「さて、次のドラゴンボールを見つけたいわけなんだけど…何かおかしいのよね」
シロナが呟いた。
「なんでドラゴンボールの反応がひとつも無くなったのよ?」
「いやアタシに聞かれても」
そう、惑星グママを発った後、残るドラゴンボールを探して宇宙中を探索するシロナ一行だったが、おかしな事にドラゴンレーダーに出てくるはずの反応が一切無くなってしまったのだ。
「故障か?」
「うーん…どこもおかしな所は無さそうなんだけど…」
シロナはレーダーの中を開いてみたり、再起動したりして何度も試してみたが、今自分らが持っているドラゴンボール以外の反応はどうやっても見つけられなかった。
「どうする、一度ブルマんとこに帰ってみるか?」
と、スカッシュが提案する。
「そうした方がいいかな…」
「その分時間はかかるが仕方あるまい」
ジャコもそう言い、操縦席に座った。
だがその時、シロナはドラゴンレーダーが反応を示したのを見た。
「あっ、ここ!今一個だけ出てる!」
「マジか!?」
「よっし、じゃあそこに行ってみるか!」
一行がたどり着いたのは、青い海と少ない陸地が見える、地球に似たきれいな星だった。
着陸し船から降りると、さんさんと照る太陽と、白い砂浜が眩しい。
「バカンスに最適な星じゃねぇか」
「ドラゴンボールはどこだ?」
「あれ~…?また反応が無くなっちゃった」
先ほどまで反応を示していたドラゴンレーダーは、再び沈黙してしまう。
「おや、何だよ君たちは」
その時、何者かがシロナたちに声をかけた。サザンカが身構え、全員が警戒するが…
「ふぁ~あ」
声の主である金髪の男はあくびをし、開いたまま持っていた雑誌を閉じた。
「なんだコイツ…」
男は青いつなぎを身にまとい、尖った耳、繋ぎ足したように顔の皮膚の色が違う部分がある。精悍な顔つきをしているが、どこか間の抜けた表情を浮かべ、不思議そうに彼女らを見ている。
「お前こそ何者だ、こんな星で何をしている?」
ジャコは銃を取り、男に向ける。
「何って…旅行中だよ。俺は旅人だ、この星があまりに美しかったもんだから立ち寄って休んでいるんだ。ほら、あそこに俺の宇宙船がある…あ、これパスポートね」
パスポートを確認すると、確かにそこにはどこかの宇宙旅行会社が発行したという事を表す印が押されており、「ハーツ」という名前と顔写真も記載されていた。
「ふむ…確かにただの旅行者のようだな」
ジャコはそう言いながらパスポートを返す。
「ところで君たち、銀河パトロールか?そっちこそこんな星に何か用があったのかい?それとも…何か困ったことでも?」
現在のこちらの状況を見透かしたようなハーツの質問に少しの疑問を抱くが、特に怪しいところもないこの男に突っ込むほどではなかった。
ピリリリリ…
「ん?」
その時、ジャコの通信機に着信が入る。
「本部からだ。なんだ一体…はい、こちらジャコだが」
次の瞬間、ジャコは血相を変えて叫んだ。
「なに!?それは本当か!!?…わかった、すぐに帰還する」
「どうした?」
「スカッシュ、我々はすぐに帰還するぞ。コードDA259だ」
「DA259…って、おいマジか…」
ジャコとスカッシュの慌て様と驚きからして、かなり重大な何かが起こったようだが…
「え、え?何があったの?」
「…すまないが緊急事態だ、我々は直ちに帰らねばならなくなった」
「んじゃドラゴンボール探しはどうすんだよ」
「それは…」
「それなら俺に任せてくれないか?」
と、そこでハーツが申し出た。
「俺はこう見えて片手じゃ数えられんくらいの桁の歳を生きている…この宇宙についても詳しい。きっと役に立つぜ」
「しかし…」
ジャコはどうしようか考え込む。本部で起きた緊急事態…今すぐにスカッシュと共に向かわなければならない。しかし、サザンカとシロナをこのままここへ置いていくのも気が引ける。
「心配しなくていいよ!」
だが見かねたシロナがそう言った。
「もしもこのハーツって人が妙な奴だってわかったら…私が自動的に殺す!これでどう?」
「嬢ちゃん、小さいのに言うねぇ~」
感心するハーツ。ジャコは今のシロナの目が笑っていなかったことに気づいてゾッとするも、その言葉とシロナの実力を信頼し、頷いた。
「わかった。とにかく、レーダーを直すなら急いで地球へ向かえ!星爆発のタイムリミットまで時間は押してしまうが仕方ないだろう!」
