もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

430 / 552
第430話 「オレと戦え」

ドミグラの目は、シロナの魔力を解析することで彼女の体をまるでレントゲンやX線のように視ることができた。

その強靭な肉体と、奥から湧いてきている魔力がまるで歯車の如く互いに噛み合い、暴力的ともいえる生命力と気を捻出している。

 

(しかし、同時に弱点もあるはず…俺の目ならそれを見極められる)

 

が、直後に胸部へ叩きこまれた一撃。耳を覆いたくなるような激しい音色と共に稲妻のような魔力が炸裂し、直撃の威力を底上げする。肺と心臓が圧迫され、中の空気と共に血を吐き出す。

 

「ぐば…!!?」

(ダメだ…わからない!)

 

「派手じゃなければ魔法じゃない!音量上げてけよ!!」

 

続けて、ホルンの形状へ変化した左腕を顔面へ叩きつける。巨大で低い轟音が響くととも再び魔力が迸り、同時に無数の星型の気が飛び散った。

シロナが手を握ると、飛び散った星たちが一斉にドミグラへ集約するように直撃していき、次々と爆発を起こす。

 

「ぬああああ…!!」

 

全身から煙を吹き上げながら吹っ飛ばされ、己を上回る圧倒的なフィジカルと魔力効率であっという間に体力を削り取られるドミグラ。

 

(何をされているのかわからん…!わからねば…!)

 

しかし、攻撃を見極めて反撃を加えようにもシロナの攻撃が速すぎてその暇がない。肉体の芯まで響く衝撃によって思考も働かない。

シロナは地面へ落下していくドミグラの下へ潜り込み、踏ん張ってジャンプしながらのアッパーを浴びせ、それを連鎖させて地表へ付けることなく追い詰めていく。

 

(こんなはずでは…俺は7500万年前のあの時とは違うのだ…!)

 

 

──遡ること、7500万年前…

 

 

「浸りすぎ──!!」

 

「グボァ!?」

 

回想に入ろうとしたドミグラの意識を、シロナのパンチが呼び戻す。

 

「7500万年って流石に長すぎ!1話丸ごとアンタの思い出に使うつもり!?」

 

ツッコミの空手チョップがドミグラの脳天へさく裂し、目を見開いて悶絶しながら下半身が地面に埋まる。

シロナは宙へ飛び、右腕の拳を振り上げて狙いを定める。そして、全身の魔力を集中させると同時に、自分に宿る記憶兵器を全て開放することによって拳を巨大化させる。バリバリと黄色と紫色の魔力を迸らせる鉄拳が完成し、それをさらに腕を伸縮させてタメを作りながら構える。

 

「ウラァァァアア!!」

 

隕石の如き拳が素早く叩き降ろされ、ドミグラに直撃する。その体は地面と拳との間に挟まれ、深く地中へと埋め込まれた。

 

 

 

 

 

 

 

「ぬ、ぐ…!!」

 

一方、見たことのない紅き輝きを放つサイヤ人へと覚醒したブロリー。背後からカンバーの腕を掴んで締め上げると、カンバーは自前の怪力をもってしてもそれを振りほどくことが出来ないでいた。

対するブロリーの方は汗ひとつかかず、全く体の軸すらブレることなくカンバーを完全に抑え込んでいる。

 

「はアアッ!!」

 

カンバーは体から赤黒い悪の気を分離させ、空中で手の形に変形させると、それをブロリーの背後からけしかけた。

が、ブロリーは口を引き結んだ穏やかな表情を浮かべたまま後ろを一切見ることなく裏拳でそれを受け止め、弾き返す。その際に乗せられたブロリーの真紅の気に浄化されるように、悪の気は消滅していった。

 

「ふん!」

 

カンバーは力強く地面を踏み込んで強引に地中へ潜り込み、ブロリーの腕から抜けると同時に少し離れた地点から飛び出す。

 

「キサマ、その姿は…!」

 

その赤い瞳に映るのは、かつての好敵手と重なるブロリーの姿。通常時のブロリーをベースに、細身になった体は無駄な筋肉を極限まで削ぎ落したかのようで、炎の如き紅の気を迸らせ、髪色も深紅に染まっている。カンバーの剛力をもってしても一切揺るがないほどのパワーを発揮しているにも拘らず、その表情は普段の穏やかなブロリーそのもので、一見激しく見えるその闘気も驚くほど静かだ。

 

【超サイヤ人ゴッド】

 

かつて存在していたというサイヤ人の神。その力を身に宿した伝説の戦士が、ここに顕現していた。

 

(なんと透明な気…!視えているのに何も感じない…)

 

その闘気は、カンバーからすると一切感じ取れないほど透明だった。燃え盛る炎のような深紅のオーラを目では認識できるが、不気味なほどにそれを感覚では知覚できないのだ。

得体の知れなさを感じ、片足を後ろへ下げようと持ち上げるも、いやいや…と踏みとどまる。確かに不気味なほどの静けさを有しているが、同時にカンバーはみるみる湧き上がる闘争本能に身を委ねようとしていた。

 

「いいだろう…その力で、オレと戦え…!」

 

カンバーは拳を握り締め、手を触れられそうなほどの密度の悪の気をフルに漲らせる。

 

カンバー!!

 

ブロリーは直立したまま目を閉じ、精神を研ぎ澄ますとゆっくりとカンバーを見据え、半身になり、片腕を前に突き出して構える。

 

ブロリー!!

