もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第469話 「星回」

少し昔のこと。

とある星の労働者たちは派遣先へ向かうため100人単位で一隻の宇宙船の中でコールドスリープし、宇宙を航行していた。

だがそんな折、一隻の宇宙船が「積荷」ごと宇宙海賊に奪われた。やがて積荷はとある惑星の研究施設へ売られていく。

 

「どういうことだ?」

 

超巨大要塞型宇宙艦艇を丸々研究所として利用している組織は、受け取った積荷の数が違うことに気付いた。

 

「100個注文したはずが101個あるぞ」

 

「ひとつ減らすか」

 

 

 

「と、いうわけで。お前らの中から1人選べ。ソイツだけ殺す」

 

積荷たちはどよめいた。それはそうだろう、次の仕事場へ向かうために眠りにつき、目覚めたと思ったら見知らぬ軍事研究艦艇に誘拐されていたのだ。

だが、彼らの中で最も年配の男性が迷わず言った。

 

「なら私だな。この中で最も使えないのは私だ」

 

それを聞いた中年の男も続けて言う。

 

「いや俺だな。俺はもう家族がおらん」

 

「それを言うなら俺だぜ。一番太ってて動きが鈍いのは俺だ」

 

その場の全員が口々に俺が俺がと口にする。たが、それを見ていたひとりの少年が思い切って名乗り出た。

 

「僕が行く!どうしても働きたくて無理言って乗せてもらったんだ…僕がいなければこんな事にならなかった…その責任は取ります」

 

それを聞いていた艦長はにやりと笑った。

 

「よし!では今の少年は前に出ろ」

 

すると、例の少年が姿を現す。

 

「貴様、名は?」

 

「…カトペスラ」

 

「カトペスラ!我々は貴様のような勇気ある若者に敬意を表する!よってカトペスラ少年以外の者を全員連れて行け!」

 

「なっ…!」

 

カトペスラは反論しようとするも、しかし他の労働者たちは顔を見合わせると…何も言わずにその場の組織の人間の前に整列したのだった。

 

「それはよかった。その少年以外の、希望のない者だけが死ねるのだな」

 

労働者たちはただカトペスラの命は無事なことに安堵するだけで、誰も不平不満を口にしなかった。当のカトペスラ自身も何故だと疑問を抱かずにはいられなかった。

しかし、武装した乗員が労働者たちをどこかへ連れて行こうとするも、彼らは銃を突きつけられても微動だにしなかった。

 

「どうした?早く進め!」

 

「…ひとつ言い忘れておった」

 

「なに?」

 

「私らの宇宙船が属していた船団は確かに季節労働者のような者たちの集まりだ。だが、貴様らの命令で私らの船を奪ったならず者共は運が悪かったな」

 

「俺らの船はよぉ…宇宙警察に雇われたりもするアウトローな戦闘民族だけを隔離した船だぜ」

 

次の瞬間、今まで大人しかった労働者たちはそれが嘘だったかのように暴れ出し、一斉にその場の武装した兵士たちに襲い掛かったのだ。

膝蹴りで兵士のヘルメットを砕き、ひたすらに殴ったり投げ飛ばしたりと暴力が横行する。自身の事を最も使えないと言っていた老人でさえパワフルに兵士を蹴り上げ、太ってて動きが鈍いと自身を評していた男もとてもそうは思えない身ごなしを披露していた。

だが、兵士たちも銃器で武装しており、労働者たちも次々と銃弾によって倒れていく。労働者たちも犠牲を出しつつも奮闘し兵士を倒し続けていたが、やがて増援が訪れると目に見えて一網打尽にされてしまう。

 

「やめろ…やめてくれ…!!」

 

「はい、やめた」

 

頭を押さえながら目の前の光景を見つめるカトペスラがそう言いうと、艦長が手を挙げた。その時には、既に生きている労働者はひとりもいなかった。カトペスラ以外の100人が全員死んだのだ。

 

「許せよ。これもこの宇宙の発展のためだ。これでいいんだろう?ドクターども」

 

艦長は天井の窓からこの部屋を見下ろしていた船の研究員と博士たちへ確認を取った。

 

「もう少し各々のデータを取りたかったんだがな…無駄になってしまったが仕方ない」

 

無駄。無駄。

その言葉がカトペスラの脳内で激しく木霊する。

 

「…無駄じゃない!!」

 

「ん?」

 

「彼らの命は無駄なんかじゃない!僕がそれを証明する!」

 

「…おい博士!カトペスラ少年はここで殺してもよろしいかな!?」

 