「ええ!」
ジャコとスカッシュは今まで乗っていた宇宙船で飛び立っていった。
この場に残されたのは、シロナ、サザンカ、そしてハーツの3名。
「うーん、俺も君に殺されたくはないな~。でも先にお互いの腹は割って話しておこうじゃないか」
「…そうね。私、シロナと妹のサザンカは究極ドラゴンボールを探して宇宙を旅していた。これはドラゴンボールを見つけられるレーダーなんだけど…いきなり全部の反応が消えてちゃってね。でも一瞬だけ表示が出たからこの星に来てみたらあなたがいたってわけ」
「なるほど。俺はハーツ、さっきも言ったが俺は宇宙を気ままに流離う旅人だ、かれこれ10万年はこうしているかなぁ」
「10万年って…」
サザンカが呟いた。
「って事は君らはそのレーダーの故障とやらで困ってるのか。見せてもらっても?」
「…ん」
シロナがドラゴンレーダーを手渡すと、ハーツはそれを眺め、電源を入れたり操作してみる。
「はははっ、これなら何とかなりそうだ!いったん俺の宇宙船へ持ってっていいか?多分直せるぞ。あ、もちろん君らも来るといい」
「ちょっと待てよ、アタシらはこの星にドラゴンボールの反応を見たから来たんだぞ」
「それも直してみればわかる。故障が原因だったのかもしれないし、本当にこの星にあるのかもしれないぞ」
「ほーっ、これはすごい!これを作った科学者は何者だ?」
ハーツは自分の宇宙船内で工具を広げ、ドラゴンレーダーの技術に感嘆しつつ手際よく修理していった。シロナとサザンカも近くでそれを見ていたが、間違いなくその手腕はブルマに匹敵していた。
「よし、これでどうだ」
修理の終えたドラゴンレーダーを起動してみると、シロナが持っているボールの反応が表示された。
「おお、ほんとに治ってる…」
「まあざっとこんなもんだな。これで俺のメカニックとしての腕も信用できたかな?」
「えっと、範囲を広げて…あ、次の反応が出たよ」
ドラゴンレーダーには別の星の地点に新たなドラゴンボールの反応が表示される。やはり先ほどこの星から反応が出ていたのは故障のせいだったのだろうか?
「その方角は西の銀河の方か…どれ、ちょっと貸してくれ」
ハーツはドラゴンレーダーを宇宙船の操縦パネルの下部に挿入する。するとモニターにレーダーの図が映し出され、さらに詳細な惑星系図まで記される。
「かなり遠いが、俺の宇宙船は特別製なんでね」
ハーツが何らかの操作を行った次の瞬間、宇宙船が揺らいだ。
シュン
パッ
一瞬だけ視界と共に体そのものが震え、気が付くと何事もなかったかのようだった。
「今、俺たちは宇宙船ごとワープした。あそこに見えるのがドラゴンボールのある惑星さ」
目の前に迫ってくるのは赤茶けた大地に点々と街並みが見える星だった。さらに赤い雲に覆われており、先ほどまでいた惑星と比べて随分と過酷な環境であることが伺える。
確かにドラゴンレーダーはあの星から反応をキャッチしている。宇宙船は大まかなボールの位置に近いところに着陸した。
「ふー、何だか寂しいところだな」
やはり一帯は荒野であり、枯れた木が立ち並んでいる以外には何もない。生き物の気配すら感じず、死の気配が漂っている。
「本当にドラゴンボールがあるのかよ」
そういいながら、サザンカはふと歩き出す。
サァア───
その時、風も吹かないのに土煙が起こった。バッとそちらへ目を向けるサザンカだが、何もいないし気配も感じない。
「気のせいか…?」
「サザンカ後ろ!!」
だが、シロナの呼び声で後ろへ振り向くサザンカ。すると、彼女の頭上には高く飛び上がった姿勢の、赤い毛並みを持つ謎の獣の姿があった。獣はサザンカの顔面を蹴りつけ、軽く吹っ飛ばすと四つん這いになってさらに襲い掛かる。
「一体何だ!?」
「ッ…!」
状況がつかめないハーツと、もうひとつの何かが動く音を聞いたシロナ。いつの間にかすぐ目の前に接近していた土色の毛を持つ獣に腕を噛みつかれ、慌てて振り払う。
「なんだコイツら…」
今襲ってきた、赤色と土色の毛並みの獣はスッと立ち上がり、人間と同じ姿勢で構えながらこちらを睨んでくる。形容すればオオカミの頭部を持つ獣人といった具合だ。
「命が惜しけりゃ、オレたちにテメェらの宇宙船を寄こしな」
彼らは今乗ってきたハーツの宇宙船を要求してきたのだった…。
流石にお分かりと思いますが、ハーツは嘘しか吐いてません。