もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第471話 「幻灯」

「まさか…コイチアレータが敗北するとは…」

 

パパロニは分離させられ動かなくなった改造戦士たちを見て呟いた。サザンカたちの戦闘のデータを記録したかったのだが、まさか自身の傑作ともいえる戦士たちが破られるとは思ってもみなかった。

 

「想像以上だ…いいッ、だがそれがイイッ!!早速このデータを次の改造戦士に活かし…」

 

ひとりで盛り上がっていた時、チョリソーが戻ってきた。

 

「おお、チョリソー…って、この怪我はどうしたのだ!」

 

チョリソーは部屋を出て言った時とは打って変わり、背中の白衣を血に染めて今にも倒れそうな怪我を負っていた。

 

「まずいことになったわ…私たちの想定通り、“究極六星龍(きゅうきょくりゅうしんろん)”は顕現した…でも想定外の増殖速度で制御を振り切り暴走しているわ…いずれここにも…」

 

その時、部屋が赤い光に満たされると同時にサイレンが鳴り響く。

 

「何事だ!?」

 

「来たわ…!」

 

 

 

「なんだ?」

 

コイチアレータと乱入者を下したサザンカたちも、ただならない事態を告げるサイレンを聞いていた。そしてどこかから何か大きなものが進行する振動と、壁や扉を強引に破壊する音が聞こえてくる。

そして次の瞬間、天井が崩れ、その上から究極六星龍が降りてきた。

 

「何なのコイツ!」

 

オレンジ色の巨大な龍の頭部が虫のような細長い足でシャカシャカと動き回り、3人へ向けて突進する。

 

「なんだよ、次はコイツと戦えばいいのか?」

 

高速で這い寄ってくる六星龍をじっくり見据えながらサザンカは拳を振り上げ、そのまま正面へパンチを放った。それは六星龍の鼻先へめり込み、そのまま後方へぶっ飛んでいく。その際に足を床に突き刺して止まろうとしたのだが、六星龍の足は折れて砕け散り、本体が床の上を転がった。

 

「油断するなよ、何か良くない予感がする」

 

ハーツがサザンカに忠告する。

 

「分かってる!だからこそ一気に叩くのよ!」

 

動けない六星龍へ向かって駆け出し、とどめの一撃を構えるサザンカ。そして振り下ろした拳が六星龍の脳天へ叩きこまれ、六星龍は拳と床に挟まれてポンと押し出されるとまたしてもゴロゴロと転がっていく。

 

「思ったより硬ぇな」

 

だが、六星龍が転がっていった先には、先ほどハーツの操る重力によって潰され、今は再生中で形を取りつつあったマジ=カーヨがいた。

 

「うわあっ、なんだァ!?」

 

そしてなんと、六星龍はそのまま大きな口を開き事態が呑み込めないマジ=カーヨをバクンと口の中に放り込んだのだった。

 

「喰った!?」

 

明らかにエネルギーを増した六星龍は再度足を生やし、サザンカの方へ向かっていく。それなら、と再び殴って迎撃しようと拳を振りぬくサザンカだったが、六星龍はまるで体が液体になったかのようにその拳をぬるりと避け、サザンカの背後へ滑り込んだ。

そこにいたのは、コイチアレータに激突した衝撃で気絶していたカトペスラ。六星龍は彼を口に放り込み、さらにコイツカイ、パンチア、ボラレータの三体の改造戦士でさえも続けて喰らった。

 

「まさか…究極六星龍は生命を食らって不完全なエネルギーを補おうとしているのか!」

 

パパロニはその様子を見ながら分析した。六星龍は生物を口から取り込みそのエネルギーをプラスし、さらに強大な気とパワー、スピードを手に入れ、サザンカに襲い掛かる。

 

「サザンカ!危ない!」

 

蹴りのフェイントとパンチ、その両方で六星龍を止めようとするも、能わず。六星龍は大口を開くと上顎と下顎でふたつに分離し、サザンカの攻撃を全て避ける。そしてそのままサザンカを挟む形で合体し、その口内に納めてしまう。恐らくはコイツカイ達の合体と分離能力を使ったのだろう。

 

「あーッ!サザンカが食われた!」

 

動きを止め、サザンカを取り込んでゆく六星龍。次の瞬間、その目を見開き、ボコボコと体表が波打つように膨らみ始める。同時に凄まじいオレンジ色の気を発し、シロナとハーツは思わず腕で顔を塞ぐ。

六星龍は計6人の生命を吸収し、力を増すとともにその姿を変える。

 

「ざざ…ざり…ざ」

 

聞き取れない言語を発しながら、龍の頭部の顎が開き、その口内から人型の物体が現れる。それは黄色い体表をしたリザードマンのような姿で、その両腕がそれぞれ龍の下顎と上顎になっており、龍の口から人の胸から下が生えているようだった。

 

「じゃきー!」

 

