「今ので適応が完了した!8回目にしてようやく…貴様の使う重力操作能力すべてが私に対して意味をなさなくなったぞ!」
ダマスは超重力やキューブによる引力ひとつひとつではなく、ハーツの重力操作そのものに対して適応を終えた。つまり、ハーツの能力による如何なる効果も意味がなく、ダメージも受け無くなり、さらにハーツが重力操作で行う如何な防御さえ無視できるようになった。
これにより適応回数は1回とカウントされ、残り適応回数が7回となる。ダマスは戦えば戦う程、敵が多彩な攻撃手段を持つほどに、ボルテージが上昇する!!
が、否。
「君はひとつ間違いを犯しているぞ」
「なに?」
ドゴオッ
ハーツの繰り出した一発のパンチがダマスの腹にめり込み、ダマスは白目を剥きながら凄まじい衝撃でぶっ飛ばされる。周囲にソニックブームが生じるほどの速度の中、ダマスはかろうじて意識を保っていた。
(重力操作の力を使わずにこのパワー…だと…!?早く適応を…)
カチッ
カチカチカチカチカチカチ
(バカな…ただのパワーに適応するだけで1回転…だと…)
ダマスの羅針盤は、ハーツの圧倒的なパワーを無効化するために、一瞬にして7回分の適応を消費してしまった。
「その羅針盤、8回分の適応を終えた状態でさらに別の事象に適応しようとするときはどうする?ひとつを選んで捨てるのかな、古い適応から上書きされるのかな、それ以上はそもそもできないのか」
ダマスは決して答えなかったが、ハーツは笑った。
「ははは。なるほど、自分で選んで捨てられるのか」
「貴様…!」
まるで心を読まれたかのように能力を見破られ、ダマスは狼狽える。
「君を破る方法は、超火力で適応前に葬る。じゃあな、楽しかったよ」
ハーツは両手で作った紫色の禍々しい気弾を膨らませ、柱状の巨大化エネルギー砲として放った。成すすべなくダマスはそれに巻き込まれ、適応すら追いつけないほどの火力に包まれる。光の中で羅針盤が崩れて消え…
「あ、戻ってきた」
シロナとサザンカが町のはずれで待っていると、奪い返した究極二星球を手に持ったハーツが帰ってきた。
その体は変身により微妙に姿が変わったままだった。
「お前、その姿…」
「かっこいい~!」
「これが俺の本当の力だ。今まで隠していてすまなかった…これまでの戦いは君たちに任せてしまっていたな。君たちの全力の力を見ていたら、俺も隠しておくのが申し訳なくなってね」
そう言いながらハーツは変身を解除し、元の髪型に戻った。体の切り傷と腹に見える刺された傷はかなり深いように見えるが、ハーツ自身は「いてて」で済ませている。
「なんかさっきの、超サイヤ人に似てるよな」
「確かにそれ思ったよ」
「…ははっ、そうかな?それじゃ、取られたドラゴンボールも回収したことだし、さっさとこの宇宙を出よう」
ハーツの言葉の前の間が少し気になったが、3人は宇宙船が停めてある場所へ向かって歩いていき、そのまま最後のドラゴンボールが残る宇宙へ飛び立つのだった。
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「ザマスさん…やっぱ自分以外の存在の価値は、自分たちが決めていいものじゃないっすよ」
「何故だ。不要なモノは即排除するべきだ。それが宇宙のためになるということは、界王であり私と合体し精神すらひとつとなったお前なら理解できるはずだ」
「確かに、そうかもしれません。でも…たとえば自分は界王になる前、隕石の衝突で人間が滅んだ惑星の記録を見たっす。最初は何もない焼野原…ですが、生き残った生命が僅かに居ました。彼らは支配者の消えた星で適応放散し、爆発的に種類と数が増えました。ですが、長い時間が経つにつれ、より優れた生命が自然に選択され、次第に画一化しました。ですが、他の生命も滅んだわけではなく、同時に、共に星の生命として君臨したっす」
「…何が言いたい」
「きっと、人間もそういうことではないでしょうか?人間がいる星で、花や虫、動物が暮らしているのは何故でしょう?それは互いに生きる上で必要としているからじゃないでしょうか。もし要らなくなれば、自分たちが手を下さずとも勝手に絶滅するっす」
「ならば我々の存在価値はなんだ!ただ黙って…生命が繁栄し滅ぶ、そのサイクルを黙って見続けろと言うのか」
「いいえ。自分たちは生命が無事にそのサイクルを終えられるよう、星という場を提供したりサポートするのが仕事っす」
何もない、ただ自分と相手だけが存在する。感情由来の気と気が繋がることで一時的に生まれた精神世界の中で、ザマスとダラズは対話していた。
結果、ザマスは黙りこくり、どれくらい時間が経ったかと思う頃…静かに口を開いた。
「それがお前の考えか、ダラズ」
「はいっす。ただその為には、界王として…他の界王や、界王神であるゴワス様や破壊神のラムーシ様たちと話し合わなければいけないっす。もちろんザマスさんとも…」
