もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第48話 「迎え撃て!月の客の襲来!!」

カカロットたちが避難計画に奔走していたころ、外の世界のある場所では…

 

「すまないな、手間をかけさせる」

 

「ほんとよ、今こっちの世界は大変なのに…」

 

一軒家の庭に座り込んだ妹紅。その横で慌てているのは、外の世界の人間である宇佐見董子だ。

1人で外の世界へとやって来た妹紅は、月の客襲来に際して何かしようとしてるのかもしれない…。

 

 

 

そして…

 

月の客が襲来する日がやって来た。最早幻想郷には、人や妖怪どころか虫一匹見当たらない。いつもの夏なら、やかましいくらいに聞こえるはずのセミの声すら聞こえない。

きっと、月の民はこの生き物が一匹もいない世界を望んでいるのだろう。何もない、完全な無の静寂が幻想郷を支配していた。

 

「モグモグ…」

 

いや、ひとつ音が聞こえ始めた。カカロットが用意された飯を大量に食べている音だ。

 

「今日の月の入りは7時…その時間まであと2時間を切ったわ」

 

「そうか」

 

「そうかって…随分余裕そうね」

 

霊夢はこの期に及んでまだ食べ続けるカカロットを見て呆れた。

 

「もうドラゴンボールの力も完全に消えてしまった…。だが準備は万全だ、コンディションも万全…お前だって少しは修行したんだろう?」

 

「本当に少しね。全然伸びている気はしないけど…」

 

「だが…絶対に勝てるぜ、俺たちは」

 

「…そうね」

 

 

 

…やがて、時刻は7時を迎えた。青紫がかっていた空もいよいよ暗くなり、空に大きな大満月が浮かび上がった。

だが、今宵の満月はいつもの月ではない。その月に重なるようにして、目いっぱいに広げられた槐安通路があるのだ。そして、長らく幻想郷と月の都を結んできた槐安通路は日の出と共に永遠に閉ざされる。

今、そこから「月の客」とよばれる軍勢が、やってくる。目的は幻想郷の破壊と民の殲滅、二人の蓬莱人の確保…そしてドラゴンボールの入手。

 

たった今、この幻想の地を舞台とした戦争が始まろうとしている。

 

迎え撃つは、博麗の巫女・博麗霊夢、サイヤ人・カカロット、魔界最強の戦士・ウスターのたった三名。

今宵の月から放たれる月光は、いつもの月光ではない。そう、月の客の軍勢を共に連れてきたのだから。

 

 

「ついに来たかよ、月夜見共…」

 

と、月を背景にまるでは虫の大群の如く空に見える軍勢を見上げながらカカロットが言った。

 

「ふん、また大勢でお越しのようだ」

 

ウスターは白いマントを脱ぎ捨て、腕を組みながら言った。

 

「でも、敵は全く未知じゃないわ。私たちが一度行ったことのある、月の都から来た連中…」

 

「勝算はある!俺たち三人で一気に敵陣へ介入、一撃で月夜見をしとめるだけだ」

 

「待って、あれは…」

 

霊夢が軍勢を指差した。なんと、三人が見ている前で軍勢の一部が次々と消えていく。まるで、動物の死骸を見つけた虫の大群が散っていくように…。

 

「そうか、奴ら…早くも幻想郷を攻撃するつもりだな」

 

 

 

 

「月夜見王!!」

 

敵の軍勢は、月の都の兵士たちの他に空を飛ぶ戦艦が大半を占めていた。そして、濃い密度で組まれた艦隊の中央に、ひときわ目立つ大きな戦艦が浮かんでいた。これこそが、敵の大将月夜見王が乗る牙城である。その牙城の中で、親衛隊たちの声が響く。

 

「我が軍勢は幻想郷へ着陸!ものの数分で人間や妖どころか全ての生きとし生けるものを誅殺して御覧に入れるでしょう!」

 

月夜見は艦橋最上階の部屋に置かれた玉座の上にもたれるように座りながら、幻想郷を見渡して持っていた杖で床をついた。

 

「能し、鏖にせよ」

 

 

 

「潔癖なる我ら軍勢は、幻想郷の生物を殲滅する!」

 

