もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第429話 「派手じゃなければ魔法じゃない」

巨大な竜人のような姿の最終形態へと変身したドミグラと、互いの魔力をぶつけ合う攻防を繰り広げるシロナ。

 

「アッハハハハハ!!『あ!!』」

 

シロナは笑いながら息を吸い込むととんでもない爆音の大声を発する。すると、『あ!!』という声が文字となって固体へと具現化し、ドミグラに真正面からぶち当たった。

 

「ぐは…!」

 

シロナは怯んだドミグラへ対し両手を向け、それぞれにエネルギーを練って込める。

 

「『ダブルマスタースパーク』!!」

 

二本の極太の魔力光線が放たれ、シロナはその両腕を広げて伸ばすことでX線状にマスタースパークを交差させその交点に作用する圧倒的破壊力でドミグラを挟み込むように撃ち込む。ドミグラも流石に無傷ではやり過ごせないと判断し、両腕を左右へ向けて光線を受け止めた。青と黄色の魔力がスプーンに放った水のように跳ね返り、虹のような波動を生み出す。

 

「ぐ…ぐお…!!」

 

超パワーを持った変身を遂げているドミグラも、流石に腕が曲がってきてしまいこらえ切れない。これをチャンスと見たシロナは、攻撃を放っている態勢のまま両足を上げ、前へ向ける。

 

「『マシンガンスパーク』」

 

そして、なんと足の裏からマスタースパークを放ち、正面からドミグラを狙う。両手がふさがり、なおかつそれに意識と力を集中させていたドミグラは反応が遅れ、真正面から迫る光の奔流をモロに喰らった。

三方向から直撃するマスタースパーク、その集中点にドミグラはいる。体を貫通する超ダメージを受け、仰向けに倒れたままその場で動かなくなる。

 

「…どうかな?」

 

しかし…ドミグラの胸の水晶が発光し、脈動すると彼は目を覚まし、口の端から流れる血を拭いながらシロナを睨みつける。

 

「ゴホ…今のは…流石に効いたぞ。だが、次はない」

 

ギロリとシロナを睨んだ直後、彼の背後に展開された紋章入りの魔法陣から無数のエネルギー弾が発射される。対するシロナも一個の気弾を自身の頭上へ設置し、その気弾から細かな弾幕を乱射する。

そしてシロナ自身は軟体動物のようなグニャグニャした不可思議な動作で全てを避け、合間に腕を伸ばして遠距離からのパンチを放つ。

 

「あら!?」

 

だが、その先にはいつの間にかドミグラは居らず、背後に気配を感じる。

シロナは自身の長い髪の毛を操作し、背後へ向けて剣山のように逆立たせた。背後から腕を振り下ろそうとしていたドミグラは咄嗟に防御に入り、刃状に硬化した髪の毛が前に掲げた腕にザクザクと突き刺さった。

 

「ぬ…!」

 

「どぉりゃあ~~~!!」

 

そのまま髪を風車のように回転させ、腕に突き刺したままドミグラの巨体を持ち上げて投げ飛ばした。

背中から地面へ叩き付けられるドミグラだが、直後に口から魔力の柱を吐き出す。それを見たシロナも口を開け、青い火炎を吐いて衝突させた。

だが、シロナの炎が押され、ドミグラの魔力に呑み込まれる。

 

「くっ…!」

 

その隙に目の前へ接近したドミグラがシロナを殴り、吹っ飛ばす。が、吹っ飛んだと思ったシロナがサンドバッグのように元の位置に戻ってくる。シロナはドミグラの尻尾の先を掴んでいた。

ならば、とドミグラは尻尾を振り上げ、シロナを空中へ投げ上げる。そうして無防備になったところを、拳で思い切り殴りつける。そのまま地上へ垂直に降下し、地面の岩盤深くへシロナを押し込んだ。

が、直後にシロナの体が膨れ上がり、なんと二足歩行型の巨大なドラゴンの姿へと変化し、ドミグラと取っ組み合う。

 

「ぬおおお…!!」

 

両者のパワーはほぼ互角。バリバリと周囲に稲妻のような魔力が迸り、地表の石が宙に浮かび上がる。ドミグラの鉄塊の如き拳がシロナの腹へ深くめり込み、シロナはドミグラの肩に噛みついて牙を食い込ませる。

 

「あいこ、ね…!」

 

「あいこだと?阿呆が」

 

次の瞬間、ドミグラの胸の水晶が発光し、シロナの足元に巨大な紋章が浮かぶとそこから魔力の柱が立ち上り、その体をバラバラに破壊した。

ドミグラはパーツごとに千切れて宙を舞うシロナの体を完全に抹消しようと両手の間へ魔力と気を混ぜてそれを放出しようと構える。

 

PON!

