レヒレやブリアン・デ・シャトーらと戦い、和解した一行は究極五星球を手に入れ、次のドラゴンボールを求めて宇宙を飛び続けていた。
しかし、ハーツはレヒレを庇った所為で腹に傷を受け、命には関わらなかったもののまだ完全には治りきっておらず、不自由な状態で宇宙船を操縦していた。
「大丈夫か?」
「ああ、前にも言ったろう、俺にとっては大した怪我じゃない。この程度は何回も経験したことがある」
シロナとサザンカは、素性の知れないハーツが何者なのか判断できずに疑っていた。だが、ハーツは他人を守るため体を張り怪我を負った。
「…なぁハーツ、アタシらからアンタに聞きたいことがある」
「ハーツさんっていったい何者で、何が目的なの?」
そう聞かれたハーツは笑みを崩さないながらも、表情に微かに緊張の色が浮かぶ。
「別にアンタが何だったからと言ってこの場でぶっ飛ばそうって訳じゃねぇ。ただよ、一緒に宇宙を巡って戦ってくれるんなら、もっと素性を知っとかねぇと気持ちがよくねぇと思うんだ」
「お願い。ハーツさんが悪い人じゃないのはよくわかってる…だから、教えて欲しいな」
「…ああ、確かにそうだな。悪かった…俺、矛盾してるからさぁ」
ふたりにそう詰められたハーツは、観念したように息をついてそう言った。
「俺は宇宙を気ままに流離う旅人だってのは本当だ。この間、たまたま究極ドラゴンボールを見つけてね。その価値と効果に気付いた俺は、すぐに6個集めた」
「え?そんなにはやく6個も?」
「じゃあ今集めてるのは何なんだよ」
「でも閃いたんだ。俺には叶えたい夢がある。そのためにこれは使えると。しかし、俺の夢は大きすぎてきっと究極ドラゴンボールを使っても到底叶わないだろう。そこで君たちの事を知ったんだ」
「アタシらを?」
「俺は集めた究極ドラゴンボールを他6つの宇宙にバラまいて、それを集めさせる過程で君たちの事を深く知ろう、強くしよう、ってな。
「ほーん…って、6つの宇宙って何だよ?星とか銀河じゃなくてか?」
「そうだ。実はこの世界に、宇宙は全部で12個存在する。昔はヒトの細胞と同じ数ほどあったが今は大分減らされた。君たちが住んでいるのはその中で7番目の宇宙、『第7宇宙』だ」
「まあ観測できないだけで宇宙は無限に存在するとも言うしね~」
「そうなの?」
「えへへ~昔教えてもらったんだ」
「その通りだ。本来、宇宙は無限に存在して然るべきだ。自由に…そして雄大にあり続けて欲しい。だがこの宇宙の根幹を握る神々は、そうさせてはくれないらしい」
「神々って、界王神や破壊神ってのか?」
「彼らもそうだな。だが俺が見ているのはその先に鎮座する存在だ。俺が掲げる夢は『全ての人間の真の自由』だ。そのために、近々起こるであろう神々との戦いに備えている」
──近々、神々との戦争が始まる!そのための兵力が欲しい!