 

ブロリーが息を吐きながら深く腰を落とすと、カンバーが先制を狙って飛び出した。遅れてブロリーがアスファルトを踏み砕きながら前に出る。

ほぼ同時に両者の拳が交差し、互いの顔面へ深く突き刺さる。反発するように吹き飛び、空中で踏み止まったブロリーが素早く飛んでカンバーへ反撃の拳を放つ。

 

GO! ブロリーGO!GO!

GO! ブロリーGO!GO!

 

だが、カンバーはそれを見切ると拳を受け止め、カウンターのパンチがブロリーを打ちのめす。

 

カンバー! カンバー!

 

それでも、ブロリーは反動を利用して宙返りし、サマーソルトキックを放つ。顎を打たれるカンバーだが、さらに反撃を蹴りを放ち、ブロリーの蹴りと衝突する。弾ける気が稲妻の如く閃光を放った。

 

「ぬああぁぁあ!!」

 

獣のような咆哮と共に、ブロリーの至近距離へ向かったカンバーの一撃がその腹へめり込む。が、ブロリーはそれを喰らっても体の軸をずらして上手く衝撃を逸らし、ダメージを軽微に押さえると同時に流れるような動作で頬を殴り、続けて回し蹴りを脇腹へ叩きこんだ。

 

GO! ブロリーGO!GO!

 

「グハハハハハッ!!」

 

その鈍く響く痛みが、口の中に広がる血の味が、カンバーの闘争本能をさらに掻き立てる。

 

(久しい感覚だ…あの小娘…いや、サザンカでさえもオレの本能をここまで昂らせることはなかった…!)

 

カンバー! カンバー!

カンバー! カンバー!

 

ブロリーは連続で気弾を放ち、カンバーを狙う。が、カンバーは分離させた悪の気を一対の手へと変じ、それを意のままに操って気弾を払うと再びブロリーへ急接近し、互いに拳をぶつけ合う。

両者の間で目にも追えない程の激しい攻防が繰り広げられる。その末、互いが後ろへ下がって生まれた隙間へカンバーが蹴りを差し込んだ。

 

oh yeah oh! oh yeah oh!

 

が、ブロリーは抱え込むようにそれを受け止め、カンバーの顔面へ拳を撃ち込む。そうして怯んだところを追撃の蹴りでさらに吹っ飛ばした。

 

oh yeah oh! oh yeah oh yeah oh yeah!

 

「チィ!」

 

カンバーは勢いよく吹っ飛びながらも腕の一薙ぎで無数の気弾を飛ばす。カンバーを追うブロリーは高速でそれらを躱し、あっという間に追いつくと、それを待ち伏せていたかのようにカンバーの赤黒い気功波が至近距離から浴びせられた。

 

サイヤンパワー!!

 

しかし突然、完全に視界の外、真横からブロリーの拳が頬へめり込んだ。

 

「ぬぅあああああ!?」

 

回転しながら吹っ飛んでいくカンバーが倒壊したビルの中を突っ切り、鉄塔をへし折る。何とか地面へ手をついて踏ん張った瞬間、既に目の前に迫っていたブロリーが拳を構えていた。

 

(はやい…!)

 

咄嗟に頭をガードしようとするカンバーだが、それをあざ笑うかのように腹へ膝蹴りが直撃する。ゴハッ、と唾と血を吐きながら体をくの字に曲げて再び吹っ飛ばされた。

霞む目でブロリーを見やると、猛然と加速しながら拳を振り上げ、追撃に向かってきているのが分かった。

 

「ぐあああ!」

 

あっという間に追いついたブロリーがカンバーへパンチをぶちこむ。高層ビルの頂へ手をついて立ち止まり、前を見る。その時には既にブロリーが遠くから放った気弾が眼前へ迫っており、顔面へ喰らった。

その隙に煙の紛れるように迫っていたブロリーが蹴りを放ち、カンバーはそれを腕で押さえるとカウンターパンチを繰り出した。

以前では、カンバーは体力とタフネスにものを言わせてブロリーの攻撃をあまり避けようとせず、あえて喰らって平然として見せていた。だが、超サイヤ人ゴッドとなったブロリーに対しては対等に打ち合いをするほかなかった。

 

「ちぇりゃあああ!!」

 

目を見開き、額に血管の筋を浮かべるほど力みながらカンバーが猛攻を繰り出す。が、腕は空振り、背後へブロリーが居ると気付いた時には遅かった。

ブロリーは手に込めた気をカンバーの背中に押し付け、炸裂させて気功波を発射する。吹っ飛ぶカンバーに、両手に気弾を作りながらさらに向かっていく。だがカンバーも悪の気を操作し、空間ごと切断するように気の手刀で薙ぐ。ブロリーはそれを気弾で相殺し、さらに向かってくる巨大な手も蹴りで止め、気弾をぶつけて消し飛ばす。

カンバーは驚くと同時に、僅かな楽しささえ感じていた。こちらが技を出せば、ブロリーはそれを上回る一手を見せてくる。パワー、スピード共に敵わず、ひたすらに攻撃をもらい続けているが、その中に見えてくる攻撃を差し込める隙を探す事さえ面白い。こんな感覚は久しぶりだった。

 

「来い、同胞よ!!」

 

カンバーはブロリーを同胞だと認め、更なる激闘に期待を寄せて呼びかける。

正直言って、今の己ではヤツに敵わない。だが、それが戦わない理由になるか?

ならないだろ。サイヤ人とは、戦い続けることを選んだ戦闘種族だ。その本懐…死ぬまで戦っていれば、たどり着けるか?“満足のいく死”に…

 

「オレと…戦え!!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。