もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第448話 「勝ちたいよね」

地獄にて。ジャネンバに寄生されたベビーと激闘を繰り広げるサザンカであったが、ベビーの攻撃によって右腕右足を切り離されてしまい、万事休すだった。

 

「サザンカ大丈夫!?」

 

だが、流星の如き勢いでさっそうと現れたシロナは、大きな蟹のハサミに変形させた右腕でジャネンバベビーの放った斬撃を弾き返した。後ろへ靡く長い紫色の髪など、雰囲気はだいぶ変わっているがすぐにシロナだと気付いたサザンカも、少し安心した表情で返す。

 

「バッカ、大丈夫なわけねーだろ…」

 

それを目撃したベビー自身も、シロナの姿と戦闘力が記憶と違うことに困惑する。ブロリーの記憶から得た情報と地球で活動していた時に得た情報を照らし合わせても、今のシロナの変化は異様であると感じた。

 

「アイツに勝ちたいよね?」

 

シロナが笑顔でサザンカにそう問いかけると、サザンカは決死の表情で答えた。

 

「ああ、もう一発は喰らわしてやりてぇ!」

 

「そっか、ま…どうでもいいんだけどね」

 

シロナは笑みを浮かべながらそう言うと、その右腕がさらに形を変え、ラッパのように広がった。

 

「え!?」

 

そして、なんと驚いたまま動かないサザンカを吸い込んで丸呑みしてしまったのだ。右腕はまるで生き物のように蠢き、さらには地面に落ちていた切断されたサザンカの手足も一緒にシロナの体内へ取り込んでゆく。

 

「ハアッ!!」

 

するとシロナの体から白い小さな粒のような光が溢れ出し、滲み出ていたオーラが煌めきを増した。ドミグラ戦で一瞬だけ見せたパワーの増加は見られないが、それでも彼女の放っている異様さも増したことに変わりはない。

 

(吸収した…!?コイツにそんな力が…?)

 

ベビーは警戒し、片足を後ろへ下げる。その仕草を見たシロナは不敵に笑い、一歩踏み出す。

 

「もしかして今ビビった?それも仕方ないか、アンタ…ひとりじゃ何もできない赤ん坊みたいなもんだもんね」

 

シロナはベビーの魂を観測出来ていた。それによって一目で彼の本質を見抜いてもいた。かなり深層に押し込まれてはいるが確かに存在している何者かの魂に邪念が憑りつきジャネンバとなり、そのジャネンバにベビーが寄生しその力を限界を超えて引き出している。

ベビーは挑発の言葉に青筋を立てるも、冷静に攻撃の一手を構える。

 

「それがどうした?この世の全ては全宇宙を支配する王であるこのオレ様のものだ、オレに利用されて当然だ」

 

指先で目の前をピッとなぞると、シロナへ向けて不可視の巨大な斬撃が発射される。

シロナは容赦なくその一撃に首を両断され、勢いよく頭が宙を舞ってゆく。

 

「口ほどにも無い」

 

嘲るようにそう言ったベビーであったが、次の瞬間に驚愕の光景を目にし、固まる。シロナの腕がゴムのように伸縮し自らの頭部を掴んだかと思えば、それを思いきり振り下ろしてベビーに頭突きを叩き込んできたのだ。

全く予想だにしていなかった攻撃方法を受けたベビーは何が何だか状況が分からなくなり、咄嗟にエネルギー弾を発射した。

シロナは持っていた自分の頭部を引っ張って絨毯のように広げると、それを盾に使って防いだ。

 

「なっ!?」

 

驚いたベビーはさらにエネルギー弾を連射する。シロナは頭部を元に戻すと、両手の拳を握ってそれを打ち出した。

 

「ウラウラウラウラウラ…!!」

 

そしてその全てを殴って跳ね返していく。

 

「バカな猿め」

 

だが、シロナが弾いたベビーの気弾は彼女の周囲にとどまっており、そこでシロナは自分がいつの間にか逃げ場なく囲まれていることに気付く。

 

「やっば~~!!」

 

ベビーは拳を握り、気弾を操作し一斉にシロナへ集中的に浴びせた。シロナは咄嗟に液状に体を変えて素早く隙間から逃げようとするが間に合わず、その中心で段々と体が吹き飛ばされて小さくされていく様を見てベビーは勝ち誇った表情を見せた。

