もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第466話 「荒天」

「アタシはサザンカ。さっきあっちの地面ぶっ叩いたのテメェだろ!」

 

「私はシロナ。あれをまたやられるとみんな困っちゃうのよね」

 

「俺はハーツ。何やらただならない様子だが…訳を窺っても?」

 

サザンカたちが名乗りつつそう言うと、鬼は怒り心頭といった様子でわなわなと震えながら唸るがしばらくすると少し落ち着き、以外にも冷静な言葉を発する。

 

「ほう、名乗っていただき感謝する。私の名はニンク!とある領主に仕える戦士なり!我が姫君を狡猾で卑劣な手口で騙した卑怯者…挙句に父と母から引き裂いた憎っくきチビ!そうだ、私はそこのガノスという賊を処刑するためにここにおる!」

 

「だからって他の連中を巻き込むことはねぇだろ!」

 

「黙れ!貴様らには関係のないことだ!」

 

「お前ら邪魔だ!退け!!」

 

ニンクとサザンカが言い争っている間に、ガノス本人はシロナを突き飛ばし、隠し持っていた煙玉を作動させるとそれに紛れて瞬時に姿を消してしまった。

 

「チィ、お前たちの所為で逃げられてしもうたわ!!」

 

「あの逃げ足の速さ、何者だ…」

 

ハーツはガノスの身ごなしに感心していた。

 

「聞くがいい!あの外道チビが我が姫君にした非道を!!さすればお前たちも私の怒りが理解できようぞ!我が姫君よ、この者らに顛末をお話しすることをお許しください」

 

ニンクは引いていた牛車に向かって声をかけると、その内側から声が聞こえる。

 

「許します」

 

「ありがたきお言葉!では話そう!この卑劣な男が如何にして我が姫君を陥れたのかを!!」

 

 

ガノスという男は身一つで都の領主の城へ転がり込み、あまりにもみすぼらしかったので情けで働かせてもらえることになった。言葉巧みに領主様を丸め込み、その懐へ転がり込んだのだ。

 

 

「そうしてガノスは領主の家来となった!だがヤツはその信頼を裏切ったのだ!よりにもよってヤツは領主の娘である姫君に好意を持った!あの卑怯者は我が姫君を手に入れるために何をしたと思う!?」

 

 

ガノスは姫を罠に嵌めたのだ。寝ている姫の口に麦をつけ、神前に手向ける捧げ物を食べたと言いつけたのだ。口についた麦が証拠となって姫君は城を追い出された。全ては、姫君とふたりきりになりたいガノスが仕組んだ通りに…

 

 

「お可哀そうなのは姫君だ!何が何だかわからぬまま追い出され、全てを失ったのだからな!私は城の衛兵のひとりに過ぎなかったが、どうしても納得がいかなかった!だからこれが私の元へ降ってきてよかったよ。この球を見ているとどんな願いも叶えられる気がしてくるからなァ!!」

 

そう言いながらニンクが取り出して見せたのは、まさしく究極一星球だった。

 

「あー!!ドラゴンボール!!」

 

「これで私の怒り、恨みが理解できたであろう!もうこれ以上私にかかわるでないぞ!さらばだ!!」

 

次の瞬間、ニンクは牛車を引いているとは思えないとんでもないスピードでその場から消え失せていった。

 

「またどっか行った!」

 

「追うぜ!」

 

 

 

 

 

「ははは、ここにいればヤツも見つけられないだろうぜ」

 

ガノスは岩山の隙間に身を隠していた。気を完全に消し、気配を断っている。

だがそう高を括っていたものの、次の瞬間にはそれが崩れ去ることとなる。

 

「ガノス!このあたりにいるのはわかっている!出てこい!!さもなくば…」

 

すぐさまやってきたニンクは鉄塊の如き金棒を振り上げる。

 

「一帯を吹き飛ばしてやる!この…我が金棒でな!!」

 

ニンクは地面へ急降下すると同時に金棒を叩きつけた。

 

ドグン!!

 

すさまじい衝撃波が広がり、一気に地面が捲れあがってゆく。巻き上げられた岩石と粉塵が竜巻になって舞い上がり、爆風が吹き荒ぶ。それは空模様さえも曇天へと一変させた。

数十秒後、衝撃が弱まった時には何十キロもの大きさのクレーターが出来上がっていた。

 

 

 

「あっちだな!また地面叩いた音がしたぜ」

 

ニンクを追っていたサザンカたちは、今の一撃の音が遠くから響き、地平線の先で爆発が起こったのを見た。

 

「…これ以上ヤツに金棒を振らせたらまずいな」

 

「どういうこと?」

 

まずいと言ったハーツにシロナが聞き返す。

 

「感じないか?少し寒くなってきているだろう」

 

「あ…確かに」

 

「空を見ろ。あんなに雲が分厚くなっている。だがあの雲は巻き上げられた石や塵が星の自転による遠心力で滞空したものだ。このまま太陽光が遮られ続ければ、この星全体がもっと寒冷化し、環境が激変する」

