もしもカカロットが幻想郷に落ちていたら   作:ねっぷう

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第483話 「Degustation」

シロナとサザンカが究極ドラゴンボール探しの旅に出発してから2週間ほどの期間が経っていた。

 

ブロリーは自分の子供であるジュバンを腕に抱き、緊張した面持ちで哺乳瓶を持っていた。

 

「ち、小さすぎる…!」

 

「当たり前でしょ!っていうかアンタがデカすぎるのよ」

 

隣にはブルマもおり、共に子供の世話をしている様子。しかし、ブロリーは自分の手の平程度の小ささしかないジュバンに触れるだけで必要以上に力んでしまうらしく、ぷるぷる震えていた。

ジュバンはブロリーに差し出された哺乳瓶を見るとすぐに吸い付き、こくこくとミルクを飲み始める。それを見たブロリーもホッと笑顔を見せ、ようやく落ち着いた。

 

「よかった…」

 

とその時、カプセルコーポレーションの外に何かが降り立った音が聞こえた。

 

「この音は…宇宙船か?」

 

「まさか、サザンカたちがもう帰ってきたのかしら?」

 

「…俺が見てくる」

 

ブロリーはジュバンをブルマに渡すと、外に出た。

すると、そこにいたのはサザンカたちが乗って行ったのとは別の銀河パトロールの宇宙船だった。

 

「誰だ?」

 

宇宙船の扉が開き、中から数人の銀河パトロールの隊員が姿を現す。

 

「お久しぶりです」

 

「お前ら…今度は何の用だ?」

 

出てきた隊員は全員ブロリーと面識があり、ブロリーも彼らの事を知っている。だが、奥から前へ進み出てきたある隊員は見たことがない。

 

「直接お会いするのは初めてですね、ブロリーさん」

 

「お前は?」

 

「私はメルスといいます。今回の作戦の現場指揮を取らせていただきます。まずはお話をさせてほしいのですが、よろしいですか?」

 

「…何かあったのか?」

 

「ええ、実は…」

 

メルスはブロリーに、モロという囚人の脱獄と彼の再逮捕について説明した。その様子を、カプセルコーポレーションの窓からブルマが見ていた。

 

 

「なるほど…そのモロとかいうヤツを捕まえるのに協力してほしいと」

 

「はい。私も、Dr.ライチーと戦うブロリーさんを遠目ながら見たことがありますし、ジャコ隊員やスカッシュ隊員からも活躍の話はよく聞いています。貴方の力が得られれば、我々は必ずモロを捕まえることができると確信しています」

 

「…予想される被害はどの程度だ?」

 

それを聞かれたメルスは、心苦しいように静かに言った。

 

「おそらく、数百の惑星が死滅するでしょう。ヤツは生き物や星のエネルギーを食事にします。桁違いに寿命が長いのもそのため…ですが、モロは年老いているのと長年の投獄によってまだ衰弱しています。食事にも体力を使うはず…しばらくは一気にエネルギーを取り込めないでしょう。叩くのなら早い段階でなんです」

 

ブロリーは目を閉じ、しばらく考え込む。

 

「仕方ない…無辜の命のためだ、俺がやってやる。だが…今はもう俺一人の判断で勝手な戦いには行けないんだ」

 

「どういうことです?」

 

「もう俺には子供がいるんだよ、この間生まれたばかりのな」

 

「子供…ああなるほど、そういうことでしたか」

 

「少し待ってくれ、ブルマと相談してくる」

 

「あら、別にいいわよ?行ってきても」

 

その時、ジュバンを抱いたブルマがすぐ後ろに立っていた。そしてブロリーにそう言葉をかけるのだった。

 

「ブルマ…いいのか?」

 

「だって大変なんでしょ?アンタが放浪癖あるのは知ってることだし。ただし、絶対に返って来なさいよ?」

 

「…ああ、わかった。ジュバン、俺は少しの間出掛けてくるからな」

 

「あう」

 

ブロリーはジュバンの小さな手を指でつまみ、しばらくの別れを告げる。それを見ていたメルスは、ひとり覚悟を決めたような眼差しで拳を強く握るのだった。

 

「メルス…だったか?」

 

「あ、はい…」

 

「そういうことなら早く行こう。モロってやつを捕まえに」

 

「ありがとうございます。ただし、油断はしないでください…モロは何をしてくるか分かりませんので」

 

と、そこで空の上からまた別の銀河パトロールの宇宙船が降り立った。巻き上がる風と落ち葉が落ち着き、扉が開くと中からジャコとスカッシュが姿を現す。

 

「メルス隊員、待たせたな」

 

ジャコがそう言うと、ブロリーが驚いて彼に指差しながら問いかける。

 

「待たせた…って、シロナとサザンカたちはどうした…?」

 

「奴らなら、別の信頼できる者に任せた。我々はモロを捕らえる方が優先なのだ」

 

「そのシロナさんとサザンカさんという方はブロリーさんの知り合いですか?」

 

メルスがそう言った。

 

「ああ、仲間みたいなものだ」

 

「ジャコ隊員、その方たちも連れてきてくれれば戦力になったかもしれないですね」

 

ジャコはバツが悪いようにリアクションし、「ブロリーと我々がいれば楽勝だ」とだけ答えた。

そしてスカッシュたちも合流し、いよいよブロリーたちはモロを捕まえるために宇宙へ飛び立った。

 

