もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第438話 「命よりも大切なもの」

一方、シリアル星へと向かうスカッシュ一行。それを後から執拗に追い立てる、Dr.ミューと彼の乗る宇宙船。

既にシリアル星は完全に目視できるほど間近に迫っており、着陸するためにはケツァルコアトルの速度を落とさなければならない。だが、そうすれば確実にミューに追いつかれるだろう。

 

「クソッ、なんだってんだよ…!」

 

スカッシュは操縦しながら汗をかき、悪態を吐く。

 

「ウスターさん、無事だろうか…」

 

「あの人なら大丈夫だろ…多分、いや絶対…」

 

カズラとアザミも不安げにそう話した。ウスターはフリーザを止めるために単身戦いに向かい、その勝敗の行方は一切わからない。

その時、ミューの宇宙船はエネルギーを発散し、散弾の如く撃ち込んできた。まずいと思い回避させようとするスカッシュとケツァルコアトル自身の意志だったが、細かなエネルギーの弾丸は数か所着弾し、そのまま機体を貫通していった。

 

「うおおおっ!?」

 

機体が揺れ、傾く。

 

「やばいね…今のでもう航行不能だ!このまま不時着するよ!」

 

既にシリアル星は外を映すモニターいっぱいまで近づいている。このまま星の大気圏に入るまであと少しだ。しかし、ミューの宇宙船はさらに攻撃を加えようと構えている。

恐らく、ドラゴンボールは滅多な事では壊れないという事をフリーザから聞いているのだろう。スカッシュらの乗るケツァルコアトルを木っ端微塵に破壊し、その跡から究極ドラゴンボールを回収すればいい、と考えている。

しかし、誤算はふたつあった。ひとつは、ピッコロが飲み込み腹の中に隠したホイポイカプセル。このカプセルの中に究極ドラゴンボールは収納されている。

そしてもうひとつは…

 

 

 

 

「い、今…なんと…?」

 

時を同じくして、スカッシュたちが目指すシリアル星の衛星軌道上に一隻の別の宇宙船が停滞していた。岩石の上に建った城のような外観で、その内部にて茶髪のドレットヘアーを纏め顎に髭を生やしたエレクという男は目の前にやって来た者の話を聞いて唖然としていた。

 

「聞こえなかったか?」

 

苛立たし気に重い尻尾がバシン、と床に叩きつけられる。

 

「オレを雇え、と言ったのだ」

 

この者、クウラは突然訪ねてきたかと思えばそう言ったのだ。

エレクはかつて宇宙に君臨していたフリーザ軍の事は知っている。何せ、フリーザが生きていた頃は彼とも物資や金銭のやり取りを交わしたことがあるからだ。だが、フリーザの兄・クウラの存在は今まで知らなかった。突然現れた時は世迷いごとを言う不審人物と断じて即座に排除しようとしたが、恐るべきあのフリーザと似た気質や面影を感じ、話を聞くことにした。

 

「聞こえている。だからこそその意味を確認したいのだ…オレたちはヒータ軍だ、賞金稼ぎを雇い、あらゆるビジネスで金を宇宙中へ循環させている。つまりオレたちに雇われるという事は、クウラ…お前が賞金稼ぎとしてオレたちに使われることになるんだぞ」

 

「知っている。知っていてここへ来たのだ。何なら、一番懸賞額の高いヤツの首を持ってくるか?それとも気に入らん賞金稼ぎを5人ほど殺してくるか?」

 

クウラの冷たい眼光と威圧感、そしてその言葉が本気であることは、商人として数多もの種族の人間と顔を合わせてきたエレクだからこそ理解できる。

 

(だが理由がわからん…何が裏があるのか?何が目的だ?今なら、オレたちでも勝てるのか?)

 

エレクはクウラに気付かれないように何気なく顎をさする片手でサインを作る。それを見た、彼の脇に控えていた少年・ガスは片足をじり…と動かし、クウラを睨む。

微かな殺気を感じ取ったクウラもガスを睨み返し、ふたりの間に一触即発の空気が流れる。エレクも頬に一筋の汗を流しながら、そのプレッシャーの中で本当に引き金を引くべきか思考を巡らせている。

と、その時、クウラとガスは宇宙で何かの強力な気配を察知し、思わずそちらへ目を向けた。

 

「エレク」

 

それと同タイミングで、ガスの反対側に立っていた太った巨漢・オイルがエレクへ声をかけた。

 

「なんだ?こんな時に」

 

「これを見てくれ」

 

オイルは持っていたタブレット端末をエレクに見せる。そこには、このシリアル星のへ向かって接近してくる二隻の宇宙船…ケツァルコアトルとミューの宇宙船が映っていた。

 

「なんだコイツらは…どこの船だ?」

 

「それがさっぱり…情報照会してもデータが無ェもんで」

 

「…妙だな」

 

