もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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ポケモンが面白くて遅くなりました。


第435話 「ツフル人はこの世に」

「ぷうっ」

 

ドミグラが完全に消滅し息絶えたことを確認したシロナは口を尖らせて一息つき、煙草を咥えて指先で火を点け、煙を吐き出す。

 

「結局何だったのよ、アイツは」

 

魔神という、文字通り魔の神との激闘を制することで、ファントムシロナは更なる進化を遂げていた。

 

「よし、じゃあ待っててねサザンカ!今行くから!っと、その前にこれ出しとこ」

 

 

──魔神ドミグラvsファントムシロナ

勝者 ファントムシロナ

 

 

 

 

 

場所は変わり、一方その頃の地獄。地獄中の邪念を集めてさらに変身したジャネンバベビーが大剣を振るって繰り出す強力な斬撃を受け、大きなダメージを負ったサザンカ。

両者の戦闘は一見すると一進一退の攻防を繰り広げているように見えたが、ベビーはまだまだ余力を残しており、対するサザンカは傷によって左腕が動かせないこともあり劣勢であった。

 

「ふはははは!」

 

ベビーが大剣を振るうたびに次元すら切り裂くほどの巨大な斬撃が放たれ、サザンカはそれを避け続けることを強いられていた。大きく跳ぶたびに血が零れ、息も荒くなる。

 

(なんだか…調子悪ィな…)

 

そう思いつつも渾身の蹴りを大剣に叩きこみ、それをへし折って破壊する。

握っていた柄を手放し、直後に拳を振り上げて迫ってくるベビーから距離を取り、今まで自分がいた場所の地面が砕ける。ベビーは笑いながら次々と追撃を繰り出し、サザンカは反撃すらできずに追い込まれていく。

 

(このままじゃアタシは敗ける…!今じゃアイツの方がパワーも余力も上になっちまってる…クッソ、アタシは…)

 

ベビーが生み出した大剣は既にサザンカが破壊し、それ以降斬撃は封じている。だが、それを失ってもなお単純な戦闘能力の多彩さにおいては全く変化はない。

その考えを肯定するかのように、眼前へ迫ったベビーのパンチを顔面へ受け、後方へぶっ飛ばされる。

 

(だがそれがどうした!?)

「気合入れてけよサザンカ!!」

 

叫び声で自らを鼓舞し、精神力を奮い立たせてその場で踏み止まるサザンカ。拳を握って闘気を高め、一気に飛び出した。

笑みを浮かべながらもベビーは進化したジャネンバの肉体を駆使してそれを迎え撃つ。拳と拳がぶつかり合い、蹴りと蹴りが交差する。

 

ガキン!!

 

堅い金属同士がぶつかり合ったかのような音と共に両者の頭突きがぶつかり、互いが後方へ反発する。だが、ベビーよりも小柄なサザンカはすぐさま懐へ潜り込み、鳩尾へつま先が深くめり込むほどの蹴りを放った。

 

ミシィ…

 

「ぐえ…!!」

 

前のめりになり、顔が前に突き出たところをサザンカの右拳が殴打し、後方へ仰け反る。さらに、今度は背後の頭上へと回り込んだサザンカは、鬼気迫る表情で足を折り曲げ、後頭部目がけて蹴り付けた。

 

ガン!!

 

ベビーは顎から地面へ叩き付けられ、土塊が舞い上がる。サザンカの手がベビーの尻尾を掴み、強引に宙へ放り投げると、全力の気を込めた渾身のパンチを胸へと叩きこんだ。

地が震え心臓にまで響くほどの振動と音が発生し、サザンカはさらに力を込める。まさにこのまま体を貫通せんとばかりの勢いだった。

 

「ウオオオオオオオオ!!!」

 

 

ザンッ

 

 

…何が起こったのか理解できなかった。体が不意に後ろへ傾き、目の前にふたつの物体が浮かんでいる。

 

「サザンカ!!!」

 

背後から霊夢の絶叫が聞こえる。だが、現状を理解したサザンカ自身にとってはそれすらも意味のある言葉としては取り込めず、目の前で舞う血飛沫がひどくゆっくりに見える。

次の瞬間、ベビーはサザンカの腹へ拳を炸裂させ、その場で地面へと叩きつけた。

 

「かは…ク、くそ…!!」

 

「クックック…こう終わってみると案外呆気ないものだったな…野蛮なサイヤ猿よ」

 

 

─────

 

 

数か月前、ベビーは密やかに地球へと降り立っていた。惑星M2にてブロリーに倒されてから宇宙中を転々としエネルギーを蓄え、体を既に完全体にまで成長させている。

 

(ここが地球か…)

 

銀色の液状の体で街の用水路の中を這い、環境や人々の様子を眺める。この地球にいるはずのブロリーに寄生して体を乗っ取り、“全宇宙ツフル化計画”を始動しようとしているベビーはその驚異の牙を剥こうとしていた。

 

『やあ、遅かったじゃないか』

 

「!?誰だ…!?」

 

