もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第454話 「双猛」

「ほっそい猫」

 

シロナはビルスの姿を見てぼそっと呟いた。

ビルスは目の前に現れた二品の料理の、潜在パワーに目を見張る。

 

「おい、あんまりワクワクさせるなよ」

 

次の瞬間、サザンカのパンチがビルスの顔面にクリーンヒットしたかと思えば、ビルスは遥か彼方の下界まで吹き飛ばされていた。

一瞬にして、超高高度の天界から一直線に遠く離れた港町の倉庫へ突っ込み、いくつものコンテナを貫きながらようやく勢いを殺し、コンクリートの地面に手を突っ込んで停止する。

 

「ふん」

(なんて馬鹿力だよ)

 

ビルスは間一髪、掌を自身の顔とサザンカの拳との間に差し込んで威力を軽減していた。だがその左手はビリビリと痺れ、鈍い痛みを感じると共に上手く動かせなくなっていた。

 

「サイヤ人だね」

 

「見て分かんだろ」

 

超速で突っ込みつつドロップキックを繰り出してきたサザンカは、既に超サイヤ人4へ変身していた。赤い体毛が上半身を包み、黒髪は逆立ちつつボリュームが増し、目の周りは赤い隈取が浮かび、目の色は獣の如く金色に輝いている。

ビルスは上体を逸らしてそれを躱し、真上を通過していくサザンカの腹を蹴り上げた。

ビルスの足先はサザンカの腹へ深く突き刺さり背中を押し上げ、口へ上ってきた血がパタタッと飛沫を溢す。

だが、その直後、サザンカは再び渾身の拳を振り下ろした。

 

ッドゴォ!!

 

今度のその一撃はビルスの顔面へ直撃しており、ビルスは後頭部から倒れ込んだ。ぶつかった地面のコンクリートが深くひび割れ、陥没する。

 

「いいんじゃない?」

 

「どーも」

 

パンッ

 

だが、ビルスは頬を腫らせながらも口を尖らせフッと息を吐くと、同時に自らの気を圧縮したものを吐き出し、サザンカの額に当てて炸裂させた。白目を剥きながら空高く舞い上げられ、落下してくる彼女を背後にビルスは立ち上がり、両拳を下ろしたまま握り締める。

 

ガィン!

 

その時、背中に強い衝撃を受け、前のめりに態勢を崩しながら横目で振り返る。潮風に靡く紫色の長い髪、その身を覆う強大な魔力。シロナが獲得した極限の姿であるファントムシロナは、変幻自在となった肉体を駆使して拳を巨大化させ、ビルスを海目がけて殴り飛ばした。

空気を切り裂きながら凄まじい速度でぶっ飛ぶビルスは水切りの石のように数回水面を跳ね、直後にいつの間にか背後に移動していたシロナの顔面へ強烈な裏拳をめり込ませる。

 

「うひひっ」

 

しかし、シロナの首がゴムのように伸縮し頭部だけがはるか後方へ吹っ飛ばされ、直後に反動によって帰ってくると同時にビルスへカウンターの頭突きをお見舞いした。額から僅かに血が滲み、ビルスは顔をしかめながら後ろへ飛んで距離を置く。

 

「あっははははは!!」

 

だがシロナは両腕を伸縮させ、遠距離から超高速のパンチの連打を繰り出した。圧倒的な密度と連続性で放たれ、さながら結界のようにも見える猛攻を、ビルスはそれをさらに上回る反射速度で的確に躱してゆく。その動きはビルスの身が勝手に回避しているようにも見えるほど流麗だった。

そして気付けばシロナの真横へ迫っており、指先からのエネルギー波を叩き込んだ。

 

バシャア

 

なんとシロナの体が水のように弾け飛び、ビルスのエネルギー波を無効化した。液状化した体は離れた場所で合体し再びシロナを形作り、ビルスの脳天へ手刀を叩き込み、蹴りを食らわせた。

 

(ゴムのように柔らかくなったかと思えば液体に…)

 

ならば、とビルスは力の出し方を変え、自らの拳に乗せた気を小刻みに細かく振動させ、シロナの腹を殴りつけた。

 

ゴチン☆

 

(今度は硬く…?)