 

 

 

─────………

 

 

宇宙船内にて座り込み、一眠りしていたモロは目を覚ましてあたりを見渡した。といっても中の壁ではなく、その外側、周辺の宇宙空間を、だ。

 

「どうかしましたか?モロさん」

 

クランベリが声をかけると、モロはあくびをしながら声を出す。

 

「知らない間にこの宇宙には随分と人間が繁殖しているな」

 

「ははは…1000万年ぶりの外ですもんね…」

 

「うう…」

 

その時、モロは頭を押さえて苦しげな顔を見せる。

 

「生命エネルギーを探索する程度で限界とは…我ながら情けない魔力だ…」

 

「まもなく目的地ですのでもう少々お待ちください!」

 

「そうか…楽しみだ」

 

そう言いながら不気味な笑みを浮かべたモロに、クランベリは背筋が凍るような恐怖を覚えた。その隣で座っているレモも、生きている心地がしなかった。

 

「しかし寿命が尽きる前に魔力が戻ってきたのは幸運だった…」

 

「数年前…なんですよね?魔力が戻ったのは」

 

「そうだ。その魔力は脱獄の時でほぼ使い切ったが、また溜まってきている…」

 

「あの、私も一緒に脱獄させていただいてありがとうございます…」

 

調子よく返事をしたクランベリに、モロは鋭い目で睨みつける。クランベリは体をびくっと震わせながら、自分のどの発言がモロの怒りを買うかわからない恐怖の中言葉を絞り出す。

 

「ほ、本当に感謝していますよ…!」

 

「お前の話が真実かどうか、確かめなければならないからな。ドラゴンボールとやらには本当にそんな力があるのか?」

 

「ええ…大丈夫です、願いは何でも叶うはずですから。しかも3つ!」

 

「あの、モロさん…3つ目の願いで私を銀河パトロールもフリーザ軍もいない辺境の星に逃がしていただけるという約束は…」

 

「もちろん叶えてやる。オレの願いはひとつで十分だ、それさえ叶えば…お前など必要ない。どこへでも行くがいい」

 

「ありがとうございます…」

 

その時、モロは会話に入ってこないで怯えているレモの頭に手を置いた。

 

「ちょうどオレたちは3人いることだし、お前も願いを言ってみるといい」

 

「ええっ、私の…ですか!?」

 

レモは驚いて飛び上がる。

 

「座れ」

 

だが、モロの命令の一声でもう一度同じ場所に座る。

 

「そうだ。お前が模範囚でなければオレたちは脱獄できなかった…何か望みは無いのか?」

 

「私は…いいえ、特には…」

 

「そうか…。お前は捕まる前何をしていたのだ?」

 

「ええっと…フリーザ軍で裏方を…といっても雑用ばかりでしたが…」

 

「雑用とは何をしていたんだ?」

 

「それは、メカの修理や…基地の掃除、それから料理などもしていましたね…」

 

それを聞いたモロは、ピクリと耳を動かす。

 

「ほう、料理…?」

 

「はいっ…!大したものは作れませんが…」

 

「おい、この船には食料は積んであるか?」

 

モロはクランベリにそう聞くが、クランベリはレモを睨む。

 

「私の移住先に着くまでは困らないくらいの食料は銀河パトロールが積んでくれていますが…」

 

「なるほど。ではオレたちの飯を作れ」

 

「え…?」

 

予想だにしていた無かったモロの言葉に、レモは思わず唖然としてしまう。

監獄にいる間、モロの悪評は聞いていた。罪状も姿も知らないが、隊員や看守でさえ口を噤むほどだ、よほど残忍で凶悪な犯罪者なのだろうと思っていた。ここでいざ対面しても、自分の挙動全てが死因に成り得るような恐怖を感じずにはいられなかった。

そのモロが、飯…?

 

「聞こえなかったか?飯を作れと言ったんだ」

 

「は、はい!ただいまお作りしますね…」

 

20分ほどして、レモは料理の盛られた皿を二つ持ってきた。

 

「奥に軽い厨房がありましたので…」

 

それをモロとクランベリの前に置くと、クランベリは思わずおおっと声を漏らし、唾を飲み込んだ。

モロも、差し出された皿をじっと見つめている。そこにあるのは、軽く焙った干し肉にコショウとレモン汁をかけ、千切りの葉野菜を添えたシンプルな品だった。

モロは皿を顔の上に掲げ、大口を開けて肉と野菜を一気に流し込んだ。もぐもぐと咀嚼し、一飲みで全て胃へ送る。

 

「俺はまだ弱っていてな、手当たり次第に食事をする体力も戻っていない…多少は何か腹に入れて慣らしておかねばな。だが、こうした食物を直接噛んで呑むのはいつぶりか…1000万年以上かもしれんな。まあまあだ、この質の食材にしてはよくやった」

 

「ありがとう…ございます…?」

 

「レモ、お前にこんな技能があったとはなぁ」

 

クランベリも肉を噛み切り、レモの料理の腕前に舌鼓を打っている。

レモは、モロがどんな味が好みなのか分からず、最悪この場で殺されることも覚悟したが、ひとまずモロの気を損ねることは無かったと胸を撫で下ろすのだった。

 

 

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