もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第444話 「俺は真っすぐ立ってるか」

「あら…またお会いできましたわね」

 

「あれ…!?ミルさん!?」

 

カズラは何もない真っ白な空間でミルと再会していた。ミルは椅子に腰かけテーブルに肘をつき、ポットで紅茶を注いでいる。

 

「生きていたんですか?」

 

「いえ、私…ミル・フィーネはすでに死んでいます。貴方も見た事でしょう?」

 

「確かにそうですけど…」

 

「まあお座りになって…お茶でも飲んでくださいな」

 

カズラは釈然としないながらも席につき、ミルの淹れてくれた紅茶に口を付ける。

 

「それで、これはどういうことなんですか?」

 

「どういう…とは?貴方が飲み込んだのでしょう?『ドリル』の記憶兵器を」

 

「あ…!そうだ思い出した!!咄嗟に何でもいいから強くなる方法はと思って…」

 

「私はミル・フィーネ本人ではありません。ドリルのチップに刻まれた、彼女自身の記憶…とでも言っておきましょう」

 

「はあ、なるほど…」

 

「それでお聞きします。本当に、記憶兵器を受け入れるおつもりですか?」

 

「え?」

 

「記憶兵器はかつて存在した人造人間を絶滅させるため、戦い続ける運命に身を投じる戦士たちです。現在、敵対していた人造人間はもう存在していませんのでそれ以降誕生した新たな記憶兵器には奴らに対する憎悪だけは無くなっております。ですが、記憶兵器になったことによる…寿命や老化速度の変化…再生能力…武器への変形…きっと苦労なさる。それに、死に方さえも普通ではないものになるでしょう」

 

カズラはその意味を理解し、黙った。

 

「この先、もしもサザンカと生きていくというのであれば…当然貴方は先に死んでいくサザンカを、彼女よりもずっと若い姿で看取らなければならない。他にもいろいろな違いを実感することでしょう」

 

「はい…」

 

「…今ならまだ間に合いますわ。改めてお聞きします…本当に、記憶兵器を受け入れるおつもりですか?」

 

しかし、カズラの答えは決まっていた。

 

「はい。そうしないと二度とサザンカに会えなくなりそうですんで…」

 

少しはにかみながらそう言ったカズラを見たミルは静かに目を閉じ、紅茶を飲み干すと席を立つ。

 

「分かりました…『ドリル』の力を、貴方に託します」

 

「ありがとうございます、ミルさん」

 

「はいはい、それでは早く行きなさいな。だって…貴方たちのような若者の輝きは私には眩しすぎますので」

 

 

 

 

 

 

カズラの右腕がドリルに変形し、高速回転する。それはマキの攻撃を彼女の体ごとはじき返した。そしてアザミを殴り続けているオイルの頭上へ移動し、ドリルを向けたまま急降下する。

 

「…!?」

 

驚いたオイルは咄嗟に身を引いてそれを避ける。カズラは解放されたアザミを脇に抱え、同様に距離を取った。

 

「なんだ…?あのガキに何が起きた?」

 

「ぐ…カズラ…」

 

「アザミ、お前はもう休んでくれ」

 

カズラはそう言うと、気絶したアザミをピッコロの横に寝かせ、マキとオイルに向き直る。

外見に変化はない、気が増えたわけでもない…が、先ほどの謎の変形に加え今までと纏っている雰囲気が違う。

 

「オイル、こりゃさっきまでのようにはいかないようだね」

 

「そうだな…ま、でもオレたちが勝てる勝負であることに変わりはねえだろ」

 

そう言い、気を取り直してカズラににじり寄るマキとオイル。

 

「シャアアアッ!!」

 

そして叫び声と共に同時にカズラに襲い掛かった。

カズラは足元にあった白いコートをバサッと翻し、ふたりを怯ませると同時に宙へ飛び跳ね、それを羽織る。そして掲げた右腕が捻じれるように変形していく。

 

「ドリル…?」

 

ミルの操るドリルは円錐型の切っ先が鋭く尖ったものであったが、カズラのドリルは円筒型。それを振り上げ、前方を薙ぎ払う。

 

「うお!」

 

削られた地面の土と石が煙になって巻き上がり、周囲に立ち込める。カズラはその隙にピッコロとアザミのもとへ移動し、ふたりを担ぎ上げる。

カズラは記憶兵器の力を得た事で常軌を逸した身体能力と変形を扱えるようになった他、それらの使い方と医学の知識も脳に刻まれた。ピッコロもアザミも生きている。

 