サザンカは前に天下一武道会でカンバーに言われた言葉を思い出した。
「あ!カンバーも同じようなこと言ってたなぁ!」
「おお、カンバーに会ったのか?ヤツは俺の昔の同志だ」
「ってことは、私やサザンカに、その神々と戦えってこと?」
と、シロナがズバリ尋ねる。
「いや、どちらとも言えない。俺は何万年も生きてるんだぜ、近々という規模が君たちの基準とは異なる場合もある。いいか、『メトロノーム同期現象』って知ってるかい?異なる揺れ方をするメトロノームを台の上に複数置いておくと、いずれ全てのメトロノームが同じ揺れ方をするようになる。それと同じように、この宇宙では誰かが強くなると宇宙全体の人間のレベルも上がっていく現象が起こる。俺はそれの極端なバージョンを求めているのさ」
「ふーん。まあとりあえず、いろんな宇宙に放ったドラゴンボールを集めようってことね」
「そうだ。すまないな、試すような真似をして。虫のいい話だとは思うが、俺は君たちの強さを認識したい。君たちはドラゴンボールを集めたい。仕組んだこととはいえ利害は一致しているはずだ」
「まあ寄りかかった船ってやつだ、しょうがねぇな」
「うん、ちゃんと協力もしてくれるならいいよ」
「…感謝する。それじゃさっそく振り返るが、七星球は君たちの第7宇宙で、三星球を手に入れたベルガモ達のいたのは第9宇宙、レヒレやシャトーがいたのは第2宇宙で五星球を手に入れた。次に行きたい宇宙はここだ」
宇宙船のモニターに、究極ドラゴンボールの反応が示される。
「ここは?」
「第4宇宙だ。『陰謀の宇宙』とも呼ばれるな」
「ていうか、そんなに宇宙と宇宙を頻繁に出入りしていいのか?」
「さあ?どうだろうな。とにかく、上手い事見つからないようにやってるつもりだ」
そして、一行は第4宇宙へとワープする。目の前には赤い雲が点在する惑星が浮かんでおり、次のドラゴンボールの反応はここから発せられていた。
「あの星の何処かにある。俺は最後まで付き合うぜ。だから俺には、君らの持つ人間の可能性を見せてくれ」
「よーし、じゃあ次の究極ドラゴンボールを探そー!」
「「おー!」」
やがて一行は星へ降り立ち、人気のない場所でドラゴンレーダーを起動した。すると、ドラゴンボールはかなり遠くで凄まじい速度で移動している様子だった。
「なんか動いてるね」
「ああ、それもかなりの速度だ」
「鳥かなんかが持ってるのか?」
「いやこれは…」
次の瞬間、凄まじい爆音と激しい地震が辺りを襲った。遠くから巨大な衝撃波と突風が吹き荒れ、木の葉やゴミが舞ってくる。
「な、なんだぁ!?」
「…何か良くない感じ。行ってみよう」
シロナが衝撃波の元の方向へ飛び立つと、サザンカとハーツも後に続く。鳥の大群が何かから逃れるように飛び交い、三人はその間を縫うように遠くへと向かう。
「これは…!」
そして、そこにはなんと超巨大で深いクレーターが浮かび上がっていたのだ。それは明らかに数十キロの規模で、周囲の森は燃え盛り、舞い上がる粉塵や岩石が竜巻となり、まさにこの世の終わりのような様相を呈していた。
「隕石か何かかな?」
「いいや、にしては炎の広がりが少ない。もっと小さな何かが一瞬だけ叩きつけられたんだ。そしてここは…さっき移動していた究極ドラゴンボールが通った場所だろう?」
「あ、ほんとだ!反応はここからあっちへ向かって動いてるね」
「追いかけるぞ!」
レーダーを頼りに反応を追いかけていると、やはり何か大きな気に近付いているのを感じ取った。
「なんてデカい気だ…!」
「見えた」
追いついた先では、巨体を誇る荒々しい鬼の姿の戦士が豪華な牛車を引きつつ手に持った超巨大な金棒を振り上げ、目の前にいる少年へ向けて叩き下ろそうとしている姿だった。
「今度こそ死ね!!ガノス!!」
「くっ…!」
迫りくる棘に覆われた鉄塊を前に、ガノスと名前を呼ばれた鳥のような足を持つ少年は万事休すだった。
だが、咄嗟に鬼とガノスの間にサザンカが割込み、パンチをぶつけて防ごうとする。気と気による摩擦でバチバチと電流が迸り、衝撃波が広がる。しかしあまりの威力を前にサザンカは盛大に吹っ飛ばされてしまうが、生じた一瞬の隙を見てシロナがガノスを引き寄せて匿った。
「なんだお前たちは!?ッ!!」
突然の乱入者に驚きを隠せなかった鬼の戦士だが、突然後頭部へハーツの飛び蹴りを喰らい、前のめりによろめいた。
鬼は空中で苦も無く牛車を引き回し、胴と腰に藁で作った蓑を纏い、片目部分だけをくり抜いた木の板を顔に被せており、素顔こそ見えないが並みならぬ怒りの気を滾らせる羅刹のようであった。
「アタシはサザンカ。さっきあっちの地面ぶっ叩いたのテメェだろ!」
「私はシロナ。あれをまたやられるとみんな困っちゃうのよね」
「俺はハーツ。何やらただならない様子だが…訳を窺っても?」
鬼は拳を握り、唸り声を上げた。
「…ぬぅうううう…!!」