もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第474話 「蛮翠」

「んん?お前…その尻尾はなんだ?」

 

カリフラにそう言われて初めて、サザンカは普段ロングスカートの中に隠しているサイヤ人の尻尾が出てしまっていることに気付く。

 

「何でもいいだろ」

 

「へっ、今時尻尾が生えてるサイヤ人なんて初めて見たぜ」

 

「あ?なんでアタシがサイヤ人だってわかった」

 

サザンカは鼻血を拭いつつそう言った。カリフラはサザンカを見定めるようにゆっくりと周囲を歩いている。

 

「違うのか?目の色は面白れぇが…なんとなく分かる」

 

カリフラは会話しながらごく自然にサザンカに殴りかかる。サザンカも自然になんの戸惑いや驚きもなくそれを防ぎ、腹へカウンターをお見舞いする。

 

「別の宇宙にもサイヤ人っているんだな」

 

「別…?何言ってんだ」

 

が、カリフラは膝でそれを止めており、さらにサザンカの腹に掌底をめり込ませた。それでサザンカは怯まなかったが、その掌に気が込められているのに気づくとすぐに腕を蹴り上げて逸らす。

真上で掌の気が爆発し、目論見が外れたカリフラは小さく舌打ちした。

 

ドッ

 

サザンカは足払いと同時にカリフラの腕を掴んで背負い投げで地面に叩き伏せ、上に乗りながら拳を振り下ろす。カリフラは頭を傾けて躱し、腹筋の力だけで腰を突き上げてサザンカを弾き飛ばす。

着地し顔を上げるサザンカだが、その瞬間にカリフラの拳が顔面へめり込み、さらに蹴りを受けて後ろへ吹っ飛ばされる。しかしその時にカリフラのチューブトップを掴んでおり、一緒に転がってきたカリフラの側頭部を掴む。

当のカリフラ自身もここぞとばかりにサザンカの髪を掴み…

 

ゴゴゴゴッ

 

両者は逃げられない状態で互いの顔面へ拳の連打を浴びせた。

 

 

 

 

その頃、カリフラのアジトでは。

 

「まあ落ち着いてくれよ」

 

「そうそう!サザンカがあんなことやったのは謝るからさ~!」

 

ハーツとシロナが、カリフラの舎弟たちに必死に非礼を詫びている所だった。だが、肝心のカリフラがまだ戻ってきていない上に、ケールと呼ばれていたポニーテールの少女以外はまだのされたままなのだった。

 

「は…はぁ!?い、いきなり来て私たちをこんな目に遭わせておいて…許せるはずないでしょう…!」

 

ケールは目の端に涙を浮かべ、震えながらもそう言った。シロナはあちゃーと言ったように額に手を当て、ハーツはどこかこの状況を楽しんでいるようだったが…

 

「…!…なんだか、あの子の気がどんどん膨れ上がってないか?」

 

「え?…確かに!」

 

涙目でこちらを睨みつけてくるケールの気が明らかに大きくなり続けている。彼女の体からも金色の光の玉のような気が漏れ出しところどころで弾け、それに連動して気が膨らんでいく。

ケールは確かにこの星で暮らすサイヤ人の中では、カリフラと同等かそれ以上かもしれない力を持っていた。だが、カリフラには大きな恩があるのと元来の臆病な性格が相まって無意識のうちに力を大幅に制限してしまっていた。

 

そして今、その枷が壊れようとしていた。

 

「許さない…貴方たちだけは…あああああ…!!」

 

きっかけは何でもよかったのだろう。彼女の内に秘められた狂暴性が鎌首をもたげる理由は。

 

「うわわわ…」

 

シロナとハーツの目の前で、ケールの全身が眩い黄緑色のオーラに包まれる。いよいよこの家自体が大きく揺れ始め、ふたりは流石に周辺への影響を考慮し何とか止めようと動き始めた瞬間、ケールの姿が消えた。

 

「どこに!?」

 

「多分…あっちだ」

 

驚くシロナと、すぐにケールの居場所を割り出して指差し、壊れた壁から外に出るハーツ。シロナもそれを追うと、少し離れた場所で項垂れながら立ち尽くすケールがいた。

 

「…う…あ」

 

恐らくは最後の理性で仲間や匿っている子供たちが傷つかないように外へ出たのだろうが…ゆっくりと空を見上げ、そして徐々に溢れる力に耐えきれないといった様子で咆哮を上げた。

 

「あああああああ!!」

 

同時に緑色の気が体内から爆発し、ケールはついに悪魔の全貌を現す。

小柄な体は骨格ごと巨大化し、はち切れんばかりの筋肉に覆われる。黒髪は黄緑色に染まると同時に逆立ち、目は白目を剥いたまま硬直する。

 

