もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第463話 「呪愛」

「あら、ご不満かしら?クソババア。このブリアン・デ・シャトーが来たからには不届きな賊を美しく成敗してやりますわ」

 

「誰!?」

 

突然姿を現した、緑色の髪をかき上げてピンク色のワンピースを翻す美少女。超サイヤ人へ変身したシロナがその潜在パワーを感じ取り、身構える。

 

「このボケシャトーがコラァ!!」

 

「キャア!何ごと!?」

 

だがその時、いきなりレヒレが美少女をシャトーと呼ぶと飛び掛かり、その頭に何度も拳骨を叩き込む。

 

「アナタはお呼びでなくってよ!お下がってなさいやコラァ!」

 

「毎度何なのよこのクソババア!!」

 

レヒレとシャトーは言い争いながらその場で取っ組み合いを始める。

 

「なんかわからんけど今のうちに逃げるわよ!」

 

シロナがサザンカとハーツの手を引いてその場から走り去ろうとする。しかし…

 

「お逃げんじゃないわよコラァ!」

 

シャトーが飛ばした、エネルギー弾の形を変えて作った棘が目の前に何本も突き刺さり、行く手を阻まれた。

 

「そして老いぼれクソババアは…引っ込んでなさいな!」

 

シャトーはレヒレを突き飛ばし、その場で全身の力を抜いて立ち尽くす。

 

「『フォーメーション』!」

 

直後、シャトーの頭のカチューシャから大量のハートマークが放たれ、それら全てが彼女自身へと降り注ぐ。ハートを浴びたシャトーの体は眩い光に包まれ、気が爆発的に上昇してゆく。

 

「『ブリアン・ブリアン・ブリブリアン』!」

 

妙な掛け声とともに姿が変わり、変身が完了する。しかし、その外見は先ほどまでの美少女とは打って変わり、丸々と太ったパワフルな魔女っ娘戦士へと変貌を遂げた。

 

「フンフン!どうよこの美しさとパワー!悪党はこのリブリアンが成敗してやるわ」

 

リブリアンはシロナへ飛び掛かり、見た目に見合わぬ速度でラッシュを浴びせる。それを、一瞬で超サイヤ人になったサザンカが横から拳ではじき返し、その隙にシロナはハーツを後ろへ降ろす。そのままリブリアンの腹へ拳を叩き込むが、弾力のあるボディに阻まれて手応えが無かった。

 

「ふんっ!」

 

リブリアンは腹に力を込めると同時に気の波動を放ち、シロナを吹き飛ばした。

 

「強いね…」

 

「こりゃ一筋縄じゃいかなさそうだな」

 

「アナタ、またその力を使いましたね!」

 

だが、変身しパワーアップしたリブリアンに対し、レヒレは窘めるようにそう言葉をかけた。

 

「何度も言っているようにその力は都合のいいものではありませんよ!その力は呪いそのものです!愛を知らぬ者が身に宿せばたちまち自我を乗っ取られます」

 

「黙りなさいよクソババア!私が愛を知らないですって?馬鹿おっしゃい!私はこんなにも…愛に溢れた愛の戦士でしょうがぁぁぁ!!」

 

直後、リブリアンは空へ浮かび上がり、全身が明るいピンク色に光輝いたかと思うと、ハート形の無数のエネルギー弾を全方位へ向かって放射して見せた。

突然の無差別攻撃に面食らうシロナたち。ここはやけに静かではあるが街並みのど真ん中であり、かつ一発の威力が未知数である。

 

(まさか、アナタは既に…!)

 

降り注ぐハート形の光弾が周囲を破壊し、サザンカたちもそれに耐えるためその場で全身に力を込める。

しばらくすると、そこには倒壊した街並みが広がっていた。

 

「うっそ…なんなのアイツ」

 

シロナがそう声を漏らす。そこへリブリアンがドスンと降り立ち、シロナを見下ろした。

 

「驚いたかしら?でも安心して、ここは廃墟なのよ。つまり、どれだけ私の愛を振りまいてもいいの!だって、美しくないから!」

 

あまりにも整然としていたので今まで気付かなかったが、現在はここは廃墟であるらしい。恐らくこの星では頻繁に街の区画が増え、より煌びやかに彩られ、古い街はどんどん捨てられて廃墟になっていくようだ。