「…お前のその甘い考えがいつまで通用するか見物だなぁ…後悔する時が来ても知らんぞ」
「…でもザマスさんも、心のどこかでは人間0計画なんて飛躍しすぎてる、バカげてるって思ってたんじゃないっすか?」
「何故だ…?」
「どうして、彼らが7個目を手に入れる時にドラゴンボールを奪わなかったんすか?ザマスさんは6個目の時に奪いましたよね…残り1個はどうするつもりだったんすか?」
「…それは」
「それに、自分にはもう後悔するその時は来ないっすよ」
「何?どういうことだ?」
「自分の伝えたかったことは全て伝えました。あとはお願いします、ザマスさん」
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「…かはっ!!」
目を覚ましたザマスは血反吐を吐き出し、咳込みながら立ち上がった。どうやらダマスとなっていた時にハーツとの戦いに敗れた後、しばらく気絶していたらしい。
「ぐ…ハァ…!だがポタラでの合体は永久に解けないはず…どういうことだ…?」
ザマスは知る由もなかったが、ポタラの合体は界王神以外の場合は1時間しか効果がない。気絶している間に合体が解けたのだろう。
だが今はそれよりも、ザマスはダラズとの対話で交わした最後の言葉が気になっていた。嫌な予感が脳裏をよぎり、思わず辺りを見渡してしまう。
「ダラズ…どこだ?まさか…」
そして、見つけた。倒壊した建物の残骸の下から彼の衣服と腕が見える。ザマスは何とか瓦礫をどかし、ダラズの体を引きずり出した。
「何故だ…」
ダラズは既に息をしておらず、合体する前に自分が与えた傷はそのままだった。
「おい、あれ…」
「ああ…誰か倒れてるぞ」
その時、近くから声がした。ザマスが顔を上げると、いつの間にかこの町に住んでいる大勢の人間たちに囲まれていた。
「なんだ人間ども…!見るな、直ちにここから去れ…!」
だが、人間たちはボロボロのザマスの言葉に耳を貸さず、ゆっくりと近寄ってくる。
「来るな…!その者に近付くなァ!!」
ザマスは知っている。人間たちの野蛮さを、争いしか生まぬ低い知性を。人間はダラズの服を破り、薄汚れた手で胸に手をかける。
そんな人間たちをこれ以上ダラズに近寄らせまいと声を張り上げるザマスだが…
「誰かAED持ってこい!」
人間はダラズに心臓マッサージを行い、傷をタオルで塞いで止血する。さらに誰かが持ってきた除細動器がダラズの体にセットされ、彼を蘇生させようという試みが為される。
「君も大丈夫か!?」
別の人間がザマスの肩に上着をかける。ザマスは目の前の状況が呑み込めず、唖然としているばかりだったが…
「カイカイ」
聞き覚えのあるその声が聞こえると同時に、ザマスの視界は暗くなった。
気が付くと、ザマスはいつの間にか界王神界のゴワスの間にいた。横では、目を覚まさないダラズに対し、ひたすらに回復の術をかけ続けるゴワスがいた。
「ゴワス…様…」
「む…ぬぬ…」
ゴワスは額に玉のような汗をかき、必死に癒しの力をダラズの体内に送り続ける。そしてその甲斐あってか、ダラズは小さく咳をした。
「ハァ…ゴホッ…!」
「おお、よかった!あの星の人間たちが処置をしていなかったら手遅れだったろうな」
ダラズは息を吹き返したものの、まだ意識は朦朧としているようで喋ることはできなかった。ひとまずの安静を確認すると、ゴワスはダラズを再び寝かせ、ダマスの前に座った。
「何があったか、説明できるか?」
「…はい」
「残るひとつのボールは…四星球だな」
「そうだね、ようやくあと1個か…」
「四星球があるのは第11宇宙だ。かなり危険な宇宙だ、何が待っているか分からない…それでも行くのかい?」
ハーツは宇宙船の転移先として第11宇宙を設定しながらも、シロナたちにそう問いかける。だが、二人の答えは聞かれる前から決まっていた。
「行くに決まってんだろ!」
「もちろん!私たちならね!」
【現在公開可能な情報】
ダラズ
・ザマスの後任の第10宇宙の北の界王。人相は悪いが心は界王として成熟している。
・名前の由来はとある方言の語尾。
ザマス
・元は北の界王で、今は界王神見習いとしてゴワスの修業を受けている。武術の才能があり、その実力は界王どころか界王神すら大きく上回る。
・この時空では人間0計画を思いついたものの、修行を受けつつ後任のダラズにも教育をしなければならない立場であり、かつこの時空には孫悟空もゴクウブラックもいないため、実行には至っていない。
ダマス
・ザマスとダラズがポタラで合体した戦士。ザマス同士で融合した合体ザマスには力が及ばないが、周囲の事象に適応する能力を持つ。
・頭の上に浮かぶ羅針盤と針の形をした光輪が要で、1/8回転するごとにひとつの事象に適応する。