「うがあああ!逃がすかァア!!」

 

だが、怒ったオイルは両腕を振り上げて迫り、勢いよく振り下ろす。カズラは後ろへ飛んでそれを避けるも、叩かれた地面が砕けて隆起し、とてつもない衝撃波がカズラを襲う。

カズラはドリルと化した腕でそれをガードし、さらに距離を取ろうとするが、そこへ素早い身ごなしのマキが接近し、手に纏わせた気の爪を振りかざす。

 

「ぢゃあ!!」

 

「うわあ!?」

 

地面が裂けて割れるほどの斬撃を目の当たりにしたカズラが思わず声を上げる。そこへ背後からオイルが拳を繰り出し、右腕のドリルでそれを防ぐ。

 

グシャア!

 

「いでで…!」

 

あまりの威力にドリルは破壊され、右手首から先が消し飛んでしまう。だが記憶兵器の再生能力が手を元に戻し、痛みも消える。

 

「い、痛かったな~…」

 

記憶兵器になったばかりのカズラは戦い方は分かってもダメージや痛みにはまだ慣れていない。精神が削られればその分だけ継戦能力も落ちてくるだろう。

 

「ぬおおお!」

 

「きゃははは!」

 

しかし、さっさと逃げようにもマキとオイルがそれを許さない。カズラはふたりの猛攻を回避し続けるが、これといった有効打もなくただ動き回るしかできない。

 

「チ…アイツら、なにをモタモタしてやがるんだ…」

 

その様子を眺めていたエレクは苛々とそう呟き、持っていたエネルギー銃をカズラへと向ける。

…だが、その時視界の上から降ってくる異様な影を捉える。見上げてじっと目を凝らすと…

 

「…なんだあれは」

 

何やら生物かどうかすらわからない謎の光沢を放つ物体が大量に空からこちらへ向けて押し寄せてきている。エレクにとってもあんなものは正体不明…見たことがない。得も言えぬ不気味さを察知したエレクは声を張り上げる。

 

「おいマキ!オイル!グズグズするな!さっさとレーダーを奪ってずらかるぞ」

 

「分かっちゃいるけどよ!コイツすばしっこくて…」

 

「ハァ…ハァ…!」

 

カズラも息を荒げているが何とかマキとオイルから逃れ続けている。

 

ヒュウウ… ドン! ドン!

 

そしていよいよ、空から降ってきていた謎の物体の集団が大地に降り立った。人間大サイズの丸っこい金属のボディから細長い手足と尻尾が生え、赤く明滅する一つ目がギョロリとカズラやオイルたちを睨みつける。

 

「ええ!?今度は何だ!?」

 

「こりゃ、一体どういう事なんだ…?」

 

その場の全員が困惑し、無機質なその群体が動き出す。それぞれが隊列を組んでいるかのように規則正しく動き、一斉にビーム光線を発射し始める。

 

「よくも私の宇宙船を破壊してくれたな…!こうなったらキサマを我がマシンミュータントの糧としてくれる!!」

 

彼らの中央で、クウラによる宇宙船の爆破を何とか生き延びていたDr.ミューが高らかに叫んだ。だが全身は傷だらけで両目のカバーグラスは割れて目が露わになり、その表情からは正気ではないことが伺える。

だが、いつの間にどうやって量産したのか、マシンミュータントたちの物量はカズラやマキたちをもってしても容易く払えるようなものではなく、何体かずつ破壊しても焼け石に水だった。

 

「クソ…!ガスはまだか!?」

 

その様子を眺めていたエレクの元にもマシンミュータントが迫りつつあった。それに気付くと、エレクは早々にこの場を離脱しどこかへと飛び去っていく。

 

「おいおい、ヤバくないかこれ…」

 

いよいよカズラは体力をほとんど使い果たし、その場に膝をついてしまう。本来ならば継承後にじっくりと鍛錬を重ねながら戦闘で経験を積んでいく記憶兵器が、付け焼刃のような状態で闘い続けたのだ…ひとまずの能力の限界はやってくる。

 

ピシ パリィィィン…

 

が、カズラは見た。自分のすぐ横の何もない空間に突然亀裂が走ったかと思えばガラスが砕けるようにして穴が開いたのだ。

 

「あなたは…ウスターさん!?」

 

そしてその向こう側からゆっくりと姿を現したのは、フリーザを止めに行ったきり帰ってこなかったウスターだった。てっきりもう死んでしまったものかと思っていたが、こうしてようやく戻ってきてくれた!

