もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第462話 「匪石」

「さて、次のドラゴンボールがある星を探そうじゃないか」

 

ハーツはそう言いながら操縦席のタッチパネルを操作し、ドラゴンレーダーを起動する。画面には遠く離れた場所の星系図と、究極ドラゴンボールの反応が表示されていた。

 

「次はそれだな」

 

「どれぐらいかかるの?」

 

「ワープすればほんの一瞬さ。ところで君たち、一晩は休んだようだがそれで大丈夫かい?」

 

「ああ、なんてことねぇよ」

 

「全然平気よ」

 

「はは、わかったよ」

 

打ち解けたかのように、出会ったばかりのハーツと普通に会話をするシロナとサザンカだったが、ベルガモたちの星を発ったあとにふたりで少し話していた。

 

 

「やっぱりよぉ、ハーツって怪しすぎるよな?アイツの言ったとおりに事がうまく運びすぎてる」

 

「ただ単に知識と経験豊富ですごい人ってだけならいいんだけど、確かにね…」

 

「アタシにはどうもこれが、究極ドラゴンボールを集めさせて最後に奪おうとしてんじゃあねぇか?とかって思えてしょうがねぇのよ」

 

ふたりはしばらく黙り、考え込む。

 

「…だったらなんで、宇宙船やレーダーを揃えておきながらひとりで集めないのかしら?私たちを始末するチャンスなんて結構あったのに」

 

「そうなんだよ!それが不気味なんだよなぁ!…アイツ、今は隠してるが本当は相当強ぇぜ。勘だけどよ…」

 

「企みがあるにしろないにしろ、今の私たちじゃ宇宙中から究極ドラゴンボールを集めるなんて無理…とりあえずは一緒に手伝ってもらわないとならないわ」

 

「…だな」

 

 

「それじゃ、星の近くへワープするぜ」

 

「その星はどんなところか知ってるの?」

 

「ああ知ってるとも。そこは『美しさの星』…リッチな人間が好んで移住してくるんだ。欲望の星ともいうけどな」

 

ハーツの宇宙船はそのままワープし、遠く離れたその星まで飛んでいく。気が付いた時には、宇宙船はその星の衛星軌道上に乗っていた。

目の前に浮かんでいるのは、色とりどりに発光する、確かに美しく見える星だった。

しかし、その後星に降り立ってみると、そこには目の毒になりそうなギラギラ光るネオンに溢れる街がどこまでも広がっていた。

 

「目、いてぇ~」

 

「反応はこっちだね」

 

シロナが見るレーダーを頼りに、三人は夜の街をひたすら歩く。その間にいくつものセールスやキャッチに声をかけられたが、うまいこと躱しながら目的地へたどり着いた。

 

「ここって…」

 

「宝石店…?」

 

「だな」

 

そこは高級感漂う大きな宝石店だった。三人はあまりのゴージャスな雰囲気に圧倒され、店の前で立ち尽くしていると中からドレスを着た女性の客が現れ、こちらを奇異の目で見て去っていった。そこでやっと我に返り、意を決して店の中へと足を踏み込むのだった。

 

「ようそこいらっしゃいまし…た…」

 

店員がわざわざこちらまでやって来て深く頭を下げる。だが顔を上げてこちらを見た瞬間、表情に嫌な色が浮かんだ。

ここは一般人が人生を何周しても買えないほどの貴重な、宇宙中から珍しく高価な宝石を集めたジュエリーショップ。お世辞にも旅人然としたハーツや小娘のシロナやサザンカは、歓迎されるような層とはいえないのである。

 

「お、おほほ…ごゆっくりどうぞ」

 

(視線を感じるよ~)

 

(早く探しちまおうぜ)

 

三人が店内をじっくりと練り歩きながら探索していた時、サザンカが発見した。

 

「あっ!!オイあったぞ!!」

 

「え!?」

 

慌てて駆け寄ったシロナも、ショーケースの中に確かに究極五星球が並べられているのを見た。

 

「こんなところに…」

 

「えーっと、これいくらって書いてあんだろうな?」

 

そこへハーツもやって来て、究極五星球につけられた値段を見るも、彼は少し目を見開いた後首を横に振る。

 

「ダメだ、とてもじゃないが買い戻せないな」

 

「そんな…」

 

三人が途方に暮れていると、後ろからツカツカと店員が歩いてくる。

 

「何かお悩みでしょうか」

 

見た目はかなり年配だが背筋はピシリと真っすぐで動作のきびきびした女性だった。彼女は恐らくこの店のオーナーに違いなく、その眼光や佇まいから只ならぬ雰囲気を感じた。

 

「ああ、実はこのオレンジ色に黒い星の入った球が、元は俺たちの物でね。無くしたと思っていたらこんなところにあったときた」

 

「ねぇ、そういうことだからこれ譲ってくれない?」

 

ハーツとシロナがそう申し出てみるも、オーナーは表情一つ変えずに淡々と返す。

 

「できません。経緯がどうあれ、今はこのお店の()商品とおなります。譲ることはできません。欲しいのならば提示された通りの()金額をお支払いいただきたく()存じます」

 

オーナーの静かな気迫に圧され、三人は渋々店を出た。

 

「どうするんだよ?」

 

「何とかしてお金を稼ぐしかないんじゃない?」

 

「…いや、手っ取り早い方法がある」

 

そう言ったハーツに、何か不穏なものを感じるシロナとサザンカ。

 

