もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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あけましておめでとうございます。


第436話 「俺は魔人ウスターだ」

シロナ、サザンカ、ブロリーたちが地球と地獄で壮絶な戦いを繰り広げている時間から数日後の物語である。

シリアル星のドラゴンボールを貸してもらうため、ピッコロ、スカッシュ、ウスター、ミル、カズラとアザミは宇宙船ケツァルコアトルに乗って宇宙を航行していた。

この宇宙船は飛行機型の人造人間ケツァルコアトルを小型化して最新の宇宙船技術で改造を施し、人工知能と組み合わせることで未知数の速力を実現することで、通常の宇宙船なら15日以上見込まれるシリアル星へ僅か3日でたどり着けるという計算だった。

既に3日近くが経っており、シリアル星まであと少しという所まで来ていた。

 

「…」

 

スカッシュとピッコロは運転席に座ってモニターを見続け、ウスターは別室でトレーニングを、ミルは机に肘をついて顎を乗せたままうたた寝し、カズラとアザミはベッドの上で座り込んでいる。

とその時、静かな船内へ通知音が流れる。ミルが目を開け、カズラたちも驚いて立ち上がる。

 

「ブルマからだ、何かあったのか?」

 

スカッシュがその内容をヘッドフォンで確認する。そしてしばらくして…

 

「…みんな、今ブルマから連絡があった。どうやらサザンカが地獄から帰還する手立てが他に見つかったらしいぞ!」

 

「ま、マジですか!?」

 

ヘカーティアを通じて霊夢から「必ず帰らせる」という伝言を聞いたブルマは、絶対にサザンカは地獄から帰ってくると確信し、ケツァルコアトルへ通信を送った。通信の速度とケツァルコアトルの航行速度がそう変わらないために届くのが遅くなってしまうのだ。

 

「詳細は不明だが、ドラゴンボールを使う必要がなくなったからここで帰還してもいいそうだ」

 

「でしたら、速やかに帰還いたしましょう。ここにはカズラさんやアザミさんもおります…一刻も早く安全な地球へと戻るべきですわ」

 

「ああ、そうするさ」

 

そう言ったミルに対し、スカッシュも宇宙船の速度を落として向きを変えようとする。が、それをカズラが止めた。

 

「ちょっと待ってもらえませんか!?」

 

「どうしたんだよ」

 

隣のアザミも困惑する。

 

「このままシリアル星へ向かって欲しいです」

 

「…それは何故ですの?」

 

「これは俺の勝手な願望でしかないですけど…天下一武道会の後、サザンカの所為で死んでしまった一般人を全員生き返らせたいんです、ドラゴンボールを使って」

 

「おいカズラ、そりゃ…」

 

「分かってる。俺は…アイツの事が今じゃ一番大事だ。だからアイツには…大勢殺したって言う罪悪感を抱えて生きてほしくないんだよ」

 

そう言ったカズラに、立ち上がったミルが近寄る。

 

「いくら死んだ人間を生き返らせて元に戻したとしても、人を殺した…その事実は消えないと思いますが」

 

ミルの目線は鋭くカズラへと向けられている。

確かにミルの言う通りだ。ドラゴンボールの力で死人を生き返らせたとしても、一度は大勢を殺した…その事実は消えず、殺したという実感だけはサザンカの内に残り続けることとなる。

 

「それはわかります。けど、少しでもサザンカの罪悪感を和らげてやりたいんです…」

 

カズラは真っすぐにミルを見つめ返しながらそう言い、ミルも見定めるようにじっと視線を返し続ける。

 

「と言ってもな!アタイは操縦手として、わざわざ危険に突っ込むことはできねぇよ」

 

会話を聞いていたスカッシュがそう口をはさむ。

 

「いいえスカッシュさん、このままシリアル星へ向かってくださいませんか?」

 

「え?」

 

が、以外にもミルがスカッシュに反論した。

 

「私からもお願いです。カズラさんの言う通り、予定のままシリアル星のドラゴンボールを求めましょう。ここまで来たのですから、ね」

 

「おいおい、なんでまた…まあ確かにシリアル星の住民も大人しい種族だし危険が潜む星じゃないけどよ…それでもリスクは排除すべきだろ」

 

「スカッシュさん、分かりませんこと?人の恋というものの熱はこれくらいじゃ冷めませんのよ」

 

「は…?」

 

ミルはカズラの方を向いて小さく微笑む。

 

「ミルさん…!」

 

「はー…ったく、しょうがないねぇ。じゃ、予定通りシリアル星へ向かうよ!まぁアタイとしても実はそうした方がいいんじゃないかと思ってきたところだ」

 

「鬼が出るか邪が出るか…ですが、地球の神としてその願いは聞き入れましょう」

 

スカッシュは再度シリアル星へと宇宙船の進行方向を設定し直し、船は本来の目的地を目指す。

 

「…ありがとうございます!」

 

…方向を変え、進み始めてから数秒、カズラが礼を言った直後。

 

「なんだ?あの宇宙船…」

 

