もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第46話 「月の客の襲来に備えよ!」

「さらばだ、と言ったろう。では、八意様達への言伝、頼んだぞ」

 

すると、三人の体に何者かが触れた。次の瞬間、三人の視界が真っ暗になった。最後に見えたのは、降り注ぐ瓦礫の中に埋もれるようにして倒れていく、サグメの後ろ姿だけだった。

 

 

 

─────………

 

 

カカロットはハッと気が付くと、立ち上がって辺りを見渡す。

 

「ここは…?」

 

どこか見覚えがある。ここは博麗神社の境内の中だ。下に目線を向けると、霊夢とウスターが眠っている。

手にはしっかりと奪い取ったドラゴンボールが握られており、夜の月光を受けてきらりと輝いた。月の都へ向かい始めたのは夕方だったから、今は恐らく夜中だろうか?

 

「気が付いたようですね」

 

その声に驚いて振り返ると、逆さまの顔が目の前に浮かんだ。

 

「うわっ!?」

 

「どうも。私、ドレミー・スイートと申します」

 

そう名乗った者は、空中でくるりと回って地面に降りる。赤いナイトキャップをかぶり、毛玉のようなボンボンの飾りのついた服を着ている。メルヘンの世界にでも出てきそうな外見だが、そのオーラは計り知れない実力を秘めていると思った。

 

「ど、ドレ…?」

 

「サグメ様に相談されてね…貴方たちを万が一の場合は地上へ連れていくようにと」

 

「サグメ…アイツがか…」

 

次々と死んでいった月で出会った者たちの姿を思い浮かべて、カカロットは歯を食いしばった。サグメも寸前であの致命傷だ…恐らく助かってはいないだろう。

 

「うう…ここは…」

 

「俺は…」

 

霊夢とウスターが起き上がる。頭を押さえ、辺りを見渡す。

 

「そちらの二人もお目覚めのようですね。私です、ドレミー・スイートです」

 

「アンタが助けてくれたの?でもいらなかったわね…今からでも間に合うわ、もう一度月へ行って奴らを…!!」

 

霊夢はそう言うと、未だ夜空に浮かんでいる欠けた月を見上げた。

カカロットも月を見る。俺たちは今まで、あんな高い場所にいたようだ。あそこには人が住んでいて、そして地上を滅ぼそうとしている月夜見王たちが…。

 

「いや、やめておけ霊夢」

 

カカロットは霊夢を制止する。

 

「な、なんで…もう一度行って奴らをぶっ倒せば…!」

 

「無茶だぜ、俺たち三人の渾身の攻撃が、たった一人の親衛隊に防がれたんだぞ。しかもあっちは全くのノーダメージでピンピンしてた…」

 

「だからって黙って待ってろって…」

 

「馬鹿、冷静になれ。俺だって今すぐ戻って戦いたい。だけど今行っても勝てる見込みは無い…だから準備をこれでもかってくらいして奴らの襲来を待って、万全の状態で迎え撃つ。それに頼まれたことを忘れたのか?」

 

それを聞いた霊夢は黙り込む。ウスターは座ったまま目をつぶっている。

 

「で、でも準備をするってどうするのよ?」

 

「月の客どもを迎え撃つにはどうしてもこの幻想郷が戦場になっちまう。だから一時的に住民たちをどこか安全な場所へ避難させるのさ」

 

「どうやって?言っとくけど、人間だけでもかなりの数よ。アンタが言ってるのが動物や妖怪も含めてのことだったら、途方もない話よ」

 

「うう…それはだな…頑張って…」

 

「ドラゴンボールを使えばいいだろう。安全な場所に皆を送ってくださいとな」

 

ウスターが口を開いた。

 

「そうか!ドラゴンボールを使えばいいのか!でも、その安全な場所は…」

 

「私に心当たりがあるわ、まぁあとで教えるとして…先に永琳たちのとこへ行きましょうか」

 

「永琳?」

 

「月で言われてた八意ってやつよ!ウスターはどうする?」

 

「くだらん!俺は一人でいる…避難準備はそっちで勝手にしろ…俺は俺自身の準備をする」

 

ウスターはそう大声で言うと、どこかへと飛び去った。恐らく、四日後に彼女も戦うつもりなのだろう。だが、月の民には自分を凌駕する者が多くいた…それは彼女のプライドを大きく揺るがしたのだろう。焦って修行に出るのも頷ける。

 

「幻想郷避難計画か…骨が折れそうだぜ」

 

 

 

 

 

翌朝。迷いの竹林の奥地に存在するという屋敷、『永遠亭』。

 

「輝夜、今日も私が勝たせてもらうぞ!!」

 

その庭先で、あの藤原妹紅がそう高らかに叫びながら指を刺した。その先に居るのは、長く美しい黒髪の少女だった。長い袖で口元を隠し、挑発するように笑う。

 

「ふふふ…前のはまぐれよ、まぐれ。次こそは私が勝たせてもらうわ」

 

妹紅と蓬莱山輝夜は、ことあるごとにこうして殺し合いという名の決闘を繰り広げている。といっても、両者ともに不死身の人間、殺してもすぐに蘇るので、本当の決着がついたことは一度もない。

 

「やれやれ、またやってるわ」

 

