もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第453話 「悉亡」

「永琳…!」

 

空を見上げていた永琳の部屋へ、大きなお腹を抱えたブルマがやってくる。

 

「一体どうし…」

 

「アタシを天界まで連れて行ってちょうだい!」

 

「ダメよ!アナタはここで安静にしてなくちゃ…」

 

「いいのよ…なんでか、あそこに行かなくちゃいけない気がするの」

 

永琳は渋々了承し、カプセルコーポレーションのジェットフライヤーにブルマを乗せ、自らの運転で神の神殿へと向かうのだった。

 

 

 

 

カンバー戦以来となる、超サイヤ人ゴッドとなったブロリーは炎のような揺らめくオーラと共に静かにビルスを見つめ、ゆっくりと近付いてゆく。

 

「ボクらと同じ、神の領域に至ったというのは本当だったんだね。どうだい、ゴッドになった感想は?」

 

「確かに感じたことのない感覚…こんな世界があったとはな。だが、できることならこんなものに頼らずに済めばいい」

 

「欲がないね。いや、あったらゴッドにはなれないか。それじゃ、かかってきなさい」

 

ビルスは手招きし、ブロリーは小さくため息をつくと、右腕を突き出すとともに燃えるオーラを操作し飛ばした。

それを弾き返そうと腕で触れるビルスだが、そのオーラは途中で分散して広がり、彼の身動きを封じるかの如く全身に絡みついた。

 

「なるほどね」

 

思ってもいなかった絡め手を受けて、ビルスはますますワクワクする。ブロリーの体は通常時よりも細身になったもののパワーは凝縮され増加しており、オーラを掴んで綱を引くようにビルスを自身の元へと引き寄せた。

ビルスは成す術なく宙に放り投げられ、ブロリー目がけて両手を封じられた無防備の状態で迫る。ブロリーは右手に気を込め、容赦なく気功波を撃ち放った。

 

「はあああッ!!」

 

だが、ビルスは予備動作無しで全身から気の波動を放ち、オーラによる拘束をブチリと解除する。そして身を翻して気功波を躱し、一瞬でブロリーの至近距離へと迫り…

 

「お返しだよ」

 

胸元へそっと手を添え、そこから強烈な衝撃波を撃ち込んだ。ドウン、と重たい音が響き渡り、変圧によって無茶苦茶な突風が吹き荒れる中、ブロリーは歯を噛み締め口の端から血を流しながらも耐えていた。

 

「…ガアアッ!」

 

そして、雄叫びと共に同様に全身から衝撃波を発し、それを受け一瞬硬直したビルスの顔面を殴り付け吹っ飛ばす。

が、ビルスは間一髪手でその一撃を防いでおり、すぐに体勢を戻して反撃に出るが、予想以上に速く接近していたブロリーの蹴りを肩に受ける。

 

「やったな」

 

ビルスは低い声で呟くと、お返しと言わんばかりにブロリーの腹を殴り、さらに顔面へ回し蹴りを喰らわせて吹っ飛ばす。そして後ろ手を組んだまま、小石のようにビュンと飛んでいくブロリーに追いつき、その足を掴んで固定し、再度顔面を蹴りつける。

 

「ぐあ…!!」

 

下方へ向けて吹っ飛ぶブロリーは神殿の端の方を削りながら下界の大地へ落下してゆく。雲の中に突っ込むと、周囲を取り囲う白い煙の中に素早く動き回る黒い影が現れ、それは落ちゆくブロリーへすれ違いざまに無数の連撃を加えていく。

ブロリーは何とか膝でビルスの蹴りを受け止め、肘打ちを掌で受ける。ビルスはにんまりと笑いながらグイグイと力を込め、最後に本物の猫科動物のようにカッと牙を剥き出した獰猛な笑みを浮かべると、気が爆ぜた。

地球全体が震え、眼下に広がっていた森林の木々が大きく揺れる。ブロリーは神殿へと続くカリン塔に片足と片腕で掴まり、息を切らしながら口の端を拭い、ビルスを睨む。

 

「いや~、楽しいね。久々にここまでの力を出したよ、今の君ほど強い奴と戦ったのは何万年ぶりだろうなァ」

 

かなり疲弊したブロリーに対し、ビルスは全く堪えた様子もなく顔を手の甲で撫でる。それも当然のことだ、ブロリーはビルスへたった数発の攻撃しか入れられておらず、しかもその全てがゼロダメージであるのだ。風に撫でられただけで体を痛める者など、普通はいない。