「…ブロリーさんみたい」

 

シロナが思わず呟いた通り、その姿はブロリーの伝説の超サイヤ人に酷似していた。

 

「殺す…!」

 

ケールはこちらに顔を向けると、キッと目を細め…次の瞬間、凄まじい勢いでシロナに飛び掛かった。慌ててラリアットを受け止めるが、直後に胸で気をさく裂させられ、シロナはそれに巻き込まれて煙を噴き上げながら落下していく。

 

「シロナくん!」

 

「ガアアアアッ!!」

 

爆炎を切り払って現れたケールがハーツの腕を掴み、引き寄せながら膝を叩きつける。さらに掌に込めたエネルギー弾を至近距離からぶつけた。

が、ハーツは間一髪それから逃れ、距離を置きながら態勢を整えようとする。

 

「な…!?」

 

だが、目の前で遠ざかっていたはずのケールの姿が消え、次の瞬間には背後にいた。ハーツは振り向くも顔面を手で掴まれ、そのまま勢いよく遠く離れた場所にあった岩山に叩きつけられた。

 

「それで殺すつもりか?」

 

ハーツは巨大なクレーターの中心で不敵にそう言うと、ケールの腹へ蹴りをめり込ませる。思わず怯んだ隙に、ハーツはさらにケールへ猛攻を仕掛ける。

 

「ぬううう…ハアアアアッ!!」

 

ケールは攻撃を受けながらも、体の中心に気を溜め込んでおり、一気に解き放とうと体を丸めて構えた。

 

ビシッ!

 

「!?」

 

だが、彼女を6本の鞭が縛り付け、動きと共に気の爆発を封じ込んだ。

 

「やりぃ~~!」

 

既に超サイヤ人2の魔強化状態へ変身していたシロナが、霊尾を使ってケールを縛ったのだ。結晶の兜がパキパキと音を立てて形成されていき、そのまま霊尾を引き寄せてケールを投げ飛ばした。

 

ドォン

 

眼下の地面に叩きつけられ、舞い上がった石と粉塵が吹き荒れる。様子を窺うシロナとハーツだが、煙の中で微かに緑色が瞬いたかと思えば、無数の細かな緑色の気弾が放たれた。

まるで下から降る雨のように撃ち出されるそれの間をくぐり、ふたりはケールに接近する。待ち構えていたかのように飛び出してハーツに殴りかかるケールだが、後ろからシロナの蹴りを受けて怯む。

 

「カアッ!」

 

だが、すぐに振り向くと口から特大のエネルギー砲を吐き出し、シロナを吹っ飛ばす。その隙を見たハーツが手をかざし、超重力でケールを地面へ拘束した。

 

「ガガ…ッ」

 

しかし、ケールは驚異的な脚力で何とか倒れることなく踏み止まっていた。その顔は力むあまり汗をかいて血管が浮かび、明らかに無理をしているようだが…

 

「くっ…なんてタフなんだ」

 

ハーツが本気で重力をかけているというのに、それでも堪えるケール。

 

「ウガアアアアッ!!」

 

そして次の瞬間、咆哮と共に超重力を跳ね除ける。驚くハーツを睨んだケールは、ゆっくりと掌を掲げ、周囲の大気が凝縮されるかのような勢いで強力な気弾を生成する。

 

「こりゃまずくない?」

 

援護に戻ってきたシロナは、あのケールの一撃が放たれればこの星が周辺の惑星諸共消し飛ばされてしまうと気付いた。

シロナとハーツが焦る目の前で、ケールは超威力の気弾を投げ飛ばした。

 

「くっ!いけるかどうか…!」

 

ハーツは重力のキューブを生成し、ケールの気弾を閉じ込める。そのままキューブを操作して内側にかかる重力を高めて圧力をかけ、何とか気弾を潰して相殺しようとする。

 

「ぬおおおッ!」

 

全力を集中することで気弾は極小に圧縮され、大爆発を起こす。だがキューブがその威力に耐えきれず破裂してしまい、小さく細かなキューブとなって降り注いだ。

 

「ハァ…ハァ…」

 

「ハーツさん、大丈夫?」

 

「ああ…しかしなんてパワーだ」

 

当のケールはややポカンとした顔で真上を見上げており、シロナたちは次にどう来るのか様子を見る。が、ケールは突然咳込み、口と全身のいたるところから蒸気を吹き出す。

 

「気が高まる…溢れる…!!」

 

「ちょ、まさか!!」

 

「ウオオオオオオオオオ!!」

 

