もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第440話 「今度はアタイの番か」

グラノラは休暇を満喫していた。

と言っても、手ごろな山の頂上まで登ってシリアル星の景色を日がな一日眺めるだけ。

遠くに見える、透明なドーム状のバリアーに囲まれた大きな街。そこでは、グラノラとは姿の異なる種族の人間たちが平和そうに暮らしていた。

 

「グラノラ、お前はシュガ人たちと一緒に街に住まないのカ?」

 

グラノラが頭に装着していたスコープが点滅し、機械の声が流れる。

 

「オートミル…またその話か。街はシュガ人のためにヒータが整備したんだ、オレが住むべき場所じゃない」

 

「…でも、もとはシリアル人の星だろウ」

 

「それは40年前の話だ」

 

ヒータはフリーザ軍に荒らされて壊滅状態だったこのシリアル星に目を付け、開発を進めた。そして故郷が滅び宇宙を彷徨っていたシュガ人に高額でこの星を売り渡したのだ。

 

「じいさんだって、オレと同じ考えの筈だ」

 

「まあ、確かにナ」

 

グラノラは、かつて暮らしていた街が破壊される光景を思い出した。脳裏に焼き付いて片時も忘れたことはない…そう、サイヤ人の悪逆を、そしてそれを使役するフリーザの悪辣さも。

 

その時だった。

 

ゴオオオオ…

 

「な、なんだアレ…!?」

 

グラノラの特殊な眼が、かなり遠くで起こったとある光景を目撃する。空から燃え盛る謎の物体が飛来し、地表へ向けて落下しているのだ。

 

「宇宙船か…?妙な燃え方だが…オートミル、お前も見ただろ?」

 

「ああ…だが気を付けろヨ、厄介なヤツがいるかもしれない」

 

「大丈夫だ、そうだったらオレが捕まえて銀河パトロールにでも引き渡す」

 

グラノラはオートミルという喋るゴーグル型スコープと共に、謎の宇宙船が墜落して場所へ向かうのだった。

 

 

 

「どうやら、ミルのおかげで無事にシリアル星へ着いたみたいだな…」

 

降りたスカッシュは振り返ってケツァルコアトルを見上げる。ミルが防護してくれたおかげで大破するまではいかなかったが、それでもボロボロになってしまっておりこのまま帰りも乗っていくことはできないだろう。

 

「しょうがねえ…この星で修理ができるならやってもらうしかねぇか」

 

「本当にこの星にドラゴンボールがあるのか…?」

 

アザミはピッコロに声をかけた。

 

「ブルマさんから借りたドラゴンレーダーを使えば所在が分かるはずです」

 

ピッコロはそう言いながら袖の中からドラゴンレーダーを取り出そうとゴソゴソと探るが、その時背後に気配を感じてそちらへ目を向ける。

 

「お前ら動くなよ」

 

そこに立っていたのは、薄い緑色の髪を後ろへ靡かせ、ゴーグルで片目を覆った青年…グラノラだった。

グラノラは片手の人差し指と中指をスカッシュたちに向け、明らかにこちらを警戒していた。

 

「あ…アンタ、シリアル人か!?アタイらに敵意はない!話を聞いてくれ!」

 

スカッシュは両手を上げて敵意が無い事をアピールする。

 

(銀河パトロールのジャケット…それに)

 

グラノラはスカッシュの着ている銀河パトロールの制服に気付く。さらにその背後にいるピッコロの姿に目が留まる。

 

(ナメック人か…?)

「お前らは何者だ?銀河パトロールが何故この星へ来た?」

 

「…我々は地球という星から来ました。この星にナメック星人はいますか?いるなら会わせて話をさせてください」

 

決して気を荒ぶらせることなく、静かにハッキリとグラノラへ返答をしたピッコロ。グラノラは警戒と攻撃態勢を解かないまま、ゆっくりと彼らへ近寄る。

 

「会って何の話をするというんだ?」

 

「ドラゴンボールについてです」

 

ピッコロは嘘を吐くことなく正直に答える。グラノラは一瞬だけピクリと眉を動かし…

 

「…わかった、俺の家にナメック人のじいさんがいる。ついてこい」

 

「やったな」

 

「ああ…これで何かわかるかもしれないな」

 

ピッコロに続いて、アザミとカズラも進んでいくグラノラの後を追う。だが、スカッシュはその場で立ったまま動こうとしなかった。

 

「スカッシュさん、行きますよ?」

 

「ああ…悪いが先に行っててくれ、一応船をロックしてから行くよ」

 

「そうですか?わかりました」

 

「はやくしろよー」

 

彼らが立ち去り歩く音が聞こえなくなった頃、静けさの中に、ザ…と別の何者かが近くの草むらを踏む音が聞こえ…

 

「来やがったか」

 