その時、ベビーは急に頭の中に響いた声に困惑した。同時に、不明瞭にぼやけているが、脳内に声の主であろう男の姿のイメージが浮かび上がる。

 

『おっと失礼、ベビー…俺はハーツという者だ。君が地球へやってくるのを待ちわびていたよ』

 

ベビーは驚きを隠し、平然であるかのように問答を行う。

 

「ハーツとやら…なんのつもりだ?何故オレの事を知っている?」

 

『信じられないだろうが、俺は今地獄から君に話しかけている。ちょっと旧友に会えたおかげで一時的に現世へ干渉できるようになってね。そこで偶然君を見つけて、是非協力してほしいと思ってね』

 

「なに?」

 

『もちろんタダで…とは言わないさ。取引だ、君の野望を成就しやすくする有益な情報を出そうじゃないか』

 

そこでベビーがハーツと交わした取引はこうだ。

ベビーは地球人への寄生を繰り返し、各地でテロを引き起こし続け死人を増やす。そうすることであの世にてジャネンバという邪念の塊が発生し、あの世の法則が滅茶苦茶になる。そうなればハーツは現世へ蘇ることが出来るし、ベビーもジャネンバという強力な肉体と能力を持つ宿主に寄生し地獄から蘇った様々な戦士を洗脳し配下に置くことができる。

 

「貴様の目的は、あの世とやらからこちらへと来る事か?」

 

『そうだ。俺が目指すのはそれだけ…それさえ済めば俺は君に何も干渉しないことを約束しよう。最も、君自らがもっと俺と一緒に話がしたいと言うなら吝かではないが…』

 

「バカを言え。貴様のような得体のしれんヤツとはこればかりだ」

 

『ははっ、確かに』

 

 

─────

 

 

「我が民族…ツフル人を滅ぼしたサイヤ猿ども…それもこの日をもって絶滅を迎える。貴様はその記念すべき1人目というわけだ」

 

右腕、右足が付け根から分断され、血だまりの中に転がっている。サザンカは左足だけを動かして立ち上がろうと地面を蹴るが、靴で血を塗り付けるばかり。

 

「サザンカ!!」

 

「貴様はさっさと消えろ」

 

真っ青の形相でベビーに襲い掛かる霊夢に対し、ベビーは手の平をかざす。すると、その手から網目状に組まれた斬撃が発生し、霊夢へと向かってゆく。

 

「!?」

 

霊夢は咄嗟に強固な結界の防御壁を正面へと展開し、斬撃から身を守ろうとする。結果、斬撃は結界に突き刺さりその向こう側の霊夢を傷つけただけで済んだが、勢い衰えず飛び続ける斬撃に押される形で霊夢は遥か彼方へと吹っ飛ばされ、見えなくなった。

 

「ク…おい…!!」

 

「ん?」

 

眼下で呻きながら自分に声をかけるサザンカを冷ややかに見下ろすベビー。

 

「お前の相手は…アタシだろが…!」

 

だが、もう地面でもがく事しかできないサザンカを見る目は変わらない。どころか、口元にうっすらと笑みを浮かべる。

 

「フッ…そうなった貴様に何ができる?ただ死を待つだけだろう。だが、このオレ様は違うぞ!オレは宇宙で最も優れていたツフルの民族でこの宇宙を覆いつくしてやるのだ!」

 

「なんだそりゃ…」

 

「オレは寄生した生物の体内に卵を産み付けることができる。その卵が孵れば、もうソイツはオレの遺志を継いだツフル人として生まれ変わるのだ。だが…それはまた後の話。まずは貴様らサイヤ人を皆殺しにする…その時初めて、オレたちツフル人はこの世に蘇るのだ」

 

ベビーはしゃがみ、サザンカの頭を掴んで持ち上げる。

 

「ブロリーの記憶から読み取ったサイヤ人ども…その中でもヤツ以外で極めて高い戦闘力を持っていたのがサザンカ…貴様だったが、それもこのザマだ。…さっき、オレの斬撃が剣を振るって出るものだと思い込んだろう?だから負けたのだ…その点、博麗霊夢は気付いていたがな」

 

手を離し、どさっと再び倒れ込むサザンカ。

 

「そろそろトドメだ。じゃあな、サイヤ人」

 

サザンカの頭上に先ほどよりも細かな網目状の斬撃が発生し、それが急降下してくる。横目でそれを見上げるサザンカは、死を予感しつつも必死に這ってでもその場を離れようとし───

 

 

 

ガキイィン!!

 

 

「サザンカ大丈夫!?」

 

瞬間、靡く紫色の髪が視界を横切る。そこには、外見も服装も見たこともない者がいた。しかしサザンカはすぐに気づく。

 

「バッカ、大丈夫なわけねーだろ…」

 

蟹のハサミに変えた右腕で網目の斬撃をバラバラに解体したシロナがそこにいた。

 

 

 




今年もご愛読ありがとうございました。来年で終わるかどうかはわかりませんが、最後までよろしくお願いいたします。
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