 

だが、シロナの体は今度は鋼のように硬化し、振動する気を無効化した。そして縦に一回転し、反撃の踵落としをお見舞いした。

シロナはさらに追撃を食らわせようと腕を振りかぶるも、その腕が突然千切れ飛んでいった。

 

「えー?」

 

ビルスの見えない衝撃波による攻撃を受けたからだが、シロナは軽いリアクションを取るだけに終わり、次の瞬間には無くなった右腕は元通りになっていた。

さらに千切れていったほうの腕をキャッチし、それを武器代わりにして思いきりスイングしビルスを狙い打つ。それを容易く腕でガードするビルスだが、その直後にシロナの額から青い電流が迸った。

それは稲妻となってビルスへ直撃し、超特大の電撃がその身を焼き焦がすが如く襲い掛かる。

痺れつつも手を前に掲げ、エネルギー弾を連射するビルス。シロナは体を変形させて避けていくが、やがて躱しきれずに次々と炸裂を喰らう。

 

「ンギャア~~~!!」

 

全身がズタボロになりながら宙を舞っていくシロナを見て鼻で笑うビルスだが、その直後に後ろに気配を感じて振り返りつつ、繰り出されたサザンカの拳を躱した。

ビルスはカウンターのパンチをサザンカの脇腹へ一瞬の間に何発も浴びせ、怯ませる。

 

「このスピードについてこれるかな?」

 

ビルスはまるで周囲が壁に囲まれているかのように、目にも止まらぬ速度で空中を蹴りながら鋭角に飛び回る。そしてすれ違い様に、サザンカへ何十発もの打撃の連打を叩きこんだ。

 

「ぐは…!」

 

何度もビルスのスピードを追い切れずに接近を許してしまい、その度に無数の攻撃を喰らう。さしものサザンカも成すすべなくやられていくかと思いきや、高速で飛ぶビルスの足を何かが掴んで止めた。

 

「なに…!?」

 

シロナがビルスの足を掴み、逆方向へ引っ張っていた。その膂力のままにフルスイングし、その先には思い切り足を振り上げて構えているサザンカがおり、渾身のソバットがビルスの顔面に命中した。

大量の鼻血が噴き出すも、ビルスはそれすらも楽しんでいるかのように笑みを浮かべており、足を掴んでいるシロナの腕を切断すると、全身に紫色の強烈なオーラを纏う。

 

「ハアアアアアアッ!!」

 

気を高めたビルスは、背後から後頭部を殴ろうと襲い掛かって来たサザンカを後回し蹴りで吹っ飛ばして眼下の海へ叩き落とすとシロナへ無数の拳の連打を浴びせる。

対するシロナはスピードで遥か上回ってくるビルスに対抗するため、肉体の構造を変更する。顔にはもとあった双眼に加えて額からさらに一対の目が現れ計4個の眼となり、腕もさらに2本生え計4本の腕となった。増やした目でビルスの攻撃を視認し、4本の腕からなる手数で熾烈な拳のぶつけ合いを繰り広げる。

しばらく打ち合う両者だが、すぐにビルスの攻撃がまたも加速し、シロナの手数が破られる。しかし、その間にビルスの頭上へ跳び上がっていたサザンカが、片手で掴んでいた巨大なテトラポッドを振り下ろし、その脳天へ叩きつけた。粉々に粉砕し、ビルスには全くダメージが通らなかったが、破片や粉じんが舞い散り、ビルスは視界ではなく気で周囲を探る。

 

(片方が消えた…?)

 

サザンカの気配が忽然と消えた事に疑念を抱くビルスに、煙を払いながら4本の腕で攻撃を仕掛けるシロナ。ビルスはそれを軽くあしらうも、なんとシロナの体内から肉体と同化しているかのようにサザンカの上半身が飛び出し、振るった拳がビルスの顔面へめり込む。

 

(なんというパワー…!)

 

シロナのパンチは確かに強力。それが壁と見紛うほどの速度と密度で襲い掛かってくる。だが、ビルスにとっては取るに足らない攻撃だった。

しかし、サザンカはシロナほどの連続攻撃には向かない代わりに、一撃一撃の威力は他と一線を画すものがある。それが本来なら容易く対処可能なシロナの打撃の中に混じっているとなると話が変わる。

 

ドゴオ!

