もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第475話 「逆鱗」

突然カリフラを襲撃した謎の男。名をヒットといい、この第6宇宙の生ける伝説とも称される凄腕の殺し屋である。

誰の依頼かカリフラの暗殺のためにこの惑星サダラへやって来ていた。

 

「テメェ…」

 

そして、サザンカは打ち解けたばかりのカリフラをヒットによって痛手を負わされ、怒りに燃えていた。

 

(カリフラも稀に見る手練れだと思ったが、いざ対峙すればコイツも…)

 

ヒットはコートのポケットに両手を突っ込んだまま、目の前に立つサザンカを見定める。

ヒットは可能であればターゲットのみを確殺する。数日かけて観察し、生活や行動のパターンを記憶し1人になったり気が緩むタイミングを見計らい、誰にも気取られず接近し真正面から一撃。現場を見られることなく証拠も残さず、手堅く仕事をこなす。

しかし、カリフラを数日観察して分かったことは一筋縄ではいきそうにない、という事だった。カリフラは普段の様子を見ていても隙が無い。常に舎弟や仲間が近くにおり(自分を守らせるのではなく自分が守るため)、仮に単独になった時も常に気を張っており、ヒットのポリシー的に手出しができなかった。

ようやく訪れたチャンスこそが、サザンカと戦いそれが一旦終わり油断が生まれた今のタイミングだった。サザンカがいなくなり彼女1人になれば恐らくまた確実に殺せるチャンスが遠退いてしまうだろうと思ってのことだった。

 

(オレとしたことが焦ったな)

 

自分の行動を顧みつつ、ヒットは冷酷に言葉を発する。

 

「無駄な殺しはしたくない。今すぐにここから立ち去り、このことは忘れろ」

 

「あぁ…!?」

 

だがそれが逆にサザンカの逆鱗に触れた!

 

「ぶっ殺されに来たならよぉ、テメェがぶっ殺されるかもしれねぇっつー覚悟はあんだろうなァ!?」

 

サザンカは悪のサイヤ人の力を開放し、赤と黒の二層のオーラを纏いながら地面を駆け、ヒットに迫り殴りかかる。…と思わせ、その寸前で姿を消し、ヒットの背後から攻撃を仕掛ける。

それに気付いたヒットが振り返るも、サザンカは既に身を屈めて彼の向う脛へ対し回し蹴りを仕掛けていた。

 

ピンッ

 

「うげ…!」

 

しかし、次の瞬間にはヒットの膝蹴りがサザンカの腹にめり込んでいた。

 

(速すぎるだろ…!)

 

喰らった瞬間を認識できなかった。まるで時間でも飛ばされ、膝蹴りをもらったという結果だけが残されたかのようだった。

思わず後ろへ下がるサザンカに対し、ヒットは右腕だけをポケットから出し、正面へ向けて正拳突きを放つ。拳圧により生じた衝撃波がサザンカに迫る。

 

「うおっ」

 

ブゥンと空気を抉り取るような音と共にサザンカの耳元を通過していき、これがカリフラに重傷を負わせた一撃だったのだろうと気付く。

しかしそれで怯むサザンカではない。再びフェイントを交えながら殴りかかるも、やはり超スピードなどでは説明のつかない不可解な原理によるカウンターを喰らってしまう。

 

「サザンカ…」

 

カリフラは血だまりの中に倒れ伏しながらも、諦めずに何度もヒットに挑みかかるサザンカを見た。

 

「諦めろ、お前ではオレに勝てない。大人しくここから消えろ」

 

ヒットはそう言いながら拳をサザンカの額に添え、拳圧の衝撃波で頭部を狙い打つ。あまりの激痛とショックでサザンカは吹っ飛ばされ、カリフラのすぐ横へ転がった。

 

「おい、大丈夫かよ…!」

 

喰らった一瞬意識を失ったサザンカであるが、カリフラの声で目を覚ます。そして手を地面につき、額から血の流れる顔を向ける。

 

「へ…何だよ、アタシが負けると思ってんのか?見てな…」

 

そして立ち上がったサザンカは、ここからが勝負だと言わんばかりに拳を構えた。ヒットもサザンカが何か仕掛けてくると感じ、思わずポケットから両手を抜いて格闘の構えを取った。

かつてない強敵。今までいくつかの宇宙を回ってきたが、ここまでヤバそうなヤツはいなかった。ヒットもまた、かなり久々にそれなりの戦いをすることになると覚悟した。

 

「…はああああああ…!!」

 

