もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第446話 「お前が選んだ道の果て」

「くくく…まあ、最初の踏み台としてはなかなか丁度良かったな。誇れよ、オレの糧となれたことを」

 

敗れたガスに対して自分本位の嘲るような言葉を吐き捨てるクウラだが、その顔はどこか晴れやかで己の勝利を喜ぶと同時に相手への敬意も含まれているかのようだった。

しかし、クウラも満身創痍の状態で後ろへ倒れるように座り込んだ。

 

「オレの気を分けてやったことに気付いたか?オレたち一族であればひとまず生き延びられるはずだ」

 

そして、上半身だけの状態でふよふよと目の前に浮かんでいるフリーザにそう言った。フリーザもクウラも、気力を使い果たし第四形態から互いの通常の姿へと戻っている。

 

「…ふん、まさかクウラ…貴方に情けを掛けられるとは思ってもいませんでしたよ」

 

「不満か?オレはただ、ヤツに勝つには意識外からの不確定要素が必要だと思って用意しただけだ」

 

ふん、と口を尖らせて鼻を鳴らしたフリーザは、腕を組んでそっぽを向いた。ふたりに少しの沈黙が流れる。

 

「フリーザよ、貴様はこれからどうする」

 

「…そうですねぇ、かつてのフリーザ軍はもう残ってはいないようですから…どうしたものでしょうか」

 

「オレは再び宇宙最強を目指す。そのためにまずヒータを乗っ取り、抱えていた賞金稼ぎを配下とする。ソイツらを含めたクズ共を使ってオレはさらに強くなる…まずはあのブロリーとかいうサイヤ人を殺せるまでにな」

 

「あぁそうですか…どうぞご勝手に」

 

「だからフリーザ、お前の地位と知名度が必要だ。奴らを従わせられるだけの特大のな…生憎オレの存在は全くと言っていいほど知られていないからな…どうだ?再び我が栄光の一族が頂点に返り咲くのだ」

 

昔、とある宇宙人の一族に一際強烈な悪意と野心、そして戦闘力を持った突然変異体が誕生した。その男、コルドは自らを頭とする軍隊を結成し、宇宙各地で地上げを行い始めた。

コルドは、これほどまでに優秀で強烈な突然変異である己から生まれる命はどれほどまでにそれが増大しているのだろうと期待を膨らませた。しかし、生まれてきたクウラは邪悪な精神こそ受け継いだものの、コルドの戦闘力はほとんど受け継がれなかった。「まあこんなものか、自分のような突然変異がそう何度もホイホイ生まれるものでもなかろう」…コルドは自分にそう言い聞かせ、二人目の子供を誕生させた。その名はフリーザ。邪悪さにおいてはコルド以上、戦闘力に至ってもこのまま成長を続けていけばコルドを優に追い越すであろう才能を持った逸材。

コルドはフリーザに劣ったクウラを冷遇した。だが、もはやクウラにとってはその逆境すらも糧にするほどの最強への執着が芽生えていた。独力で鍛錬を重ね続け一族の中で初となる新たなる進化を獲得し、生まれ持った才に胡坐をかいていたコルドとフリーザに実力を示し、己が認めた精鋭のみを集めた機甲戦隊を従え独自のやり方で事業を行い始めた。

フリーザにとっては、幼少期は遥か格下だと侮っていた兄、ある時から追い越されプライドごと叩き折られ自身の記憶からも追い出そうとすらしていた忌々しい存在。

クウラにとっても全く可愛げのない、いつまでも詰めの甘い弟。だが生前にブロリーと戦った際、既にクウラは己のフリーザに対する認識を理解している。

 

「…ふっ、いいでしょう…あの野蛮な猿どもを蹴散らし、私たちこそがこの宇宙で一番であるべきだと証明しようじゃありませんか」

 

ズゥン!

 

その時だった。クウラと会話をしていたフリーザの首元を何らかのエネルギー光線が貫いた。それは勢いを落とさずにクウラを狙って突き進んでくるが、彼の右肩を貫くに終わる。

 

「いいぞグラノラ!このままトドメを刺すんだ!」

 

「フリーザ…!オレたちの恨みを思い知れ!!」

 

遠くの方の岩場の上からグラノラが立っていた。右腕を左手で支え、銃の形に組んだ指先をこちらへ向け、迸る緑色のエネルギーを充填している。その背後には目を見開いて不気味な笑みを浮かべたエレクがおり、グラノラの肩を支えながら指示している。

 

「兄…貴…」

 

クウラが分けてやった気も今ので尽き果て、このまま長い時間をかけて死ぬのみとなったフリーザ。そんな有様を見たクウラは何の感情を示すでもなく…

 

「撃て!」

 

「ああ!!」

 

ドゥン!

