もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第44話 「超月光発生装置ツキノカク!!」

「ていうか、さっきみたいな一瞬の移動でその目的の場所まで飛べばいいんじゃないのか?」

 

と、カカロットが豊姫に言った。

 

「そうしたいんだけど、私の能力は一度見知った事のある場所にしか移動できないもの。それに、ただでさえここは私を妨害する力が働いている…この時点で何かやましいものがあるっていうのは確定ね」

 

豊姫の能力は、遠距離の地点同士を瞬時に結び付けて自分が自由に行き来したり、他人や物体をワープ・転送する事が出来る。豊姫は玉兎から伝え聞いただけである幻想郷にワープすることができたそうであるから、今回の目的の場所にも移動できるはずであるが、どうやらこの城には王に組する者らの手により豊姫の力を使えなくする念波が流れているようだ。

 

「依姫の命を無駄にしない為にも、何としてでも辿りつかなければ…!」

 

 

 

「来たな」

 

一方、王城内の通路に一人残った依姫。胴体に突き刺さった棘をへし折ってそこから脱するが、刺さった棘は抜けず、夥しい量の血が周囲を染めている。

 

「あれは…綿月依姫か!侵入者はお前だったのか!?」

 

そして、通路の前方から武装した兵士たちが迫る。が、排除システムが攻撃した侵入者が月の使者のリーダーである依姫だと気付いたとたん、彼らは狼狽え始めた。

 

「だったらどうする?私をここで殺すか?ふっ、貴様らには無理と思うがな」

 

「何だと…!」

 

「慌てるな。既に月夜見王から許可は降りている。何者であろうとも始末してよいとな」

 

「お前は…」

 

聞こえてきた女の声。依姫が上を見上げると、そこにはあの覇乙女蛇斑の姿があった。左目にスカウターをはめ、右目には片眼鏡をつけている。その奥に光る冷酷な目が、依姫を見つめる。

 

「そこを退け。大人しく退けば、命だけは取らないでやろう。玉兎共の次の指導者を決めるのは面倒くさいからなァ」

 

「…その提案、断らせて頂こう」

 

しかし、依姫は臆せずに断った。

 

「『岐の神』よ、私のもとに顕現しその力を貸してくれたまえ!!」

 

依姫がそう宣言すると、その身体を光が覆った。するとその背後から糸のような物体が伸び、まるで蜘蛛の巣のように組み合わさると、そのまま通路全体に分厚く栓をするかのように完全にふさいでしまったのだ。

その蜘蛛の巣で中心で、依姫は折れた剣を構えている。

 

「神降ろしの力か…!それを解除しないというならば、本当に殺してしまうぞ」

 

「構うものか。私は約束したんだ…あの者たちのために、ここは絶対に通さんとな。それに、しっかりとアレを見てもらって、無事に帰って伝え事をしてもらわねば」

 

「戦闘力800がやっとの奴に、何ができる!!」

 

蛇斑はそう叫び、依姫に襲い掛かる。素早く手刀を振り下ろし、依姫は剣を掲げてそれを防ごうとする。

…が、蛇斑のパワーは依姫自身を大きく上回っており、既に折れていた剣をさらに粉々に打ち砕いてしまった。そのまま降りていく手刀が、依姫の左肩に深くめり込んだ。

 

「う…ぐああああ!!」

 

骨や肉を切り裂き、手は完全に胸のあたりまで深くえぐりこんでいる。

 

「ははははは!弱すぎるぞお前!」

 

蛇斑は高笑いをしながら、次々と依姫に攻撃を加えていく。一撃のたびに依姫の体から血が流れ、その残虐な様子に、駆けつけていた他の兵士たちは冷や汗をかきながら言葉を失っている。

しかし、どれだけ痛めつけられても、依姫は能力を解除し道を空けようとはしなかった。

 

「おい、お前いい加減にしつこいぞ。そろそろ退いたらどうだ」

 

「…ふふふ、少し遅かったが…ようやく言える。”絶対に嫌だ”とな!!」

 

依姫がそう言った瞬間、蛇斑は手の平から黄色いエネルギー弾を放った。それは素早く飛んで依姫に命中し、爆発を起こす。

依姫は何も喋らなくなりうなだれてしまったものの、未だ通路はガッチリと塞いだままであった。

 

「チィィ、ゆるまぬか…もうよい、別の道からゆくぞ!」

 

蛇斑は兵士たちを携え、通路を引き返していく。依姫は、この通路を塞いで時間を稼ぐという事においては、敵に勝利したのである。

 

「…ああ…見てください…教えてもらった新しい技を私は習得できました…ふふふ、もっと見直してくれても…」

 

そう呟くと、彼女は完全に沈黙した。

 

 

 

「きっと、妹は喜んで死んだに違いないわ。自分のやりたいことをして満足して…そして、恐らく私も」

 

「え、何て言った?」

 

霊夢が豊姫の言葉に対して横から聞きかえす。

 

「いいえ、何でも」

 