艦長がそう叫ぶ。

 

「いや、待て。彼はここへ連れてこい」

 

「…了解だ。おい少年、命拾いしたな」

 

その後、カトペスラは暴れるものの拘束された後に博士たちの元へと連行された。

 

「我々はある事象について研究している」

 

博士はカトペスラに言い聞かせる。

 

「ある惑星である研究員が墓を蹴飛ばした。その数日後、彼は自殺した。また別の星では悪どい王を処刑すると、処刑に関わった人間が何十人も同時に心臓麻痺で死んだ。これを君は何が原因だと思う?」

 

当然口枷もつけられているカトペスラは答えられない。

 

「我々はこれを外宇宙の言葉を使い、タタリ…『TATARI』と呼称することにした。つまるところ、霊や呪いといった外的要因により体や精神に変調を来す現象をいうのだ。そして、この研究艦艇は科学の力でTATARIを打ち破る…すなわち『TATARI BREAKER(タタリ・ブレイカー)』の開発を目的としているのだ」

 

その時、周りの研究員たちがカトペスラを取り囲み、何か物々しいベルトのようなものを彼の腰に装着した。困惑していると、博士がベルトのバックル部分についていたボタンを押した。

 

「それはそのために我々が作ったものだ。周囲の霊的地場を特殊な電流で拘束し取り込み、エネルギーに変える。そして吸収した霊的地場…包み隠さず言えば人間の魂の分だけ装着者を強くするのだ」

 

瞬間、カトペスラの全身に激しい電流のようなエネルギーが流れる。体が焼け朽ちるかのような激しい痛みに襲われ、カトペスラは口枷越しに絶叫する。

 

「んんんんんんんん!!」

 

「ちょうど、この下の階には労働者100人分の魂が閉じ込めてあるなぁ。やられたこっちの兵士も入れれば300人は下らないか?それを一身に吸収した貴様がどうなるのか、実に興味深い。ああ、そういえば貴様はさっき彼らの命が無駄じゃないことを証明したいと言っていたな。頑張ってみろ」

 

「んんん…ぐぅああああああ!!」

 

「…ん?」

 

しかし、博士は苦しむカトペスラを尻目に何か別の異変に気付く。

 

「マジかよ…!」

 

次の瞬間、空間が消し飛んだ。カトペスラの目の前にあったもの全てが部屋ごと、押し寄せてきた青い濁流によって削り取られたのだ。

そこにはたったふたりの研究員の男女と、カトペスラだけが残された。

 

「まさか…実験体7号が暴走したの!?」

 

研究員は慌ててどこかへ逃げ出した。実験体7号というらしい青い液体はスライムのように流動し蠢く巨大な塊で、削り取った物体全てを体内ですり潰し消滅させていた。もちろん博士たちや艦長、その他の兵士や研究員もまとめてだ。だがカトペスラには気付かず、そのまま川が流れるように遠く彼方へ消えていった。

そしていつの間にかカトペスラを襲っていたベルトの電流は弱まり、その体を白いスパークが弾けるように覆っていた。無理やりつけられたベルトのバックルは、300人分の命とパワーを彼に与えていた。

 

 

 

一方、深い青色に覆われた水の星があった。その星は青色の液体で覆い尽くされていた。その液体はアメーバのような生物で、元々は複数の個体だったものが今では全て繋がり、混ざり合っている。

そしてその星はじきに寿命を迎えようとしていた。核が膨張し、地表へ噴き出そうとするマントルによって青い液体が少しずつ減少していた。ひとつとなった生命は長い時を経て感情や自我という個性を失い、ただ滅びを待つかに思えたが、最後の力となけなしの生存本能を凝縮した雫を宇宙空間へ放った。

やがて星は消えたが、そこから零れた雫は宇宙を放浪しながら大きくなり、漠然と自分がどういった存在であるかという自我を持とうとしていた。

 

だが、ある時宇宙研究艦艇に捕縛され、長らく実験体7号として研究対象とされることになる。

それから幾ばくかの時を過ごし、もっと自我がハッキリと芽生えようかという時だった。何かが別の場所で起こったらしい。自分の担当だった兵士や研究員がいなくなり、監視が疎かになった。彼自身はその時知る由は無かったが、貨物として運ばれた労働者たちの反逆によって多数の兵士がそちらへ駆り出されたからに他ならなかった。

彼は体内で消化吸収した研究成果や博士をはじめとした人間たちの情報によって完全な自我を作ると同時に圧倒的な自己を確立し、マジ=カーヨとして生を受けたのだった。

 

