに…!?」
「私は貴様がかつて通った軌跡をなぞっているだけに過ぎない。この先はどこへ通じているのだろうな?」
ドミグラは受けているダメージを最小限軽減するため、半透明の霧のような姿で口だけを動かし、トランクスから逃げつつそう言葉を投げる。
彼が向かう先は、前にトランクスが通ったことのある別時空へと続く扉だった。トランクスは何発もエネルギー弾を放って行く手を阻もうとするが、霧のように揺らぐドミグラの体はそれらを躱し…ついに、時空の先へと逃げ込んでしまった。
「…よし。それでこれからどうしよっかな…カンバーはブロリーさんに任せるとして、やっぱサザンカが心配だから様子見に行こうか」
地上付近まで降りてきたシロナは、撃破した大猿ベジータを見下ろす。そして右手を掲げ、念のためトドメを刺そうとエネルギーを溜め始める。
「ん?なんか…来る」
どこからか邪悪な気を感知する。目の前の空間にピシリと亀裂が走り、直後に砕けてその向こう側からブワッと黒い霧が大量に溢れ出してくる。
「キモッ!?」
シロナは咄嗟に気功波を撃ち込むが、霧は素早く分散してそれを無効化する。それどころか、今度は素早く凝縮して一個の塊になると、カウンターの如くシロナへ突撃し腹へめり込んだ。
「ぐええ!」
吹っ飛ばされたシロナは空中を舞い、項垂れる。
「私の憶測通りだった!根本から螺子曲がり絡まったこの歴史には、私が糧とできる魔力が満ちている!」
黒い霧は周囲から何かを吸収しているかのように膨らみ続け、さらに凝縮して人の形を成す。
「おかげで、完全回復だ」
現れたのはボロボロの青い道着ズボンを履き上半身は裸の男。一見は普通の人間のように見えるが、赤い髪を広げるように逆立て、耳は大きく尖り、肌の色も薄いクリーム色でところどころ人とは違う。目の周りには赤い隈撮り模様が走り、邪悪な眼光がシロナを見据える。
「アンタ誰?」
「私は魔神、名はドミグラ。時を支配し、私だけの新しい時代を作るはずだったんだが…少ししくじってしまってな」
「へぇ、んじゃサラガドラの知り合い?」
「サラガドラ…?ああ、メチカブラを始末してくれた奴か。知ってはいるが知り合いではないな」
ドミグラは気弾を撃って今通って来た時空の歪を破壊して閉じる。
その瞬間、やっとシロナは理解した。この男の超常的な魔力…膨大さもそうだが、この世の呪いや不吉を何千万年も煮詰めたかのような魔力。今のシロナだからこそ感じ取れる、この吸い込むだけで内臓も骨も肉も口から吐き出されてしまいそうになる純真たる穢れ。このままここに居たら、この男は何をしでかすか分からない。
(今ここで…倒すしかない!)
シロナも全身に魔力を纏い、臨戦態勢に入る。紫色の長髪の隙間から覗く獣の如き眼光がドミグラを睨む。
「ほう…こんなところにこれほどの魔力の持ち主がいたとは。名前は?」
「シロナ」
「そうか。ではシロナ…貴様はこの私が時空の支配者となるための礎となって死ね」
突如勃発した、乱入者ドミグラとの戦い。先手を打ったのはシロナだった。ゴムのように腕を伸縮させ、指先は鋼のように硬化させて刺突を繰り出す。
当然ドミグラはそれを最小限の動作で躱し、目から繰り出す神通力でシロナという存在そのものを爆発させる。
顔面左側がはじけ飛んで血飛沫が空に舞う。しかし、シロナは笑顔を浮かべるとその傷はすぐに元通り再生し、頬を膨らませて魔力を溜め、口から特大の青い火炎を放射した。
「!?」
余りの巨大さに思わず動きが硬直するドミグラ。当然、自身も魔力を放射して火炎を払うが、その隙にサイドへ迫っていたシロナの回し蹴りを肩へ受ける。
(魔力一辺倒ではない…なんというパワー!)
「それは私も同じだがな」
ドミグラはシロナの仕掛けた格闘勝負に乗り、魔力を乗せた拳の殴打を連続して放つ。
ドゴォ!
