もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第431話 「新世代のサイヤ人」

「ブロリー…一体、どうなっちゃってるの?」

 

破壊された街の遠くの方で、ハッキリと目でわかるほどの衝撃波があちこちで広がる。ブロリーとカンバーが戦っているのであろうが、カンバーの気は破裂しそうなほど膨れ上がっているのに対し、ブロリーの気はまるで感じることができない。

ブルマは彼らの激闘を眺めていた。

 

 

 

「ぬがあああッ!!」

 

カンバーが放つ無数の気弾に対し、ブロリーは同じ数だけの気弾を放って一斉にひとつひとつ全てを相殺して見せる。そして、カンバーが反応できない速度で接近し、鋭いアッパーを顎へ叩き込んだ。

 

「が…!!」

 

そして至近距離から無数の気弾を叩きつけ、連鎖して起こる爆発に晒されたカンバーが吹っ飛んでゆく。だが、カンバーは吹き飛ばされながらも空中で両手を前に出しブロリーへ狙いを定め、悪の気を特大のエネルギー砲として放った。

 

「でええい!!」

 

ブロリーは冷静にそれの軌道と威力を見定めると、全身に薄い膜のような赤いオーラをバリアーのように纏い、カンバーのエネルギー砲に突撃し、それを弾き返しながら迫ってゆく。

 

「な…!?」

 

そして正面から体当たりし、怯んだカンバーの体が空中で静止する。足元へ目を向けると、ブロリーがカンバーの足を掴んで止まっていた。

 

「ふっ…!!」

 

その巨体を急降下しながら振り回し、地面へ叩きつける。地中の岩盤が砕け、大きく陥没し、カンバーは白目を剥いて顔をしかめる。反撃に移ろうとする暇もなく、今度は顔面へ膝蹴りが直撃した。

直後、ブロリーのパンチが腹へヒットし、再び空中へ打ち上げられる。そこへ緑色の気弾が撃ち込まれ、一気に膨張する気の波動に巻き込まれたカンバーが無茶苦茶に回転しながらさらに空高くへと吹き飛ばされる。

 

「ぶぐううう」

 

文字通り息もつくことができない猛攻を浴び続けるカンバーは、口から泡のようになった大量の血を吐きながら腹の芯から熱くこみ上げる何かを感じていた。それは初めての体験であると同時に、カンバーの闘争本能すらも押しのけて強い忌避感が襲ってくる。

 

(これが…“死”か…?)

 

生前も、カンバーは戦闘の末に重傷を負ったり生死の境を彷徨ったこともあった。だが、その時は己がそこで死ぬ等とは微塵も考えることはなかった。全てを必ず生還すると信じて疑わなかった。

だが、今回ばかりは明確な死のビジョンが脳を支配し、それを実感してしまった。

地面に対して水平の姿勢で、上を見上げるとそこには太陽を背にしてその逆光に包まれ、真っ黒な姿になったブロリーが拳を振り上げていた。彼を包む赤いオーラが独特のシルエットを映し出し、さながら悪魔の降臨かと見紛う。

カンバーの視界が、まるで炭を一滴ずつ垂らされるように少しずつ暗く狭まってゆく。目の前には闇が広がり、水底に沈んだかのように全身が冷たくなる。

 

(これが、“満足のゆく死”なのか?)

 

その時、真っ黒になった視界の奥に、チカチカと光が見えた。

 

(何だ…?)

 

空間も場所もあやふやになり、自分が何をしていたのか、どこにいたのかも不明瞭になった意識の中で、カンバーはその黄金の光を見つめた。

 

 

 

「誰だ」

 

気が付けば、彼は赤い砂に覆われた大地の上で仰向けに寝そべっていた。空には無数の銀河や星雲が浮かび、それらは消えては発生してを繰り返している。

それよりも気になることは、横で見知らぬ女が捏ねた砂を使って自分の体を補修している光景だった。背中で動く茶色い毛に覆われた尻尾や黒髪、その雰囲気からしてサイヤ人の同族であることは分かるが、なぜこんな場所でこんなことをしているのか理解できなかった。

 

「キサマは誰だ、オレの体に何をしている」

 

カンバーは上半身だけを起こして謎の女サイヤ人に威圧する。が、当の女は少し顔を上げてチラっとこちらを見るだけで特に反応はせず、黙々とカンバーの体を捏ねる。

そこでなぜかカンバーもこれ以上問い詰める気が失せ、この光景と事態に心なしかある種の安心感を覚え、空を見上げたままただ時が過ぎるのを待った。

 

