もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第467話 「怒貌」

今までガノスを狙い追い回していたのはニンクではなくアニス姫本人だった。

アニスは飛んで行った木の板を素早く掴み、すぐさまそれで再び顔を覆う。

 

「なんと醜き…私の顔か…」

 

アニスは怒りに歪んだ己の顔を隠すため木の面を被り、巨大に膨れ上がった体格を恥じて衛兵のニンクを捕らえて牛車に閉じ込め、互いのふりをするように命じたのだ。

 

「いくらガノスに騙されて恨んでるからってやりすぎじゃない!?このままじゃこの星の人間が絶滅しちゃうのよ!」

 

「その通りです姫君!!はやく正気に戻ってくだされ!」

 

牛車の中からシロナとニンクが必死にアニスを説得しようとする。が、彼女は聞いているのかいないのか、目の前のサザンカと取っ組み合い始めてしまった。

 

「どんな運の悪い人だって完璧に不運の犠牲者じゃないのよ!きっと抵抗はできるはず!アナタは必死に誤解を解こうとしたの?お父さんたちにわかってもらおうとしたの!?」

 

そのシロナの言葉はアニスだけにではなく、ガノスにも届き、彼も何か思うところがあるような表情を浮かべた。

だがその時、シロナの顔に水の雫がぽたりと落ちた。アニスはサザンカと両腕を掴み合いながら、涙を流していたのだ。

 

「私は…騙されたままでも、よかった…ガノスさんと一緒に…いられるなら…」

 

「な、なにを言いますか!ガノスに騙され、それを恨んだ姫君がこの度の暴走を…」

 

ニンクの問いに、アニスは小さく首を振る。

 

「違う…私は、違う…」

 

「どういうことだ…?」

 

サザンカも困惑し、アニスの力が緩んだのでそっと離れる。

 

「…まずいニュースだ」

 

ハーツが口を開いた。

 

「どうやらおかしくなったのは姫さんじゃないぞ。真の敵は…その金棒だ!」

 

「まさか、そんな事が」

 

(たった)きてぇなぁ!!!」

 

その瞬間、アニスの持っていた金棒にギョロリと大きな一つ目が出現し、さらにその下に針のような牙の並んだ口が開く。

 

「ほーら、オレ様の力をもっと貸してやるぜェ。だが今じゃ姫サンがオレの道具なんだよなア!よく気付いたなァそこのお前!能力は読心術か何かかァ?」

 

「うお、なんだコイツ!」

 

「姫サン今だぜ!コイツらがオレに驚いてる隙に一気に叩き潰すんだよ!」

 

「イヤ…イヤ…私には…できない…」

 

「何ができないもんか、やれって!嬉しいなァ、またオレの無敵の強さを証明できらァ!」

 

「できない…だって、私はガノスさんが大好きだったから…」

 

「アニス姫…」

 

ガノスはわなわなと震えながら小さく呟いた。

 

「チッ、仕方ねーな…。姫サン、いいこと教えてやるよ。アイツはあんなナリしてやがるが隣の星から送られてきたスパイなんだよ!昔っからここと小競り合いしてるあの星さァ!目的は隠密偵察と姫サンの拉致ってところか?そりゃ敵の星の有力者の娘捕まえればいろいろ利くようになるもんなァ!」

 

金棒の話が図星だったのか、ガノスは何も言わない。

 

「つまりよォ、アンタはガノスを好いてたのかもしれねぇが、アイツはただ雇い主のためにアンタの身柄が欲しかっただけなんだよ!残念だったなァ、アニス姫サン?ケケケケケッ」

 

その言葉を聞いたアニスは再び鬼の如き怒気を漲らせ、金棒を振り上げてガノスを狙う。

 

「やんな」

 

完全に金棒に支配され、言われるがまますべて破壊するかの如く力を振るうアニス。だが、またしてもそこへサザンカが割って入り、金棒の一撃を拳で止める。だが今回は既に超サイヤ人3へ変身しており、先ほどのように吹っ飛ばされることもなく、完全にパワーで上回り逆に金棒とアニスをぶっ飛ばした。その時に彼女が引いていた牛車も破壊され、中にいたニンクも解放され、シロナが彼を背中でキャッチする。

 

「大丈夫?」

 

「うむ、感謝する」

 

「あはははは(たった)きてぇなァ!なぁお前ら知ってっか?ここと戦争している隣の星はよォ、スパイとしてガノスを送り込んだ。その目的はさっきも言ったとおりだが、ガノスはいつまで経ってもアニスを連れて帰ってこねぇ。アニスに惚れ込んで惜しくなったガノスに痺れを切らした雇い主は、『伝説の闘棍』と呼ばれるオレ様の封印を解き、裏切り者の粛清へ向かわせたのさ!」