今通っている通路の先に、T字の分かれ道が現れた。豊姫はサグメに合図を送ると、曲がることなくその壁に突撃し、破壊した。土煙が収まっていくと、その壁の向こうは大きな円柱状の部屋のようだった。その天井は先が見えないほどに高い。

 

「この部屋こそ貴方たちに見せたかった場所よ!」

 

部屋の中央には、何か不気味な物体がそびえていた。大きな結晶のように見えるそれは青白く輝いていて、天井に達するかというほど大きい。その輝きに思わず見惚れてしまいそうになるが、所々に飛び出しているコードのようなパーツが目に入ってくる。そして、結晶の下部にはちょうど人間一人を埋め込めることができそうな窪みがふたつあった。

 

「これは一体…?」

 

「地上に降り注ぐ月の光は、太陽光が月面に反射したものであることは知ってるわね?そして月に照り返された時のみ太陽光にはブルーツ波と呼ばれる光が含まれる。そのブルーツ波が満月になると1700万ゼノという数値を越え、地上の生き物にわずかながら力を与える。だけど、5000万以上の異常なブルーツ波が含まれた月光に照らされた地上の生き物はその波動に耐えられなくなり、たちまちにして乳酸を作り出す」

 

「蛇斑が放った月光で私たちが動けなくなったのはそれね…」

 

「問題なここからなのよ。地上には、八意様と輝夜がいるわね?」

 

「ええ…」

 

カカロットにはピンと来なかったが、その名前を聞いた霊夢は頷いた。

 

「ふたりはかつて蓬莱の薬を飲んだ、不老不死の蓬莱人。そして、月の都を持ちなおそうとした月夜見王は考えた…1000年以上も地上のブルーツ波をその身に溜めたふたりの蓬莱人であれば、未来永劫滅ぶことのないエネルギーを月の都に与えることができるのではないか?」

 

「ま、まさか…この結晶みたいな機械は!」

 

「そう、王の目的とは!ふたりの蓬莱人を地上から月へと連れ帰り、この『超月光発生装置ツキノカク』に取り込ませ、エネルギーを搾り取って供給することで月の都を元通りにすること!」

 

「あの二人を、たったそれだけの為にこんな機械に組み込むっていうの…?」

 

「もちろん、一度吸収されてしまえば二度と戻れはしないわ。そしてここからが貴方たちにとっての大問題…。このツキノカクに二人の蓬莱人のエネルギーが与えられた時、地上には普段の満月時のおよそ100倍…17億ゼノ、いや計算では導き出せないほどのブルーツ波を含む月光が降り注ぐと計算されているわ。この数値になると圧倒的な光と熱で地上のあらゆる生命は一瞬で死滅…地球そのものも今後一切生命の誕生しない枯れた惑星と化してしまうの」

 

「そ、そりゃあすげぇ大変じゃねぇか…」

 

「ああ…気に入らん奴だ、その月夜見王というのは」

 

「これで、お互いの利害が一致したはず。貴方たちは地上を滅ぼさないためにあのふたりを連れ去られないように守る。私たちはあの二人を助けるために、貴方たちに伝言を託す。『二度と月には関わりを持たず、もう戻らなくていい』とね」

 

「…だが、あれを壊してしまえばいいのではないか?」

 

ウスターがそう言いながら手を伸ばし、そびえるツキノカクに向けて強力な気功波を一発放った。思わず腕で顔を覆ってしまうほどの衝撃と爆発が起こる。

…が、煙が晴れてもツキノカクは壊れるどころか表面に傷すら入っていない。

 

「ち…壊すことはできないという訳か」

 

「だ、だが、その王の目的は蓬莱人とかいう二人を連れてきてこれに組み込むことなんだろ?だったら、なんで奴らはドラゴンボールが必要なんだ?」

 

カカロットが疑問を口にした。

 

「もしかしたら、ドラゴンボールを使ってふたりをここに連れてこようとしてるのかもしれないし、あるいは…」

 

「何か別の事に使いたいとでもいうのか?」

 

「…豊姫、蛇斑がすぐそこまで来てる」

 

と、サグメが口を開いて言った。確かに、言われてみればあの蛇斑の禍々しい気がこちらへ近づいてきている。

 

「皆、私のそばに来て」

 

豊姫はそう言うと、ポケットから紐の付いたペンダントのような物を取り出した。カカロット、霊夢、ウスターは言われたように彼女に近づくと、なんとその直後にペンダントの中に吸い込まれてしまった。

 

「見つけたぞ!」

 

そこへ蛇斑がやってくる。

 

「やはり依姫と共に侵入したのは貴様らだったか、豊姫に稀神サグメ!!…ん?だが穢れの発生源の一団は何処へ消えた?」

 

「私を捕らえるならお好きにどうぞ?彼らはすでに地上へ帰還しましたよ」

 

「ふん、まぁいいか。王がお前たちに謁見を許すそうだ。おとなしく来てもらおう」

 

 

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