(そうか…コイツは…)

 

ようやく、カンバーは全てを理解した。

この女のサイヤ人は、かなり古い時代のサイヤ人だ。カンバー自身も1000年昔に生きていた古代のサイヤ人であるが、それよりもずっとずっと気が遠くなるほどの過去に実在したサイヤ人。

 

 

 

『カンバー、君は始祖のサイヤ人を信じるかい?』

 

生前のカンバーの死後、地獄の底の底にて、湧き上がり茹るマグマに浸かりながら、カンバーの隣にいた金髪の青年は話しかけた。カンバーは汗をかき、体を伸ばしながら首をかしげる。

 

『君よりもはるか大昔に宇宙に存在した原始的なサイヤ人さ。前に話しただろ、君は分割されたゴッドの片割れだ。ゴッドは力を分割される前は1000年周期で出現し、自在にサイヤ人という種族そのものを操り調停を行う。だが、彼らは“祈っていた”だけだ。神だなんて呼び名はまやかし…人がいなければ神も存在しないだろ』

 

『何に祈っていたというのだ』

 

『それが始祖のサイヤ人さ。君を含め、全てのサイヤ人の根幹を作り上げた原初のサイヤ人。ゴッドはあくまで始祖に祈りを捧げる役目を負ったサイヤ人の事なんだよ』

 

『くだらん!ならば何故サイヤ人は死ぬ?自在に種族単位で操れると言うなら、なぜサイヤ人を全宇宙で最強の民族にしなかったのだ』

 

『それにはきっと理由があったのさ。例えば、始祖は恥ずかしがり屋で目立つことを嫌っていた、とかね。だから始祖は全体を見通して必要最低限の祈りしか聞かなかったそうだぞ』

 

 

 

その時は流し半分で聞いていた話だったが、今全てが繋がった。

あのブロリーの紅い姿も一時的に始祖に祈れる可能性のある権利が与えられただけに過ぎない。ならばこのオレにも、始祖へ祈り、僅かにその恩恵を得られる権利は残っているはずだ。

 

それに、オレはまだ死ねない。始祖とオレとの関係に気付いた以上、オレにはまだ限界の先がある。そこに至れぬまま死んだとして、何が“満足のゆく死”であろうか…

 

 

 

 

 

空が光った。天の何処かから降る落雷がカンバーへ直撃し、稲妻のようなエネルギーが彼の全身を包み込む。

 

「なに…!?」

 

カンバーへ必殺の一撃を繰り出したところだったブロリーは、その勢いを止めることが出来ずに拳を叩き込んでしまう。

 

ガシッ!

 

が、拳は黄金のエネルギーの内側から伸びてきた手に掴んで受け止められる。

 

「ばううう…!」

 

そして、獣のような唸り声と共に稲妻が消え始め、中からカンバーが姿を現す。全身を覆う赤黒い悪の気の内側に、なんとこれまでは一切使っていなかった黄金のサイヤパワーが噴き出している。その長髪も金色に染まりやや持ち上がり、瞳の色も薄い緑色に変わっている。

 

「なんて奴だ…!」

 

直感的に、カンバーが超サイヤ人に成ったことを察したブロリーは手を振りほどき、後ろへ後退した。

今まで、通常の姿のままここまで戦い続けてきたカンバーが、ここへ来て超サイヤ人のパワーを上乗せしてきた…それが意味することは嫌でもわかる。

 

「さァ…かかってこい。このオレに、新世代のサイヤ人の力を見せてみろ」

 

超サイヤ人ゴッドと化したことでカンバーに死を突き付けられるほど強くなったブロリー。だが、悪のサイヤ人プラス超サイヤ人の力を加算したカンバー。力関係は対等になったのか、それとも振り出しに戻ったのか。

そんなことは、互いにもう一度ぶつかって見ればわかる。

 

「ぬあああッ!!」

 

「デヤアアッ!!」

 

両者の拳がぶつかり合い、凄まじい気の波動が周囲へ広がり、周囲数十メートルの範囲内に倒壊していたビルの残骸が砂と化して吹き飛び、街並みが荒野に変わった。




今日で「もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら」が連載6周年になりました。6年間毎日この小説の事を考えていると思うと凄くないですか?
物語的にはまだちょっと続きますが、必ず完結させますのでこれからもよろしくお願いします。
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