 

「人は美しく、愛に満ちたものを好み、残してゆく。すべて見ていたわ、盗みを働くあなた達には私の深い愛でもって…」

 

「うるせぇ」

 

次の瞬間、いつの間にか迫っていたサザンカの飛び蹴りがリブリアンの頭部に真横からヒットした。面食らったリブリアンだが、ムンッと表情に力を入れてその場で足を開き、衝撃に耐えて見せる。

超サイヤ人のサザンカのパワーすらものともしない耐久力を誇るリブリアン。そのままサザンカの腹へ手を添え、ハート形の衝撃波を放って彼女を吹っ飛ばす。体の芯と内臓を捉える一撃は強烈で、あまりのダメージにその場で気を失ってしまうサザンカ。

リブリアンは続けて襲い掛かってくるシロナを背面蹴りであしらい、その体を覆うようにハート形の不思議なバリアーを纏わせた。そして指を鳴らすと、シロナを覆うハート形のエネルギーがさく裂し、巻き込まれ全身がボロボロになったシロナもその場で倒れこんだ。

 

「これが私の深い愛の力よ」

 

敵対者が沈黙したことを確認したリブリアンは自分の強さと美しさを噛み締めるように震えながら元の姿へ戻り、さらにあたりを見渡す。

 

「さて、ババアはどこに…」

 

レヒレを探しているのだが、リブリアンが見つけたものは向こうの方で倒れたまま動かないレヒレだった。

 

「あれ…?嘘…ええ?」

 

リブリアンはその場でよろめき、尻もちを搗く。その取り乱しようから、どうやらリブリアンにとってレヒレはかなり心理的に重きを置いている存在のようだった。

次の瞬間、自分で変身を解除したはずのリブリアンはその場で再度変身した。だがどこか様子がおかしく、うつろな表情で空を見上げている。

 

ドン!!

 

その時、復帰したサザンカが凄まじいスピードで飛び出しリブリアンの横面を殴りつけた。サザンカのオーラの形状や髪型からして超サイヤ人2へ変身しているようだが、リブリアンは頬に拳がめり込もうとも強引にそれを押し返そうとしていた。サザンカはその前にすかさずもう片腕で追撃を繰り出すが、リブリアンもそれに拳をぶつけて防ぐ。

それを皮切りに、サザンカとリブリアンの熾烈な殴り合いが展開される。

 

「おばさん、大丈夫!?」

 

その間に、シロナが倒れているレヒレの上半身を抱き起した。

 

「…ゴホッ、ええ、何とか…」

 

気絶していたレヒレは咳込みながら目を覚まし、口の端の血を拭った。

 

「病気?」

 

「大したことではありませんよ…呪いを押し付けた代償とでも言いましょうか…それよりも、あのシャトーをすぐに止めなさい」

 

「なんか急に様子がおかしくなったけど…」

 

「あの力は呪いです。際限なく愛を求め続ける怪物の…」

 

 

 

───100年前。まだ若かったレヒレは孤独に戦い続ける戦士だった。

 

「おボケどもがコラァ!おぶっ飛びなさいコラァ!」

 

レヒレは日夜宇宙海賊や犯罪組織相手に、紅いドレススーツを身に纏う魔女っ娘戦士として戦っていた。顔の輪郭からはみ出すほどに裂けた大きな口と真っ黒い縁取り化粧をした大きな目が際立つ凄まじい破壊力の顔面を怒りに歪め、宇宙空間を駆けるように泳ぎ強引に宇宙船にへばりつき、何度も装甲を殴って大破させ中の悪党をぶっ飛ばす。

周りの人間はその圧倒的なパワーとある意味強烈な外見を恐れ、あるいは救世主と神聖視し、レヒレは戦士「リブリアン」として活動を続けていた。

 

ある時、立ち寄ったのは既に悪党に荒らされた惑星の街。既にその悪党はレヒレが成敗した後だったが、命を奪われた者の供養のために星を訪れていた。

そこで見つけたのが、赤ん坊のシャトーだった。大勢の大人の亡骸に囲まれ、その中央で泣いていた。恐らく、彼女だけは死なせるまいとして必死に守り抜かれたのだろう。

 