 

(いや、様子が変だ…)

「…あ!」

 

カズラはそこで気が付いた。ウスターはもう…

ウスターの頭部の右半分が消し飛んでいた。本来であれば既に死に絶えているであろう損傷。しかし、そんなウスターをこの場所まで突き動かしたものは一体何なのか…

 

 

 

『さあ、一日の始まりは掃除からだよね、ウスター』

 

 

 

「ああ、今日も頑張ろうか、アルマンド」

 

ウスターの目はここではない何処かを見ているかのようだが、瞳は確実に輝いている。口元には爽やかな笑みを浮かべ、目の前に蠢くマシンミュータントの大群へ向けて歩き出す。

マシンミュータントもウスターの接近に気付き、電子音をやかましく鳴らしながら襲い掛かるが…

 

ブン

 

ウスターの腕の一振りによって発生した衝撃波によって薙ぎ払われ、バラバラに散ってゆく。さらに手の平から放つ一発のエネルギー弾が炸裂し、地を揺るがす大爆発を起こす。

 

「カカロット!霊夢!お前らはあっちを!俺はこっちへ逃げた奴らを片付ける」

 

高速で縦横無尽に駆け巡りながら、残されたマシンミュータント達を確実に一体ずつ破壊してゆく。

 

「何なのだキサマは…キサマはア~~~!!」

 

その中でDr.ミューもあえなく肉体を引き裂かれ、絶命すると同時にその体が爆発する。ウスターはものの数分で全てのマシンミュータントを鏖殺して見せた。

煙が立ち込める中、ウスターはゆらりと歩き出し、残った敵へと向かう。

 

「なんだこのゾンビは…!」

 

「何でもいい!くたばりやがれえ!!」

 

オイルは両手を上に掲げ、特大のエネルギー球を作るとウスターへ向けて投げ飛ばす。だが、ウスターはそれを蹴り返し、空高く打ち上げたところで爆発させる。

しかし、その隙を狙って接近していたマキが振るう気の爪がウスターの胸をざっくりと切り裂いた。

鮮血が地面に飛び散り、赤く染まる。

 

 

 

『あら~、これが最後の部屋…』

 

『こりゃ手強い汚れだねえ。でもウスター、ここを綺麗にし終えたらもう休んでいいんだよ』

 

『何を言ってるのアルマンド…掃除が一日の始まりなんでしょ?まだまだやることがいっぱいある…でも、ただ少し疲れたな…』

 

 

 

「大丈夫だターレス、俺がこの程度でくたばるはずがない」

 

ウスターはそう言いながらオーラを練って作った巨大な両手を操り、マキとオイルをそれぞれ掴み上げて拘束する。

 

「く、コイツ…!」

 

「まさか…!?」

 

そして、生身の両手に気弾をひとつずつ作り、それはどんどんとエネルギーが圧縮されてゆく。

次の瞬間、ウスターの両腕からふたつの光の柱が伸び、動けないマキとオイルを呑み込みながらその軌道上にあるすべてのものを消し去った。

 

 

 

『お疲れ様。今までよく頑張ったね』

 

『ああ…でも、楽しかったね…』

 

 

 

「ウスターさん!!」

 

カズラは倒れたウスターの上体を抱え上げ、必死に呼びかける。そこでようやくウスターは正気に戻り、ゆっくりと視線をカズラへ合わせる。

 

「おい…俺は真っすぐ立ってるか?」

 

その言葉は、今のウスターの状態を尋ねているのではない。彼女自身が己の生き様がどうだったかを問うているのだ。

当然カズラの返答は

 

「はい」

 

肯定。

それを最期に聞くとゆっくりと目を閉じ、魔界最強の戦士ウスターはその壮絶な人生の幕を下ろした。




【現在公開可能な情報】
ウスターの人生

200年以上前に魔界の住人、魔人として誕生。女。
幻想郷の魔界に存在する、創造神神綺の住まう館のメイドとして働き、そこで親友アルマンドと出会う。
いつからか兵士を志願するようになり、それを止めさせたいアルマンドに襲撃され片目片耳を失う。
結局は兵士になり、最前線で戦う。その時にアルマンドも兵士となっていることを知り、その死に目に立ち会う。ここで一人称が「俺」に変化。
その後除隊し己を鍛え続ける武道家として魔界で名を馳せる。
そして幻想郷で開催される幻想郷一武道会の噂を聞き、カカロットや霊夢と出会う。
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