「おやおや、やはり見知った顔がいますねぇ…スカッシュさん、でしたか?」

 

フリーザがその場に姿を現した。気配を断ちながらシリアル星へ降り立ったフリーザは彼らに気付かれる事なくここまで接近していた。大柄な第四形態のまま、青く染まった目がスカッシュを見据えている。

 

(銀河パトロールの増援を呼ぶか?…いや、間に合わねぇしそもそも無駄か)

 

スカッシュは諦めたようにため息を吐くと、頬に汗の筋を走らせながらフリーザへ向き直り、拳を構える。それを見たフリーザは少しだけ面食らったように目を見開き、くつくつと笑う。

 

「やれやれ…今度はアタイの番か…」

 

「くくっ、失礼…まさかアナタ程度が私に挑もうとするとは思いませんでしたよ。ですが、まあいいでしょう…今の私は機嫌がいい。地球から運んできたドラゴンボールを探す前に、少し遊んで差し上げますよ」

 

 

 

 

───

 

 

おい、お前はこっちに来んなよ

 

そうだそうだ、なんてったって君は…

 

 

 

「“人殺し”の子供じゃないか!」

 

 

 

ドイツもコイツもアタイの事をそう呼びやがる。父親は星じゃ禁忌とされる同族殺しを何回も犯し、最期はみっともなく野垂れ死んだ。

アタイは関係ねぇだろ!なんでそう呼ぶんだ…人殺し、人殺しの娘、禁忌の娘…だとぉ…?

 

 

 

そんな呼び名さァ…

 

 

 

なんか、すげぇ…

 

 

 

「なんかスゲ~カッコいいじゃんかよォ~!キャハハハハハハハ!!」

 

 

「うぎゃあ!!暴れるなコイツ!」

 

「誰かスカッシュを止めろ!」

 

小せぇ頃から大人顔負けの力で暴れ回っていた。アタイを馬鹿にしてきた連中は死ぬ寸前まで殴った。食べる物に困ったら奪ってやった。民族の伝統の技とか言ってダサい舞とポーズを強制させようとしてくる連中だし、いい気味だと思った。

 

そんな事を繰り返していたら宇宙へ追放された。だがアタイはそれを好機としてもっと好きに生きることにした。いつの間にか揃っていた仲間たちを従え、宇宙盗賊として名を馳せた。

 

「おいチライ、スカッシュさんに飲み物持って来いって言っただろォ!」

 

「ウッス、ミザさん、すぐに買ってきます!」

 

「きゃはは、まああんま虐めてやんな…まだガキだろ」

 

ノリに乗っていた。盗賊の頭として大抵の相手には負けない。

だけど…有名になり過ぎた。

 

 

「キサマがスカッシュという者だな?たった今よりワシの軍勢に下れ」

 

この宇宙での一大勢力、コルド軍に目を付けられた。当然、天地がひっくり返ろうと敵うはずのない奴らに無謀に逆らえるほど、もうアタイは馬鹿じゃなくなってた。

 

「スカッシュさん…」

 

「きゃは、きゃははは!テメェらは黙ってここから去りな!」

 

「え…!?」

 

「さっさと消えな…アタイは今からコルド軍に入る!テメェらまでくっついてきちゃ邪魔だ、もう用はねぇんだよテメェらにはな」

 

仲間を捨て置いてアタイはコルド軍に入隊した。どうせ使い潰されるのがオチ…だから仲間は連れてこなかった。

でも実態は予想とは違って、正直悪くはなかった。アタイは他の兵士よりもずっと強かったし、待遇もそれなりに良かったし、盗賊やってた時よりも贅沢ができた。

 

 

 

 

 

 

「まあ…結局、何やってた時も…今思えば楽しかったんだなぁ…」

 

「何か言いましたか?」

 

木にもたれるように倒れたスカッシュの額に指を突きつけるフリーザが聞き返す。スカッシュは顔の半分を流れる血に染め、動かなくなった右腕を庇っている。既にフリーザによって痛めつけられた後で、もうかすれた声を絞るだけの気力しか残されていない。

 

「何でも…ねぇよ…」

 

「よくありませんよ。アナタは優秀な戦闘力を持つ、私の部下だった時があったのですから最期の言葉くらいはしっかり聞き届けてあげましょう」

 

「…じゃあ、ブロリーに会ったら伝えろ…『悪くなかった』…ってよ。アンタはそれから死ね」

 

「…何ですって?」

 

スカッシュの言葉に、小さな苛立ちを覚えたフリーザ。

しかし次の瞬間、頭上から急接近してきた巨大な気に感付いて空を見上げる。

 

「見ない間にデカくなったな、フリーザ」

 

「クウラ…!?」

 

 

宇宙最恐の兄弟が、ここに集う…!




現在の時系列は、「超」でのグラノラ編よりも2年ほど前になります。
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