 

次の一撃を放ったグラノラへ向けて、フリーザを投げつける。強力な光線に真正面から晒されたフリーザはその衝撃と爆発によって跡形もなく消滅し、周囲には激しい閃光と土煙が発生する。

 

「チ…あの野郎…」

 

それが治まってきた時には既にクウラの姿はどこにも無かった。

 

「エレク…ヤツは…!」

 

「逃げたようだな。だがこの星にまだいるはずだ…あとは任せたぞグラノラ」

 

エレクは急いだ様子でグラノラにそう言うと、足早にその場から立ち去った。その様子に違和感を持ちつつも見送ったグラノラだったが、ゆっくりと近づいてきた影に振り返る。

 

「お前は…」

 

どうやら遠くから飛んできた様子のスカッシュだった。その背中にはモナイトがおぶられている。

 

「ふぃ~、この爺さんがどうしてもアンタのとこへ連れてけってさ」

 

「じいさん、なぜ…」

 

モナイトは決意の籠ったまなざしで、しっかりとグラノラに話し始める。

 

「グラノラ、お前に話さねばならんことがある」

 

 

 

 

 

 

「ガスもしくじりやがって…まあいい」

 

エレクは自らのヒータの宇宙船を発進させ、既にシリアルから飛び立ち付近の宇宙空間を航行していた。マキとオイルを見捨て、ガスが殺されるのを目撃してもなお、エレクはその欲望と野心の炎を消すことはなかった。

 

「賞金稼ぎどもの中から強い奴を金で雇い、ヒータを再結成すればいい。この世に金で出来ないことはないんだ…この宇宙を牛耳るのはヒータ…いや、このオレだ!」

 

ピピピ…

 

が、その時、宇宙船は何らかの危険を察知しアラームを鳴らす。

 

「ん?」

 

 

 

 

 

 

「エレク…!すべてお前の所為だったのか!絶対に許さない…!!」

 

一方シリアル星では、モナイトからすべての真実を聞いたグラノラはフリーザと並ぶ元凶であるエレクへ憎悪を向け、そのエネルギーを構えていた。

エレクたちヒータがシリアル星の地上げをフリーザへ斡旋し、かつグラノラの母親を直接殺害したエレク。グラノラは今の今までその真実を知らずにヒータのために働き続けてきた。

 

「オートミル、照準を教えてくれ」

 

「あいよ。もう少し右…上…」

 

グラノラが身に着けているゴーグル、オートミルは彼の指示に従って照準を指示する。狙撃に適した目を持つシリアル人であるグラノラはこれだけで十分。既に空で小さな光となっているエレクの宇宙船へ狙いを定め…

 

「そこだ」

 

「うおおおおおおおおッ!!」

 

グラノラ積年の恨みと無念のこもった超火力のエネルギー光線が放たれた。

 

 

 

 

 

 

「ま、まずい…避けきれん…!」

 

──どうしてこうなった?

 

迫りくるグラノラの一撃を前に、エレクの宇宙船はそれを回避することが出来ず、直撃を受けた。船の限界を超えて宇宙空間へ強く押し出され、圧倒的な火力を前に大破し、爆発を起こしながらバラバラに砕け散った。その場所には爆炎が残されているだけで、生命の気配は一切消えていた。

 

 

 

──────

 

 

「…すまなかったな、お前たち」

 

エレクがたどり着いた場所は、この世で最も信頼していた兄弟たちが待つ場所だった。マキ、オイル、ガスが笑顔で彼を出迎える。

 

「何言ってんのさ、エレクのおかげでここまで来れたんだ」

 

「もっと美味いもん食いたかったが、しゃあねぇ…」

 

「そうか…。特にガス、オレはお前を使い捨ててまで宇宙の頂点にこだわった…その結果がこのざまだ」

 

「別に構わない」

 

ガスはエレクに返す。

 

「オレたちに理性を獲得する術を教えてここまで引き連れてきてくれたのはエレクだ。お前が選んだ道の果てに待つ運命と結末であれば口は出さない」

 

「…そうだったな、オレたちはあんな野蛮な連中とは違うということを証明するため、苦労して本能を封じ込めてまで宇宙へ進出したんだ…オレの方こそ、お前らがいなけりゃここまで来れなかった。いいか、オレたちは地獄へ行っても生まれ変わっても、ずっと兄弟だ。それだけは忘れるなよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

…こうして、シリアル星での冒険は幕を下ろした。

スカッシュたちはモナイトの超能力による治療を受け、ケツァルコアトルを修理するとすぐに地球へ帰還することにした。

 

「それじゃあアタイらは帰るとするよ。今回の事は銀河パトロールには報告しないでおくからな」

 

宇宙船へ乗り込む際、スカッシュはグラノラにそう言った。

 

「はは…それは助かる」

 

「色々ありがとうございました。また機会があれば地球にもお越しくださいね」

 

「わしの方こそ…次は地球にいる他のナメック人にも会いたいのう」

 

ピッコロはモナイトと握手を交わし、別れの挨拶をした。

 

「…帰ると言っても、地球がどうなってるのかわかんないのか」

 

「んだな。サザンカたちが勝ってりゃいいんだが…ま、アイツがしくってたら思い切り馬鹿にしてやるぜ」

 

 

カズラ、アザミ、ピッコロ、スカッシュは地球へと帰還する。ミルやウスターという偉大な仲間は失ってしまったが、彼女らのおかげで無事に目的を果たすことはできた。

だがまだすべてが終わったと決定付いたわけではない。地球へ到着した時、果たしてサザンカたちは勝利をおさめているのか。

 

達成感と同時に不安をも抱えながら、彼らは帰路を急ぐのだった。

 

 

 

 




今回で終わったシリアル星編は章を分けようかと考えたのですがやめて途中に組み込むことにしました。
次回からサザンカやブロリーの戦いに視点が戻ります。
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