「グラノラ、いい知らせだ」
エレクはマシンミュータント襲撃の現場から去った後、グラノラとモナイトの元へ戻って来ていた。
「フリーザを見つけたぞ」
「!?本当か!?」
「アイツ、もうこの星にいやがった。兄貴のクウラって野郎も一緒だ…隙を見て殺そう」
「ああ…わかった!」
フリーザへ並みならぬ復讐心を抱えているグラノラを利用するつもり満々のエレクは彼を連れてどこかへと行ってしまった。一人その場へ残されたモナイトは、何もできない己を恥じるかのようにその場に座り込み、地面を殴った。
「情けない…」
ドサ…
「誰じゃ?」
その時、近くで何かが倒れる音を聞いた。恐る恐るその場所へ近づくと…そこにはフリーザに手酷い傷を負わされたスカッシュが倒れ込んでいた。
「この服は…」
グラノラから話だけ聞いて知っていた銀河パトロールの制服に気付いたモナイトは己の持つ超能力を使ってスカッシュの傷を癒すことにした。
バキィ!
空中でガスの放つ蹴りがクウラを吹っ飛ばし、地面へと落下する。すかさずガスは武器の創造能力を利用しクウラの落下地点に棘が立ち並んだ板を設置した。
当然このまま激突すれば全身串刺しでは済まないが、それに気付いたクウラは尻尾の先端を上手く針の隙間に突き刺し、尻尾の筋力だけで衝撃と重さを支えて止まる。そしてキッとガスを見据えると、両手の指先から無数の細かな気弾を連射する。
「ふ…」
が、ガスはそれを見て鼻で笑うと身の丈よりも巨大な大剣を創造し、横薙ぎに振るう。
生じた風圧と衝撃波がクウラの気弾全てをかき消してしまうも、クウラ自身はその様子をただ眺めていた。その隙に高速で接近したガスの拳を顔面へ叩き込まれ、さらに脳天へ踵落としを喰らう。
「が…!」
クウラは思わず目を閉じて悶絶してしまう。ガスはそんなクウラの尻尾を掴み、勢いをつけてグルグルと振り回し回転させる。
そのまま巨体を投げ飛ばし、凄まじい勢いでぶっ飛んでいくクウラは遠くにある街へ向かっていく。
ガシャアアン!!
シリアル星の街は透明な半球状のバリアーに覆われており、それを突き破って市街地のど真ん中に墜落してきたクウラに驚く住民たち。
「きゃあ!」
「なんだ一体!」
クウラはコンクリートやアスファルトの破片を払い落としながら立ち上がり、迫りくるガスを迎え撃つ。
周囲で怯える通行人にも構わずにその場から飛び立ち、拳を向けて急降下してくるガスへ対しこちらも拳を振り上げて叩き付ける。
ドゥン!
両者の拳がぶつかり合い、凄まじい閃光が周囲を照らす。少年のようなガスとクウラでは体格にかなりの差があるが、パワーはほとんど互角。いや、ガスの方が有利か。
ガスは追撃の蹴りを放ってクウラを弾き飛ばし、クウラは遠く離れた場所にある大きなデパートのような建物の中に突っ込んだ。
追いかけるガスだったが、デパートの中の駐車場から無数の車がまるでマシンガンの弾丸のように投げ飛ばされてくる。
ドドドドドド…
視界を埋めるほどの量の車を、ガスは両手に携えた刀を振るって一台ずつ素早く両断してゆく。
デパートの中の暗がりからその様子を見ていたクウラは口元を押さえながら薄く笑い、ガスの元へ飛んで行く。
右手には気弾を持ち、それを薄く広げて回転させ、気円の斬撃として投げ飛ばす。
「下らん技だ」
しかし、ガスはその性質を見切り、受け止めるでもなく跳ね返すでもなく、難なく避ける。クウラはそれを見てもなお同様に気円の斬撃を連射し、執拗にガスを狙う。
「下らんと…言っているだろう!!」
斬撃の間を搔い潜りながらクウラへ接近し、腹へ膝蹴り、顔面へ肘打ち、さらに容赦のない猛撃を叩き込む。が、クウラも血だらけになりながらも好戦的な笑みを崩さず、十字型に組み合わせた二枚の気円を左手でガスの胸に押し付けようとする。
それに目ざとく気付いたガスはクウラのその腕を殴り折り、頭突きを食らわせる。
「…ぜえぇい!!」
クウラは怯むふりをして距離を置きながら、エネルギー波に見せかけた目が眩むほどの閃光を放つ。ガスが一瞬それに驚いた隙を見て上空へ素早く飛び上がり、上を見上げた頃には頭上へ掲げた右手の人差し指に巨大な光球を生み出していた。
「星ごと消えてみるか?」
「…ゴミめ」
容易く星を塵と化す一撃、スーパーノヴァがゆっくりと放たれた。
ガスはヒータとこの惑星がビジネス上の関係にあり住民に対してはあまり悪い態度を取れない事、それと星に降り立っているヒータの他の兄弟たちへの影響を考慮し、クウラの光球を着弾前に片づける選択を取る。
鋭く細かな刃の並んだ巨大な網を創生し、広げながら振り回し、スーパーノヴァに正面から被せるように操る。
「ぬぅうううう!!」
スー…
鋭い網は焼き尽くされる事なく、逆にスーパーノヴァを網目状にスパリと斬り刻んで見せた。しかし、四角い幾本もの柱状となって地上へ降り注がんとするクウラの悪意の塊。ガスは冷静にもう一度網を反対から振るい、今度は真横から同様に切り裂いた。