 

「そういうことだったのか…」

 

ガノスがそう言った。

 

「そうさ、全てはテメェが招いたことなんだよォ!!最期に何か言うことはあるかよ?」

 

「…確かにその通りだ、雇い主から言い遣ったスパイもろくにこなさず、敵だったはずのアニス姫を裏切ったはいいものの奴らにいいようにさせるのが惜しくなっちまった…。オレはどっちつかずの半端な卑怯者だ、もう帰る場所も行く所も無い…好きにしろ」

 

諦めたガノスに対し、金棒は心底楽しそうな愉悦の笑みを浮かべると、今度は横目でサザンカとハーツを見る。

 

「やい、テメェらさっきから何度もオレ様の一撃を受け止めたからっていい気になんなよなァ!だいたいオレァ今までマジに力を出してなかったもんな!あはは…」

 

「うるさいなぁ」

 

がその時、ハーツが金棒の話を遮ってため息交じりに言った。

 

「あんだァ?なんか言ったかァ、ゴミが」

 

「うるさいって言ったんだ。いつまでもゴチャゴチャ述べくりやがって」

 

ハーツは微塵も臆することなく金棒に悪態を吐く。

 

「どっちみち君にできるのは叩くことだけじゃあないか。やるなら黙ってちゃっちゃとやればいいものを…それをぐだぐだ…なーにが、『たったきてぇなぁあ』だ、バアカ!」

 

「殺ォス!!!」

 

金棒は怒号を上げ、ハーツへの殺意に満ちながら最大の一撃を繰り出そうとアニスを操り、襲い掛かってくる。

 

「シロナ、サザンカ。ここは俺にやらせてくれるかい?」

 

「ああ、分かってる」

 

「へへ、ハーツさん任せたよ」

 

シロナとサザンカは完全にハーツを信じており、彼に任せて距離を取っていく。が、ハーツはガノスだけは離さなかった。

 

「ガノス。君はこっちに来い、準備しろよ」

 

「は?準備ってなんだ!?」

 

「決まってるだろ、あの金棒ヤローに思い知らせる準備だ。俺の力だけじゃ足りないかもしれないからな」

 

「オレにも…敵を討たせてくれるのか?」

 

「当たり前だろ。それで俺はさぁ、決めてるんだ。どっちが正しいかわからない時は、負け犬の方につくってな。お前は…負け犬か?」

 

「…殴るぞ」

 

「粉々になれよゴルァアアア!!この星ごとなァアアア!!」

 

今までは本気ではなかったというのはあながち嘘ではなく、今度は正真正銘クレーターどころではなく惑星ごと塵にできる破壊力を秘めていた。

 

「ほら、気張れよ!!」

 

「応!!」

 

ハーツが拳を振りかぶるのに合わせて、隣でガノスも脚に鋭く巨大な爪のような形状に気を練り上げ、それを使った蹴りを繰り出す。

振り下ろされる金棒に対し、ふたつの打撃がぶつかり合った。

 

ガギ…

 

一瞬、世界が凍り付いた。周囲の吹雪さえも止まったように見え、静寂が辺りを飲み込んだ。

 

「くくく…」

 

勝ち誇った金棒の笑い声が聞こえ、ギギギ…と軋んだような鈍い音が響く。

だが、その鈍い音が大きくなると金棒は絶句し、直後に全てを理解して叫ぶ。

 

「そんなッ…バァカァなァァァアア~~~!!?」

 

金棒は粉々に砕け散り、小さな塵となって吹雪の中に消えていく。その瞬間にアニスは正気を取り戻し、体格が元に戻ると同時に木の面が真っ二つに割れ、木くずとなり落下した。

 

「姫…」

 

「ガノス…さん…」

 

アニスとガノスは止んでいく吹雪の中、ひしと抱きしめ合った。その様を見守るかのように、シロナたちも何も言わずに立ち去ろうとした。

ガノスは生まれてこの方、苦難に見舞われ続けながら生きてきた。その中で培った生き抜くためのスキルを買われ、スパイや隠密偵察などの仕事を依頼されるようになった。そんな人生の中で、初めて出会った安らぎがアニス姫だったのだ。

 

「申し訳ありません…オレはどうしても貴女と一緒にいたかった…許してください」

 

「私もです…ガノスさんと一緒にいたかったから、立場を捨ててしまった…」

 

