もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第432話 「あぁ」

最初の一撃で、互いの力量を評価し、いったん後ろへ反発するように下がっていくブロリーとカンバー。

カンバーは黄金と赤黒い悪の気を二層に噴き出し、ブロリーは深紅の気を放出し、それをぶつけ合う。両者は少し離れた位置で直立したまま、立ち上るオーラだけを自在に操り、それを何度も叩きつけ合った。

ぶつかる度に砕けるように破壊される両者のオーラだが、すぐに形を練り直し、拳や自身の頭部、果ては槍や剣のような武具となって激突し続ける。

 

「がああアアア!!」

 

カンバーは溢れる力を開放するのを我慢できないと言った様子で吠え、全オーラを巨大化させて周囲一帯を覆い、全方位からブロリーを押し潰そうする。

意識を集中させ、水流のようにうねりながら迫るオーラの濁流を躱していくブロリー。巨大な光弾を投げつけて悪のオーラを消し飛ばし、道を作ると一直線にそこへ突っ込み、カンバーへ殴りかかる。

真上から拳を振り上げて襲い掛かるブロリーの背後に拳の形をした巨大な気の塊がいくつも出現し、それに気付いたカンバーはカウンターの構えを解いて守りに集中する。

まずブロリーの生身の拳をクロスさせた両腕で防ぐ…が、やはりその直後に流星群のように大量に降り注ぐ巨大な拳がカンバーを押し潰し、衝撃と深紅の気の爆発が周囲を染めた。

 

「グハハハ!!」

 

その中央で、カンバーは全身に傷を受けながらも悠々とブロリーへ歩み寄り、直後に素早く背後へ回って頭部を鷲掴みにすると、その身体を強引に引っ張り寄せた。そして、後頭部を押さえたまま反対の腕で超高速のパンチの連打を何発も浴びせ、最後に掌で気を炸裂させて吹っ飛ばす。

勢いよくロケットのように吹っ飛ぶブロリーはそれを移動に利用し、街から遠ざかってゆく。

 

(やはり何もない場所で闘うか…!いいだろう、人質などという狡い真似はオレもせん…キサマが全力で闘れる場所を選べ)

 

 

(すまん…)

 

ブロリーは戦闘に巻き込まれて死んでしまったであろう何百人もの人間へ対し心の中で謝罪を述べながら超高速で飛び、今では全く人の気のない荒れた山岳地帯へたどり着いていた。

 

「な…!?」

 

「ハァアアアアアアア…!!」

 

自身の頭上から大きな影が降りたかと思えば、いつの間にか頭上の空にカンバーがいた。しかも、掲げた片腕の上にあるのは標高にして1万メートルは優に超えるであろう、地中ごとくり抜いてきた世界最大級の超巨大な山だった。

まさに天変地異。カンバーはそれを投げ下ろし、山が落下する間にブロリーの下方へ移動し、突進して突き上げ山へ激突させる。

二人は山の中の岩盤をゴリゴリと削って移動しながら取っ組み合う。ブロリーは不意打ちでカンバーの腕に噛みつくが、カンバーは怯まずに仕返しとばかりに大口を開けてブロリーの頭に嚙り付く。

流れた血で染まるブロリーの顔と、歯型が付き青く腫れたカンバーの手首。しかし、カンバーは構わずブロリーの顔面を殴打。ブロリーも反撃の蹴りをカンバーの腹へめり込ませる。両者は一撃一撃が大気を揺るがす威力を誇る打撃を互いに無数に叩き込みながら岩盤を突き抜け、砕けた山が荒れ地の上に墜落する頃、最後に攻撃を当てていたのはカンバーだった。頬へ攻撃を命中させられたブロリーが空高く吹っ飛び、カンバーが勢いそのままに跳び上がってそれを追い越し、真上からブロリーの腹を蹴りつける。

 

「ごは…!!」

 