次の瞬間、目にもとまらぬ速度で迫った六星龍はハーツに飛び蹴りをお見舞いし、真正面から喰らったハーツははるか後方へ吹っ飛ばされ崩れた壁に埋もれた。

 

「…ぶっ潰す!!」

 

シロナは怒りに合わせて顔に纏った青い結晶をビキビキと硬化させ、六星龍に殴りかかる。胸に拳をめり込ませ、続けて前蹴りを食らわせ、同時に振り上げていた片足を踏み抜いて六星龍を顔面から床に叩きつける。

しかし、六星龍は倒れたまま一度両腕を畳んで龍の頭の形に戻り、素早く飛んでシロナから距離を取る。そしてドリルのように回転しながらUターンして突進を仕掛けた。

シロナも負けじと6本の霊尾を束ねて1本にし、それを高速回転させてドリルを作って迎え撃つ。ふたつのドリルの先端が激突し、すさまじい金切り音が鳴り渡る。

 

「じ・じ・ぜ・じ・ぞ」

 

両者は反発し合い、後ろへ弾ける。が、体勢を立て直すのは六星龍の方が早かった。床を蹴って飛び出し、蹴りを繰り出す。シロナはその足を掴んで受け止め、腹へ肘打ちを当てるが、その隙に振り下ろされた龍の下顎状の左腕で殴り飛ばされる。

 

「チイッ!!」

 

四つん這いになって受け身を取るも、顔面の結晶の兜が半分割れ、素顔が露わになった。口から血を垂らし息を切らすも、六星龍はその暇を与えずに迫る。

膝蹴りでシロナの顔を蹴り上げ、浮き上がった体に腕による殴打を無数に叩き込む。

 

「きりゅりりゅりしぃぃ!」

 

されるがままに殴られ続けるシロナ。だがその時、六星龍は急に襲い掛かった超重力によってその場に拘束された。

 

「ハーツさん…」

 

「俺を忘れるなよ」

 

シロナと同様に口元は吐き出した血に染まっており、顔色にも明らかな無理が伺える。しかし、ハーツはそれでも勝機を諦めない。

両足にキューブ状の重力を纏い、それを加減することで体が動かなくとも軽やかに動き、重力で動けない六星龍の脳天へ踵落としを食らわせる。さらに重力で加速した拳を何発も叩き込み、六星龍は後ろへ下がる。

 

「ざっくっど」

 

「弾けろ」

 

パチンッ

 

ギュウウ…

 

ドウン!!

 

六星龍を襲う重力がキューブ状に視覚化し、ハーツが指を鳴らすとそのキューブが一気に縮まり、六星龍を圧縮する。そして押し縮められた質量は耐えきれずに大爆発を起こし、六星龍はそれに巻き込まれた。

 

「……ズッズッ」

 

しかし、ダメージは受けたもののまだ動ける六星龍は素早く駆けながらハーツの首を掴み、引っ張って壁に叩きつける。そして龍の頭を前へ向けて突進し、ハーツの胸へ叩きつけた。

 

バギィ!

 

胸が潰れてもおかしくない一撃であったが、ハーツは重力を軽減するキューブを間に挟んでダメージを抑えていた。

 

「ジロナぐん、今だ!!」

 

既にシロナは復帰し、六星龍の背後に迫っていた。

 

「テメェやっちまったぜ。やっちゃいけねぇ事をよぉ」

 

拳を振り上げ、その全身から紫色の魔力が立ち上り、うねるように膨らむ。紫色に染まった体は魔力を吸収して大きくなり、ビルスとの戦いで子供の体になっていたのが元の体に戻っていく。

 

「ひとつは、私の妹を喰ったこと」

 

シロナの気迫から何かやばいという危機感を感じ取った六星龍は両顎を重ね合わせ、口内に黒いエネルギーを溜める。

 

「もうひとつは…私の大事な仲間をやったってこと」

 

だが、シロナの振り下ろした拳が上顎に真上から直撃し、口を勢い良く閉じてしまう。行き場を失ったエネルギーが爆発し、龍の頭部に亀裂が走る。

さらに悪魔の如き気迫と共に襲い掛かるシロナは、紫色の髪をぞわぞわと広げ…その姿はファントムシロナに変身していた。

 

「許さないよ」

 

そしてさらに拳を叩きつける。もう二発、三発、秒間何百発と絶え間なく浴びせられる豪速の拳撃。

 

「ウラウラウラウラウラウラウラ!!」

 

「ぎゅらりゅるぅぅぅぅ!」

 

一撃一撃が確実に六星龍にダメージを与え、その存在を脅かす。怒りの込められた拳の猛連打は容赦なく全身に突き刺さり、流石の六星龍も耐え切れずに吹っ飛ばされ、床の上を転がっていった。

 




究極六星龍の外見はレジドラゴの真ん中部分が人型になっているのを想像してください。
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