玉兎を含めた兵士たちは、銃や剣、槍を手にして人間の里へ流れ込んだ。人家のドアを蹴破り、中へ向けて銃を構える。あるいは、爆弾で家を吹き飛ばし、残骸の中から人間を探す。

 

「…だ、誰もいない…?」

 

困り果てているであろう月の兵士たちの様子を想像したカカロットは、にやりと笑った。

 

 

 

「月夜見王、集落には誰一人として人間はおりません!」

 

「月夜見王、こちら山エリアは妖どころか野獣まで発見することができず!」

 

「こちら森エリア!妖怪は一匹としておらず、昆虫すら姿が見えません!!」

 

次々に報告を受ける月夜見王。そのしわだらけの顔に明らかな困惑の色を浮かべ、呟いた。

 

「では、何処へ行ったというのだ」

 

「判明せず!ありえません、私が明嵐と共に偵察に出た時は、確かに生き物の活気がありました!ものの数日で生命1つ見当たらないとは…」

 

蛇斑が焦りながらそう言った。

 

「むう、この不動紡馬も困惑の至り!探せ、どこかに隠れておるのだろう!!」

 

「騒ぐな」

 

月夜見の静かな声が部屋に響く。そのとたん、慌てふためいていた親衛隊や兵士たちは静まり返る。

 

「消すべくは、民だけではないだろう?その跡で、カグヤと八意を回収すればよい」

 

 

 

 

「よっしゃ、行くぜ!」

 

カカロットたち三人は、いよいよ前方に夥しい数を構えている月の軍勢へ向かって接近を始めた。カカロットは要石に乗って飛行し、霊夢とウスターは全身の気を纏いながら高速で移動する。

 

「ん…?これは…地上から生命反応接近!!」

 

兵士の一人がそれに気づき、声を送る。

 

「うりゃああ!」

 

だが、カカロットはいつの間にか兵士の背後へ接近し、その側頭部を殴りつけた。兵士は気を失い、地上へ向けて落下を始める。

すると他の兵士が応戦にやってきて、三人へ襲い掛かる。

 

「邪魔よ!」

 

しかし、敵陣の真ん中へ向けて飛ぶ三人の行く手を遮ろうとする兵士を、霊夢が霊力の波動を全身から放つことによって吹っ飛ばす。それでも襲い来る武装した兵士を、ウスターは次々と蹴り飛ばしていく。

見る見るうちに敵陣との距離は縮まり、目視できる距離にひときわ大きな戦艦が出現した。おそらく、あれが敵の大将の乗る戦艦だと理解する。

 

「私たち、いけるわ!」

 

「ああ、このまま乗り込む!」

 

「覚悟しろ、月の客ども!!」

 

三人のテンションは高まった。このままいけば、勝てる…大将を討ち取り、敵の戦意を削ぎ、一網打尽にして撃退する…。

…が、しかし、悪夢は訪れる。

 

「あれは…?」

 

旗艦の方角から、何か三つの光がこちらに向かってきているような気がする。それにいち早く気づいたカカロットは、目を細めてそれが何なのか見極めようとする。

その瞬間、三人をとてつもなく禍々しいオーラが包み込んだ。まるで砂埃舞う嵐の中に取り残されてしまったような、そんな感覚に陥ってしまう。

カカロットに続き、霊夢とウスターが旗艦からやってくる三つの影の方を見た。しかし…

 

ズドォン…

 

気が付けば、1つの影がカカロットたちの横をすり抜けて背後に移動していた。

 

「うおおおおお…!!」

 

続いて聞こえるウスターの叫び声。

二人が振り返ると、ウスターが上体を逸らしながら苦痛に叫んでいた。右腕の肘から先をなくし、血がドバドバと地面へ向けて流れている。強引に一瞬で引きちぎられたウスターの腕は地面へ堕ちていく。ウスターの腕をすれ違いざまに切断した張本人、月夜見王親衛隊の一人、覇乙女蛇斑が腕から気の刃を生成しながら立ち上がろうとしていた。

 

「キサマ…蛇斑!」

 

そして、残る親衛隊の二人…覇乙女明嵐と不動紡馬が同じく上空から舞い降りた。

 

「やはりお前たちか、あの時の地上人!」

 

