もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第461話 「氷刃」

「そうか、お前もこの球について知らんのか」

 

宇宙のどこか、しかしバジルとラベンダが取り残された荒れた星からほど遠くない場所に浮かぶ巨大な宇宙船の中で、数人の人間の姿があった。

ひとりは紺色の毛並みを持つ狼の獣人、ベルガモ。その正面に凶悪な威圧感を携えて立ちふさがるのは、異常に発達した筋肉質な上半身を持ち、背中に氷山のような巨大な棘を携えた鬼のような大男。なんとその手には、3つ星の究極三星球があった。

 

「なら、死ぬがいい」

 

大男の周囲に煌めく冷気の霧が発生し、背筋が文字通り冷たくなるのを感じる。そして、大男は右手に纏わせた分厚い氷の刃をベルガモへ向けて振り下ろすのだった。

 

 

 

 

「おいおい、本気で言ってるのかよ!?」

 

ラベンダとバジルの兄を救い出すと提案したハーツに対し、サザンカは吹き出しながらそう言った。

 

「…確かに、ハーツさんの言うこともあながちおかしくないのかも」

 

シロナはドラゴンレーダーを見ながらそう言った。レーダーにはドラゴンボールの反応が表示されているが、その位置はこの星からやや離れた位置にあり、かつゆっくりと動いており…恐らくは衛星軌道上を走る何かの中にあると推測できる。

 

「そういうわけだ。それに、君らが行きたがっていたのもここなんだろう?」

 

バジルたちは警戒した面持ちで頷いた。

 

「それじゃあ決まりだ。腹ごしらえが済んだら乗れよ、出発だ」

 

「いいや、オレたちはこれを食わねぇ」

 

「食うなら…兄者を助けた後に、だ」

 

 

 

 

「ハァ…ゼェ…!」

 

宇宙船内の広い通路を四つ足になって高速で走り抜けるベルガモ。その肩から胸には深い切り傷が出来、血が滴っている。

 

ブォン!

 

次の瞬間彼の背後から巨大で鋭利な氷柱が迫り、鋭い感覚で気ではなく周囲の空気の温度変化やそれに伴う匂いで状況を見ているベルガモはそれを察知し、横へ飛び退いて氷柱を躱す。

同時に、通路の床がパキパキと音を立てながら凍り付いていき、遠くから猛スピードで巨大な人影が滑るように突進してくる。

 

「お前は何者だ…!」

 

「おれの名はヒソップ」

 

氷山を背負ったかのような巨体を誇るヒソップは、腕に生成したその巨躯に見合うサイズの氷の大剣を振り下ろし、冷気の斬撃を飛ばす。ベルガモはまたも間一髪斬撃を避けるも太ももを切り裂かれ、傷口ごと足が凍り付いてしまう。

 

(なんだ今の攻撃は…どうなってやがる!?)

 

足を斬られたベルガモは体勢を崩し、その場で転がりながら倒れ伏す。すかさず接近してきたヒソップが、冷気の煙を吐き出しながら氷剣を横薙ぎに構える。冷たく光る死の刃がベルガモの首元へ迫る。

 

(ここまでか…!くそったれが!)

 

ベルガモがそう思った瞬間、ガキンと凄まじい金属音を立てて大剣が静止した。

 

「なに…!」

 

ヒソップの目の前には、両腕が変形した刃で氷剣を受け止めたシロナの姿があった。それに困惑した隙をついて、サザンカの強烈なパンチがヒソップの顔面を捉え、その巨体が後方へ大きく吹き飛ばされた。

 

「兄者!」

 

「無事か!?」

 

すかさずバジルとラベンダがベルガモを回収し、離れた場所へ連れてゆく。

 

「お前たち、来たのか…!」

 

「ああ、アイツらと一緒にな」

 

彼らの視線の先には、起き上がるヒソップの目の前に立ちふさがるシロナとサザンカの姿があった。

 

「何者だお前らは…どうやってここへ来た!?」

 

「知らねぇよ」

 

「こっそり宇宙船を連結して」

 

「「あ」」

 

お互いの思ったやり取りが嚙み合わずに顔を見合わせるふたり。ヒソップは苛立ちで顔をしかめ、床から巨大な氷柱を発生させふたりを足元から貫こうとする。

真上へジャンプしてそれを躱し、氷を踏み砕いて粉々にする。その際に発生したきらめく粉塵に紛れ、シロナとサザンカは同時にヒソップへ殴りかかる。

 

ガキン!

 

だが掲げた氷剣にそれを阻まれてしまう。

 

「貴様らの相手はそいつらだ」

 

シロナがヒソップではない何者かの襲撃を受け、通路のずっと向こう側へと引きずられていく。サザンカもまた、どこかから放たれたエネルギー波によって天井を突き破って押し出され、上の階のどこかへと消されてしまう。

 

「さぁ、おれの相手はお前らだ…トリオ・デ・デンジャーズ」

 

ヒソップは立ち上がったベルガモたち三兄弟に向き合った。

 

「…?オレたちのことを知ってるのか?」

 

「ああ、知ってる奴は知ってるだろうな。ある意味有名だ。だがもうお前らに用はないからな、ここで殺せばまたおれの無敵の強さを証明できる」

 

「何言ってやがる!テメェなんざ大したことねぇだろが!」

 

ブゥン!!