 

「激変するとどうなる?」

 

「氷河期になり星の生物が大量に絶滅する。あのニンクというヤツがこれ以上金棒で星を叩き続ければもっとそれが加速するぞ」

 

「…それヤバいじゃんか」

 

「そうだ。だから急いでヤツらの争いを止めなくては」

 

 

 

 

 

「くそ…」

 

ガノスは金棒が地面を叩く直前にクレーターの範囲外へ逃げており、空中から荒野と化した景色を見ながら呟いた。

 

「現れたかガノス!今度こそ逃がすまいぞ!」

 

再び金棒を振り上げ牛車を引き、ニンクはガノス目がけて襲い掛かる。逃げるガノスを追いかけ、またしても金棒で大地を叩きつける。それがガノスに当たっていないことに気付くと、また再びガノスを気配を追い、何発も地面を抉る。

 

「待てい!!待たんかァガノス!!」

 

「誰が待ってやるかよ!あぁそうさ、俺は領主の旦那を裏切りアニス姫を騙して連れ出した!結局はお前ら衛兵に取り返されてしまったが、俺は必ず逃げ切ってやるぞ!」

 

「ほざけ卑怯者!!決して逃がしてなるものか、貴様はここでぶっ潰れるのだ!!」

 

──卑怯者…か

 

ガノスはニンクに何度も叫ばれた言葉を反芻する。

するとふつふつと怒りがこみ上げ、それはガノスの言葉となって溢れる。

 

「黙れよ…!お前らにはわからないだろうな!この俺が、好きで卑怯なやり方で生きてきたと思うか!?俺のようなヤツが普通のやり方をしていたら、何も手に入れられないだろうが!」

 

「その通り!!キサマはただ泣き寝入りしとればよかったのだァ~~!!」

 

荒れ狂う天候の中、ついに振り上げた金棒によるニンクの一撃がガノスの目の前へ迫る。今度こそ絶体絶命のピンチに陥るが…

 

ガイィン!!

 

「ぬう!?また貴様らか!!!」

 

追い付いてきたサザンカとハーツがニンクの一撃を逸らし、直撃を免れた。

 

「だからぶっ叩くのやめろっつってんだろ!氷河期ってのになったらヤベェんだよ!」

 

「知った事か!私はガノスさえこの手で叩き殺せればいいのだ!」

 

サザンカとガノスがそう言葉を交わしている間に、これはしめたというようにこの場からこっそり離れようとするガノス。しかし…

 

「おっと、君にもここにいてもらうぜ」

 

「なっ…!」

 

ハーツがガノスの方に腕を回して引き留めた。

 

「そこの人間もろとも消し飛べェ!!」

 

今度こそ、とハーツごとガノスを叩き殺そうと襲い掛かるニンク。だがサザンカが一瞬で至近距離に近付き、腕を掴んで動きを止める。

 

「ぐぬ!離せ!!」

 

「今だぜ姉貴!」

 

その時、気配を殺していたシロナが子供の小さな体を生かし、いつの間にかニンクの背後にいた。彼が引いている牛車に飛び乗り、金色の装飾がされた扉の取っ手に手を置く。

 

「いくら腹立ててるからってこのままじゃこの星がダメになっちゃう!だから私が姫さんに文句言ってやるわ!」

 

「なに?や、やめろ!」

 

「よそ見してる暇ァねぇぜ!」

 

サザンカの放ったパンチがニンクの顔面に命中し、その顔を覆っていた木の板が外れて飛んでいく。

 

バタン!

 

「姫さんど~も~!」

 

だが、サザンカとシロナは同時に見た。

 

「「え?」」

 

ニンクの引く牛車に乗っていたのはガノスが騙したとされるアニス姫…ではなく、牙を剥き出し白い髪を束ね薄緑色の肌をした、大柄で筋肉質な男が胡坐をかいた状態で手足を固定されている光景だった。

 

「アンタ誰ぇ?」

 

牛車が止まったので驚きと合わせて勢いよく前に転げ、目の前の男の額に激突するシロナ。すると、男は仏頂面を崩さぬまま口を開いた。

 

「私は…ニンク。アニス様の城に使える衛兵である」

 

そして、サザンカの攻撃で面を覆っていた板が外れ、素顔を露わにした牛車を引いていた謎の者。今までニンクと名乗っていたが、その顔は怒りによって般若のように歪んではいるが、美しい女性のものだった。

 

「お前、誰だ?」

 

「アナタがニンク!?じゃこれ引っ張ってるのは誰なのよ!!」

 

シロナは中にいたニンクと名乗った男に聞く。

 

「このお方こそ、私がお仕えするアニス姫その人である」

 

なんと、今まで牛車を引き回しガノスを殺そうと追いかけ、巨大な金棒で暴れまわっていたこの者こそがアニス姫であり、牛車の中に捕まっている男が本物のニンクであった。

外ならぬガノス本人も衝撃の真実に驚愕する中、この星は一刻と滅びへ向かっているのだった…。

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