「ラァァアアア!!」

 

ブロリーは仰向けのまま体をくの字に曲げ、螺旋状に渦巻く赤黒い気に包まれながら急降下し、踏みつけられる。地面へぶつかり、跳ね返った気の奔流によって二人は同時に打ち上げられた。

今の一撃のダメージを引きずっているブロリーは体勢を立て直すことができずにカンバーの追撃を許してしまう。顔面へパンチを当てられ、腹へ掌底突きをもらうと当時にその掌から一瞬にしてゼロ距離からの気弾を何発も炸裂させる。ブロリーは全身が砕け散ったのかと錯覚するほどの衝撃を受け、気の炸裂を喰らった箇所である胸から腹へかけての中心に亀裂のような傷ができる。

 

(コイツ…だんだんと出力が上がってきているな…!)

 

初めこそ、超サイヤ人ゴッドとなったブロリー、超サイヤ人へ覚醒したカンバーのパワーはほぼ同じであったが、カンバーは驚異的な速度と戦闘センスによって僅かな時間で初めての力を使いこなし出していた。今では、恐らくカンバーの方が戦闘力が上だろう。

ブロリーは血を吐き、大きなダメージを受けながらも受け身を取って着地し、同じく降りてきたカンバー目がけて鋭い蹴りを繰り出す。

 

「ぬうう…!!」

 

戦況は既に逆転していた。

ブロリーの蹴りを片手で止め、足首を掴んだカンバーはパワーにものを言わせて細身のブロリーを振り回し地面へ叩きつける。砕けた地盤の中心で呻き声をあげるブロリーに対し、カンバーが足で踏みつける。

 

「ヘアアッ!?」

 

かろうじてそれに気付いたブロリーが転がって躱す。が、カンバーの攻撃は執拗だった。何度も踏みつけてくる大きな足を避け続け、何とか立ち上がると手の中に気弾を作り出し、カンバーへ投げつけようと振りかぶった。

 

「うお!?」

 

しかし、それが手から離れるよりも前に、不意に前へ飛び出してきたカンバーの腕がブロリーの顔面を鷲掴みにする。

 

「グハハハハ!!」

 

カンバーは巨大な岩石にブロリーの頭を押し付け、狂気じみた笑いを上げながら駆け出す。ブロリーの叫び声と共に岩が一直線に削られ、壁が途切れたところでその身体を放り投げ、二度、三度とバウンドしてその体がようやく止まる。

 

(ここで一気にカタを付ける…これ以上ヤツの気が高まる前に!)

 

ブロリーはカンバーの成長性をいよいよ危惧し出す。自分もこれまでに戦闘の中で唐突なパワーアップを行い不利な戦況を何度も覆してきた経験があるが、今度はそれが同じサイヤ人であるカンバーの身にも起こったのだ。自身の気を最高にまで高めて放出し、全身に炎の如く燃え盛るような深紅のオーラを纏いなおす。

それを見たカンバーは、嬉しさのあまり片目だけを大きく開いて顔を歪ませて笑みを浮かべ、両の拳を握りしめ、バーナーのような黄金の気の外側に広がる赤黒い悪の気を霧のように周囲へ広げる。

闘う事こそがすべて…原始の闘争本能とやらに基づいて強さと闘争を求めるカンバーは己の天性を今一度自認した。

 

「さァ、来い!!オレが叩き潰してやる!!」

 

キュウウウウ…

 

ブロリーは右手に全身の深紅の気を集中させ、高炉の如く白熱する拳を作り出す。カンバーも膨れ上がらせた赤黒い悪の気を左拳へと集約し、その体には黄金のサイヤパワーだけが残る。

 

「デヤアアアアア!!」

 

「ヌウアアアアア!!」

 

両者の雄叫びがビリビリと響き渡り、同時に跳びかかる。お互いの全てを込めた拳が振るわれ、まさにこれが正真正銘最後の一撃となるだろう。これによって勝敗が決する…二人はそう確信した。

 

 

 

──なんだこの感覚は…オレは今まで何をしていたのだ?

