「くくく…やはり来たか」
クウラは目の前に現れたヒータ軍の戦士、ガスを見てくつくつと笑いながら振り返る。依然第4形態のパワーと巨躯は保ったままで、少年の体躯のガスが小人に見えるほどの威圧感が湧いている。
「ま、待て…おれは…まだ負けていないんだァ…!!」
その時、気絶したはずのフリーザがよろよろと立ち上がり、荒い息で片目を見開きながらクウラを指差していた。
フリーザはクウラに敵わなかった怒りと屈辱で周りが見えていないのか、背後にいるガスに気付かずにズンズンとクウラに歩み寄る。指先には青いエネルギーが充てんされ、今にも弾けそうだ。
「伏せろフリーザ!」
ザシュ…
しかし、クウラが思わずそう叫んだが既に遅く、背後からガスの放った何らかの攻撃がフリーザの胴体を胸と腹で横一線に分断した。
「ぬが…ァ…!!」
フリーザは力なくその場へ倒れ、苦悶の表情を浮かべたまま目を閉じ、動かなくなった。
「フリーザも復活していたとは驚いた」
ガスはクウラだけでなくフリーザまでも蘇っていたことに驚くも、その生死や兄弟対決の勝敗などはどうでもいいといった様子ですぐに目線を外し、クウラを睨む。
「だが…もはやかつての宇宙の帝王など今や敵ではないな」
「…はっ、手負いの弟にトドメを刺した程度で何になるというのだ?さて、オレも興が乗ってきたところだ…ガッカリさせてくれるなよ」
次の瞬間、目にも止まらぬ速度で駆けだしたガス。その手にはどこから取り出したのか、青い鉄塊のようなハンマーを構えており、クウラの頭上からそれを振り下ろす。
ガッ!!
それに拳の一撃をぶつけ、弾き飛ばそうとするクウラ。両者の気が弾け、同時に互いの力量を分析する。
結果、弾き飛ばされたのはガスの方で、後方へ飛んで下がりながら着地する。
(今の手応え…)
しかし、打ち勝ったはずのクウラはガスのハンマーを殴った時の感触に違和感を覚えながらも続けて飛びかかってくるガスを迎え撃つ。ガスは再びハンマーを水平に薙ぐように振るい、クウラは手の平に作った気弾を押し付けて爆発させる。
跳ね返されると同時にハンマーは砕け、その破片も跡形も無く消滅する。が、ガスは怯まずに両手に斧を携え、振り下ろす。
バギィ!
両腕を掲げ、斧の柄の部分を受け止めるクウラ。
(そう言う事か。恐らく思うままに物体や武器を生成する力…フリーザを両断したのもそれか)
その隙にガスの繰り出した蹴りを腹へ喰らい、僅かに体勢が崩れたところへ顔面にパンチを叩きこまれ、クウラは後ろへ吹っ飛ばされる。
足の指を地面へ食い込ませて停止し、マスクの端から垂れた一滴の血が地面に落ちるのを見ると、ゆっくりと顔を上げる。
「なるほど…オレに挑んでくるだけのことはあるか。流石に弟では太刀打ちできなかったな」
「エレクの命令だ。やっと貴様ら一族が消え失せてヒータが覇権を握りつつあったんだ…再びあの世へ行ってもらうぞ」
「くくっ、そうか。小便を垂らしていた小僧が大きく出たな」
「…黙れ!!」
ガスは生成した鉈を投擲し、クウラを狙う。クウラは当然のように尻尾でそれをはじき返すが、その隙に走って接近してきていたガスがクウラの顎を蹴り上げる。そして、そのまま跳躍すると宙を舞っている鉈をキャッチし思い切り振り下ろした。
バチィ!!