サザンカはその場で全身の気を高める。赤黒いオーラが大きく膨れ上がり、その全てが超サイヤ人特有の金色のオーラに変換される。サザンカの黒髪が持ち上がり、目の色が黄色く変化する。

何か危険な香りを本能的に感じ取ったヒットは、サザンカがこれ以上姿を変える前にすぐさま無力化するべく一瞬で接近し、その胸の心臓部目がけて衝撃波と共に拳を叩きこむ。

 

「ッ!?」

 

だが、サザンカは気を高めながらもその拳を受け止めた。そして渾身のパワーで引っ張りつつ片腕で投げ飛ばし地面へ叩きつけ、そのまま金色のオーラを開放した。

ヒットはその光の波動から逃れるように後ろへ飛び、距離を取る。着地するとすぐに顔を上げ、光の中心にいるはずのサザンカへ向かって正確無比な拳圧の連打を撃ち込む。

 

…しかし、治まった光の中から現れたサザンカは、ヒットの攻撃が全く効いていない様子で悠々とこちらへ歩いていた。

逆立つ黒髪、獣のような黄色い瞳と赤い隈取、そして一張羅のセーラー服の下から覗く深紅の体毛。超サイヤ人の系譜の頂点、超サイヤ人4が顕現していた。

闘争本能が具現化したかのような姿を見た瞬間、ヒットは齢1000を超える人生の中で初めて危機感からくる緊張を走らせ、一歩後ずさる。

 

「大丈夫だったかい?」

 

「ハーツか!」

 

と、そこへハーツがやってくる。ヒットも新たな邪魔者を見て怪訝な顔を浮かべた。

 

「その姿と、この子は…」

 

ハーツは近くで倒れているカリフラに気付く。

 

「…この殺し屋に狙われてんだ。ちょっと匿っててもらえるか?アタシがすぐにコイツをぶっ倒すからよ」

 

「わかった…油断するなよ」

 

ハーツはそう言うとカリフラの横に跪き、重力操作を彼女の体にかける。傷口を圧迫し止血、さらに細かく精密な圧力を駆使して骨や血管の露出面を保護し、カリフラの脳にも操作した重力を作用させて緩やかに気絶させるという応急的な措置を行った。

 

「なるほど…お前とそこの男を倒さねば、オレの仕事は終わらないということか」

 

「そういうことだ。ま、終わらせねーけどな!」

 

ヒットとサザンカはそう言葉を交わすと、再度交戦を開始する。ヒットは両腕を胸の前でクロスさせてサザンカへ向けて一気に突撃し、サザンカもそれを殴って迎撃しようと拳を振り上げる。

 

その瞬間、世界が静止した。

 

ピィ…ン

 

ハーツが重力を操作できる能力を持つように、ヒットも固有の能力を有している。「時飛ばし」なるそれは端的に言うと自分以外の時間を0.1秒間のみ止める力で、その間ヒットのみが行動可能、周りから見ればヒットの時間だけが飛んだように見えることからそう呼ばれる。

先ほどサザンカを攻撃した際の不可視の攻撃も時飛ばしによるものである。

たった0.1秒のみ作用する技だが、ヒットの卓越した身体能力と暗殺技術ならば十分なアドバンテージとなる。

 

文字通り時を止められ動けないサザンカに接近したヒットは確実に拳を放てる構えを取り、そこで0.1秒が終了する。そして、心臓目がけた速攻の拳がサザンカに差し迫った。

 

ガシッ

 

「!?」

 

が、サザンカは時飛ばし後の不可避の一撃を受け止めていた。驚くヒットを尻目に、サザンカは不敵な表情で頭を振り上げ…強烈な頭突きを叩き込んだ。

 

「が…!」

 

ピィン…

 

ヒットはそこで再度時飛ばしを使用。止まった時間の中を動き、首筋へ向かって貫き手を放ち、それを解除する。

 

ガッ

 

だがまたしてもサザンカにその手を容易く跳ね除けられ、ガラ空きになった腹へパンチを食らわせられてしまった。

 

「バカな…!オレの時飛ばしをどうやって…!」

 

「簡単だぜ、お前が見えない攻撃を仕掛けてくるタイミングを予測してるだけだ」

 

猶更理解できぬといった様子で固まるヒットの顔面にサザンカの回し蹴りがクリーンヒットし、弾き飛ばさそのまま後方にあった岩に衝突した。

 

「どうする?今すぐ消えてこのことは忘れるか?」

 

意趣返しのようにヒットに言われたセリフを吐いてやるサザンカ。

背中を強打したヒットは呻きながらその場に崩れ落ちるも、その表情には不敵な笑みが浮かんでいた…。

 

 

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