 

 

──30年後──

 

「なるほど、マッドサイエンティストことDr.パパロニ、Dr.チョリソーの逮捕か」

 

「うむ。君ほど優秀なポリスマンにしか頼めない仕事だ。危険が伴うだろうが…できるか?」

 

宇宙警察の制服に身を包み、サングラスをかけた金髪青肌の筋肉質な男、カトペスラは長官から任務の依頼を受けていた。

 

「お任せください!このカトペスラ、たとえ火の中水の中、どんな過酷なミッションでもこなして見せましょう!かのマッドサイエンティストの暴走、なにがなんでも食い止めてみせますとも!とりゃ!!」

 

カトペスラは自作のヒーロースーツとヘルメットを一瞬で身に纏うと、ポーズを決める。そして任務遂行のため、窓から飛び降りてしまうのだった。

そして外の駐車場に停めていた宇宙船に華麗に乗り込み、惑星グランタ目指して飛び立っていく。

 

 

 

だがその道中で指名手配中の凶悪犯と遭遇し、人々の平和を守るポリスマンとして宇宙空間での戦闘に突入するカトペスラ。

 

「やるじゃねぇか!カトペスラさんよォ!」

 

「貴様こそ、私相手にここまで粘るヤツは珍しいぞマジ=カーヨ!だがいい加減にそろそろお縄になるがいい!!」

 

液状型生命体マジ=カーヨは水やスライムのような変幻自在の体を持つ凶悪な人物である。元は同じ液状生命の棲む星があったが滅亡してしまい、彼は宇宙を彷徨いながら時には誰かに掴まりその珍しさから研究に利用されたりもしたが現在では気ままに宇宙を流離う無法者として名を馳せている。

彼らはもみくちゃになりながら戦いを繰り広げ、だんだんと近くにあった惑星グランタへ引き寄せられていく。そこは偶然にも任務のターゲットであるDr.パパロニとDr.チョリソーがいる星であるのだが…

 

 

 

 

──────

 

 

「ポリスマ───ン!!」

 

「マジカヨォ───!!」

 

こうしてカトペスラとマジ=カーヨは、サザンカたちと改造戦士との戦いの現場へ乱入するに至ったのである。

ふざけた両者ではあるがその戦闘力は馬鹿にできず、カトペスラとマジ=カーヨのパンチがぶつかり合おうとする。ハーツは慌てて自身の持つ重力を操る能力でコイツカイ、パンチア、ボラレータの3体を引き寄せて纏め、それをふたりの間に投げつけた。

 

「ギョエ!」

 

両側から受けたパンチのエネルギーが炸裂し、巨大な衝撃波が発生する。

 

「あ…」

 

「「アイツらは…!」」

 

その様子を見ながら、パパロニとチョリソーは驚きと恐怖に満ちた表情を浮かべていた。

彼らは30年前の出来事を鮮明に脳裏に蘇らせていた。あの日、パパロニとチョリソーは共に若き研究員だった。研究艦艇にてとある博士の、その研究の残酷な実態を目の当たりにしながらも部下として働いていた。

だが神判が下った。艦艇は捕えて実験に使っていた液状生命体の反撃を受け大破し、荒くれ者に依頼して盗んできた宇宙船とその搭乗員100名とひとりの少年によって何もかもを失ったのだ。

その青い液状生命体と、300人力の能力を得た少年が再びこの場に現れている。まさに、ふたりはそれが過去の罪を精算すべく遣わされた天罰であるとさえ思った。

 

「『TATARI』…!!」

 

「まだまだァ!!貴様を逮捕するまでは止まらんぞぉ!『バトルモード』だ!!」

 

「はっはァ!やってみやがれ!このオレ様を──捕まえられるならなぁ!」

 

カトペスラの纏っていたスーツが青色から黄色へ変化し、胸に大きく描かれていた「P」の文字が「B」に変わる。同時にマジ=カーヨの体躯も少年のようなものから筋骨隆々のマッチョと呼ぶにふさわしい大きさへと変わり、両者ともに気が莫大に増えた。

 

「ちょっと待ったァ!!」

 

だがそれに待ったをかけたのがサザンカとシロナだった。サザンカはカトペスラへ飛び蹴りを食らわせ、シロナは気弾でマジ=カーヨを狙い撃つ。ハーツはというと、コイツカイ・パンチア・ボラレータが変形合体した「コイチアレータ」と既に向かい合っていた。

 

今、三者三様の試合が始まろうとしていた。

 




ジャンプラで連載中の「ケントゥリア」、面白いですよ
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