それを聞いていたクウラは歩き出した。周りが見渡せる大きな窓の方へ向かおうとするが、そこへガスが立ち塞がる。

 

「退け」

 

ガスはクウラに冷たく威圧されても退かないどころかクウラに対して戦闘の構えを取る。

 

「ガス、お前は手を出すな」

 

だが、エレクにそう命じられるとガスは不服そうにしながらも後ろへ下がり、クウラに道を譲った。

クウラは窓の前に立つと、丁度そこへ件の宇宙船二隻が現れる。

 

カッ

 

クウラは目を発光させ念力を送り込み、前に掲げた右手を握りしめると、なんとミューの宇宙船だけが爆発を起こし、バラバラになって燃え盛りながらその場に飛び散ったのだ。

エレクは内心愕然としながらも平然を装い、オイルと彼の横にいるもうひとりのヒータ軍の紅一点・マキは驚愕の表情を浮かべる。ガスは相変わらずの仏頂面のまま何も変わらない。

 

「追い立てられていた側の妙な宇宙船の方が、追われるだけの何かがあるのだろう。調べるとすればそっちの方だ。そうだろ?エレク」

 

「…ああ、オレもそう考えていた。ではこうしよう、お前は不時着したあの宇宙船に乗っていたヤツを生かして連れて来てくれ。そうしたら賞金稼ぎとしての仕事をやろう」

 

「…了解した」

 

「マキ、お連れしろ」

 

クウラはマキに連れられ、他の宇宙船の発着場へと案内される。クウラはここから外に出て生身でシリアル星へ降り立つつもりのようだ。

その背後で、クウラを見送りながらもエレクはガスへ目線を向けるのだった。

 

 

 

 

 

「今のなんだァ!?」

 

スカッシュも、その場の全員が驚いていた。何せ、自分らを追っていた謎の宇宙船が突然内側から爆ぜてバラバラになったのだ。

 

「…いや、考えるのは後だ!このまま不時着する!」

 

宇宙船は破損し、このまま墜落してゆくような形でシリアル星の大地へ不時着することになる。

だが、ピッコロが異変に気付く。

 

「大変だ…!」

 

「え、どうした?」

 

「着陸用の…補脚が破壊されていて出せません…!」

 

「何だってェ!?」

 

「それってつまり…着陸できないって事ですか?」

 

スカッシュは考える。この宇宙船をシリアル星の地表へ叩きつけたとしても、自分とピッコロ、あとはミルもその衝撃と機体の爆発に何とか耐え切れるだろう。しかし、アザミとカズラはどうか?

いや、それよりも今のケツァルコアトルの破損状態で無事に大気圏を通過できるかどうかもわからない。大気圏突入の衝撃はスカッシュのような惑星戦士であっても耐えきれる保証はない…サイヤ人やギニュー特戦隊ですら星間の移動には宇宙船や小型ポッドの防護が必要なのだ。いくらスカッシュも彼らよりもずっと強いとはいえど同じ。

 

(どうする…?)

 

その場の誰もが黙り込み、異常を知らせるアラームだけが忙しなく室内に響き渡る。

だが、ミルだけは冷静に状況を見据え、汗一つかかずに静かに立ち上がる。

 

「…ここから先は、私にお任せくださいまし」

 

「ミルさん…」

 

「私が船外から防護し、シリアル星へ無事不時着させますわ」

 

「…できるのか?」

 

ミルはスカッシュの問いに、フ…と小さく笑う。

 

「ええ、私のドリルの記憶兵器があれば何とか。ですが、衝撃までは100%軽減することはできません…それなりのGに見舞われるでしょうけど」

 

そう言いながらミルは肩に羽織っていた白いコートを脱ぎ、畳んでカズラに手渡した。

 

「これは…」

 

「これは私にとって命よりも大切なもの。無事に願いを叶えて地球へ帰還し、シロナへ渡してくださる?」

 

「命よりも大切って…まさか、アンタ」

 

アザミはミルの言葉の真意に気付くが、ミルはウインクしながら口に指を添える。

 

「ミルさん、その、ありがとうございます。さっき俺の無茶な申し出を肯定してくれて…」

 

「当然ですわ。貴方は愛する方…サザンカとずっとお幸せに…。それは私にはできなかった事…」

 

「あなたは…」

 

ミルはカズラの言葉を遮り、船外へと続く通路の扉の方へ向かう。

 

「すまん、よろしく頼む」

 

スカッシュが最後にそう声をかける。

 

「ふふ、こういう時は気を利かせてこう言うモノですわ…『Von Voyage』、よい旅を」

 

ミルは扉を抜け、外への通路をカツカツと歩み出す。その最中、首から下げたペンダントを開いて中にはめ込まれた男性の写真を眺めた後、それを握りしめる。

 

「いきますわよ、ダーリン」

 

 

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