しかし、それらを放った先にはシロナはおらず、次の瞬間、顎へアッパーを喰らって状態が後ろへ逸らされる。続けて腹へ拳を叩きこまれ、腿へ蹴りを、脇腹へ回し蹴りを喰らう。
「ぐ…は…!」
(バカな…)
ドミグラは魔術の神、魔神という領域へ達している。当然、それは魔力の量だけではなく肉体の強度、ある程度の肉弾戦の強さが無ければ到底足を踏み入れられない領域。格闘能力にも自信があったドミグラであったが、シロナに手も足も出ずにひたすら殴られ続けることでそれがへし折られる。
「ウラウラウラウラウラウラ!!」
「ゴハァ!?」
容赦の無い連撃が全身に叩きこまれ、回転しながら吹っ飛び、空中で倒れ込むドミグラ。シロナは拳を自身の身体と同じくらいの大きさに巨大化させ、それを振り下ろして殴りつける。
この通り、シロナとドミグラにはかなりの実力差が開いていた。もちろんシロナが有利の方で。しかし、シロナが感じたドミグラの魔力と穢れは、実際には彼の中に眠る潜在的なものを含めて、であった。
それが発現される前に片付ける!
「ウラァァ!!」
「調子に乗るな」
だが、及ばず。ドミグラの腕もシロナと同様に巨大化し、拳を掴んで受け止める。続けて反対の腕、胴体、頭部と続けて膨らむように変化していき、最後に下半身が変形する。
ドミグラはグンとシロナを引っ張って振り回し、地上にある岩山へ向けてブン投げた。直撃された山はガラガラと崩れ、下敷きになったシロナがすぐに飛び出してくる。
「あら、アンタ…」
体の大きさは人の姿の4倍はありそうな巨体となり、長くしなやかな尻尾が伸びる全体像はまるで竜人のようなモンスターだ。赤い頭髪が背中にまで伸び、頭部には角、落ち窪んだ黒い眼孔と口外にまでせり出した牙。両腕は全身と同じくらい巨大に発達しており、上半身は分厚い筋肉と青い鱗や甲殻に覆われている。
「上半身と下半身のバランス悪くない!?」
ドミグラはシロナの戯言に耳は貸さず、胸の中央に埋め込まれている赤い水晶を発光させ、全身に満ちる解放したエネルギーをシロナの足元に集中させて一気に噴き上がらせる。
「どわあああ!?」
高く打ち上げられたシロナだが、腕を伸ばしてドミグラの角を掴み、グインと縮めて急接近する。そして、反対の腕を特大のハンマーに変化させ、側頭部をぶっ叩いた。
ゴィィィン…!!
鐘のような思い金属音が響き渡り、ドミグラは口から少量の血を吐きながら目を見開く。確かにダメージは受けたようであるが、すぐに復帰し、尻尾でシロナを弾き飛ばす。
ドミグラは巨体に見合わぬ驚異的なスピードで、吹っ飛んでいくシロナに追い付き、真上で両手を合わせた拳を振りかぶる。それに気付いたシロナも魔力を込めた拳を構え、放ってぶつけた。
バリィ!
互いの魔力が反発しあい、稲妻のように周囲へ向けて放出される。シロナの拳が押され、このままでは押し負けると思ったシロナは片腕も加えてパンチの連打を繰り出す。
「ウラウラウラウラ…!」
しかし、ドミグラもそれを予測していたかのように見切ると、さらにパワーを込める。シロナの拳の壁が破られ、特大の一撃がシロナの全身を打ち砕いた。
「ギャア!?」
思わず叫び声をあげるシロナ。ドミグラはすかさず追撃の構えを取り、鋭い爪の生えた手刀を振り下ろす。
ズパッ
その瞬間、なんとシロナの左腕と首が切断された。血が噴き出し、ドミグラは勝利を確信してにやりと笑う。
が、ドミグラは突然顔面へ強い衝撃を受けて後ずさる。
「アッハハハハハハ!!」
シロナは右腕で左腕を掴み、掴まれた左腕で自分の頭部を掴み、それを思いきり突き出して頭突きを食らわせていたのだ。全く予想だにしていなかった方法で反撃を受けたドミグラは驚きのあまり動きが固まる。
「よっと」
シロナは頭をくっつけて元に戻し、手に持った左腕で突きを繰り出し、ドミグラの腕へ突き刺した。
「貴様…やるではないか!」
「そう?そうかな!?アハハハハハ!!」
ゼノバースより、魔神ドミグラを登場させました。
ゲーム本編では主人公と悟空に倒されましたが、本作ではトランクスがサザンカたちの時空へ来た際の通り道をなぞる形でこちらの世界へと来てしまいました。