しかし、何かがおかしいと気付き目を凝らす。なんと千切れたシロナの体の破片が離れたところで集まり、もうひとりのシロナを形作ろうとしていたのだ。

 

「何だと…!」

 

気弾の連打でもシロナの残りを消し去ることはできず、結果的にシロナはふたりに増えてしまった。

ふたりのシロナはベビーを見下ろし、指を指す。

 

「アンタにこんなことできる?」

 

「なめるなアッ!!」

 

ベビーは不可視の斬撃を無数に繰り出し、前方を薙ぎ払う。シロナはもう片方のシロナの足を掴み、変形させて刀にするとそれを振り回して斬撃を消し飛ばす。そうして開いた隙を縫ってベビーへ接近し、今度はモーニングスターに変形させたシロナを振り上げて思いきり顎をぶん殴った。

 

「ぐあ…!」

 

口の端から血を流して仰け反るベビーだがすぐに元の態勢に戻り、片方のシロナを蹴り飛ばした。

 

「ぎゃあ~~」

 

ベビーもまたシロナを分析し、次の一手を考える。自身の両サイドの空間に穴を開け、吹っ飛んでいくシロナの先へと繋げる。そこへ気弾を連続で撃ち込み、穴を通して次々とシロナへ攻撃をぶつけていく。

だがその場に残ったもう片方のシロナが背後から迫っていたが、ベビーは尻尾を使って刺突を繰り出し、串刺しにした。

 

「残念、私不死身なんだよね」

 

シロナは口から血を流し、体の前面が血に染まるのも一切気にせずにベビーの尻尾を胴体に突き刺さったまま掴み、驚異的な膂力でグイッと引っ張り寄せる。そして背中に渾身のパンチを一撃浴びせると、本人は鳥の翼を得てその場から退散する。

 

「おかえりシロナ」

「ただいまシロナ」

 

そしてベビーの気弾攻撃を受けてボロ雑巾のようになっていたシロナと合流し、ひとりに戻った。やはり両者の受けたダメージは何事もなかったようにすべて回復しており、戦闘力も落ちていないと見受けられる。

ベビーはその様子を苛立たし気に眺め、怒りのオーラを漂わせる。

 

「下等なサイヤ猿め…意味のわからん手を使いやがって」

 

「アッハハハハハ!そりゃお互い様でしょー?」

 

笑いながらそう言ったシロナだが、そんなふざけた問答をするつもりがないベビーは素早く彼女の懐へ潜り込み、腹へ思いきりパンチをめり込ませた。

 

「ぐえ…!」

 

「死ね!」

 

そのまま拳から斬撃を放ち、シロナの体をバラバラに切断する。しかし、散らばったパーツはまた合体し始め、形を作ってゆく…だがその姿は元のシロナの姿とはかけ離れた龍のような怪物であった。

 

「ガオー!!」

 

そして思いきりベビーへ突撃し、咄嗟に受け止めるもののその勢いを殺しきれずに押される形で両者は真っすぐに吹っ飛び、途中にあったいくつもの針山を破壊しながらどこまでも飛んでゆく。

 

「調子に…乗るな…!」

 

キレたベビーは龍と化したシロナの鼻先を両腕で掴み、全身からオーラをジェットのように噴射して踏み止まると、その巨体を思いきり投げ飛ばし、地面に叩きつけた。

長い体が頭から尻尾の先まで一直線にビターンと伸ばされ、シロナは頭の上で星を回す。

 

(分身しようが巨大化しようが、戦闘力の絶対量は変わらないのか)

 

始めはシロナの特異な能力に驚かされたものの、冷静になれば純粋なパワーで上回っているのはやはりベビーの方だった。さらに言えば、ベビーもまたジャネンバの魂を沈め肉体と深く融合しその力を引き出しており、それ故にドミグラのように魂を狙いすます事も可能である。

 

(だが、あの肉体…サイヤ人であることに加えなかなか有用な能力が備わっているな)

 