スカッシュが慌ててモニターを確認する。すると、後方から見た事のない宇宙船がこちらへ迫ってきているのを発見した。

 

「誰でしょうか?我々を追っているように見えますが…」

 

ピッコロもその不気味な宇宙船の不穏さに気付き、焦りを見せる。

 

「お前ら、どうやら地球からずっと厄介なヤツにつけられていたらしいな」

 

と、そこへ別室にいたウスターが汗を拭きながらやってくる。そしてモニターの宇宙船をじっと眺め、部屋の後ろを見た。

 

「厄介なヤツ…?まさか」

 

スカッシュは最悪の予感を覚え、ウスターが気を読み取って判断したその者の名を聞く。

 

「フリーザだ」

 

そう言ったウスターの顔は、どこか好戦的な笑みが浮かんでいるかのように見え…

 

「…なるほど、素直に引き返していたらアレとかち合ってた訳かよ…」

 

スカッシュは冷や汗をかいた。と同時に理解した。もはや自分たちは引き返すことができない…どの道、シリアル星へたどり着くしかなかったのだ。

 

「俺を出せ」

 

「え?」

 

ウスターはそのまま下層にある外へのゲートの方へ歩いてゆく。

 

「ヤツには借りを返さなくてはな…だから俺が相手をする」

 

そう言ったその顔は先ほどまでの好戦的な笑みに加え、覚悟を決めた戦士の眼差しが宿っていた。

忘れもしない…かつて、ウスターはナメック星で成す術なくフリーザに敗北し、危うく死にかけた上に実験体として捕まり暴走した記憶がある。

 

「…わかった。死ぬなよ」

 

スカッシュもフリーザの強大さは十分に理解している。苦渋の表情でそう言うと、それを聞いたウスターはゲートへと続く通路の扉を開ける。ピッコロ、ミル、カズラ、アザミがその背中を見送り…

 

「俺は魔人ウスターだ」

 

ウスターは横目を彼らへ向けながらそれだけ言い残し、宇宙空間へと飛び立った。

 

 

 

 

「やっと追いついたぞ…全く、奴ら一体どんなエンジンを作ったのだ」

 

「ふっふっふ、やはりアナタに頼んで正解でしたね」

 

ケツァルコアトルを追っていた宇宙船の中にいるのは、地球でシロナ達から逃げ果せたDr.ミューと、なんとあのフリーザであった。

 

「行先は…ほほう、シリアル星ですか。何故そのような星に…てっきり誰も住民がいない星で究極のドラゴンボールとやらを使うつもりかとここまで追ってきましたが…何を考えているのでしょうか」

 

既に最終形態のまま行動しているフリーザは、ミューらと同じく地球の大穴を通って地獄から現世へ蘇った。高度なマシンミュータント技術で宇宙船を建造できたミューと協力を結び、彼らの持ち出した究極ドラゴンボールを求めているのだ。

 

「おや」

 

その時、フリーザも宇宙船に搭載されたモニター型のスカウターが反応したのに気付く。そこにはこちらへ猛然と向かってくるウスターが映っており、見覚えのあるその姿を見て口角を釣り上げる。

 

「見覚えのある方が来ましたねぇ…いいでしょう、私が相手をします。ミューさん、ハッチを開けなさい」

 

「構わないが…先に奴らを追っているぞ?私にドラゴンボールを使われても文句は言うなよ」

 

「大丈夫ですよ、すぐに済みますので」

 

 

 

 

「…!?」

 

ウスターは真正面から向かってくる宇宙船目がけて特大の気功波を放出する。が、それは着弾せずに何かに阻まれて止まり、かと思った瞬間に目の前へ瞬時に迫って来たフリーザの飛び蹴りを受け止める。

 

「フッ」

 

両者の真下をミューの宇宙船がゴオッと通り過ぎ、取り残された両者は互いに挑発の笑みを浮かべ、それが戦闘開始のゴングとなる。

宇宙最恐の帝王、そして魔界最強の戦士。あの時の最終決戦の場においてはウスターの力はフリーザに及ばなかったが、今は違う。あれから地道に弛まない修行を重ね続け、ウスターも強くなった。地獄にいる間、戦闘力の変化のなかったフリーザに対し、今なら通用するはずだ。

 

「お久しぶりですねぇ、ウスターさんとおっしゃいましたか?」

 

「覚えていてくれて嬉しいぞフリーザ!」

 

フリーザが振り下ろした腕を受け止め、反撃の回し蹴り。フリーザはそれを尻尾で弾くように防ぎ、飛びかかって掴みかかる。

 

「アナタも宇宙空間で生きていられるとは少し驚きました。ですが、退いてくださいますか?私は貴方のお仲間が持っている究極のドラゴンボールが欲しいのですよ」

 

「それはできないな。どうしても欲しいのなら、俺を倒してみろよ」

 

ウスターにそう吐かれたフリーザはピクリとこめかみに青筋を浮かばせる。

 

「ああ、勘違いするなよ。今は貴様が、俺に挑戦してるのだぞ」

 

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