シロナがまずいと思ったのも束の間、ケールは余りある気を制御できずに全身から一気に放出した。緑色の特大の気弾が無限かと見紛うほどの数発射され、地面に当たったものはその部分を爆発で抉り取り、当然離れた場所にある町へも向かっていく可能性がある。

 

「シロナくん、やるぞ」

 

ハーツは気弾の間を抜け、ケールの至近距離へたどり着く。構えた拳にかなりの重力を込めたキューブを纏い、それを渾身の力でケールの腹へ叩きこんだ。

 

「ゲホッ…!」

 

膨大だったケールの気が縮み綻んだ。シロナはハーツと位置を入れ替え、すかさずに硬質化の板を纏わせた拳でケールの胸を殴った。

 

「ウラウラウラウラウラウラ!!」

 

直後にシロナはファントムシロナへと変身し、さらに拳の連打を浴びせた。尋常ではないタフネスを持つケールを大人しくさせるにはここまでの力を使わなければならなかった。

 

「ウラァ!!」

 

最期の一撃を食らわせた途端、吹っ飛んでいったケールの体は空気の抜ける風船のように緑色の気を吐き出しながら縮んでいき、弧の字を描いて地面へ落下した。

 

「ふー!」

 

「ナイスだシロナくん」

 

「ちょっと手荒くなっちゃったけど大人しくなってくれてよかった」

 

シロナは倒れたまま気を失っているケールを抱き上げ、顔を覗き込んだ。ケールは今までの凶悪な暴走が嘘であるかのように、穏やかに眠っていた。

 

 

 

 

 

その頃、カリフラとサザンカは。

 

「ぜぇ…はぁ…」

 

「テメェ…やるじゃねぇか…」

 

彼女ら二人は既にボコボコに殴り合った後で、顔を腫らしてほとんど満身創痍の状態で地面に大の字で寝そべっていた。

 

「悪かった…久々にこういう喧嘩したくて熱くなっちまった…」

 

「あたしにここまで喰いつけるヤツなんて滅多にいねぇよ…。…よし決めた!」

 

カリフラはガバッと起き上がるとサザンカの顔を覗き込む。

 

「な、なんだ?」

 

「お前、あたしの妹になれよ!どーんとあたしに寄りかかってれば何も恐れるもんは無ぇ!」

 

「はぁ!?」

 

「どうだ?今すぐに返事ができなきゃ少し考える時間をやるぜ」

 

「…いや、いい」

 

しかし、当然サザンカは断る。

 

「アタシの居場所はもう既にある。それに、アタシの姉貴はひとりだけだ」

 

「…そうか。じゃあダチならどうだ?」

 

カリフラはそう言いながら手を差し伸べる。サザンカはそれに少しだけ戸惑うも、すぐに手を握り返し、立ち上がった。

 

「ああ、いいぜ」

 

「よっしゃ隙ありぃぃぃ!!」

 

「テメェやりやがったなぁあああ!!」

 

だがその瞬間、カリフラはサザンカの背後に回り首へ手を回してヘッドロックを仕掛けた。まんまとかかったサザンカは叫びながら振りほどこうと藻掻く。

悪くない時間。サザンカにも同性の友はいる。アザミは今でもいがみ合い喧嘩が絶えないが、強さの隔たりがある。コナギは大人しいからまた違った感じがある。

サザンカはカリフラとの時間が、少しだけ心地良いと思った。

 

ドギュッ

 

一瞬の出来事だった。突然、サザンカの顔の真横を何かが通過した。頬の皮膚が剥がれ耳が裂け、鋭い痛みが襲う。

 

「いでっ」

 

カリフラがやったのかと思って後ろを見るが、そこでサザンカは言葉を失った。カリフラの左肩が半円状に抉り取られていたのだ。

 

「おい…」

 

カリフラはその場に倒れこみ、バタバタとのた打ち回る。

 

「ハァ…ガ…!ぐああああ…な、何なんだ…!」

 

「どうした!大丈夫…」

 

サザンカがしゃがみ込んでカリフラの傷を見ようとした瞬間、彼女らの背後に何者かの気配が現れる。

 

「オレとしたことが外したか」

 

紫色の肌の上に同色のコートを纏った長身の男がそこに立っていた。明らかにただ者ではない風貌で、冷酷な目線がこちらを見下ろしてくる。

 

「ターゲット以外は殺したくない。すぐにここを立ち去れ」

 

ターゲットとはカリフラの事だろう。口ぶりからして殺し屋のように、カリフラだけを遠距離から何らかの攻撃で狙った。だが、サザンカが一緒にいたことで狙いがずれたのだろう。

 

「…ここでぶっ殺されるのァ…テメェだろ…!!」

 

怒りをあらわにしたサザンカの拳が、第6宇宙の生ける伝説に襲い掛かった。

 

 

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