 

カンバーは刹那の時の間に思考する。目の前には、己にとって史上最強の対戦相手が拳を振るっている。

 

──前にも、こんな感覚があったな…

 

やはり思い起こされるのは、1000年以上前、同胞たるサイヤ人・ヤモシとの決戦。それまで幾多もの闘争を経験していたが、赤髪に黄金の闘気を持つあの時のヤモシとの戦いが最も楽しかった。

だが、邪魔が入った。最高潮のタイミングで差し込まれた予想だにしない横槍の所為で、オレは不本意な勝利をおさめてしまった。それから、ヤモシとの決着に匹敵するであろう戦いを求めてオレは闇雲に戦い続けたが、最期は病気などというくだらんもので死んだ。

 

 

『カンバー、君は一足先に現世へ向かえ』

 

カンバーが地獄の底の底から現世へと蘇る少し前の事だった。目の前にいる、青いつなぎを身に纏った金髪の青年はカンバーにそう言った。

 

『ハーツ…叩き潰すぞ。どうやって現世へ行けというのだ』

 

金髪の青年…ハーツは顔の左右を色の違う皮膚でつなぎ合わされたような精悍な顔をカンバーに向け、その威圧にも怯むことなく答える。

 

『まず地獄を抜けて上へ上へと目指せ。今の君ならできるだろう?そうしたら、あの世のとこの世の境目だという五行山へ向かうんだ。そこを超えて道なりにずっと進むと、“三途の川”と呼ばれる広い川がある。それを過ぎれば…何といえばいいのか、「幻想郷」と呼ばれる不思議な異空間がかつて存在していた場所へ出る。そうすればそこは地球…もう現世だ』

 

『地球…そこには強い種族はいるのか?』

 

『さァな、現住の人間は大したことないような気もするが、どうだかな。俺は後から行くよ。それまで好きに待っていろ…あ、そうだった。俺が言った奴らに接触することを忘れるな』

 

 

オレは現代の強者と好きに戦わせろという条件付きで自分と同じく地獄の底の底に堕とされていたハーツという男と手を組んだ。オレは言われた通りの方法で“肉体を持った魂”として蘇った。途中で見つけたベジータというサイヤ人を連れて。

オレは地獄で生前をはるかに凌駕する力を手に入れた。ハーツが言う神々とやらに対抗するにはこれくらいなくてはならないらしい。強者と戦えるならなんでもいいが、オレは神よりも現代を生きる強き同胞と死合いたい。ベジータにもオレの悪の気を与えてやったが、ヤツを強者とは感じなかった。

 

オレが認める真の強者はキサマだ、ブロリー。だからブロリー、オレと戦え。

オレが“満足のゆく死”を迎えるまで、永遠に…!

 

 

 

ゴオオッ

 

瞬間、ブロリーの背後に巨大な影が出現する。

 

「…!!??」

 

突如として現れた、ボロボロで満身創痍な状態に見える大猿ベジータが、両拳を合わせたスレッジハンマーを振り上げている。

何故気付かなかった?否、気付けなかった。必死だった。戦いを楽しみ熱中していたカンバーは当然のこと、そんなカンバーを一刻も早く無力化させるべく全力で戦うブロリーも同じだった。

ベジータの一撃がブロリーの脳天へ直撃する。その攻撃は決して甚大なダメージを喰らわせたわけではないが、ブロリーの動きをほんの一瞬止めるには十分な唐突性だった。

 

「あぁ」

 

カンバーの口からか細い息が漏れ、顔面が蒼白し、一気に顔中に脂汗が浮かぶ。そして、悲壮感に歪むその目が目撃した光景は、もはやどうすることもできない自身の必殺の一撃が、ブロリーの腹を貫通する様だった。

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