もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第458話 「座覇」

「さて、オレはそろそろ戻らなければ」

 

ダイザーは腰を上げ、目の前にそびえる巨大な火山のほうへ向く。

 

「なぁ、なんでお前はそのネムラって奴に従ってるんだ?」

 

「…それは、オレが負けたからだ。オレがこの星に帰ってきたとき、当然オレは傍若無人な振る舞いで支配者を気取っていたネムラへ戦いを挑んだ。だが、奴は強かった…ネムラは平気で同族を利用し殺せる残虐性を持っている。オレはネムラが同族を殺さないことを条件にヤツの配下となったんだ」

 

「そんなことって…」

 

「当然だ、まかり通るわけがない。我々に任せろ、そのネムラという奴を退治してやる」

 

話を聞いたジャコが表情に若干の怒りを滲ませながら早口で言った。やはり腐っても銀河パトロールの一員である。

 

「…ありがとう、ジャコよ。だがこれはオレの問題だ、だからオレが最期まで体を張る。久々にお前らに会って勇気が沸いたよ」

 

ダイザーはそう言い残すと、目の前の巨大な火山を目指して歩きだし、やがてその奥へと消えていった。その様子を、シロナとサザンカが目配せしながら見送った。

 

 

 

 

流れた溶岩が冷え固まった裂け目の中を歩き、やがて洞穴の中に入る。この通路は火口内部へと通じており、通路を抜けると、そこには明るい色のマグマによって照らされたネムラの根城が姿を現した。

だが、目の前に飛び込んできた光景を見てダイザーは言葉を失う。

同族たるメタルトータスの、何十体分にも及ぶ個体の亡骸がバラバラに引き裂かれた状態でカーペットのように敷かれ、さらにはご丁寧に頭部だけが両脇に見せしめのように晒されていたのだ。

残虐で悪辣なその光景の背後で、運よく何もされなかったメタルトータスはその場に跪き、ある一点へ向けて祈りを捧げている。

 

「待っていたぞ、ダイザー…流石に、こいつらを見捨てて逃げ出すようなタマではなかったか」

 

その言葉を聞いてか聞かずか、ダイザーはゆっくりと足を踏み出し、仲間の亡骸で作られたカーペットを踏まぬようにその横を通っていく。

立ち上がったネムラはさらに言葉を続ける。

 

「だがお前が悪いんだぞ?あの時約束したよな?お前が逃げたり死んだりすれば、この連中は殺すって」

 

 

『なんだ、腹が減ってるのか?ははは、ネムラの虫の居所が悪かったんだな。オレのをやるよ、今日はこれでもつだろ?』

 

 

あの時、ひもじそうにしていたので飯を分けてやった置いた個体の首の横を通過する。

 

 

『ネムラでさえも知らないだろうな、ここにはこんなに飯が湧いてる。オレたちだけの秘密だな』

 

 

秘密の穴場を教えてやった子供。

 

 

『ん?これをオレにくれるのか?ははは…最近ほとんど何も食えてないのお見通しだったか。じゃ、有難くもらうよ』

 

 

貴重な飯を分けてくれた者。みなその時にダイザーに交わされた言葉は理解できていなかったはずだが、確かに言葉など無くとも心だけで繋がっていた者たちの無残な遺骸を見せつけられるダイザーの顔に影がかかってゆく。

 

「お前と私は選ばれし存在だ。生まれ持っての優秀な才能を伸ばすには、全てを支配する必要がある。秀でたものをさらに突き抜けて秀でさせること、つまり我々だけが『進化』することが、メタルトータスという種族全体にとっても大きなメリットとなる。だがお前はどうだ?自分よりも劣る者を優先し、それらに寄り添う…何という『退化』だ」

 

ダイザーはそれに反論するでもなく、ただゆっくりと近寄っていくだけ。

 

「私は進化を目指す。それに比べ、お前は反対に退化して…!?」

 

だがネムラが気が付いた時、ダイザーの姿は目の前から消えていた。

 

「い、いない?どこへ…!!」

 

ダイザーは跳躍していた。ネムラはやっとそれに気が付き、見上げるが既に遅かった。

勢いよく落下してくる超重の巨体、それを加えた渾身の拳の一撃が、真上からネムラの顔面に襲い掛かった。

 

ゴガシャア!!