 

が、バラバラになったシロナのパーツそれぞれが、無数の手の平サイズのシロナとなって動き回る。ドミグラの体へ纏わりつき、全身へ殴る蹴るの打撃を加える。

 

「おーおー、小さいのがわらわらと。だが無意味だ」

 

ドミグラの体から紫色の衝撃波が発せられ、小さいシロナたちは一斉に吹っ飛ばされる。だが、それらは一カ所で集まって融合し、再び元のシロナを形作った。

 

「どうした?息が切れているようだが」

 

「ハァ…ハァ…どこが?全然なんですけど」

 

口ではそういうシロナだが、確かに危うさは感じていた。

 

「『オ!!!』」

 

そして大声と共に固体化した声を発射して攻撃を仕掛ける。ドミグラは自分から前へ出てそれを迎え撃ち、声を殴って破壊し、シロナの至近距離へ素早く接近する。

 

(速い!)

 

ドムッ

 

肘打ちがシロナへさく裂し、体をくの字に曲げながら吹っ飛ばされる。

ドミグラは、既にシロナの奇想天外な戦い方に適応していた。始めの方こそは自分とは異なる魔力の使い方に困惑していたものだが、現在のシロナの実力の底は既に見えているし、魔術の神たるドミグラであればすぐにその戦法に対応した戦い方を編み出すことも可能であった。

 

「ふん!」

 

大きな掌の中に十数発の気弾を込め、それをシロナへ向かって投擲する。その後ドミグラ自身も飛んでいき、気弾と並走しながらシロナへ追い付くとその体を鷲掴みにし、飛んでくる自身の気弾すべてにシロナを強引に叩き付けた。

 

「ぶは…!」

 

黒焦げになって口から煙を吐くシロナ。回復する暇も与えず、ドミグラはシロナを放り投げてから真上へ殴り飛ばすと狙いを定め、口を開いて渾身の魔力を込めたエネルギー砲を放ち、直撃させるのだった。

変身前の人型の姿のドミグラは、魔術の強力さにおいてはシロナと同等であっただろうが、単純な格闘能力においてはシロナには及ばなかった。が、こうして変身することで単純なパワー面においてはシロナを上回るに至った。

ドミグラは7500万年ぶりに顕現し、邪魔こそあったもののこうして全ての世を思うがままにできる力に酔いしれた。敵う者は実力でねじ伏せ、敵わぬ者は歴史ごと存在を抹消する。そうすることで己が頂点に立つのだ。

 

──ただし、誤算があるとすれば、ドミグラはシロナの爆発力を知らなかった、ということ。

 

ざわざわ…

 

違和感。締め切った屋内に風が流れてくるような、首筋に虫がとまったような。

 

(何だ?)

 

その発生源を見る。

シロナの、その身丈よりも倍ほども長い紫色の髪の毛がぞわぞわと持ち上がっていき、彼女の頭上で回転しながらドリルのように高速で巻き上がっていく。同時にその体に宿る魔力がさらに膨れ上がり、はち切れんばかりに荒れ狂う。

 

「…何と、見事な…」

 

思わず感嘆の声を漏らしたドミグラの視線の先には、異様なシルエットを写すシロナの姿。

長い紫色の髪は彼女の頭頂部へ向かって巻き上がり、さらに額から側頭部、後頭部を取り囲うように幅の広い形状に髪の房が広がっている。それはまるで魔法使いが頭にかぶる三角帽のようであり、見る者が見ればさながら霧雨魔理沙を彷彿とさせただろう。

 

…ここに、かつて幻想郷において異変解決のために奔走し続けたふたりの少女の遺志を灯した魔女が誕生した。

 

「お待たせ」

 

まるで待ち合わせにでも遅れた時のように、ニカッと笑いながら軽い調子でそう言った。

 

「ナメるなよ…!たかが一人間!たかが魔女!!」

 

不意にも、不本意にも一度はこの人間を認めてしまった。その魔力と身体機能の効率があまりに噛み合っていて、まるで黄金比のように己の目に写った。

だが、それは時空の覇者となるべく動いているドミグラにはあってはならないことだった。

 

「俺のこの姿を見て生きて帰れた者はいない!無論、貴様もだァ!!」

 

正に般若の如き怒りの様相で吠え、渾身のパワーを込めて腕を振り抜くドミグラ。

しかし、そんな事は意にも介さず。シロナは涼しい顔でそれを迎え撃つ。

左肩の後ろへ回して振りかぶった右腕は、何故そうしたのか全く理解しがたい事ではあるが、エレキギターへと変形しており、振動しながらギャンギャンと激しい音色を発し始める。そして、左手で暖簾を退けるようにドミグラの一撃を払い除け…

 

「な…」

 

軽い力で容易く腕を跳ね上げられ、がら空きになったボディを晒す。

次の瞬間、音と共に増大した魔力と気が込められた腕による一撃が、ドミグラの胸へと炸裂した。

 

「ぶぐ…はァ…!!?」

 

「派手じゃなければ魔法じゃない!音量上げてけよ!!」

 

 




実はまた設定が固まっていない頃は、シロナの魔法は「体の部位を楽器に変化させて敵を殴り、そのたびに楽器が音を奏でラッシュ攻撃をすると激しい音楽が鳴り響く」というものでした。ですが私は音楽を聴くのは好きですが演奏や曲作りの知識は全くないため断念し、今の硬質化の魔法に落ち着きました。

シロナコレクション↓

【挿絵表示】
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