 

またしてもビルスはシロナの拳とサザンカの拳を判定できず、喰らってしまう。挙句には攪乱され、両者の攻撃をどちらももらってしまうまでに至る。

 

「ガキどもがァ!!」

 

ビルスは明らかな苛立ちと共に怒号を放つ。だが、その所為ですぐに気付けなかった。シロナの足がゴムのように伸びて自身の背後へ回っており、その先端からサザンカが飛び出そうとしていることに。

 

バギィイ!!

 

気力を乗せた渾身のパンチがビルスの脇腹に突き刺さる。ビルスでさえも敗北を予感する、決定的な一撃だった。

 

(まあ…ひとりくらいは消しちゃってもいいか)

 

シロナは背筋が冷たく震えるような不吉を感じ取った。

 

「『破壊』」

 

ビルスの指先に込められた、森羅万象の存在を滅ぼす破壊の力がサザンカに向けられる。

だがその時、ヤバいと感じ取ったシロナが咄嗟に全身を使ってサザンカの目の前に割り込んだ。

 

「姉貴!」

 

そのまま破壊の力はサザンカではなくシロナに当たり、次の瞬間にはシロナという存在は灰となって消滅していた。

 

「テメェ」

 

サザンカは、ゆっくりとこちらに振り向いたビルスを睨み、その直後にブチリという何かが千切れるような音と共に黄金の気を放出する。

 

「何してくれてんだゴラァ!!」

 

大気を激しく揺らすほどの怒りを見せるサザンカを見て、ビルスは顔についた自らの血を舐め取り、その目つきがより攻撃的に釣り上がる。海水が柱状になって空へ突き上がり、圧迫された空気の層が擦れあって雷が迸った。

一触即発の空気が流れる中、両者は同時に跳びかかる。

 

「ちょっとストップ」

 

「あぁ…!?」

 

だがその間に小さな影が割り込み、ハッと我に返ったサザンカがそれが誰なのか気付く。

 

「…これは驚いたね」

 

「姉貴か!?」

 

ふたりの前に姿を現したのは、つい先ほどビルスの破壊を受けて消滅していたはずのシロナだった。確かにその雰囲気や髪型は見覚えがある。

しかし、今ここにいるシロナは4~5歳ほどの子供のような幼い姿で、最初はファントムシロナの能力によって体の形が変わっているのかと思ったが、どうやらそういう訳とは違う様子。

 

「そうだよ~。でもなんか消し飛んだ体の容量が元に戻せないから仕方なく小さくなったんだ」

 

あっけらかんとした態度でそう言い放ったシロナ。これにはビルス本人もかなり驚いていた。破壊神が体内に持っている“破壊のエネルギー”は、ひとたび放てば対象が生物か無生物かに関わらず、霊魂や存在ごと文字通り完全消滅させてしまう凶悪な力。これを浴びせたにも拘らず、シロナは完全に破壊されることなくその影響と効果を半分程度に抑えてしまっていた。

シロナも、ファントムシロナの力をもってしても体を完全に元に戻すことは出来ず、子供の姿を取ることで事なきを得るしかなかった。

 

「なん…えぇ?なんともねぇのか?」

 

「力は前とほとんど変わんないね、ただ見た目だけ子供の体になってるだけだよ」

 

そんな影響があったものの平然としている様子のシロナと、ビルスに肉薄するパワーで喰らい付いてきたサザンカ。ビルスももう戦闘の意思はほとんどないようで、そんな彼女らを後ろ手を組んで見つめながら小さく息をつく。

 

(全く…とんだ掘り出し物だったよ)

 

「お?」

 

と、その時、シロナとサザンカの脳内に直接ピッコロの声が響く。

 

(ふたりとも大丈夫ですか!?)

 

「うんまあ」

 

「ああ」

 

(よかった…!今、ブルマさんの容態が急に変わって…すぐに神殿まで戻って来れますか?生まれそうなんですよ、赤ん坊が…!!)

 

 

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