 

背中から倒れこみ地面へ叩き伏せられると同時にダイザーが覆いかぶさり、さらに剛腕を振り下ろす打撃を顔面へ食らう。だがネムラも足でダイザーを蹴り飛ばし、両者は転がりながら起き上がる。

他のメタルトータスたちは突然始まった戦いに驚きつつも、巻き込まれないように離れていく。

 

「テメェ…!!なんのつも…!?」

 

ダイザーに問おうとするネムラだが、一直線に頭から突っ込んでくるダイザーを目撃し、頭突きには頭突きで対応する。両者は反発して後ろへ下がり、ダイザーの追撃が襲い来るもネムラは軽い身ごなしでそれを躱し、長く鋭い一対の牙の生えた口を大きく開き、ダイザーの首元に思い切り嚙みついた。

 

「グルルルルル…!!」

 

唸り声を響かせるダイザー。対するネムラはその首に嚙みついたまま巨体を天高く持ち上げ、さらに咬合力を高めて締め上げる。

 

「あくまでも私とは言葉を交わす必要は無いってことか?ならいいだろう、命乞いする間もなく捻り潰してやる!」

 

首の外殻がミシミシと悲鳴を上げ、ネムラはさらにダイザーの体を勢いよく振り下ろして地面へ叩きつけ、強靭な腕で抑え込みつつ首を嚙み千切ろうと力を籠める。

だが、ダイザーはネムラの体を掴み返すと上体を起こし、腕力だけで投げ飛ばした。地面に倒れこむネムラを再び持ち上げ、地面へ叩きつける。

 

「ハァ、ハァ…!」

 

ネムラは口元を拭いながらゆっくりと起き上がり、ギロリとダイザーを睨む。

 

「グオガアアアアア!!」

 

ダイザーの目が赤く光り、地を揺るがすような咆哮を上げて威圧する。その仕草は一般的なメタルトータスに見られる威嚇行動だった。

 

「お前は知性持たぬ、劣ったメタルトータスとしてこの私を下したいというわけか!」

 

ネムラは胸を張るように上体を逸らし、大きく息を吸う。そして次の瞬間、大きく開いた口から特大の火炎熱線を吐き出した。

 

ビィィイイイイ…!

 

それはダイザーの胸に命中し、あまりの威力に後方へ吹っ飛ばされる。胸の甲殻が赤熱しており、熱線はかなりの高温である事が伺える。

それもそのはず、メタルトータスは体内に溜まった熱を逃がすため口から排熱を行うのだが、鉱石を食べて得られる代謝とそもそもマグマに浸かって生活するという生態上、吐き出した熱はマグマに近い高温になっている。ダイザーもかつて永遠亭を襲撃した際、竹林を焼くために口から火炎を吐いていたが、あの時はマグマに触れる機会がしばらくなかったために大した熱が溜まっていなかったからその程度の炎しか出せなかった。

だがネムラは普通のメタルトータスよりも熱を溜められる許容量が大きく、ただの排熱行動が絶大な威力になっていても不思議ではない。

 

「喰らえぇ!」

 

ネムラの熱線は勢いを落とすことなく続けてダイザーを狙ってくる。そしてダイザーも体内の熱を口内へ凝縮し、細い放射熱線を吐き出した。

 

ギャイイイイ… ドン!!

 

互いの熱線が真正面からぶつかり合い、耐え切れずに大爆発を起こす。爆炎をものともせず、ネムラとダイザーは睨み合う。

 

「やはりやるなダイザー…それでこそだ。だがな…グズ共の本当の使い方ってのを教えてやるよ」

 

ネムラは周囲にいたメタルトータスたちに何かを指示した。すると、彼らは恐る恐る少し前に出て、胸を張って熱を口内へ送り込み、熱線をネムラに向かって放った。

 

「ヌウウウウ…!」

 

何十本もの熱線を一身に受けるネムラの全身が赤熱し、白熱し、とてつもない温度上昇を見せる。そして次の瞬間、ネムラの全身の外殻の隙間から青い光が漏れ出したかと思うと、口から青い特大の超放射熱線をぶっ放した。

ダイザーも慌てて熱線を吐き出し、ネムラの青い超熱線にぶつける。今度は爆発は起こらず、両者しばらく押し合うが…ゆっくりと青い超熱線がダイザーの方へ近づいていき…

 

ドウン!!

 

ダイザーへ接触した瞬間、発生した熱波によってダイザーは吹っ飛ばされ、遠くの壁に激突した。胸の甲殻があまりの熱によって軟化し、溶けるに至っている。これは幻想郷で史奈と戦った時にも起こらなかった事だ。

 

ドオッ!

 

ネムラは間髪入れずに超熱線を繰り出す。ダイザーも避け切れないと判断し、渾身の熱線を吐いてぶつかり合わせる。

 

「なんだ…どこにこんなパワーがあった!?」

 

だが、他の個体の熱線を受けて威力を底上げしたネムラの熱線とほとんど互角に押し合うダイザー。先ほどとは比べ物にならない破壊力が込められている。

 

「そうか…!私の超熱線を受けた時の衝撃を吸収してやがるのか!だが…いつまでそれが持つ?」

 

ネムラの言う通り、たった一瞬だけ直撃を受けた分の熱量はすぐに切れる。勢いを失ったダイザーの熱線を押し切り、ネムラの超熱線がぐんぐんと近寄り、残り数センチで直撃する。

 

(クソ…!)