ふたりの様子を後ろ目で見ながらシロナが呟いた。

 

「よかったね」

 

「ああ」

 

しかしその瞬間、ニンクがガノスらの間に割り込んだ。

 

「さぁ姫君よ、私と一緒に帰るのです!領主様のところへと」

 

「あ!ちょっと今いいところだったじゃん!!」

 

シロナがガノスの頭の上に飛び乗って頬をつねりあげて抗議する。

 

「そうはいかない。姫君よ、あなたは領主様に胸の内を正直に話すべきです。姫君はそれができると、ニンクは思いまする」

 

「…そうですね。シロナさん、ありがとうございます」

 

「へ…私?」

 

「ええ。あの言葉がなかったら私は正気に戻ることができなかったかもしれません」

 

 

『どんな運の悪い人だって完璧に不運の犠牲者じゃないのよ!』

 

 

「もう少し、頑張ってみますね」

 

「…うん、応援してる!」

 

「それとこれを…」

 

アニスはそう言いながら、シロナに何かを差し出した。それは暴走している間に偶然見つけずっと持っていた究極一星球だった。

 

「あ、ドラゴンボール!もらっていいの?」

 

「もちろんです。持っているだけでなぜか力が湧いてくる宝玉です、ほんのお礼ですが…」

 

「ありがと!」

 

 

なんとか究極一星球を手に入れた一行は、残る究極ドラゴンボールを手に入れるため次の宇宙を目指す。そこではどんな困難と敵が待ち受けているのだろうか…。

 

 

 

「もうお前は城を追放された身であろう。もう私の前に顔を見せるでない」

 

アニスは自分の城へ帰り、父親である領主と対面し弁明しようと試みていた。領主の横には衛兵のニンクがおり、アニスの背後にはガノスがいる。

 

「父上こそ情けないお仕打ち!」

 

アニスはガノスの策略によって神前に供えるはずだった麦を知らずのうちに食べてしまったかのように謀られ、激怒した父親に城を追い出されていた。だが、再びアニスの顔を見るなり暴言を吐いた父親に、アニスは反抗する。

 

「私は飢えてもいなければ口に証拠をつけて寝るほど愚かでもありません!ですがそれでも実の娘である私を糾弾しようというのであれば、私は自ら家を出て旅に出ます!その先で情け深き方と出会うかもしれません!それまではずっと、このガノスに付き添ってもらいます!もちろん、来てくださいますね?」

 

「あ、ああ…」

 

アニスとガノスは城を後にし、ああは言ったものの目指す当てもなく彷徨っていた。

 

「しかし姫…オレも雇い主から追われる身…例の隣の星から追手が襲ってくるでしょう。姫が危険です…」

 

「何を言うのですかガノス。もしそうなっても、きっとアナタが守ってくれるのでしょう?」

 

アニスはそう言いながらガノスに微笑みかける。

 

「…当然です。こ、こうなった責任はとります…」

 

「うふふ、それでいいのです」

 

きっと、このふたりは様々な困難に見舞われるだろう。しかし、なんとか乗り越えてゆけるはずだ。とりあえず、なんでかそんな予感がするのである。

 

 




【現在公開可能な情報】

アニス
・今回立ち寄った第4宇宙の「サフラ星」の一国を納める領主の娘。なおサフラ星では地球でいうそれぞれの国の王を領主と呼ぶ。サフラ星は近くにある「クミン星」と長年小競り合いを起こしており、アニスの父親はその戦争に加担している。
・城に仕えるようになったガノスと仲良くなり、彼を好くようになった。

金棒
・クミン星に存在する「伝説の闘棍」であり、クミン星にいるガノスの雇い主が、密かにアニスと駆け落ちしようとしたガノスをサフラ星諸共粛正するために送り込んだ。性質は地球の妖怪で言うところの「付喪神」に近い。
・意思を持ち言葉を発す金棒で、軽く振るだけで隕石並みのクレーターを発生させ、本気で振るえば一撃で惑星を粉砕する破壊力を持ち、使い手をそれに耐えられるだけ強化する。

ニンク
・ドラゴンボール超の宇宙サバイバル編に登場していた第4宇宙の戦士。悟空を抱いたまま場外へ落ちようとするが振り落とされて脱落した。
・本作オリジナルの設定で、アニスの領主の城に仕える衛兵。

ガノス
・ドラゴンボール超の宇宙サバイバル編に登場していた第4宇宙の戦士。亀仙人によって脱落した。
・本作でも原作同様にスパイ活動を生業とし、アニスと駆け落ちした。
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