 

再び振るわれた氷剣から飛んだ冷気の斬撃が3人を狙う。

 

「へっ、そんなもんはオレの毒で十分だなァ」

 

ラベンダは前面へ猛毒液を吐いて毒の防護壁を作り、斬撃を防ごうとする。毒の成分によって空気そのものを凝固させ、あらゆる物の突破を封じる結界だ。

 

「避けろラベンダ!!」

 

だが、斬撃はその冷気で防護壁そのものを氷漬けにし、一気に砕いてその向こう側に到達した。咄嗟に飛びのくラベンダだが、その足を切り裂かれ、飛び散る鮮血も瞬時に凍る。

 

「ぐっ、あの野郎…!」

 

「大丈夫かラベンダ!」

 

「…だが、弟たちよ…落ち着いて考えてみろ。あの程度、オレたち兄弟が揃えば敵じゃねぇ。だろ?」

 

「ああ、兄者の言う通りだぜ」

 

「ビビっちまったけどなァ、この程度の傷じゃ止まらねえよ」

 

ラベンダは毒素を傷へ吹きかけ、鎮痛剤として働かせて痛みを消す。

 

「さぁ、反撃の時間だ!!」

 

 

 

一方、何者かの不意打ちによってヒソップの元から引き離されたシロナとサザンカ。シロナの目の前には、全身が金属に覆われた竜人のような姿をした男“チャッピル”が、サザンカの前には赤黒い肌と白い髪を持つ悪魔のような姿の戦士“オレガノ”が立っていた。

 

「ここでお前らも終わりだな」

 

「悪く思うなよ」

 

口々にそう言いながらこちらへゆっくりと向かってくるチャッピルとオレガノに対し、シロナとサザンカは首の骨を鳴らし、背中をぐっと伸ばしながら向かい合う。

 

「あれ、どんぐらいで勝てる?」

 

「5分かな」

 

「じゃあアタシは3分だ」

 

軽口を飛ばし合い、ふたりは同時に超サイヤ人へ変身する。その変化に驚きつつも、チャッピルは金属の尻尾を鞭のようにしならせて振るう。オレガノは素早く跳躍し、目にもとまらぬ速度でシロナへ連続攻撃を叩き込んだ。

 

「シャアアッ!」

 

オレガノの手から蜘蛛の巣状の糸が伸び、それは壁をサイコロのように切り裂きながらシロナへと迫る。シロナは右手に鋭いカッターナイフの刃を生成し、錐もみ状に回転しながら飛んで糸を切断する。

 

「なっ…!」

 

オレガノは一瞬怯むものの、さらに強力な糸を両掌から射出し、シロナを絡め取ろうと狙う。通路の壁に向かって放ち、それを避けられるとシロナを追うように反対側の壁に強靭な糸束をくっつける。

 

「くくっ」

 

しかし、それはオレガノの策だった。あえてシロナを逃がしながら糸を通路に張り巡らせることで逃げ場を封じていたのだ。案の定、シロナの前後はオレガノの放った糸束によって塞がれており、わずかな隙間しか存在しない。

 

「かかったな!そこから動けないまま、吹き飛ばしてやる!」

 

オレガノは胸の前に両手を掲げ、そこへ赤紫色のエネルギー球を作り出す。それは今にもさく裂しそうなほどにバチバチと迸っており、前方へ向けて波動を繰り出そうと構えている。

 

ググッ… ギチチ…

 

だが、オレガノの耳に聞こえてきたのは何かを引き絞るような鈍い音。

 

「…なんだ、この音は…まさか、おい!?」

 

気付いた時には遅かった。シロナは背後に張られた糸束に背中を付け、全力で後ろへ下がっていた。強靭さと弾力を併せ持つ糸束はパチンコのようにシロナを引っ張り、今にも弾けそうなほど伸びていた。

 

「くっ、『ローストキャノン』!!」

 

慌てて渾身の一撃を解き放つオレガノ。同時にシロナも力を緩めると、その瞬間に糸束が跳ね返り彼女の体がすさまじい勢いで吹っ飛んでゆく。

 

ブチィ!

 

そして、オレガノの一撃を真正面から容易く粉砕し、そのままオレガノ自身の胸へ強烈な頭突きをお見舞いする。オレガノはさすがの衝撃に耐えきれず、白目をむいて気を失うのだった。

 

 

「フフフ…」

 

チャッピルの尻尾の一撃を脇に抱くように受け止めたサザンカ。だがチャッピルの尻尾そのものの重量も相まって衝撃を殺しきれず、踏ん張っても足が少しずつ引きずられている。

次の瞬間、チャッピルがグッと足を踏み込むと彼の尻尾が大きくしなり、掴んでいたサザンカの体が容易く浮いて振り回される。

 

「喰らえよ」

 

そのまま通路の壁面に叩き付ける。壁が崩壊し、積み重なる瓦礫の中で微かにサザンカの気配が動いた瞬間、チャッピルは口を開けた。

 

「『ペーストインフェルノ』」

 

口から吐き出したのは深紅の火の玉、だがそれは瓦礫の上に落ちるとベチャっと液体のように広がりながら高熱を発し、瓦礫を白熱させて溶かしてゆく。それをじっと見ていたチャッピルだったが、ある瞬間に違和感に気付き、ぐつぐつと煮える瓦礫の中に手を突っ込む。

 

「居ねぇ…どこへ行った?」

 

ガシッ!

