「ブロリーさん、モロは!?」
少し遅れて宇宙船で追いついてきたメルスがそう尋ねてきた。
「どこかへ消えた…気を消せるようで全く場所がつかめない…」
魔力を取り戻したモロは、ブロリーやサザンカたちに手を下すことなくどこかへ消え失せた。恐らくは殺してしまうよりもこの星ごと、全員のエネルギーを頂こうとしているのだ。
「なら、エネルギーの流れを辿れば場所がわかるかもね」
と、続けてやってきたシロナがそう言った。シロナは倒れているエスカの腕を掴んで持ち上げ、治癒能力を発動して目を覚まさせた。
「ありがとうございます…!」
「でもごめん、死んでいる人はもう治せない…」
シロナの力でエスカは治せたが、既に死亡してしまっているムーリや他のナメック星人たちはどうすることもできなかった。
彼らの死を悼む間もなく、また星に異変が起こる。
ゴゴゴゴゴ…
地が震え、草木がざわめき、水面が激しく波立ち、光の粒が矢のように空へ次々と飛んでいく。
「始まった…モロのエネルギー吸収が…!」
「さっきまでとは比べ物にならねぇ速度だぞ…!」
「でもこれでモロがどこにいるのか分かった。行こう!」
ブロリー、サザンカ、シロナは空のはるか上にいるであろうモロの居場所へ向かい、決着をつけるため戦いへ向かおうとする。
「ほいっと」
だがその前に、シロナは四腕でブロリーとサザンカ、ハーツの背中に触れ、体力を回復させる。
「完全にするのはちょっと難しいけど、最低限変身できるまでは回復したと思う」
「サンキュー、姉貴!」
が、その様子を見ていたハーツは何かを考えこみ、やがて口を開く。
「ちょっといいか?さっきシロナくんがモロのエネルギー吸収を受け付けなかったのを見て思いついたんだが…」
ハーツはそう言いながらキューブを3つ生み出し、ブロリーとサザンカ、そして自分の体を覆わせる。虹色に輝いているキューブは直後に見えなくなり、周囲の空間と彼らの肉体に馴染んでしまう。
「要は外へ出て行ってしまうエネルギーを、内側に圧力の流れが生まれるキューブを全身に纏うことで堰き止める。これから奪われる分に対しては効果が見込めると思う」
「…なるほど」
「俺はハーツ。よろしくな」
「ああ…」
ハーツとブロリーは軽く挨拶を交わし、いよいよ一行は空へ飛びあがる。その際でメルスが大声で呼びかける。
「皆さん!!我々は準備を整えてから宇宙船で向かいます!それまでどうか気を付けて…!」
「わかった!」
見えなくなる一行を見送ったメルスだが、周囲からどんどんとエネルギーが吸収されていくのを見て危険を感じ、自らの体調にも変化が起こり始めているのに気づく。
「まずい…!早く宇宙船に乗って地上から離れましょう!我々もエネルギーを吸収されてしまいます!」
「通りで息が切れると思った!」
メルス、ジャコ、スカッシュも宇宙船へ乗り込み、イリコの運転の元、慌てて飛び上がる。
「ま、待ってくれ…!おれも乗せてくれ!」
その時、地上から大声でこちらを呼ぶ声が聞こえた。ナメック星人の生き残りかと思いメルスたちがドアを開けて下を見ると、そこには大慌てでこちらへ走ってくる小柄な姿があった。
「アイツは…レモ!?」
「モロの脱獄に利用されとっくに殺されていると思っていたが…」
メルスはアームギアからバルーンをロープ上に長くして伸ばしたものを発射し、レモに掴まらせると船の中まで引き上げる。
「す、すまない…」
「よくモロと一緒にいて無事でしたね」
「ああ、何とか…それよりも、どんな処罰でも受けるからお願いだ、このままおれを助けてくれ…」
メルスはレモを保護し、落ち着かせるととりあえずそこへ座らせた。
「ふう…しかし、お前にとってはなかなかつらい光景だよな…」
続けて、エネルギーを失っていくナメック星が死んでゆく様を、一行は見下ろしている。ジャコは唯一助け出すことが出来たエスカを心配してそう声をかけた。
「はい…他の村の人たちも、たぶんもう生きていないでしょう…。最長老様は自分が死ぬのを悟り、僕を次の最長老に任命しました…僕には生き残る責任があります」
「生きて平和なナメック星を取り戻しましょう!その為にはまずはモロを倒さなくては」
その会話を聞いたレモは項垂れたまま汗を垂らしていた。
モロは宇宙空間との境近くの領域にてナメック星から吸い上げたエネルギーを集めて巨大な球にしていた。地上から登ってくる無数の光の矢全てが球に集約されていく。
「モロォォォォ!!」
