もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第457話 「獄炎」

4人は惑星グママに降り立ち、その冷え固まった溶岩が幾重にも重なってできている陸地を踏み締めた。ひび割れた漆黒の溶岩の隙間から血管のように赤いマグマが光を放っている。

全員、超耐性スーツを着ているおかげで快適だが、外は恐らく灼熱の気温に満ちているだろう。

 

「この服スゲーな、暑いどころか涼しいぜ」

 

「外は80℃もあるのに…」

 

サザンカとシロナは甘く見ていたスーツの性能に驚いている。

ジャコはそれがさも当たり前であるかのように「ああ」と軽く流し、シロナはブルマから託されたドラゴンレーダーを操作する。

 

「えーっと、短距離モードに切り替えて…」

 

宇宙の広範囲を探知できるモードから従来通りの範囲に切り替え、探知をスタートする。すると、北の方角に5キロほど向かった先に反応が出現した。

 

「やった!すぐそこじゃん、これなら飛んで…」

 

「待て待て」

 

一気に空を飛んでいこうとしたシロナを慌ててスカッシュが止める。

 

「何よ?」

 

「いいか、アタイらはな…上から忠告されてんだよ、立ち寄った星ではなるべく事を荒立てずにってな。空飛んで行って怪物にでも見つかったらどうすんだってこと」

 

「スカッシュの言うとおりだ。どうせ5キロ程度歩いてもすぐにつく」

 

ジャコもそういい、白名とサザンカはおとなしくそれに従うことにした。

両側に溶岩の川が流れる道をまっすぐに歩き、目の前には大きな火山が聳えている。

 

「…そろそろ突っ込んでもいいか?なんでシロナは小さくなってんの?」

 

スカッシュがずっと思っていたことを口にした。

 

「色々あったんだ~、名誉の負傷ってやつだね」

 

「(負傷…?)はぁ…。にしてもでけぇ火山だな」

 

「反応的にあの山の麓あたりにありそうだね」

 

反応のある位置目指して歩いてゆく一行であったが、彼らの様子を溶岩の川の中から伺っているモノがいることに気が付いた。

 

「…サザンカ」

 

「ああ…何かがこっちを見てやがるな」

 

バシャン!

 

その時、流れる溶岩の中から大きな蠢くものが飛び出してきた。全身が銀色に輝く光沢に覆われた亀のような爬虫類らしきその生物はゆっくりと上体を起こし、二足で立ち上がると喉を鳴らしながらシロナたちをじっと見つめる。

 

「うおっ、なんだ貴様は!我々に危害を加えるというのなら容赦はせんぞ!」

 

ジャコはそう言って銃を構えながらもスカッシュの後ろにさっさと隠れる。だが、ハッと気づいた時には四方八方を囲まれたかのように何匹もの同じような生物が姿を現していた。

 

「ははっ、ちょっとかわいいかも」

 

「バカなこと言ってんじゃねぇよ」

 

シロナとサザンカは臨戦態勢に入るも、スカッシュだけはその生物たちの姿を見て何かを思い出そうとしていた。

 

「なんか、あんなようなヤツの姿を前に見たことがあるような…」

 

ドズン!!

 

その時、彼女らの背後に大きな音と地響きを立てながらひと際巨大な生物が落下してきた。振り返ると、明らかに他とは雰囲気の違う、パワフルな巨躯と頑強な金属質の体を持つ個体がそこにいた。

 

「ドゥガアアアアアア!!」

 

雄たけびを上げ、太く長い剛腕を振り上げて襲い掛かる。それを皮切りに、周囲を取り囲んでいた金属の亀たちも一斉にその場から飛び出した。

 

「よっと!」

 

「オラァ!」

 

シロナとサザンカは、『この程度ならこれくらいの力で倒せるだろう』と調整した威力の攻撃を繰り出すが、なんとこの生物たちの銀色の金属質の表皮にはその攻撃がほとんど効かず、面食らった。

 

「いっててて!滅茶苦茶固くない!?」

 

「ああ、鉄の塊殴ってるみてぇだぜ!」

 

一方、大きな個体を相手にしているスカッシュも、何度もエネルギー銃を発射するがそのすべてがカンカンと子気味の良い音と共に弾かれてしまっていた。ジャコも闇雲に撃ち続けるが全く効果がない。