 

だが、瓦礫の中でチャッピルの腕を何かが掴んだ。驚いて引き上げると、そこには超サイヤ人の激しいオーラを静かに薄く纏うことで熱を防いでいたサザンカがいた。

 

「バカが!」

 

チャッピルはすぐさま逆にサザンカの肩を掴み返し、ギリギリと握力を込めて締め上げる。歯を噛み締めて苦しげに唸るサザンカだったが、その顔には不敵な笑みが浮かぶ。

 

「テメェこそ…離すなよ…」

 

サザンカはチャッピルの腕にしがみつき、逆に腕菱木十字固めの要領で締め上げ返す。金属の装甲がミシミシと軋み、バキバキとヒビが入ってゆく。

 

「お?おおッ!?」

 

「こちとら、ついこないだ似たようなのと戦ったばかりなんだよ」

 

ゴギッ!!

 

「があああッ…!!」

 

そして、ついにチャッピルの右腕が悲鳴と共に外れてしまう。サザンカが腕を放して離れるとチャッピルはその場に蹲り、その瞬間、サザンカの強烈な卍蹴りが繰り出され、その顔面へ叩き込まれる。

 

 

 

ザンッ ズバアッ

 

斬撃が飛び交う中、青、赤、黄の3つのオーラが縦横無尽にその場を駆け巡る。ヒソップはそれを目で追いながら順番に斬撃を飛ばして狙うも、素早すぎて当てることが出来ない。

ひとりひとりが相手であればヒソップの膂力と能力で難なく勝てただろうが、トリオ・デ・デンジャーズが揃ったことによるコンビネーションに苦戦を強いられていた。

 

「『デンジャーズ・トライアングル』!!」

 

ガッ

 

すれ違いざまにベルガモの牙による攻撃を受け、脇腹にダメージを受ける。即座に冷気でベルガモを凍らせようとするも、それは外れて床に分厚い氷を張らせるだけに終わる。

次の瞬間、足をバジルに蹴られてバランスを崩し、両手を床についてしまう。その時に氷剣になっている手も床につけてしまっており、今度はラベンダの繰り出す毒手でその腕を殴られた。

ヒソップはすぐに立ち上がって反撃に転じようとするも、毒によって腕に力が入らず、氷剣は砕け散って消えてしまう。しまった、と思った時には既に遅く、ベルガモが拳を振り上げながら迫っていた。

体内で生成した氷柱を吐き出そうと構えるも、脳天へバジルの踵落としを喰らって口内で冷気が炸裂し、怯んでしまう。さらにラベンダの毒霧を受け、視界を奪われる。

 

「オレたちを…舐めるなよッ!!」

 

そして、ベルガモの渾身の拳がヒソップの腹へめり込んだ。体の奥深くまで達する衝撃によってヒソップは気を失い、その場に仰向けに倒れ込んだ。

ヒソップの纏っていた袴の中から、コロンと究極三星球が転がり落ちた。

 

「うまくいったみたいだな」

 

遅れて現れたハーツがそれを拾い上げた。

 

その時、チャッピルとオレガノを制したシロナとサザンカも戻ってきた。

 

「こっちも片付いたぜ」

 

「あ、それドラゴンボール」

 

「探してるのはこれだったんだろ?」

 

ハーツはシロナに究極三星球を手渡す。

 

「じゃあ、さっきの星へ戻って飯にしようじゃないか。兄弟そろったところでな」

 

 

 

宇宙船にヒソップらを残したまま、6人は先ほどの惑星へ戻るのだった。

途中だった食卓を再び広げ、今度こそベルガモ達三兄弟は巨大な肉を頬張った。

 

「あのヒソップとやらは多分宇宙海賊だな。どこかでドラゴンボールを見つけ、有名な君らに知ってるかどうか尋ねたんだろう。名声のために殺そうとも思ってたようだがな」

 

「あんな野郎はオレたちが揃えば敵でもなんでもねぇよ。だがアンタらのおかげで兄者を救うことができた」

 

「オレたち兄弟にとって恩人だ」

 

バジルとラベンダはハーツに礼を言った。

 

「俺は弟ふたりを運んでやっただけだ、あとは君ら三人で勝てただろうさ。なぁふたりとも?」

 

「ん?ああ」

 

「そうだね」

 

シロナとサザンカも肉を食べながら軽い返事をする。

 

 

かくして、究極三星球を手に入れた彼女らは次の究極ドラゴンボールを求めて星を発つのだった。




【現在公開可能な情報】

ヒソップ、チャッピル、オレガノは力の大会編にも第9宇宙の代表として出ていた戦士。
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