上空からこの場へ舞い降りたクウラはフリーザの目の前に着地し、ゆっくりと体を起こす。
「…ま、アナタも生き返っているとは思っていましたが…何をしに来たんです?」
「弟よ、ソイツを殺すのは止めてもらおう。オレには、ソイツを生きたまま連れて行く仕事があるのでな」
何を言い出すかと思えば、一切恥じる様子もなくそんな事を言い放ったクウラに対し、フリーザはポカンとし、その後すぐに大笑いする。
「ほーっほっほっほっほ!!何を言い出すかと思えば…!落ちぶれたものですね、お前が仕事!?ちなみに聞きますが、一体誰に言い遣ったんですかねぇ」
「ヒータだ」
「ヒータ?クックック…彼らも健在でしたか、エレクさんはお元気でしょうか」
「…驕るなよフリーザ」
クウラを小馬鹿にし、上機嫌になったフリーザだったが、静かにそう諫められ顔をしかめる。クウラは人差し指を立て、まるで子供に対する説教のようにゆっくりと話す。
「いいか…もうこの宇宙はオレたちが幅を利かせていた時代ではない。銀河パトロールも、ヒータも、サイヤ人も…この宇宙のパワーバランスは大きく変動したようだ」
「…それがどうしたというんです」
「かつては宇宙最恐として君臨していたコルド軍、その後継たるフリーザ軍…オレたちが抑え付けていた眠れる龍や獅子が、今やこの時代の宇宙を跋扈している。オレたちはいわば時代の残党…もう一度我が栄光の一族が頂点に返り咲くには、既に構築されたヒエラルキーを一から登っていく必要がある。分かるか、弟よ…オレたちは挑戦者へと回ったのだ」
『今は貴様が、俺に挑戦してるのだぞ』
ついさっき殺したばかりのウスターに言われた言葉がフリーザの脳裏に蘇る。
「オレがまずヒータの下に就いたのもそう言う事だ。この宇宙の現在のパワーバランス…それに組み込まれることで内から上へ昇り頂点を目指す。そしてゆくゆくは…破壊の神をも超えるつもりだ」
バギィ!!!
直後、目にも止まらぬ速度で飛びかかったフリーザの一撃がクウラを襲う。真上から振り下ろされた腕による一撃を、クウラは頭上で腕を交差させて受け止めた。
が、あまりの威力にクウラの下半身が陥没した地盤の中に埋もれてしまう。
「驕ってんのはキサマだろォが!クウラ!!」
激昂するフリーザの怒号にも怯まず、クウラは余裕の笑みを浮かべたままその場から消え失せる。フリーザはクウラの行方に瞬時に気付いてそちらへ顔を向け、追う。
「避けろよ」
だが、迫ってくるフリーザを睨むクウラの双眼が発光すると、鋭いエネルギー光線が発射される。フリーザは咄嗟にそれを躱すも、その隙にクウラの蹴りを顔面に喰らってしまう。
「ッ…!ナメるなァ!!」
フリーザはすぐに体勢を戻し、クウラへ向けて念力の衝撃波を撃ち込む。見えない波動に吹っ飛ばされたクウラは空高く打ち上げられ、さらに追撃の衝撃波を何発も喰らう。
「死ね…!!」
反撃の隙を与えぬよう、止めを刺そうとするフリーザ。後ろへ振りかぶった右手に気弾を生成し、それを円盤状に広げると同時に薄く鋭く研ぎ澄ませ、丸鋸のように高速で回転させる。そして、それを思いきり投げ飛ばした。
周囲の木々を切り倒しながら地表付近を旋回し、そのまま加速しながら大きくカーブし空中のクウラへと向かう。
ガシィ!!
「な…!?」
しかし、全てを切り裂く気円の斬撃はクウラの伸ばした腕によって掴み取られる。その瞬間に高速回転していた気円もガキリと急停止し、黒い煙が噴き上がる。
クウラではこの一撃を防ぐことはできない。フリーザはそう確信しての攻撃だったが…
「思っていたよりはやるようになったな、弟よ。だがしかしまだ足りん、この兄には到底及ばぬぞ」
クウラの腕は巨大化しており、フリーザの気円を握って砕き散らす。
いや、腕というよりも全身が大きく膨れ上がったかのようだ。肩の甲殻が大きくせり出し、第四形態と化して大柄となったフリーザよりもさらに巨躯。
「…!」
その時、フリーザが目で捉えていたはずのクウラが突然フッ…と消えた。半歩後ろへ下がりながらクウラの行方を探そうとした瞬間、背中が何かにぶつかると同時に背後から影が差す。恐る恐る振り返ると、そこには同じく第四形態となったクウラが居た。
「しかし…まさかオレの変身を忘れていたわけではあるまい?」
カシャン、と白い殻に覆われる口元。その昔、独力でこの姿を手に入れたクウラに与えられた敗北が蘇る。あまりの屈辱に、父と共に存在すら記憶から閉め出し封じ込んでいたもの。
「クアアッ!!」
フリーザはクウラの腹へと連続で拳を叩きこみ、蹴りをめり込ませる。
が、全ての攻撃がクウラの強靭な皮膚と鋼のような筋肉に阻まれ、まるで壁を叩いたような手応えと反動を感じた。
「まだまだ…甘い」
クウラはそう呟くと同時に素早く拳を繰り出し、フリーザの腹へめり込ませる。ズン、と凄まじく重たい衝撃が大地にまで響き、周辺の木々が揺れて驚いた鳥たちが飛び去ってゆく。
「おご…く…!!」
本来であればこれだけで意識を失うほどの一撃であったが、フリーザは苦悶の表情を浮かべつつも耐え切り、クウラの腕を掴んでそれを支えにして倒れない。
「大した根性だ」