 

「チッ…!やっぱ、なんかこの感じ覚えがあるねぇ…!」

 

「ドゥゴアアアア…!!」

 

「せいっと」

 

シロナは銀色の金属爬虫類の尻尾を掴み、投げ飛ばそうと力を込める。するとその重量もかなりのもので、恐らくは数トンはあり一瞬驚いたが、すぐに順応し持ち上げ、それを振り回して他の個体へぶつけながら投げ飛ばした。

己たちを吹き飛ばすシロナの膂力を目の当たりにし怯んだ様子を見せる金属の亀たちだったが、ならばと今度は横にいたサザンカに狙いを定め、一斉に襲い掛かる。

 

「ナメんなよコラァ!!」

 

だが、サザンカはお構いなしのパンチを一発繰り出すと、それを喰らった個体が勢いよくぶっ飛んでいき、その線上にいた他の数体をビリヤードの玉のように巻き込みながら溶岩の川の中へと叩き落していった。

 

「グ…!?」

 

それを見ていた、スカッシュを襲っていた大きな個体は焦ったように後ずさるも、直後にガッとスカッシュの頭を掴み、持ち上げる。

 

「オイ!くそっ…」

 

ジャコが慌てて銃を放とうとするも、どうやら残弾切れのようだ。シロナとサザンカが助け出そうとするが、当のスカッシュがそれを制止した。

 

「待て!大丈夫だ!」

 

「あぁ!?なんでだよスカッシュ!」

 

サザンカがそう返した瞬間、その個体は動きを止め、掴んでいたスカッシュのヘルメット越しの顔をまじまじと見つめる。数秒が経った後、目に灯っていた赤い光が消え、ゆっくりと口を開いた。

 

「お前、まさか…あのスカッシュか?」

 

「やっと気付いたか?ダイザー」

 

「なになに、知り合い?…って、もしかして…」

 

シロナもよくよく思い返せばその姿だけには見覚えがあった。かつてフリーザやコルド大王と共に幻想郷へ襲来したカーボネド四天王がひとり、ダイザーだった。あの時は永遠亭を襲撃するも生前の藤原妹紅の能力を覚醒させた蓬莱山史奈によって敗れていた。

 

「クウラとの一件以来だな」

 

その後クウラとも一悶着あったのだが、ダイザーは無事に故郷の惑星へと帰っていったはずだった。

 

「ここがアンタの生まれた星?なんか、大変そうだな」

 

「お前らにはきついだろうがオレにとってはなんてことない環境だ。ところで何しにここへ来たんだ?」

 

ダイザーはその場にドスンと腰を下ろした。

 

「まあお前になら教えてもいいか…。実は地球にあるドラゴンボールが宇宙のいたるところに散らばっちまったんだよ。アタイらは今それを探す旅の途中で、どうやらそのうちの一つがこの星にあるんだ」

 

スカッシュがそう説明する。

 

「ははははは!なるほど、だから似合わねぇ銀河パトロールの制服とヘルメット着けてるのか!それにしてもお前が今や銀河パトロールだとはな…おい、コイツは真面目にやってるのか?」

 

ダイザーは急に首を横へ回してジャコに話しかける。驚いたジャコは体を震わせながらも平静を装って口を開く。

 

「ああ、スカッシュ隊員は先輩であり超エリートのこの私から見ればまだまだだが、なかなか優秀な働きぶりだ!」

 

「それはよかった」

 

ダイザーは大らかな表情でニコッと笑うと、ジャコもそれ以上は偉そうなことを言わず、スカッシュもむず痒そうに目線を逸らした。

 

「ていうか、お前こそこんなところで何してたんだ?さっきの連中は?」

 

「おお、あいつらは…オレの同族だ。知ってるだろ?オレはメタルトータスの突然変異なんだよ。アイツらが本来のあるべきメタルトータスだ」

 

メタルトータスとはこの惑星グママに生息する主な大型生物の通称だ。体型や形状に個体差はあれど、金属質の外殻に覆われた屈強な肉体を誇る。彼らは高度な知能を有する人間ではなく、あくまでも原始的な生物に過ぎない。が、ダイザーはその中で発生した突然変異で、他を圧倒する肉体強度と人間並みの知能を備えている。だからこそ、ダイザーはそこをコルド大王にかわれて軍に勧誘されたのだ。