「まさかと思うが…」

 

「ああ。閉店後、盗みに入るぞ」

 

 

 

「…マジでやるのか?」

 

「やると言ったらやる。どうせこの星には二度と来ないんだろ、じゃあ構わないじゃないか」

 

ハーツはそう言いながら、締められた店の出入り口を映している防犯カメラとセンサーを死角から念力で破壊した。何の躊躇もなく犯罪行為に及んだハーツにドン引く暇もなく、三人は同様にカメラとセンサーを破壊しながら店の中を素早く進む。

 

「あった」

 

そして、例のショーケースの前に立ち、究極五星球を見据える。

 

「見てろよ」

 

そう言いながら目を発光させて手をかざすと、ドラゴンボールがひとりでに宙に浮かび、次の瞬間に消えたかと思うとハーツの手に収まっていた。原理は不明だが、ショーケースにドラゴンボールと同じサイズの穴がクッキリ空いていることから物体のワープや瞬間移動ではなさそうだが…

 

「早いトコずらかろう」

 

三人は来た道を戻り、何事もなかったかのように宝石店を後にした。

 

「俺は重力を自在に操作できる能力を持つ。応用すれば物体を弾き飛ばしたり引き寄せたりできる。宇宙船のワープ機能やさっきのもそういう事だ」

 

静かな路地裏を素早く駆けながらハーツがそう言った。その通りだとすれば、ドラゴンボールを奪った時にケースにくり抜いたような穴が開いていたのも、高速で引き寄せた所為なのだろう。

人気のない通りに抜け、そこから宇宙船を停めてある場所を目指そうとする一行。しかしその時、近くのビルの上から何者かが飛び降りてきた。

 

タッ

 

軽やかに着地したのは、なんと盗みに入った宝石店のオーナーの女性だった。

 

「この私、レヒレのお店の宝石を()盗みになられましたね…?あな許すまじ!()ぶっ殺して差し上げますわ!!」

 

レヒレと名乗ったオーナーは、すさまじい気迫と共に前へ飛び出し、真正面からサザンカたちに襲い掛かった。

叩きつけられる重圧に驚いて三人それぞれが反応に遅れるも、何とか後ろへ飛んで一撃を回避する。

 

「避けんじゃねぇですわ!」

 

だが、すぐさまサザンカとの距離を詰め、即座に大ぶりだが素早いパンチを繰り出した。両腕でそれを受け止めるサザンカだったが、想定していた以上の衝撃と気が叩き込まれ、真後ろへ一直線にぶっ飛ばされる。

 

「サザンカ!?」

 

「再び来るぞ!」

 

年配の女性とは思えない素早い動作と荒々しいパワーを秘めた攻撃はシロナでさえも捌けずに追い立てられ、腹へ強烈な蹴りがめり込められる。

 

「ッ…!!」

 

怯んだ隙に、レヒレはシロナを捨て置いて次はハーツにも襲い掛かる。放たれた手刀を掴んで受け止め、蹴りを片膝で受けるハーツだが、レヒレの独特な力の込め方によって力点を外され、すり抜けた打撃をもろに喰らった。

だが、ハーツもすぐにレヒレの腕をつかみ返すと捻りながら彼女を投げ飛ばし、レヒレは軽やかに飛翔して受け身を取る。

 

「アナタ…おやりになるのね」

 

ハーツはにやりと笑い、レヒレへ追撃を仕掛けようと足を踏み出すが、遠くからサザンカが接近しているのを感じると動きを止める。

 

「クソババアコラァ!!」

 

レヒレは咄嗟に前方へ気のバリアーを張り、突撃してくるサザンカから身を護る。しばらく押し合いが展開されるが、サザンカの力と勢いの前にバリアーにひびが入る。

 

(なんというお馬鹿力!)

 

そう驚嘆するも、未だに超サイヤ人にすらなっていないサザンカに対し、レヒレはまだ余力を残している。

 

「今、クソババアって言いましたわね。()死になさい」

 

バリアーを操作し、一気にサザンカを吹っ飛ばそうと力を込めるレヒレだったが…

 

「ガフッ」

 

突然その場で血を吐いてしまい、下を向いて口元を押さえる。バリアーが消滅し、絶好の好機となったが、苦しむ様子のレヒレにサザンカは切り込むことが出来ずその場で静止してしまう。対するレヒレはそれを見逃さず、サザンカを衝撃波で吹っ飛ばした。

 

「ぐあ!」

 

「おっと」

 

空中でシロナがサザンカを受け止め、道路の上に着地する。

 

「大丈夫?」

 

「ああ…だが、なんてババアだよ…」

 

「言えてる。こうなったら一気に決めるよ」

 

「お、おい…!」

 

シロナは問答無用といった様子で超サイヤ人に変身する。それを見たレヒレは口元の血を綺麗に拭い、何事もなかったかのように立ち上がる。

 

()ブチのめして差し上げましょう!!」

 

シロナとレヒレが向かい合い、今にもぶつかり合おうと構えた瞬間…───

 

ドォン!!

 

ふたりの間に何かが降ってきて、勢いよく地面へ降り立つ。

 

「アンタ、小娘が…」

 

レヒレはその姿を見て顔をしかめる。

 

「あら、ご不満かしら?クソババア。このブリアン・デ・シャトーが来たからには不届きな賊を美しく成敗してやりますわ」

 

 

 

「…誰?」

 

 

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