ベビーは考えていた。確かにジャネンバの肉体は強力で、魔法のような様々な力も宿っている。だが、その力が十二分に発揮されるのはこの地獄にいる間だけなのだ。地獄を拠点にしてツフルの帝国を再建するといっても、やはりベビー自身の思想としてはサイヤ人の体を支配することでその尊厳も踏みにじりたいというのが本音である。

 

(最終的な肉体はブロリーでもいいと思っていたが…)

 

「フハハハハ…いいだろう、細胞一つ残さず消し飛ばしてやる」

 

ベビーは伸びているシロナを見下ろしながら高く舞い上がり、グッと拳を握って構える。遠心からにじみ出てくるどす黒い淀んだオーラが頭上へと昇ってゆき、見る見るうちに塊を形成してゆく。

 

「うーん…って、なんだあれ!?」

 

正気に戻ったシロナは、空に浮かぶ超巨大なエネルギー球を見て目玉が飛び出るほど驚いた。漆黒のエネルギー塊の輪郭が白くぼんやりと輝き、禍々しい様相を呈している。

 

「死ね…『リベンジデスボール』!!」

 

思い切ってそれをシロナへ向け、投げ落とすベビー。凄まじい破壊力が形となって迫り、直撃すればシロナであっても無事では済まず、魂を狙われているため再生が追い付かず削り切られてしまう可能性もあるだろう。

 

「じゃ、私も本気でいこうかな。『ファイナルマスタースパーク』!!」

 

両手から発射した魔力の柱が一つに混ざり合い、さらに太く巨大化しながらベビーのリベンジデスボールとぶつかった。

お互いの攻撃はわずかに押し合い圧し合いをしており、勝敗の行方が読めなかった。だが、それはベビーがあえて攻撃の出力を調整しているからにほかならず、シロナが本気のパワーを解放するのを待っているのだ。

 

(いいぞ…もっとだ、もっと貴様のサイヤパワーを解放しろ!そしてその時が…くくく…)

 

シロナは顔に血管が浮かび上がるほどに力み、エネルギーを送り込み続ける。長い紫色の髪の毛が巻き上がり、更なる力を捻出する。先刻、ドミグラを撃破した時に一瞬だけ振るうことのできた超パワーを解き放った。

 

(今だ!)

 

その瞬間、ベビーはジャネンバの肉体から飛び出すと、大きさを最小限にしたうえで矢のような形状になり、自身のリベンジデスボールの中を通過する。

そしてシロナのマスタースパークの横スレスレの位置を悟られないように飛び、シロナ本体を目指す。

 

(さぁ、その体を俺に寄越せ!ツフルの王となるこの俺の…奴隷になるがいい!!)

 

全力でマスタースパークを打ち続けているシロナの目鼻に到達するまで、残り数メートル。シロナが気付いている様子はなく、ベビーは己の野望の成就を確信し鬼のような笑みを浮かべた。

 

ズアアッ!!

 

その時、突然シロナの口が大きく開き、その中から這い出るように飛び出してきたのは…

サザンカだった。超サイヤ人4は解除されてしまっているが、飛んでくるベビーと向き合い、腕を大きく振り上げている。

 

(吸収したのではなかったのか!体内に隠し、オレ本体が寄生先を変えるために出てきたこの時を待っていたのか…しかし…)

「クハハハハハ!馬鹿め!今更その猿に、何ができるというのだ!?」

 

既に両腕は封じている。鎖骨を切り、腕そのものを切断してやった。残っているのは片足くらいだろうが、シロナの体から出てきた今の体勢的に使えないだろう。だから今サザンカが出てきたところで何もできやしないはずだ。

 

「な…!?」

 

だが、ベビーは目を見張った。サザンカの両腕が元通り再生している!

 

(そうか、シロナはコイツを吸収したのではない!体内で保護し傷を癒していたのか…!!)

 

それが分かったところで、現在のベビーにはどうすることもできない。ジャネンバの肉体から抜け出た今、いくら完全体のベビーとはいえサザンカには敵わない。しかも寄生するために発揮したこの速度をコントロールし軌道を変えるのは間に合わなかった。

 

(クソ、避けられな…!!)

 

「ウオオオオオオオォオオォオォオ!!!」

 

ドゴォ…!!

 

全ての激情を込めたサザンカの拳が、ベビーに炸裂した。

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