 

「でもメタルトータスってあんなに狂暴なのか?昔にコルドやお前から聞いた話じゃ争いを好まない穏やかな種族だって聞いたぞ」

 

それは、会話を聞いていたシロナやサザンカも同じようなことを思っていた。あの時襲い掛かってきたメタルトータスたちは、何かに焦り、何かを恐れているかのような気配を感じたからだ。

 

「…あいつらはもう長いこと気が立ってる。あまり無意味に過ごしていると許しちゃくれないからだ」

 

「誰が?」

 

「メタルトータスを支配する者、『ネムラ』にだ」

 

「ネムラ?」

 

スカッシュが聞き返す。

 

「新たに誕生した突然変異体。オレがこの星に戻って来た時には、既にメタルトータスは奴に支配されていた。さっきはアイツらが本来あるべきメタルトータスだといったが、厳密には違う…今はネムラへの恐怖に突き動かされ望まぬ生き方を強いられている」

 

 

 

 

 

火山の深奥部。その一角には何百頭ものメタルトータスの群れがいた。

だが、群れのどの個体もしきりに周りを気にし、光り輝く鉱物をかき集めている。積まれた鉱石の山がいくつも見られ、そのうちのひとつの山に黒い星の埋め込まれた究極七星球が紛れ込んでいた。

一頭が鉱物を取り落とせばそれを見た仲間が怒り、落とした個体を痛めつける。

そして、高い崖の上からそれを眺める棘だらけのシルエットを持つ者もいた。

 

「グルルルル…」

 

だが、そこへ傷を負ったメタルトータスの一団が現れる。ダイザーと共に食料となる鉱石を集めに行きサザンカたちに撃退された群れだ。

彼らを発見した棘だらけの個体は怒りに目を細め、咆哮を上げる。

 

「ダイザーはどうした!?アイツは逃げたのか!!この私から!!」

 

その棘だらけの個体の言葉は他のメタルタートスでは理解できない。しかし、彼らは叩きつけられる並みならぬ怒りを感じ取り、何を責められているのか分かっていた。

 

「ゴ…キュルルル…」

 

弁明するかのように姿勢を低くし、小さな声で喉を鳴らす。だが、我慢ならない様子の棘だらけの個体は勢いよく前に飛び出すと、跪く同族を地面へ叩き付け、その後に持ち上げ、天高く掲げて見せる。

その様子を、火口にいるほとんどのメタルトータスが見ていた。いや、見なければならない。

 

「どいつもこいつも使えねぇグズばかりだ!ダイザー、言ったよな!?テメェが逃げれば…」

 

棘だらけの個体は声を荒げ、頭上で掲げるメタルトータスを怒りに任せて強引に引き裂いた。抵抗する間もなく、紙を破るかのように、チタン鋼の分厚い板を貼ったような同族の肉体を。

 

「いくらでもコイツらを殺してやるってなァア!!」

 

滴る血と臓物、砕けた甲殻の破片を全身に被りながら、メタルトータスの突然変異体・ネムラは吠える。鈍く黒光りする外殻からは鋭い棘が何本も伸び、長い牙は口外へ伸びている。他の個体とは一線を画すその恐ろしい御姿は、ネムラがこの獄炎の星の覇王であることを現していた。

 

 




【現在公開可能な情報】

メタルトータス

・惑星グママに生息する大型生命体。知能はないが争いを好まない温和な性格で、大規模な群れを作って暮らしている。
・鉱物を主食としており、体内には鉱石を消化分解するためのバクテリアが存在している。
・金属製の外殻を全身に持ち、眼球や口内でさえも鋼の如き強度を誇る。外見は銀色の光沢を放つ金属質の亀や鰐といった風貌。体長や体格、外殻の形状にかなりの個体差がある。
・溶岩の中に潜って外殻を清潔に保ち、また溶岩中の有機物を取り込んでさらに強固なものへと鍛え上げていく。
・また、体内に熱を蓄え込む性質があり、定期的な排熱を必要とする。口から熱線や炎を吐き出して排熱する。
・外殻はマグマに浸かった際の温度上昇には耐えられるが、それ以上の温度(摂氏4000℃)を超えると外殻は通常の金属同様に膨張する性質がある。
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