咄嗟に腕でそれを受け止めるクウラだが、その腕の甲殻を割って深く刃が食い込んで血が噴き出し、骨にまで達する。クウラは尻尾でガスを吹っ飛ばすも、ガスは受け身を取ってノーダメージで着地する。
「はああああッ!!」
クウラは全身に気を漲らせ、渾身のパワーとスピードを発揮して突進する。強靭な鋼の如き肉体が発射された大砲のように襲い掛かるが、ガスは特大の盾を生成し、それを使って防ぐ。両者は全力を開放しながらの押し合いを展開するも、突然クウラの姿がフッと消える。勢い余ったガスは前のめりに体勢を崩し、その瞬間に背後から迫っていたクウラの飛び蹴りを受け、そのまま地面へ叩きつけられる。その三本指の巨大な脚に上半身全体を深く地中へ埋め込まれるも、しかしガスは全く精神的に動じない。大きく長い槍を生み出し、それを空へ向けて突き上げ、クウラを貫く。
いや、クウラも槍の切っ先を脇に抱えて辛うじてダメージは避けていた。
(コイツ…甘く見ていたのはオレの方か)
クウラはわずかな時間の中で自問する。
(ならば今のオレがやるべきことは…)
がその瞬間、目にも止まらぬ速度で迫って来たガスの膝蹴りが顔面へ命中する。クウラの顔の下半分を覆っていたマスク状の甲殻が砕け散り、素顔が露わになるが、その口元には微かに不敵な笑みが浮かんでいた。
「ドラゴンレーダーと言うものがあるんですよ」
ピッコロは地球から持ってきた、ドラゴンボールを探知することが可能であるブルマ作のドラゴンレーダーを取り出した。
「ドラゴンボールの放つ微弱な電磁波を察知し場所と方角を特定できるものです」
「な、なんとそんなものが…」
「ズルじゃないか?それ…」
信じられないといった顔でつぶやくモナイトとグラノラ。ふたりにとってドラゴンボールは40年近くもの間見つけられていない、もう存在しないものとさえ思っていたもの…それをいとも容易く見つけられるというのだから当然の反応だろう。
「確かにズルいですが…今回ばかりです。では我々はボールを探してきます…」
ピッコロと、グラノラの持っていた小型飛空艇を借りたアザミとカズラはドラゴンボールを探して飛び立っていった。
それを見送ったふたりであったが、その様子をさらに目撃していた別の者に気付かなかった。
「よぉグラノラ、元気そうだな」
「…!?エレク…!」
ヒータの長、エレクがいつの間にか彼らの側にいた。グラノラは驚いているが、モナイトは苦虫を嚙み潰したような険しい顔になる。
「お前、何故ここへ…!!」
「たまたま暇になったもんでこの星の様子を見に来てたんだよ、まあ仕事の一環さ。それよりも今の奴ら一体誰だ?お前の仕事仲間…って訳でもなさそうだが」
「いや、俺も初対面だ…どうやら別の星から来たようなんだが…」
「ほう…?何か話していたようだが?」
何かに勘付いたエレクはグラノラに問いかける。
「ああ、実は…」
「いかんグラノラ!!」
ドラゴンボールについて話そうとしたグラノラを、モナイトが止める。グラノラは何故モナイトが大声を出したのか分からずに固まり、エレクはやはり何かあると確信を持ってしまった。
「ん?なんだ?教えてくれよグラノラ…」
「駄目だグラノラ…口外してはならん…」
「じいさん、急にどうしたんだ?エレクは信用できるだろ」
グラノラは振り返ってそう言うが、その背後でエレクはモナイトを睨んでいた。
『そうか、じゃあナメック人を残してそっちのガキも早く殺せ』
『オレたちに歯向かうことなどできると思っているのか?オレがアイツの母親を殺したこと…言ってないんだろ?』
『そのまま黙っておけよジジイ。喋った途端にふたりとも殺してやるからな』
約40年前の出来事がモナイトの頭に過る。そうだ…あの時この男に従ってしまったことが間違い。しかし、グラノラが生き延びるためにはそうするしかなかった。
「グラノラ、よく聞くんじゃ!お前の…」
「ああグラノラよ、すまなかったなぁ」
が、エレクはモナイトの言葉を遮る。
「せっかくの休暇中に突然訪ねて一方的にプライベートを詮索するなんて、確かにオレが不躾だったようだ。オレたちはあくまでビジネスの付き合い…だがお前の腕は買ってるんだ…まさか復活したフリーザもお前がそこまでの力を付けているとは思っていないだろうな」
「なに…!?フリーザが復活した!?」
フリーザの名前にグラノラが反応すると、エレクは見えない角度でほくそ笑んだ。
「ああ、そういう話だが居場所はわからん。でもお前の故郷と母親を殺した元凶だものなァ…もしも居場所が掴めたらいい仕事にしてやるよ」
「…エレク、さっきの奴らはこの星にあるドラゴンボールを探しに行った」
「グラノラ…」
モナイトは静かにグラノラの名を呟くしかできなかった。グラノラがフリーザを憎み続けていることは知っている。エレクがその名を出した時点でこうなることを止められなかったのだ。
「ドラゴンボール…?」
「この星に存在する何でも願いが叶う球だ。見つけられたとして先に使うのは彼らだが…その後はもう一度集めてエレクが使ってくれ!そしてフリーザの居場所を知るんだ!」
エレクは数秒考えこんで思考をまとめ、計画を立てる。
「わかった。ではオレはソイツらのドラゴンボール探しを手伝ってやろう。そんないい情報を教えてくれたグラノラの頼みだ、お前がフリーザを倒すのを全力でサポートしてやるよ」
エレクも16年前に死んだはずのフリーザが何故か蘇りこの星にいる事にはかなり驚いた。だが、ドラゴンボールを利用すれば宇宙はヒータの思うが儘にできると考えた。
(まあクウラもフリーザも今のガスで始末できるだろう。その連中がドラゴンボールを見つけたらマキとオイルを呼んで殺し、奪う…くくっ、ありがとうよグラノラ…)
エレクはその場から立ち去った。モナイトは自分たちが生き残るために、ピッコロたちの元へエレクの魔の手を差し向けてしまった罪悪感を抱えながら、もう来ないと思っていた復讐のチャンスが巡って来た喜びに震えるグラノラの背中を見つめるしかなかった…。