スーパーノヴァは無数のサイコロのように分解され、そのエネルギーを保てなくなりその全てが空中で爆散する。
渾身の一撃を防がれたクウラであったが、不気味に少しだけ口角を上げて呟いた…
「…良い」
と…。
そんなクウラの目の前まで浮遊してきたガスは額に青筋を浮かべながらクウラを睨み、口を開く。
「…やはり、お前らの一族はその誰もが生きているべきではない。やはりここで死ね」
「くくく…思ってもいないことを。貴様はただ、あの兄に失望されたくないだけだろう。せっかく過去のシリアル人どもを殲滅し、シュガ人を騙してさんざん吹っ掛けて売りつけたこの星が容易く破壊されてはな…」
「黙れ…!もうこれ以上時間をかけるわけにはいかない」
次の瞬間、ガスの体から電気のように迸る気が放たれると同時に、その姿が変化する。両側のこめかみ辺りから下向きに大きな角が伸び、その体が筋肉質に大きく膨れ上がる。
「少し本能を開放する」
クウラが何かしゃべろうとした瞬間、ガスの拳がクウラの腹に突き刺さっていた。
「ごふ…!」
さらに回し蹴りをまともに喰らい、再び街のはるか外までぶっ飛ばされる。
何もない平原に墜落したクウラは血が流れる腹を押さえながら起き上がった。そこへ追いかけてきたガスがやってくる。
「どうだ?もはやキサマではオレに太刀打ちできんだろう…いいかげん負けを認めて死を受け入れろ」
「そうか、貴様らヒータの種族は野蛮な本能を押さえ込むことで人間になったんだったな…貴様自身も長くは理性がもたんだろう」
「ハァ…その通りだ…だからこそ、今すぐここで死ね!!」
ガスは飛びかかり、反応できなかったクウラの脳天へ肘打ちを叩きこむ。耐え難い衝撃に大きく仰け反るも、ガスの体へと手を伸ばすクウラ。
しかし、ガスはクウラが何かをするよりも早く右腕を差し出し、渾身の気功波を撃ち込んだ。
「はあああッ!!」
…ガスには苦い思い出がある。40年近く前、今回のように少し本能を開放してとあるサイヤ人と戦ったことがあったが、そのサイヤ人を仕留めきることができず、逆に自分が本能によって暴走してしまい敗北を喫したことだ。
ガスはあれからさらにエレクによって鍛えられ、当時とは比べ物にならない戦闘力を手にした。だが、抗う事の出来ない本能の波はそれでも止められるものではなく、やはり暴走してしまう前に敵を始末する必要がある。
「…流石に、アイツもこれで…」
だが、煙の中から現れたクウラは生きていた。全身がボロボロで、左腕は肘から先が焼失している。恐らくは片腕を犠牲にダメージを最小限に抑えたのだろうが…
「はぁ…ゼェ…」
クウラはしぶとい。このままではあの時の二の舞になってしまう。
ガスは力任せに拳を振るいクウラを殴打し、足を掴んで振り回し岩へ叩きつけ、腹を踏み抜いて猛烈な攻撃を浴びせ続ける。
「死ね!死ねェ!!」
焦っているかのように闇雲に暴れ続けるガス。様子がおかしい事は明白だが、戦闘力も増大したその力は到底クウラではどうする事も出来なかった。
「ぐぐ、があああああ!!!」
ついに本能を制御しきれなくなり、暴走状態に陥ったガス。白目を剥いて雄叫びを上げ、迸っていたオーラがさらに膨れ上がり、周囲に落雷のように降り注ぐ。
しかしガスはクウラに夢中になっていたことに加え暴走し周りが見えなくなったことで気付けなかった。背後から接近してくる影に…
ガシッ!!
「!?」
「宇宙最強は…このフリーザ様だァ…!!」
ガスに体を両断されたはずのフリーザが、上半身だけの状態で背後からガスにしがみ付いた。ガスは怒りにわなわなと震えた後、背中のフリーザを引きはがそうとその場でめちゃくちゃに暴れ狂う。
「ぐああ…!」
ほとんど死にかけの状態のフリーザは容易くガスに振り払われ、地面に叩きつけられる。
だが、クウラはその隙を無駄にしなかった。
ガシッ
ガスの脇腹をその右手で掴み…
ドドゥドゥドゥドゥ…
「普通に戦い続けていれば負けていたのはオレだったはずだ。素の戦闘力でいえば強いのは明らかに貴様だった。オレは腰を据えてじっくりと鍛錬しなければ身にならないタイプなんでな…戦いの最中での変身や覚醒には期待できなかった」
クウラは見ていた。フリーザの放つ気円の斬撃、ガスが生成した剣や刀による斬撃を。
「オレは貴様に手本を求めた。フリーザから着想を得た斬撃を使って、如何にすれば貴様を殺せるかのな。貴様の発想と、オレの土壇場での技能の習得に賭けたのだ…その結果、ぶっつけではあったが上手くいったぞ」
クウラの見下ろす先には、脇腹から胸へかけての胴体が賽の目状に細かく切り刻まれ、血だまりの中で既に物言わぬ死体となったガスがいた。
ガスが網を使ってスーパーノヴァをバラバラにしたのを見たクウラは、ガスに勝つにはこれを自己流に習得するしかないと決めた。気円の斬撃を掌で触れなければ満足に届かない飛距離にまで縮めることで賽の目状に繰り出し、ガスの胴体を細かく切り分けた。
「くくく…まあ、最初の踏み台としてはなかなか丁度良かったな。誇れよ、オレの糧となれたことを」