その様子を屋敷の窓から眺めている、八意永琳。

 

「行くよ、おりゃああ!!」

 

拳を振り上げ、真っすぐに輝夜に飛びかかる妹紅。

 

「よう、久しぶりだな」

 

と、両者の間に突然カカロットが上から降りてきた。驚いた妹紅は転がるようにして動きを止める。そして地面にぶつけた頭を押さえながら起き上がった。

 

「いてて…カカロットか!元気にしてたか?」

 

「ああ、まあな。霊夢に教えられてここまで来たんだが…もしかしてそこにいるのが蓬莱山輝夜ってやつか?」

 

「そうだが…一体どうしたってんだ?」

 

「詳しくは言えないんだが…その輝夜と永琳って奴にどうしても言わなければならない大事な話があるんだ」

 

会話を聞いていた輝夜はキョトンとカカロットを見つめた。

 

 

 

「…それは本当なの?」

 

「ああ、もちろん本当だ」

 

カカロットは永琳と輝夜に、月で起こったこと、そしてサグメや綿月姉妹からの伝言を話した。

月の都が寿命で滅びかけていて、それを持ちなおすために不老不死の蓬莱人であるふたりを超月光発生装置ツキノカクに取り込ませようとしていること、そして綿月姉妹、サグメの死について。

あの三人の死を信じられないというような顔で聞いていたが、しばらくして信用する気になったのか、真剣なまなざしを向けるようになった。

 

「月の都が寿命を迎えるという話は薄々と伝わってきていたけど…あの月夜見王がそんなことをしようとしてるなんて。きっと、その情報だけが規制されて私には流れて来なかったのね」

 

「依姫たちが…そんな事って…」

 

「…いいでしょう、カカロット、彼女達からの伝言をありがとう。貴方を信用するわ。それで、私たちはどうすれば?」

 

「安全な場所に避難してもらう。その場所ってのは後から伝えに来るから、くれぐれも用心しながら待っていてくれ」

 

 

 

カカロットは永遠亭を出ると、妹紅に教えられた道を通って竹林を抜け、人間の里の方面までやって来た。すると、そこには彼を待っていたかのように霊夢とあの摩多羅隠岐奈が立っていた。

 

「カカロット!話は付いたわ、この隠岐奈が持ってる”後戸の国”を貸してくれるって」

 

「事情は聴いた…既にシュネックにも伝わっている。やむを得ないだろう」

 

「サンキュー、恩に着るぜ。じゃあ早速お前から貰ったこのドラゴンボール、使わせてもらうぜ」

 

カカロットはポケットからドラゴンボールを取り出し、地面に置いた。

 

「構わない。優勝したのはお前だからな」

 

「じゃあいくぞ…出でよ龍神!そして俺の願いを叶えてくれー!!」

 

ボールに向かってそう言うと、空がやや暗くなり、ボールが眩い光を放った。同時にその光は形を取り始め、黒い体を持つ四足のドラゴンへと変化していく。

ドラゴンは足を地面につけ、巨大な翼を目いっぱいに開いて、赤く鋭い目でカカロットを見つめた。

 

「摩多羅隠岐奈の試練を乗り越えし者よ。お前の願いを可能な限りで一つ、叶えてやろうではないか」

 

五つ星、つなわち五星球の龍神は低い声でそう言った。

 

「俺の願いを聞くがいい。この幻想郷に住まう全ての住民たちを隠岐奈の管理する後戸の国へ移動させてくれ!」

 

龍神はしばらく考えた後、猫のように座り込むとゆっくり言った。

 

「それは無理な願いだ」

 

「な…なんでだ!」

 

「そうよ、何でも叶うんじゃないの?」

 

「私は可能な限りで、と言った。その願いは私の力を大きく超えてしまっている。幻想郷の住民全てを移動させることはできない」

 

「そんな…何とかならないのか!?月の客が攻めて来たら、全員が消滅しちまうんだぞ!」

 

「だが、ひとつだけ方法がある。お前は私にこう願うがいい…『三日の間だけ、幻想郷と後戸の国を自在に一瞬で行き来できる力をください』とな」

 

そう言われたカカロットは、改めて願いを言おうとする。

 

「なるほどな…いいだろう、『三日の間だけ、幻想郷と後戸の国を自在に一瞬で行き来できる力をくれ』!!」

 

「承知した」

 

龍神は大きな手をカカロットの上にかかげると、そこから電撃のようなエネルギーを与える。それを受けたカカロットは、今までにない不思議な力が自分に備わったのだと自覚した。

 

「願いは叶えてやった。では、さらばだ」

 

再び光に包まれ、龍神はそのままドラゴンボールの中へと消えていった。五星球はどんどんと黒ずみ、まるで石のように変わってしまうと、ゴロンと地面を転がった。

 

「これでいいだろう」

 

隠岐奈はボールを拾うと、それをしまい込む。

 

「お前には私と同じく、後戸に自由に行き来できる力が与えられた。それを使って、民たちを避難させてくれ」

 

「ああ!任せろ!」

 

 

かくして、大満月の夜に幻想郷にやって来る月の客たちを迎え撃つため、幻想郷避難計画がスタートしたのだった…。

 




余談ですが、月の技術はツフル人たちと同じくらいと考えています。
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