フリーザは高速で宇宙空間を飛行しながら、人差し指から細かなエネルギー弾を連射しウスターを狙う。
ウスターは腕を大きく水平に振るい、生じた巨大な衝撃波でそれらを打ち消して見せる。それを見たフリーザはそう来なくては、とにやりと笑い、前へ突き出した両手の指全てから鋭く細い光線を発射した。
体勢を変え、10本全ての死の光線を回避し、そのままオーラを纏いながら突撃し急接近するウスター。が、フリーザは両手の指をそれぞれ動かして蛇行するレーザーでウスターを狙い続ける。
「はははッ!」
ウスターは好戦的に笑いながら、体から立ち上る紫色のオーラを分離させて巨大な両手を形作り、それで自身の両側と前を守りながらさらに突っ込む。
「ほっほっほ…」
フリーザも小さく笑いながら指先の光線を出し切ると、既に目の前にまで迫っているウスターのオーラの腕を冷静に蹴り飛ばし、本体を露出させると鳩尾へ尻尾による刺突を食らわせる。
(硬い──)
が、ウスターの強靭かつしなやかな筋肉に阻まれ、皮膚と少しの肉に傷をつけただけでそこまでのダメージは与えられなかった。次の瞬間、ウスターの拳がフリーザの顔面をとらえ、さらに追撃の猛ラッシュが浴びせられる。
ガシッ
フリーザはウスターの腕を掴んで攻撃を受け止め、そのまま回転して振り回し、ブン投げる。宇宙空間をすさまじい速度でぶっ飛んでいくウスターは途中にあった浮遊物の巨大岩石に激突し、その内部までめり込んでいく。
ボッ
右手にエネルギーを充てんさせながらフリーザはその岩石に接近し、気弾をぶつけて巨大な爆発を起こし、粉々に破壊する。ウスターが今ので死んだか確認しようとするが、いつの間にか背後へ迫っていたウスターから背中へ飛び蹴りを喰らい、自らの気弾の爆発に突っ込んでしまった。
すかさず、そこへ追い打ちの気功波を撃ち込むウスター。しかし、その横スレスレを猛スピードでこちらへ向かって突っ込んでくるフリーザに目を見張る。そのフォームによる攻撃は、かつてナメック星でウスターの片腕を奪った時の攻撃と同じだった。
これをやり過ごせなければ、自分はあの時と同じ二の舞だ。
…当然
ゴシャア!
そんなことはあり得ない。ウスター渾身の蹴りによるカウンターがフリーザの顔面へ炸裂。フリーザは歯を食いしばりながら吹っ飛び、宇宙空間の中で項垂れた。
「…なるほど、15年前に地球で相対した時よりも流石に強くなっているようですね。その点、私はあのころとは強さにおいて変わっていません…」
フリーザは口の端から流れる血を拭い、不敵な笑みでウスターを見据える。
「ですが、長い間地獄にいた私は心が少し変わったようです。地獄とは悪人の贖罪の為にあるらしいですが、言い得て妙だ…」
「つまり何が言いたい?」
ウスターは全て察したうえで敢えて問いかける。
「今の私は全力で戦いを楽しみたいと思っています。強くなったアナタとでなければ、わざわざ蘇った価値がないというものですよ」
「俺もだ」
両者の思想が一致する。フリーザの力は生前と一切変わっていないが、それは死ぬ直前での戦闘力であり、それはつまり神精樹の実を食したあとという事。対するウスターは自力での修行や特訓を重ね、それに肉迫するレベルにまで強くなっている。
ウスターの言葉に更なる昂ぶりを覚え、いざ飛びかかる構えを取るフリーザであったが、直後にウスターを中心に広がった異様な雰囲気を前にして足を止める。
「お互い宇宙じゃ多少なりとも不便だろう?」
直後、ふたりの周囲の様子が変わる。
(これは…?)
デッドゾーン。かつて、幻想郷の賢者ガーリックの息子であるガジュニアが利用していた暗黒の異空間。そこは一条の光も刺さない闇だけが広がる魔族の領域であり、宇宙空間とも様相や性質は異なる。
その闇の中に存在するのは、ウスターとフリーザの二名のみ。
「安心しろ…勝てば出られる」
どちらかが倒れるまでデッドゾーンから抜け出すことはできないというデスマッチへと持ち込んだウスター。
「もちろん、それは俺だがな」
その後すぐ、ウスターの体に異変が起こる。全身の皮膚が黒紫色に変色したかと思えば、電気か火炎の如く揺らめき始める。ウスター自身の身体が彼女の持つ“気”そのものへと変質したかのようだった。
「『
「!?」
流星の如く暗闇に尾を引きながら前へ飛び出したウスターの突進がフリーザを吹っ飛ばす。視界が激しく揺れ、何が何だかわからないままその先で背後から追撃を受け、背中の骨が軋む。
「ぐは…!」
反撃しようと振り返りつつエネルギー波を発射するフリーザだが、ウスターは目にも止まらぬスピードで一瞬にして視界から消え、再度フリーザの背後から膝蹴りを叩きこんできた。
(なんだ…コイツに何が起こった?)