レヒレはシャトーを保護し、育てた。だが出身の惑星と種族の違いから、何十年も経ってレヒレが年老いてババアになる頃にシャトーはまだ地球人で言う10歳ごろの少女だった。

ふたりは年の取り方に違いはあれど、確かな絆で結ばれ、本物の親子のように過ごしていた。

 

「これは…」

 

ある日、レヒレは更地になった公園で呆然と立ち尽くすシャトーを見つけた。

 

「アンタどうしたんだい!?何があったの?」

 

駆け寄り、その体を両手でつかんだ瞬間、レヒレには何が起こったのかすぐに理解できてしまった。

 

(これは…まさか、呪いが…)

 

レヒレが呪いと称する力こそ、“愛の戦士「リブリアン」”だった。

「リブリアン」はある時突然宇宙の誰にでも発現する可能性がある。力を使えば誰でも自分が思い描く強力な戦士に変身できるが、その実態は他者の愛を求め、己を愛することでそれを満たそうとするため力を振るい続ける怪物である。

…と、リブリアンを宿していたレヒレは結論付けていた。レヒレはシャトーを育て始めてからリブリアンの力を一度も使ったことはない。

 

「レヒレ、離れて…!!」

 

その時、シャトーはそう言いながらレヒレを突き飛ばし、目の前で変貌を遂げた。レヒレのものとは違い、丸っこく太った姿であるが、あれは紛れもなくリブリアンの力で変身した姿だろう。

 

(そうか…力を得たばかりで制御ができていないのか!ならば無理やりにでも大人しくさせるしか…)

 

レヒレも同じくリブリアンに変身しようとするが、異変に気付く。

 

(変身できない!?いや、力が無い…!)

 

レヒレの中に宿っていたはずのリブリアンの力が無くなっていた。リブリアンへと変身してしまったシャトーは、宙へ浮かんで今にも全身から強烈な波動を放とうとしている。

しかし、レヒレは通常の姿のまま跳躍し、シャトーの背後へ一瞬で移動すると足を振り上げ、蹴り飛ばした。地面へ吹っ飛ぶシャトーはそのまま激突し、気を失うと同時に変身が解除されて元の姿へ戻った。

 

「変身できなくても素のパワーで負けるわけないわ」

 

レヒレが着地したその時、倒れているシャトーの傍に不気味な顔をした痩せた子供のような何かが立っていたのが見えたが、それは一瞬の出来事で、すぐに消えてしまった…。

 

…やはり、シャトーはリブリアンの力を得てしまったようだった。そしてレヒレのリブリアンの力は消えている。

そこでレヒレは最悪な仮説を立てた。リブリアンの力はある日突然発現するのではなく、人から人へと移り渡ってゆくものである、と。ならばその条件は、本当に直感的に思っただけだが、「人を愛する」ことではないか、と。つまるところ、リブリアンとは愛という名の呪いであることに他ならないのだ。

 

レヒレはその日から、シャトーを呪いに負けないように強くするため、稽古をつけ続けた。無理難題を課し途中で「クソババア」と罵られようと。

だが、シャトーは強くなるにつれてリブリアンの力を持つ自分を特別だと思い込み過信するようになる。やがては自らの名前にブリアンと付け足し「ブリアン・デ・シャトー」と名乗り、リブリアンとして平和を守るための活動に精を出し始める。

 

 

 

 

 

「私が…シャトーを強くし過ぎてしまった…。リブリアンはシャトーの気を利用して力を高め、無差別に愛という名の呪いを振りまく存在へと変わりつつある…」

 

レヒレはその場で拳を握り締め、暴れ続けるリブリアン…いや、シャトーを見上げる。

 

「頼みがあります、どうか…あの子を救ってください」

 

そして、隣にいるシロナにそう懇願するのだった。

 

「わかった!」

 

シロナは即答し、一瞬でサザンカとシャトーの戦いへ加わる。あまりに事が速く進み過ぎたことに驚きつつも、レヒレは目の前の戦いの行く末を見守るのだった。




当然お分かりだと思いますが、今回のリブリアンにまつわる話は全部僕の独自解釈と妄想です。
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