 

「やっぱり、フリーザに惑星ベジータを消させたボクの判断は正解だったかな。こうして君のような強者が現れてくれたんだからね」

 

「…今、なんて言った?」

 

ビルスは、「おっと」と言うように口をつぐんだが、直後に何を考えたのか心の中で笑みを浮かべると続けて口を開いた。

 

「あの日、フリーザが惑星ベジータを破壊しただろう?あれはこのボクが命令したことだったんだよ。サイヤ人は随分派手に暴れていたからね…消えてもらうことにしたんだ」

 

「そうか…」

 

わざとらしく挑発の色を込めた発言だったが、それを聞いたブロリーは硬直する。そして見る見るうちにその体から青い煙のような闘気が湧き出し始め、ビルスは思惑通りだとほくそ笑んだ。

次の瞬間、ブロリーの全身から爆発するかのような青い閃光が噴き出し、それと同時にブロリーが超高速でビルスの目前へ迫る。いつの間にかその髪は青く染まり、細身になっていた体も超サイヤ人程の筋肉量に戻っていた。同時に底上げされたパワーとスピードによって繰り出された渾身の一撃は、今まで余裕ぶっていたビルスの虚を突く事に成功し、その顔面へメキリとめり込んだ。

 

「ウオオォォオオオオ!!」

 

超サイヤ人ブルー。青い闘気を纏うブロリーが腕を振り抜くと、ビルスは遥か彼方へと吹っ飛ばされる。

ブロリーは高速で飛びビルスへ追いつくと、両手を振り上げて叩き下ろそうと構える。が、ビルスは寸前でスピードを落として一撃を回避すると、攻撃後のブロリーの後ろ髪を掴み、引っ張り寄せてお返しと言わんばかりに頬へパンチを叩きこむ。さらに脇腹へ膝蹴り、首へ手刀を叩きつけた。

 

「…ウルォオアア!!」

 

確かにかなりのダメージを受けたはずのブロリーだったが、気合の雄叫びでそれをかき消し、距離を取っていくビルスへ対し突撃し、何度もぶつかり合う。

その度に大気を揺るがす衝撃が発生し、夜空に浮かんでいた雲が散らされてゆく。

 

「ははははは!それなりの力で打ち込んだつもりだが、耐えたか!その力は本物のようだな!」

 

ビルスは高らかにそう言うと、向かってくるブロリーをいなし、背後へ回ると腕でその首を締め上げる。ブロリーの動きが止まったところで回転を加えながら腕を離し、回し蹴りを喰らわせて吹っ飛ばす。

両者はほとんど互角なように見えて、実際にはビルスがかなりの余裕を残していた。ビルスは自らの経験を踏まえ、「今まで戦ってきた大抵の敵であれば倒せる程度」の実力だけを発揮し、ブロリーと戦っていた。だが、これだけ攻撃を叩きこんでもブロリーはダウンしないどころか己に喰いつき…

 

「デアアッ!!」

 

バギィ!

 

このように的確な攻撃を繰り出してくる。

 

(やはりこんなに楽しいのは久しぶりだ)

 

ビルスは心の中でそう思った。

ブロリーもまた同様にビルスの底知れなさを実感していたが、どうしても今の感情をぶつけなければならないと感じていた。

ビルスの指示でフリーザは惑星ベジータを破壊したが、ブロリーはそのおかげで潜在能力を目覚めさせ生き延びることが出来た。

しかし、ブロリー自身はそう思っていても、身に覚えのない、まるで自分の物ではない誰かの怒りが背中を駆け巡っている。己の感情ではない、他の誰かの感情が流れ込んできて、無理やり怒りを呼び起こされている。

 

(なんだこれは…俺のじゃない、誰の怒りだ…!?)