が、打撃の後に遅れてやってきた気の衝撃が再度フリーザの腹を貫通する。足を震わせながら膝をつき、そのまま白目を剥きながらゆっくりと前のめりに倒れた。
クウラはそんなフリーザを蹴り転がすと、先ほどまでスカッシュがいた場所へ顔を向ける。が、そこには大量の血の跡があるだけで彼女の姿は無かった。
「あの怪我で…逃げ足だけは速い」
その時、クウラは全く別の気配を感じ、背中越しにそちらへ意識を向ける。
「…来たか」
そこにはヒータ軍の戦士、ガスが立っていた。
「今から会わせてやる奴にどんな話をするのか…先にオレに教えろ」
自宅へとピッコロたちを案内している道中、グラノラはそう言った。アザミがそれに反論しようとするが、ピッコロはそれを制して口を開く。
「それは、─────」
「…本当か?」
ピッコロの話を聞いたグラノラは信じられないと言った様子でそう言った。
「嘘を吐くつもりはありません」
「…そうか」
やがて、森の中の開けた場所にポツンと立つ一軒の家が見えてきた。
「ここだ」
ドアを開け、彼らを中に入れる。
「じいさん、帰ったぞ」
「おお、ゆっくり休めたか?…おや」
安楽椅子に腰かけていた小柄な老人は立ち上がり、杖を突きながらこちらへ振り返る。だが、グラノラの後ろに立っているピッコロ達を視界に収めた瞬間、目を見開いて驚愕し、杖を取り落とす。
「ま、まさか…グラノラ、これは一体…?」
驚いたのはこちらのピッコロも同じであった。互いに、目の前に初見のナメック人がいる。いや、ピッコロはシリアル星にナメック人が棲んでいることは知っていたので驚きもそこそこだが、相手はこの星のナメック人は自分以外全員が死に絶え、他の星にも生存しているかすら定かではない同胞が突然目の前に現れたのだ。
「じいさんに話があるらしい」
ピッコロは老人の前に進み出ると、手を差し出す。
「初めまして…私はピッコロ。地球に住んでいるナメック人です」
「わ…わしはモナイトという者じゃ…まさか、生きている間に再び同族と出会えるとは…」
「カズラっていいます、よろしくお願いします」
「アザミってんだ、よろしくな」
「おお、これはご丁寧に…」
モナイトという名前らしいその老人はピッコロたちと握手を交わし、彼らを椅子に座らせた。そして水を飲んで落ち着き、本題を尋ねる。
「それで、話というのは…?」
「折り入って頼みごとがあります。この星にドラゴンボールは存在しますか?もしするのであれば、それを私たちに使わせて頂きたい」
モナイトはまたしても驚いた表情を見せる。後ろに立っていたグラノラへ目を向けると、彼は小さく頷いたので話を続けることにした。
「…わかった、返答をしよう。まず、このシリアル星にドラゴンボールは…在る」
「やっぱりか!」
「ああ!」
アザミとカズラがそう言って喜び合う。モナイトは立ち上がると歩き出し、壁の棚の前に立つ。そこには、一つ星が埋め込まれた、地球のドラゴンボールよりも一回り小さなサイズのドラゴンボールが飾られていた。
「これがわしの知るドラゴンボールだ。これの他にもうひとつ、全部でふたつ存在する」
「なんか小さいな?」
「ああ、それにふたつしかないのか?」
「ドラゴンボールは作り出す者によって個数や大きさを変えることができるんです」
元々、本家のナメック星では数ある村の村長がひとつずつ所持し、困難を乗り越えた勇者への褒美として差し出すものだった。地球のものは決まった所持者はおらず自力で探し出すもので、シュネックが作った幻想郷のドラゴンボールは個数は7個だがすべて揃えずとも1個だけでも願いを叶えることができ、これもそれぞれを所持する賢者の試練を乗り越えた者にのみ与えられるものだった。
「一応理由を聞いておこう」
モナイトはドラゴンボールを手に持ち、振り返りながら尋ねる。
するとピッコロはカズラの方をチラッと見、カズラが口を開く。
「訳は俺が話します…」
カズラはモナイトに正直に話した。サザンカという仲間が敵に暴走させられた時に殺してしまった地球人たちを生き返らせたい、と。
「なるほど…そのためにわざわざこの星まで足を運んでくれたのじゃな」
「お願いします…!勝手な都合であるのは承知しています!」
「私からもお願いします」
「お、俺も…!」
3人に頭を下げられたモナイトは、答えは最初から決まっていたかのように顔色一つ変えず、静かに口を開いた。
「いいだろう。好きに使いなさい」
そう言うと、モナイトは微かに笑みを向けながらドラゴンボールを差し出した。
「あ、ありがとうございます…!」
「やったな、これで…」
「ああ、サザンカを救えるぞ…!」
「じゃが、もうひとつのドラゴンボールの在り処はわしらにも分からんのだ。ここ40年近く見つかっていない…果たして探し出せるかどうか…」
「それについては多分問題ありません。我々は便利なものを持っていますので」
「…?」
とりあえず、モナイトからシリアル星のドラゴンボールを使用する許可を得られたピッコロたち。あとはもうひとつのボールを探すだけだ。
しかし、クウラとフリーザの襲来に加え、ヒータの魔の手まで迫っているこの星から無事に地球へと帰還することはできるのだろうか…