『魔芯解放』、ウスターが編み出した変身であり決死の奥義である。
全身の気を爆発させ、肉体という枷を取り払い、漲る闘気を剥き出しにしたその姿は、例えるなら器を用いずに水を宙へ溜めているような状態であり、ウスターは自らの気でその状態を保持し続けている。
当然、そのような荒業は長くは続けられない。莫大な戦闘力と引き換えに、早く解除しなければウスター自身やがて死に至る。
魔芯解放は文字通り決死の覚悟の証。ウスターは何が何でもここでフリーザを仕留めようとしている。
「フウウオオオオオオオオ!!」
電撃の如くフリーザの周囲を駆け巡り、何をさせる暇もなく不可避の速攻がフリーザの命を確実に削り取る。
「ハアアアッ!!」
至近距離からの気功波が炸裂し、フリーザはそれに押される形ではるか後方へ吹っ飛ばされ、白目を剥きながら血を吐き出す。
「ゴ…ハ…!!」
一瞬でそれに追いついたウスターが、トドメの一撃を放とうと分離させた巨大なオーラの両腕を振り上げる。
ここで、フリーザは自らの手札を切る。
ガシッ!!
ウスターのオーラの腕が掴んで受け止められる。そのフリーザの腕は大きく筋肉質に変化していた。
次の瞬間、目に見えない衝撃波がウスターの腹へ直撃し、激しい振動と共に吹き飛ばされる。
(しまった…!)
遠くに見えるフリーザのシルエットは青いぼんやりとしたオーラに覆われている。体格は一回り程大きくなり、扇状に広がった頭殻の形状、肩や肘、背中から伸びる巨大な棘、湾曲した鳥のような脚部と太い尻尾。
最終形態から、第四形態への変身である。
「ほっほっほ…ここからが本番ですよ」
フリーザは形態を変化させると外見や戦闘力が変化するだけでなく、それまでに受けたダメージもリセットされる。今のフリーザは完全に回復した状態で第四形態へ移行しており、さらに生前と同様に神精樹の実による強化もそのままだ。
「避けてくださいね」
その直後、フリーザの人差し指から何本ものエネルギー光線が放射状に乱射される。ウスターは素早く後方へ飛びつつ念のため両腕を体の前でクロスさせてガードするが、そのうちの一本が肩を貫いていった。
現在のウスターは肉体が無いので痛みも感じないが、それでもダメージは受けている。
「避けろと言ったでしょうに!」
フリーザは笑いながらウスターへ飛びかかる。ウスターもオーラの腕を振るって叩き落とそうとするが、フリーザはエネルギー波でそれを弾きながら迫りその腹へ拳をめり込ませる。ドン、と爆発のような凄まじい衝撃が爆ぜるが…
「ほう…」
(被弾箇所へ全ての力を集中させてダメージを軽減しましたか)
何とか防いだものの、今のでだいぶ気を消耗した。しかし、今のウスターには気が減って戦えなくなるという事はない。「魔芯解放」を発動している限り、無限に気が回復し続けるからだ。
死へのカウントダウンと引き換えに…
「お互い、元気いっぱいですねぇ」
しかし、このままでは埒が明かないことにフリーザは気付く。このままウスターの猛攻をやり過ごし、適度な攻撃を加え続ければいずれフリーザに軍配が上がる勝負であることは間違いない。
(しかし、その考えはこのフリーザ様には相応しくない)
あの時…そう、あの時の地球での戦いで、私は戦いの楽しさを知った。更なる変身を手に入れ、より力強くなる己の存在に胸が高鳴った。
もちろん、今の私も同じこと。ヤツが死に至る前に…私が完全に殺しきって見せる!
「火力勝負といきましょう」
フリーザは左手で右腕を掴み固定し、右手人差し指にポウッと小さな青い光を灯す。対するウスターはオーラで形成された巨大な両手を合わせ、その間に特大の気弾を作り出す。
戦いに楽しみを見出したものの、カカロットと霊夢に敗れ、地獄へ送られたフリーザ。そこでの15年間、ずっと燻り続けていた戦いへの渇き。
幾多もの戦いを生き延びたが、それ以降繰り広げられる次元の違う強者たちとの戦闘では大きく後れを取ってしまっていたという悔しさを胸の内に抱いていたウスター。今感じているのは、それを晴らす事の出来る対等な相手と戦えているという喜び。
両者は互いが抱く感情を爆発させるかのように、それを放出するのだった。
ピシッ
バリィィィィ…
デッドゾーンが崩壊し、宇宙空間にガラスを砕いたかのような亀裂が広がる。その奥から現れたのは…
「楽しかったですよ」
フリーザは割れた頭殻から流れる血を拭うと、遠くに浮かんでいるシリアル星目がけて進んでゆくのだった。
「コイツこれ書いてた時アレにハマってたな」ってのが丸わかりですね。