「ぐぐ…ガ…!」

 

カンバーとの戦いの時、初めてブルーに変身した時はこうはならなかった。ブロリーは己の意思で、むしろいつも以上に冷静な精神状態でカンバーを打ち倒した。いや、この感覚には覚えがある。以前、暗黒惑星でツフル人の怨念・Dr.ライチーと戦った時、ブロリーは自分ではない誰かの記憶をもとに会話をしてしまった事があった。

ブロリーは目を瞑ってそれを振り払おうとするが、己の内で爆発する感情を抑えきれなかった。思わずその場から飛び上がり、大ぶりな拳の一撃をビルスへ振り下ろした。

 

「…!」

 

ビルスは難なくそれを避けるが、すぐに違和感に気付いた。

 

「ゥラアアアアアアア!!」

 

大口を開け、咆哮と共に超特大の気功波を吐き出す。周囲の空気を押し退け衝撃波を発生させながら迫る一撃を、ビルスは両腕を交差させて受け止める。水道から出る水にスプーンを当てた時のように、広がりながら弾けていくブロリーの気功波だが、ビルスの気とも衝突していたせいか周囲に降り注ぐ前に消えていく。

 

「ガアッ!!」

 

自身の気功波をかき分け、中を泳いできたブロリーがビルスの目の前へ突如姿を現し、流石に一瞬面くらったビルスの顔面を掴み、自分の膝へ叩き付ける。そして足首を掴み、そのままバックブリーカーの要領で締め上げる。

 

ギチチ…

 

だがビルスの体は細く華奢な外見にも拘わらず、ブロリーの怪力をもってしても少したりとも拉げるようなことはなかった。ビルスはすぐにブロリーの腕をつかみ返し、体を回転させながら強引に引き剥がすと胸へ膝蹴りを浴びせ、回し蹴りを顔面へ当てて吹っ飛ばした。

ビルスもまた、ブロリーの様子がおかしいことをすぐに理解した。

 

ドッ ガシ…

 

反撃してきたブロリーの拳による連撃を手で受け止め、前蹴りで後ろへ吹っ飛ばす。眼力で衝撃波を発し命中させ、さらに距離を置く。

 

「ヌアアアアッ!!」

 

が、全身に青い球状のバリアーを張りながら強引にそれを突破し、ビルスへと迫るブロリー。そしてすれ違いざまに強烈なパンチを鳩尾へ叩きこんだ。

 

「ぐふ…ッ」

 

さしものビルスもたまらずに吐き気を催し、全身に響く衝撃に怯む。ブロリーは通り過ぎていった後にターンし、再びビルスの背後へ迫る。

 

 

 

 

 

丁度その頃、天界へ一機のジェットフライヤーが着陸した。

 

「ブロリーは!?」

 

中からブルマと永琳が現れ、天界の縁に立って戦いの行方を探っていたピッコロにそう尋ねた。ピッコロは重苦しい表情で振り向き、ブルマと永琳を見渡した。その様子に嫌な予感を覚えたブルマは思わず固まってしまう。

 

ゴオオオオ…

 

その時、何かが下の方から高速で突き上がって来た。それは天界を飛び越えるとはるか上空で向きを変え、この場へ降り立った。

 

「ふん…」

 

ビルスは天界に降り立つと、片手で掴んでいたブロリーを投げ捨てる。彼は既に気を失っており、超サイヤ人ブルーは解除され通常の状態に戻っていた。よほど手酷い猛攻を受けたのか全身が傷だらけでボロボロだった。

 

「ブロリー!」

 

ブルマはすぐさまブロリーに駆け寄り、上体を抱き上げる。

 

「少しは骨のあるヤツだと思ったけど、全然ダメだったよ。それに今の暴走…ボクだから止められたものの、こんなことがさらに何度も起こるようなら地球どころかこの宇宙すら危ういよ。やはり…ここでいっそ破壊しちゃおうかな」

 

そう言いながら、掲げた右手に紫色に輝く破壊のエネルギーを集中させるビルス。それは触れたものを生命か否かに関わらず、悉くを滅ぼす力。発揮されれば最後、そこには初めから何もなかったかのように存在そのものが消える。

 

だが…

 

「…ッ!?」

 

突然背後から首へ腕を回され、思わず仰け反ってしまう。さらに何者かに右腕を下から蹴り上げられ、溜めていた破壊の力が真上へ飛んでゆく。

 

ビュ

 

そこへ向けて大きなテトラポッドのような、ただのコンクリートの塊が投げ込まれ、破壊の力はそれを消し去っただけに終わる。

ビルスは背後にいる何者かを振り払い、回し蹴りを構える。が、突然別の方向から殴りかかられ、振り向こうとした瞬間にその頬へ拳がヒットする。

 

「ほう…お前たちは確か」

 

ビルスは天界の白い大理石の上へ降り立ち、ズボンについた埃を手で払う。その目線の先には、シロナとサザンカのふたりが身構えていた。

 

「面白ェケンカ、してんじゃねぇか」

 

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