 

赤く光る眼の裏で諦めかけるダイザー。

しかし次の瞬間、ダイザーの体が一人でに宙へ浮かんでゆく。突然の浮遊感に思わず困惑し、何が起こったのか確かめようとする。

 

「何が『これはオレの問題だ』だよ、もっと仲間を頼れよな!」

 

スカッシュがダイザーの背中の甲殻を掴み、高く持ち上げたまま飛行して避難させていた。

 

「スカッシュ…!」

 

「なんだアイツはァ…!?」

 

ネムラは突然現れて邪魔をしたスカッシュを見上げながらわなわなと震える。

 

「おい、さっさとしろグズ共!」

 

そして再び超熱線で撃墜するため、メタルトータスたちに自分へ向けて熱線を放つよう命令するも…

 

バキッ!

 

周りに控えていたメタルトータスたちは一斉に薙ぎ払われ、遠く離れた場所でひっくり返っていた。

 

「事情はわかってるけど、ちょっと大人しくしててね」

 

シロナとサザンカが周囲のメタルトータスを一網打尽にしていた。超熱線を吐くことができなくなったネムラは怒りの咆哮を上げて二人に襲い掛かるも、サザンカの反撃の蹴りを受けて容易く弾き飛ばされる。

 

「ぐうゥ…!…ハッ!?」

 

頭上では、空中に持ち上げられたダイザーがスカッシュのエネルギー波を受けて全身が紫色の炎に包まれていた。

 

「『スパイクスパーク・withダイザー』だぜ!!」

 

スカッシュはダイザーを渾身のパワーで殴り、下方へ向けて弾き出す。隕石の如き勢いで燃え盛りながら真っすぐにネムラへ突っ込んでいくダイザーだったが…

 

「バカが!その程度ならこの私に効くはずがない…!」

 

しかし、ネムラは忘れてしまっていた。今の自分は、超熱線を放つために何十本もの熱線を受け続けたことで全身の外殻が軟化している事を。

気付いた時にはもう遅く、真上から衝突してきたダイザーの衝撃と爆発に巻き込まれた。

 

「グ…ガ…ガガガガ…!」

 

一通り爆炎が収まり、ダイザーがその場から退くと、全身の外殻がひしゃげ、ところどころ剝がれているボロボロな様子のネムラが這い出してきた。

 

「ネムラ」

 

だが、ダイザーがその眼前へ足を踏み下ろし、行き先を塞ぐ。

 

「『進化』の反対って何だ?」

 

「…あァ!?そんなの…『退化』に決まってるだろ…!」

 

「ふん、退化か…。オレはしばらく宇宙を巡ったことで色んな星の人間と出会った。ある星の人間は足の指の長さが短くなった。ある星の人間は尻尾が消失した。それは退化か?いいや、各々がそれぞれの環境や暮らしに適応していった結果だろう。『退化』も『進化』のひとつだ、なら進化の反対は『無変化』だ。確かにお前は他を圧し導ける優秀な突然変異として生まれた…だがそれだけ、そこで完結してしまっている」

 

ネムラは起き上がろうと腕を地面につく。

 

「オレも昔はそうだった」

 

「は…?」

 

「お前のように、下等な同族を支配し欲望を満たそうとした。だが運が良かったのか…実行する前にオレは宇宙へ旅立つ機会を得た。だからオレは変化したぞ」

 

「…ほざけェ!!」

 

だが、ネムラはガバッと顔を上げるとなけなしの体熱をかき集めて熱線を吐き出した。しかし、もはやただの炎に過ぎない排熱はダイザーには全く効かず、ダイザーは両腕を大きく振り上げる。

次の瞬間、それを叩き下ろし、ネムラの頭部を思い切り砕いた。軟化してから硬化しかけていた甲殻が飛び散り、ネムラは息絶えた。

 

 

恐怖で星を支配していた偽物の王、ネムラから解放されたメタルトータスたち。

何にせよ、ドラゴンレーダーを使用して無事に究極七星球を発見し、これでひとつ目のドラゴンボールが揃った。

 

 

「じゃあな。二度とこんな星に来ることはないと思うが、達者では」

 

「ああ!お前こそ野垂れ死ぬんじゃねーぞ!」

 

ダイザーに見送られ、一行は次のドラゴンボールを探して惑星グママを飛び立った。今のところ順調に旅は進んでいるが、早くも前代未聞の異変が彼女らの行く手を塞ごうとしていた…。

 

 

 

 

 

「まだかな?」

 

宇宙のどこかの星、青い海の広がる砂浜でくつろぐ男、ハーツはそう呟くのだった。その手にはいくつかの究極ドラゴンボールが握られていた…




【現在公開可能な情報】

ダイザー

・メタルトータスの突然変異個体で、人間並みの知能と他の個体を逸脱した肉体強度と戦闘力を持つ。
・低能な同族を見下しいつか支配してやろうと考えていたが、コルド大王からの勧誘を受けてカーボネド四天王に入る。
・クウラとの一件が終わった後はグママへ帰還したが、彼がいない間に星を支配していたネムラに敗れ、従っていた。


ネムラ

・ダイザーと同様の突然変異個体。戦闘力はダイザーよりもやや上。実はメス。
・ダイザーが勧誘されて宇宙へ行っている間に誕生し、同族を恐怖で支配していた。
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