紡馬が野太い大声を上げる。明嵐はじっと達観したような鋭い目でこちらを見つめている。蛇斑が血が付いた手をふき取りながらこちらに向き直り、邪悪な笑顔を浮かべた。

 

「ふっふっふ…他の奴らは何処へ行った?まぁ、どちらにせよお前たちは殺せとの月夜見王からのご命令だ」

 

「くっ…舐めるなよ…」

 

ウスターは髪の毛を何本か抜き、それを腕に巻いて流れる血の量を抑えようとする。そして態勢を立て直し、戦闘の構えを見せる。

 

「ほう、そちらの魔人はなおもやる気満々のようだな」

 

「そのようだな…もう一本腕をもがれたいのかな?」

 

「うるせぇ!前のようにはいかないぜ…やってやる!!」

 

「ええ、美鈴や依姫たちの仇よ!」

 

カカロットは限界突破滅越拳を発動し、全身に紫色のオーラを纏うと、他の2人と共に空高く飛翔した。親衛隊は余裕のある顔でそれを追って飛び出した。

カカロットたちと親衛隊は、空で熾烈な攻防戦を繰り広げる。

 

「お前の相手はこの己だ!」

 

紡馬はカカロットの前に立ちはだかる。カカロットは激しいオーラを噴出しながら、猛スピードで突撃をしかける。そしてそのまま拳を紡馬の腹へ叩きつけた。

 

「…!?」

 

が、全く効いている手ごたえはない。にやりと笑った紡馬と、少し後ろへ下がろうとするカカロット。そして、紡馬の渾身のパンチがカカロットを殴り飛ばした。

 

「君と戦うのは二度目だね」

 

明嵐はそう言いながら霊夢に攻撃を仕掛けた。その顔に蹴りを放ち、霊夢は寸前でそれを両腕で防いだ。が、あまりの威力に後方へ吹っ飛び、背後へまわった明嵐の追撃を背中に受けた。

 

「ぐああ…!!」

 

「戦闘力は以前よりわずかに上昇したか!しかし、そっちの魔人は怪我を負った事で大幅に戦闘力がダウンしたようだ」

 

片腕を失ったウスターは蛇斑を相手に徐々に押され始め、苦戦を強いられる。それを好機と見たのか、親衛隊たちはそれぞれ相手をしていたカカロットや霊夢を吹き飛ばし、蛇斑に加勢する。

三人の攻撃を捌こうとするウスターだが、片腕ではやはり無理があり、強烈なエネルギー波を喰らってしまう。

 

「ぐは…む、無念…!」

 

エネルギー波は爆発を起こし、ウスターは全身から黒煙を吹きながら地面へ向けて落下していく。

その時だった。蛇斑は装着しているスカウターが警戒信号を発していることに気付き、振り返った。すると、カカロットが両腕を腰まで引いて気を集中させていた。

 

「なんだ…戦闘力に変動はないのに、何故警戒信号を…!」

 

「ふははは…喰らうがいい!貴様らに殺された、美鈴の必殺技だ!『超華光玉』!!」

 

超華光玉を放つカカロット。前へ突き出した両掌に巨大な気の塊が出現し、そこから二本の太めの光線が螺旋に捻じれながら敵へと迫る。

明嵐はため息をついて目を閉じ、紡馬が前に進み出て片腕を前にかざした。

 

バチィン!!

 

はじき返される渾身の攻撃。的外れな方向へ打ち返された超華光玉は空の彼方へ消えていく。

 

「これは何なんだ?今のがお前の攻撃なのか?」

 

「あ…あ…そ、そんな…!」

 

「攻撃ってのは…こうやるんだよッ!!」

 

紡馬は右手に小さなエネルギー弾を作り、怯んでいるカカロットの腹へ押し付けるようにしてぶつけた。その場で気は炸裂し、強烈な閃光と爆発が起こった。カカロットはそれに巻き込まれ、その身を焼いていく。

 

「うわあああああああああ!!!」

 

「カカロット!」

 

ドォン…

 

カカロットは叫び声をあげる。紡馬がエネルギー弾に込める力を強めると、それはとてつもない速さ空の彼方まで伸び、やがて打ち上げ花火のように炸裂した。

 

 

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