それらと共に、ブロリー、シロナ、サザンカ、ハーツがモロへ迫る。それに気付いたモロはにやりと笑いながらも特に応戦する素振りは見せない。
そして、勢いよく振り下ろされる4人の同時攻撃が…
「なに!?」
全てすり抜けた。
というより、実体のない幻を攻撃してしまったようで、直後にモロの姿は薄くなって消えた。
「あっちだ!」
ブロリーが離れた場所にまたモロがいるのに気付き、それに向かってゆく。するとモロもそれに勘づき、その場から飛んで逃げる。が、ブロリーはそれを狙って気弾を撃ち込むも、またしてもモロの姿が揺らぎ、別の位置に移動した。
「逃がすかよ!」
サザンカが先回りし蹴りを繰り出すも、やはりモロに実体がなく、当たらなかった。
「何かおかしいぞ…」
「実体はここにはないな」
「どこだ…本体はどこからエネルギーを集めている?」
「あそこだ」
ハーツが気付いて指差した先には、遠くに浮かぶ岩塊の上に立って遠距離からエネルギーの球を生成しているモロがいた。
モロはこちらを見て笑いながら開いた手をグッと握り、ナメック星のエネルギーを集めて作った巨大な球をどんどん小さく圧縮させていく。いよいよモロがそれを捕食するつもりであると思ったサザンカが一気にモロへ向かうが…
「待て!そこから先は宇宙空間だ!俺たちじゃ死んでしまうぞ!」
それをハーツが止める。
「じゃあどうすりゃいいんだよ!」
だが、ブロリーとシロナはモロを目指して進んでいく姿勢になる。
「俺が行く」
「私も多分大丈夫かな」
ブロリーは赤子の頃から宇宙空間で生存でき、しっかりと肉体を防護するだけの気があれば問題なく行動できる。シロナもファントムの力で肉体の構造を変更すればあらゆる環境の影響を無効化できる。
「なら何とかしてモロを怯ませて大きな隙を作ってくれないか?今ここからじゃ無理だが…俺の能力で再び地上へ引き摺り下ろす!そうすれば全員で戦える!」
ハーツは重力操作の力を使って引力を生み出し、対象を引き寄せたり弾き飛ばしたりできる。今はモロの意識が万全な状態でこちらに向いているためそれを使う隙はないが、大きな隙が出来れば一気にナメック星の地上まで移動させることが出来るだろう。
「了解!」
ブロリーとシロナは同時にモロへ向かって突き進み、攻撃を仕掛ける。モロはいよいよ手の平サイズまで圧縮した星のエネルギーを口に入れて飲み込み…繰り出されていたふたりの一撃が届く前に全身にオーラを纏い攻撃を防ぐ。
「あ…!」
「何か対策をしてきたようだが…わざわざここまで死にに来たのか?」
モロはナメック星のエネルギーを丸ごと吸収したことでさらに少し若返り、頭の皺が減り髭が短くなる。ふたりの拳を両手で掴んで止め、続けて繰り出されたブロリーの蹴りを躱す。その先に繰り出されたシロナのパンチを顎に受けるも、反撃として放つ衝撃波でシロナを吹っ飛ばす。
そしてブロリーの背後へ回り、その背中に強烈な回し蹴りを叩き込んだ。
「がッ…!」
ブロリーの巨体が宇宙空間を小石のようにピュンと吹っ飛んでいき、モロはシロナを放り投げて魔力を纏いながらブロリーを追う。
「待て!」
シロナもそれを後から追いかけ、3人はサザンカやハーツから見えない場所まで消えてしまった。
「あっ!行っちまったぞ!」
「…いや、シロナくんなら、何かしらの合図を送ってくれるはずだ。それを確認しよう」
「エネルギー吸収が止まった…戦いが始まったのか!?」
宇宙船の中からメルスがそう呟く。
「メルス隊員!サザンカさんとハーツさんは大気圏内にいますが、ブロリーさんとシロナさんはモロと共に宇宙空間へ行ったようです。我々はどちらへ向かいますか?」
「…ひとまずサザンカさん達の方へ向かいましょう」
宇宙船はサザンカとハーツを発見し、目の前で停まるとメルスが外に現れ、ハーツに話しかける。
「ひとつ確認したいことがあります。もし今の全員が一斉にモロにかかれば勝てますか?」
「もちろんだ。そのために、今は宇宙で活動できるあのふたりがモロの隙を作ろうと戦っている」
「隙を作る…?」
「俺の能力を使えば、大きな隙さえモロに生まれればヤツを地上へ引きずり下ろし、全員で戦える」
「なるほど…分かりました。なら私も、あの方たちに加勢します」
メルスはそう言うと銀河パトロールの隊服を操作し、透明なヘルメットとそれに繋がるように背中から伸びるホースを一瞬で出現させ、宇宙服仕様に変形させる。
「では」
ブロリーとシロナに加勢するため、メルスは彼らの戦いの場へと向かうのだった…。